アーパー石の祟り(方言)

概要

美崎(みさき)の浜にある石をアーパー石と言います。これは、方言のアーパーと言いますと標準語ではこれはもう婆ちゃんという意味になりますけれども、婆ちゃんに似た形をしている石です。このアーパー石というのは、昔はこの人頭税をあっちこっちからこの竹富島に船で持ってきて、そこに縄を結いつけて、竹富に人頭税を下ろして、その後で人頭税を五反帆(ぐたんぶ)という船で沖縄に運ぶ段取りがちゃんと整えられていたそうです。その当時は、西表からも穀類を乗せて、ここの竹富に持って来ると、このアーパー石というのにアンカーをかけて、一人は船に残って番をし、残りの一人は、この部落に上がって、持って来た穀類をその受け取らす役をしていたそうだから、その一人が部落に上がって、「こうこうで持ってきましたから受け取って下さい。」と言うために、こっちまで登って来たところが、その間に、そのいわゆる船で番人しておった人が殺されているので、その時の話が、「なぜどうしてこの人間がその番人が殺されたか。」と言うことになったそうです。
 これは、昔、花城(はなすく)の神とびっちんの神とがいて、争ったからだそうです。この花城の神は、最初は新里部落に部落を立てて、そしてそこに井戸を掘って、この水を使ったので、その井戸は、花城井戸(はなすくんがー)と井戸の名前は付けられているのです。それから、花城の神は、花城原というところにそこから移られて、花城部落に部落を立ててそこに住んでいたんです。この花城の神は、新里という部落に自分の愛人の女がいたそうです。それで、花城の神は、花城から新里までは遠いけど、浜伝なら近道なので、いつも浜伝いして新里に行くことにしているけれども、びっちんの神は魚釣るのが好きなんです。そして、自分の住まいと下の方の浜の方に石があるので、この石に座っていつも釣りをしていたそうです。それで、このびっちんの神がいつも浜にいるので、「あいつに見えないようにと隠れ眼で行こう。」としているんだけれども、どうしても、びっちんの神が釣りをしている石の所からは、見えてしまうから、「あいつがずっと見ているから、こっちはこの石でも投げて、あいつを殺してやろうかなあ。」と思って石をいつも投げよったそうです。その時にびっちんの神は、この花城の神が、こっちのかわいい娘の所に通っているのが分かっていたそうです。それで、「花城の神に頭でも割られたら大変だ。」ということで、その晩は鍋をかぶって浜に下りて釣りをしていたそうです。いよいよこの花城の神は、浜伝いで行こうかと来たところ、またびっちんの神がいるので、「こいつは何かかぶっているな。」と思って、大きな石をこうやって投げたところが、もうびっちんの神がかぶっている鍋に当たったから、こおーんという音がして、この鍋が割れたそうです。ところが、それを聞いて、びっくりしたこの花城の神は、もう西の方にどんどんどんどん走って逃げて行ったそうですよ。ところが、このびっちんの神は、「この野郎、これでは承知しない。」と思って、もうあんまりのこの怒りのあまりに大きな棒を持って、その後を追いかけて、「今度こそはもうぶち殺してやる。」と思って、追いかけて来たところが、もう花城の神は一生懸命に一心に走って、ちょうど美崎に行った時に、そこに西表から来て、このアーパー石に綱をかけている船がいたそうです。そして、その船に隠れようと思って上がったところが、そこに、その番人として置いた人が帆をかぶって寝ていた。「ようし、これを利用してからに、自分の着けた濡れた着物これにかぶして逃げてやろう。」と思って、すぐ自分の濡れた着物を取って番人の上にかぶしておいて、そこからまた一生懸命逃げて行ったところが、その船の所にびっちんの神が後から来て、「この野郎、この船の中に入ったわけだな。どこに行ったかな。」と探したところが、ちょうどこの下に、その濡れた着物かぶって人が寝ているものだから、「この野郎、畜生、これでもうたまるものか。」と言って、大きな声でわめいて叩いたところが、この番人は、いちころで殺されて死んじゃったんです。「ようし、こいつはもうのびているんだろう。ようし、のびてもかまわない。」と言って、びっちんの神は自分の家に帰った。
 ところが、部落にその報告に行った人が船に帰って来て見たら、番人が死んでいるので、もうびっくりしてもうまた部落に走って行って知らせて、それから犯人を捜したが、犯人は絶対に分からない。こういうことになって、「これはこれではもうどうもならない。」ともう大騒ぎしているうちに、ちょうどその日からもう一週間も、絶対に船も出せないように天気は崩れたので、「これはどうすることもできない、この死体はどうせ西表に持って行って、火葬しなければならない死体なんだけれども、これどうしようか。」と思っているうちに、ちょうど八日目にお天気が回復して、ようやく西表に連れて行って、お葬式を済ませたそうだ。
 それからは、やっぱりその竹富には、この祟りがあるのか、西表と竹富とは、敵味方のようなかっこになっちゃって、竹富のあのアーパー石に西表の人が船を連れていって、錨をかけると天気が崩れるから、昔のその祟りがあるんじゃないかと言われていて、いつも西表の人がアーパー石に船を繋ぐと、昔はよく天気が崩れたそうですよ。そういう伝説があるので、お爺ちゃん、お婆ちゃんに話を聞かされております。
・美崎‥‥竹富島の北の方の地名。・花城の神‥‥竹富島東部の花城御嶽に祀られる神で、力持ちの神と知られている。・ビッチン山‥‥現在竹富島の港がある東方の地名。

再生時間:5:14

民話詳細DATA

レコード番号 47O200003
CD番号 47O20C001
決定題名 アーパー石の祟り(方言)
話者がつけた題名
話者名 東盛弘介
話者名かな あいもりこうすけ
生年月日 19010730
性別
出身地 沖縄県八重山郡竹富町字竹富
記録日 19760804
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 竹富町字竹富T31A02
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 20
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 沖国大国文学科平成8年度卒業論文 竹富島の民話 p12
キーワード ア-パー石
梗概(こうがい) 美崎(みさき)の浜にある石をアーパー石と言います。これは、方言のアーパーと言いますと標準語ではこれはもう婆ちゃんという意味になりますけれども、婆ちゃんに似た形をしている石です。このアーパー石というのは、昔はこの人頭税をあっちこっちからこの竹富島に船で持ってきて、そこに縄を結いつけて、竹富に人頭税を下ろして、その後で人頭税を五反帆(ぐたんぶ)という船で沖縄に運ぶ段取りがちゃんと整えられていたそうです。その当時は、西表からも穀類を乗せて、ここの竹富に持って来ると、このアーパー石というのにアンカーをかけて、一人は船に残って番をし、残りの一人は、この部落に上がって、持って来た穀類をその受け取らす役をしていたそうだから、その一人が部落に上がって、「こうこうで持ってきましたから受け取って下さい。」と言うために、こっちまで登って来たところが、その間に、そのいわゆる船で番人しておった人が殺されているので、その時の話が、「なぜどうしてこの人間がその番人が殺されたか。」と言うことになったそうです。  これは、昔、花城(はなすく)の神とびっちんの神とがいて、争ったからだそうです。この花城の神は、最初は新里部落に部落を立てて、そしてそこに井戸を掘って、この水を使ったので、その井戸は、花城井戸(はなすくんがー)と井戸の名前は付けられているのです。それから、花城の神は、花城原というところにそこから移られて、花城部落に部落を立ててそこに住んでいたんです。この花城の神は、新里という部落に自分の愛人の女がいたそうです。それで、花城の神は、花城から新里までは遠いけど、浜伝なら近道なので、いつも浜伝いして新里に行くことにしているけれども、びっちんの神は魚釣るのが好きなんです。そして、自分の住まいと下の方の浜の方に石があるので、この石に座っていつも釣りをしていたそうです。それで、このびっちんの神がいつも浜にいるので、「あいつに見えないようにと隠れ眼で行こう。」としているんだけれども、どうしても、びっちんの神が釣りをしている石の所からは、見えてしまうから、「あいつがずっと見ているから、こっちはこの石でも投げて、あいつを殺してやろうかなあ。」と思って石をいつも投げよったそうです。その時にびっちんの神は、この花城の神が、こっちのかわいい娘の所に通っているのが分かっていたそうです。それで、「花城の神に頭でも割られたら大変だ。」ということで、その晩は鍋をかぶって浜に下りて釣りをしていたそうです。いよいよこの花城の神は、浜伝いで行こうかと来たところ、またびっちんの神がいるので、「こいつは何かかぶっているな。」と思って、大きな石をこうやって投げたところが、もうびっちんの神がかぶっている鍋に当たったから、こおーんという音がして、この鍋が割れたそうです。ところが、それを聞いて、びっくりしたこの花城の神は、もう西の方にどんどんどんどん走って逃げて行ったそうですよ。ところが、このびっちんの神は、「この野郎、これでは承知しない。」と思って、もうあんまりのこの怒りのあまりに大きな棒を持って、その後を追いかけて、「今度こそはもうぶち殺してやる。」と思って、追いかけて来たところが、もう花城の神は一生懸命に一心に走って、ちょうど美崎に行った時に、そこに西表から来て、このアーパー石に綱をかけている船がいたそうです。そして、その船に隠れようと思って上がったところが、そこに、その番人として置いた人が帆をかぶって寝ていた。「ようし、これを利用してからに、自分の着けた濡れた着物これにかぶして逃げてやろう。」と思って、すぐ自分の濡れた着物を取って番人の上にかぶしておいて、そこからまた一生懸命逃げて行ったところが、その船の所にびっちんの神が後から来て、「この野郎、この船の中に入ったわけだな。どこに行ったかな。」と探したところが、ちょうどこの下に、その濡れた着物かぶって人が寝ているものだから、「この野郎、畜生、これでもうたまるものか。」と言って、大きな声でわめいて叩いたところが、この番人は、いちころで殺されて死んじゃったんです。「ようし、こいつはもうのびているんだろう。ようし、のびてもかまわない。」と言って、びっちんの神は自分の家に帰った。  ところが、部落にその報告に行った人が船に帰って来て見たら、番人が死んでいるので、もうびっくりしてもうまた部落に走って行って知らせて、それから犯人を捜したが、犯人は絶対に分からない。こういうことになって、「これはこれではもうどうもならない。」ともう大騒ぎしているうちに、ちょうどその日からもう一週間も、絶対に船も出せないように天気は崩れたので、「これはどうすることもできない、この死体はどうせ西表に持って行って、火葬しなければならない死体なんだけれども、これどうしようか。」と思っているうちに、ちょうど八日目にお天気が回復して、ようやく西表に連れて行って、お葬式を済ませたそうだ。  それからは、やっぱりその竹富には、この祟りがあるのか、西表と竹富とは、敵味方のようなかっこになっちゃって、竹富のあのアーパー石に西表の人が船を連れていって、錨をかけると天気が崩れるから、昔のその祟りがあるんじゃないかと言われていて、いつも西表の人がアーパー石に船を繋ぐと、昔はよく天気が崩れたそうですよ。そういう伝説があるので、お爺ちゃん、お婆ちゃんに話を聞かされております。 ・美崎‥‥竹富島の北の方の地名。・花城の神‥‥竹富島東部の花城御嶽に祀られる神で、力持ちの神と知られている。・ビッチン山‥‥現在竹富島の港がある東方の地名。
全体の記録時間数 5:47
物語の時間数 5:14
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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