運は我が身に有り(方言)

概要

〔方言原話〕 運(ふっちぇー)我身(みー)に有りんでぃしぇー、自分(どぅー)ぬ運勢(うんすー)や、自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)んかいるある「運は天に有り。」んでぃしぇー間違とーんでぃる話ぬ。かーま昔(んかし)、那覇(なーふぁ)んかい、金銭(ぢんかにん)まんどーみせーる、裕福者(えーきんちゅ)ぬめんしぇーたんでぃしが、産子(なしむんぬくゎー)、娘子(うぃなぐんぐゎ)一人(ちゅい)し、父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、非常(じこう)学問(がくむん)好(しち)やみしぇーたんでぃ。うぬ性分(そーぶん)受てぃ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん学問(がくむん)うみはまとーるばーやしが、ある時(とぅち)、父親(たーりー)が、「運は天に有り。」んでぃ、言(い)みそーちゃくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)かーぶるし、「あねーあいびらん、運(うのー)自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)んかいる有(あ)いびいる。自身(どぅ)やか他(ふか)んかい、自分(どぅ)ぬ運ぬ、有んでぃちぇー考(かんげ)ーらりやいびらん。昔(んかし)から沖縄(うちなー)んかい有る、『運(ふっちぇー)自身(み)に有り。』くりる本当(ふんとー)やいびーる。」んでぃ言(い)ちさくとぅ、うりから口論(いーがはーえー)なてぃさくとぅ、「とぉー、あんしぇー、やーやなー、あんし親(うや)んかい、反対するむん、沖縄(うなー)一ぬ貧乏者(くーしーむん)ぬ妻(とぅぢ)なすしが、くむみ。」んでぃ父親(たーりー)が言(い)みそーちゃくとぅ、「うーしまびいん、あんししまびーん。」でぃちさくとぅ、うぬ家庭(ちねー)や、下人達(ぢにんぬちゃー)ん、幾人(いくたい)ん使(ちか)てぃるうくとぅ、彼方(あま)はい、此方(くま)はい、かめーらちさくとぅ、「かーま遠(とぅー)さんかい、親(うや)、兄弟(ちょーでー)、親戚(うえかー)、縁者(はろーぢ)ん居(う)らん、一人者(どぅーちゅいむん)ぬ、家(やー)んねーらん、洞窟(がま)んかい居(う)しが、畑(はる)んねーらんくとぅ、他人(ちゅ)ぬ山林(やま)ぬ片隅(かたしみ)耕(たげー)ちぇ、ちゅくいむんし、残(ぬく)いや海(うみ)行(い)んぢ、魚(いゆ)から蟹(がに)取(と)うてぃ、食(か)でぃ、洞窟(がま)ぬ入口(いりぐちぇー)んかえー、簾(あんむん)下ぎやーなかい、寝(に)んたい、起(う)きたいそーしが居(う)んでぃくとぅ、やーやうりが妻(とぅぢ)なさやー。」んでぃ、言(い)ちゃくとぅ、「うーしまびいん。」でぃち、行んぢ、うぬ青年(にーせー)とう、夫婦(みいとぅんだ)なてぃ暮(く)らち、二(に)、三年(さんにん)しから、男子供(いきがぼーぢゃー)が、生(い)まりてぃ、あんさくとぅ、妻(とぅぢ)なとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)ぬ、「貴方(うんじょー)、那覇(なーふぁ)ぬ父親(たーりー)、母親(あやー)前(めー)んかい行(い)ぢ、『黄金産子(くがになしぐゎー)ん生(い)まりとーいびーくとぅ、位牌(とーとーめー)ぬ親御元祖(うやうぐゎんす)ぬ前(めー)とぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かぬ)んかい、報告(てぃうさ)しみてぃくぃみそーり』んでぃ、言(い)みそうやなかい、二箇所(たとぅくる)かい、『黄金産子(くがになしぐゎー)授(さぢ)きてぃくぃみそーち、れでぃがふーでーびる。」んてぃ、報告(てぃーうさー)ち、めんそーれー。」んでぃ、言(い)ちゃくとぅ、夫(うっとぅ)なとーる青年(にーせー)や、「あんすみ。」んち、那覇(なーふぁ)んかい、行(い)んぢさくとぅ、父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、大変(じこー)うっさしみそーち、「とーでぃきとーさ、私達(わったー)や、食(か)むむる物(むん)ねー不自由(ふじゆー)やねーらんしが、産子(なしぐゎー)びけーや、産(なーし)いきらさんくとぅ、君達(いったー)から沢山(だてぇー)ん、産(なーし)ふぃるぎしいよー。」んち、うっさしみそーち、一緒(まじゅー)んし、御仏壇(うぶちだん)ぬ位牌(とーとーめー)とぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かぬ)んかい、「玉黄金(たまくがに)産子(なーしぐゎー)ぬ、授(さじ)かといびーん、うれでぃがふーでーびる。」んち、報告(てぃーうさー)ちくみそーち、家(やー)かい帰(けー)いになたくとぅ、母親(あやー)が、「とー、君達(いったー)や、食物(かみむぬ)んいきらさる筈(はじ)やくとぅ、くぬ米(くみ)持(むっ)ち行(い)んじゃーなかい、なー家族(やーにんじ)わん三人(みっちゃい)なとーくとぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立(した)てぃてぃ、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎてぃ、子供(わらばー)健康(かた)ぬ、祈願(にんぐゎん)、また、家庭(ちねー)ぬ栄果報(さかいがふー)祈願(にんぐゎん)しーよー。」んち、袋(ふくる)んかい、米(くみ)入(いっ)てぃ、持(む)たしみそーちさくとぅ、うぬ婿(むーこー)、「にふぇーでーる。」んち、うぬ袋(ふる)かたみてぃ、帰(けー)とーるばーやしが、途中(みちなかー)いぢ、「袋(ふくろー)あんすか、まぎさーねーらんしが、見掛(みが)きやか、袋(ふくる)ぬ、いぶさぬ、、くれー中(なーか)んかい、ぬーがな入(いっ)ちぇるうぇーさに。」んち、開(あ)きてぃ見(み)ちゃくとぅ、石(いし)ぬ入(いっ)ちぇさくとぅ、「父親(たーりー)ん、頑固者(くゎがっぱらー)、他人(ちゅ)とー違(ちが)とーみせーしが、うれー、父親(たーりー)が、学問(がくむん)優(すぐ)りみそーち、何事(ぬーぐとぅ)ん良(ゆー)わかとーみせーくとぅ、他人(ふかぬちゅ)ぬるわからんくとぅ、うれーしむん、父親(たーりー)が、言(い)みせーしる本当(ふんとー)やくとぅしむしが、母親(あやー)やなー同様(ぬーぬぐとぅ)学問(がくむん)そーみせーしが、いふぇーなー、わかいぐりさぬ人(ちゅ)やみせーっさー。」んち、うぬ石(いせー)取(とぅ)やーに、道端(みちばた)んかいはん投(な)ぎやなかい、家(やー)かい帰(けー)てぃちゃーに妻(とぅぢ)んかい、、「那覇(なーふぁ)に父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、大変(じこー)うっさそーみせーたん。あんし、母親(あやー)が、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立て、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎてぃ、子供(わらび)ぬ健康果報(からたがふー)家庭(ちねー)ぬ栄果報(さかいがふー)祈願(にんぐゎん)しいよんち、米(くみ)持(む)たちぇーみせーしが、父親(たーりー)ん他人(ちゅ)からー、一徹者(ぐゎんくー)んでぃ、言(い)やっとーみせーしが、うれー父親(たーりー)が、他人(ちゅ)やかねー、良(ゆー)わかとーみせーくとぅ、皆(んな)が、父親(たーりー)さこうわからんぬるやくとぅ、父親(たーりー)が言(い)みせーしる本当(ふんとー)やくとぅしむしが、母親(あやー)や、同様(ぬーぬぐとぅ)学問(がくむん)そーみせーしが、いふぇーな、わかいぐりさぬ人(ちゅ)やみせーん、あんせー、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立てぃてぃ、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎりんち、米(くみ)びけーや持(む)たしみそーらん、石(いーし)までぃ入(いっ)てぃ持(む)たしみそーち。私(わん)ねー、見掛(みが)きやか袋(ふく)いぶさぬ、途中(みちなかー)うってぃうぬ石(いし)しぇー捨(し)てぃてぃちゃん。やくとぅ、母親(あやー)母親(あやー)やいふぇーわかいぐりさぬ方やみせーん。」りち、話(はなし)いさくとぅ、うぬ妻(とぅぢぇー)、「母親(あやー)がうぬ様な事(くとぅ)しみしぇーたんなーさい、あんしぇーうれー、石(いせー)あらん、ぬーがなるやる、とー貴方(うんじょー)なー一回(ちゅけん)めんそーち、うぬ石(い)取(とぅ)ってぃめんそーれ。」んでぃ言(い)っちゃくとぅ、夫(うっとー)、「えーあんどぅやいる。」んち、また、途中(みちなかー)までぃ行(い)んぢやーに、うぬ石取(とぅ)ってぃちゃーに、妻(とぅぢ)んかい見したくとぅ、妻(とぅぢぇー)、「ああ、くれーただぬ石(いせー)あいびらん、黄金(くがに)ぬ混(ま)んちょる石るやいびーる、やくとぅ、貴方(うんじゅ)難儀(なんじ)しみーんち持(む)たちぇーるばーやあいびらん。困(くま)いるばーねえーくり使(ちけー)よーんちる、持(む)たちぇみせーびーんどー。」んち、夫(うっとぅ)んかい、話(はなし)いさがなーうぬ石(いし)見したくとぅ、「んーん黄金(くがに)んでぃ、言(ゆ)せー、くんぐとぅーるそーいる、くりが黄金(くがに)やれー、なー私達(わったー)や、大変(じこー)ぬ大金持(うぇーきんちゅ)やさ、私(わー)が開(あ)てーる畑(はる)ぐゎーぬ側(すば)んかい、取(とぅ)いいんぢゃちぇーる石(いせー)むるくりとぅ似(に)ちょーるやくとぅ。」んでぃ言(い)っちゃくとぅ、妻(とぅぢ)ぬ、「本当(ふんとー)やいびーみ。」んち、二人(たい)し見(んー)じーが行(い)んぢゃくとぅ、んちゃ、畑(はる)ぐゎーぬ側(すば)んかい取(とぅ)いいんぢゃさっとーる石(いせー)むる黄金(くがに)混(まん)ちさくとぅ、夫(うっとぅ)、「とー、黄金産子(くがになしぐゎー)ん授(さじ)かてぃ、黄金(くがに)んとぅめーとーせー、君達(いったー)母親(あやー)、父親(たーりー)が、私達(わったー)二人(たい)夫婦(みーとぅんだ)なちくぃみそーちゃくとぅる、ありん、くりん、授(さじ)かとーくとぅ、那覇(なーふぁ)んかい行(い)んぢゃーに恩返(うんじ)さーやー。」んち、黄金(くが)ん馬(いぅま)んかい積(ち)でぃ那覇(なーふぁ)うってぃ裕福に暮らちゃんでぃ。うりとー別(びち)やしが、今(なま)ん運(うのー)自身(どぅー)にる有る。飛行機事故、車事故、列車事故、船(ふに)ぬーぬんち、沢山(だてぇーん)事故あしが、うぬ中(うち)にうぬ日(ふぃー)、うぬ時(とぅち)ぬ厄はんしゆーさん、運勢(うんち)尽(ち)りとーる人(ちゅ)、また、運勢(うんち)傾(がたん)ちそーる人(ちょー)、けーまーちゃい、どぅーやまちゃいすしが、運勢(うんち)強(ちゅー)さる人(ちょー)、ただ紙一重(すつとぅ)ぬ事(くとぅ)し免(ぬがー)いん。やくとぅ、「運(ふっちぇー)自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)にる有る。」、「運(うん)は天に有り。」んでぃせー間違(まちが)とーん。〔共通語訳〕 「運は我が身に有り」と、言うのは、自分の運は自分自身に有るのであって、「運は天に有り」と、言うのは間違っている。と、言う話である。その昔。那覇に、金銭も沢山ある裕福者の家庭がありました。それで其の家庭は、父、母と、娘の三人暮しだったのですが、父も、母も、大変学問の好きな方々でしたので。其の娘も其の性分を受けて、一生懸命勉強しているのですが、或る時、父が、「運は天に有り」と、話しますと、其の娘は、頭を横に振って「そうでありません。運は自分自身にあるのです。自身より他に、自分の運が有るとは考へられません。だから、昔から沖縄に伝へられている、『運は自身に有り』、此れが本当です」と申しますと、それから口論となり、果ては、父が、「そうか、そんなにお前が父の言う事に反対するならば、お前を、沖縄で一番貧乏者の妻にさせるがよいか」と、申しますと、「はいよろしいです。それでよいです」と答えますと。其の家庭は、下男達を数人使っていますので、其の人達を使って、彼方、此方に行かして搜させますと。「ずっと遠くの方に。親、兄弟、親戚、縁者も居ない、一人暮しで、家も無く、他人の山林の片隅を開いて耕やして作物を作り、残りは海に行って、魚や、蟹を取って来て食べ、洞窟の入口には簾を下げて寝起している青年が居そうだから、お前は其の人の妻にさせようね」と申しますと。「はいよろしいです」と、出て行って、其の青と夫婦になって暮しているうちに、二・三年すると男の子が生れましたので、妻になっている娘は「貴方は、那覇の、父上、母上の処に行かれて玉のような男の子が生れましたので、佛壇の御元祖様と、台所の火の神様に報告させて下さい、とおっしゃって、二ヶ所に『男の子が授かり有難うございます、立派な男にして下さい』と、手を合せて拝んで来て下さい。」と、申しますと、夫は「よ‐し行って来る」と、言って那覇に父上、母上に話しますと。「そうか、よくやった」と父上も母上も大変喜ばれて「私達は、食べる物には不自由はしないが、子供だけは少ない。だから、君達からは沢山産んで、子孫繁昌させなさいよ」と、言はれて喜ばれ一緒に、佛壇のト―ト―メ―と、火の神様に「玉黄金の様な男の子が授かりました。大変有難うございます」と合掌して報告して下さいました。そして家に帰る時になると、母上が「さ―君達は、食べる物も少ない筈だから、此の米も持って行って。もう家族も三人になっているから、火の神様を仕立て上げて、出産祝の御飯を炊いて上げ、子供の健康と、家運の隆盛を祈願しなさい」と、言はれて、袋に米を入れて持たして下さいました。すると其の婿は「有難うございます」礼をのべて、其の袋を担いで帰ったのですが、途中迄来ると「袋はあまり大きくはないが。目掛よりも袋が重いので、此れは何か外の物が入っているに違いないと思い。途中で開けて見ると、石が入っているので。「父上も頑固者で、他人とは異なっていらっしゃるが、それは、父上が、学問に優れておられて。何事もよく御存知だからであり、他の人達がわからないからである。又父上の申されるのが本当だから、それでよいが。母上は、同様に学問なさっておられるが、少し理解しにくい方だ」と、言ながら、其の石を道の側に投捨て家に帰って来て、妻に。那覇の父上も、母上も喜んで下さって、帰りに母上が、火の神様を仕立て、出産祝の赤飯を炊いて上げ、子供、家族の繁栄を祈願しなさい。と、言はれてお米を持たされたが、父上も他人からは、一徹者と言はれているが、其れは、父上が、何事も、皆よりよくわかっておられるからであって、他の人が父上のようにわからないからであり、父上の申されるのが本当だから。それはよいが。母上は同じ様に、学問なさっておられるが。少しわかりにくいお方だ。それは、火の神様を仕立て、出産祝の赤飯を炊いて上げなさい。と、言はれて、米だけは持たさないで、石迄入れて持たして下さった。私は目掛より袋が重いので、途中で其の石を捨て来た。だから、母上は少し理解しにくいお方だ、と、話しますと。其の妻は、「母上が其の様な事をなさったのですか。それでは、其れは石ではなくて、何物かでしょうから、貴方はもう一度行かれて、其の石を取って来て下さい。」と言ますと。夫は「え―そうだったのか」と、言って、又途中迄行って其の石を取って来て妻に見せますと、妻は其れを見て、「あら、此れはただの石ではありません、黄金の混った石なのです。だから、母上が貴方を苦労させる為に持たしたのではありません。困った時には此れを使いなさい、と持たしたのですよ」と、夫に話しながら其の石を見せますと、「う―ん黄金というのは此の様にしているのか、此れが黄金であるならば、私達は、大変な大金持だ、私が開いた、小さな畑の側に取出してある石は皆此れと似ているから」と話しますと、其の妻は「本当でございますか」と、話し、二人で行って見ますと、成程少さな畑の側に取り出してある石は、全部黄金が混っていますので、夫が「そうだ。黄金の様な子供も授かり、黄金も拾ったのは君の母上や、父上が私達二人を夫婦にして下さったから。あれも、これも、授かったのだから、那覇に行って恩返ししようね」と、話し合って、黄金を馬に積み、那覇に行って裕福に暮したとの事である。又此れとは別の話になるが。今でも運は自分、自身に有る。飛行機事故、車事故、列車事故、船等と、沢山事故は有るが、其の中で。其の日、其の時の厄を凌きれず。運が尽たり、運が傾いたりする人は。死亡したり、怪我をするかと思うと紙一重の差で助かる人も居るのである。だから、運は自分、自身に有るのであって「運は天に有り」と言うのは間違いである。平成9年2月17日 高江洲亮・赤嶺素花女翻字 T1A3

再生時間:7:52

民話詳細DATA

レコード番号 47O170001
CD番号 47O17C001
決定題名 運は我が身に有り(方言)
話者がつけた題名 運は我が身に有り(フッチェーみにあり)
話者名 阿波根昌栄
話者名かな あはごんしょうえい
生年月日 19210309
性別
出身地 沖縄県中頭郡北谷町字上勢頭
記録日 19970217
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 T01A03
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12,52
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 『想い出の昔話』
キーワード 父,娘,貧乏な男,黄金の石
梗概(こうがい) 〔方言原話〕 運(ふっちぇー)我身(みー)に有りんでぃしぇー、自分(どぅー)ぬ運勢(うんすー)や、自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)んかいるある「運は天に有り。」んでぃしぇー間違とーんでぃる話ぬ。かーま昔(んかし)、那覇(なーふぁ)んかい、金銭(ぢんかにん)まんどーみせーる、裕福者(えーきんちゅ)ぬめんしぇーたんでぃしが、産子(なしむんぬくゎー)、娘子(うぃなぐんぐゎ)一人(ちゅい)し、父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、非常(じこう)学問(がくむん)好(しち)やみしぇーたんでぃ。うぬ性分(そーぶん)受てぃ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎ)ん学問(がくむん)うみはまとーるばーやしが、ある時(とぅち)、父親(たーりー)が、「運は天に有り。」んでぃ、言(い)みそーちゃくとぅ、うぬ娘子(うぃなぐんぐゎー)かーぶるし、「あねーあいびらん、運(うのー)自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)んかいる有(あ)いびいる。自身(どぅ)やか他(ふか)んかい、自分(どぅ)ぬ運ぬ、有んでぃちぇー考(かんげ)ーらりやいびらん。昔(んかし)から沖縄(うちなー)んかい有る、『運(ふっちぇー)自身(み)に有り。』くりる本当(ふんとー)やいびーる。」んでぃ言(い)ちさくとぅ、うりから口論(いーがはーえー)なてぃさくとぅ、「とぉー、あんしぇー、やーやなー、あんし親(うや)んかい、反対するむん、沖縄(うなー)一ぬ貧乏者(くーしーむん)ぬ妻(とぅぢ)なすしが、くむみ。」んでぃ父親(たーりー)が言(い)みそーちゃくとぅ、「うーしまびいん、あんししまびーん。」でぃちさくとぅ、うぬ家庭(ちねー)や、下人達(ぢにんぬちゃー)ん、幾人(いくたい)ん使(ちか)てぃるうくとぅ、彼方(あま)はい、此方(くま)はい、かめーらちさくとぅ、「かーま遠(とぅー)さんかい、親(うや)、兄弟(ちょーでー)、親戚(うえかー)、縁者(はろーぢ)ん居(う)らん、一人者(どぅーちゅいむん)ぬ、家(やー)んねーらん、洞窟(がま)んかい居(う)しが、畑(はる)んねーらんくとぅ、他人(ちゅ)ぬ山林(やま)ぬ片隅(かたしみ)耕(たげー)ちぇ、ちゅくいむんし、残(ぬく)いや海(うみ)行(い)んぢ、魚(いゆ)から蟹(がに)取(と)うてぃ、食(か)でぃ、洞窟(がま)ぬ入口(いりぐちぇー)んかえー、簾(あんむん)下ぎやーなかい、寝(に)んたい、起(う)きたいそーしが居(う)んでぃくとぅ、やーやうりが妻(とぅぢ)なさやー。」んでぃ、言(い)ちゃくとぅ、「うーしまびいん。」でぃち、行んぢ、うぬ青年(にーせー)とう、夫婦(みいとぅんだ)なてぃ暮(く)らち、二(に)、三年(さんにん)しから、男子供(いきがぼーぢゃー)が、生(い)まりてぃ、あんさくとぅ、妻(とぅぢ)なとーる娘子(うぃなぐんぐゎー)ぬ、「貴方(うんじょー)、那覇(なーふぁ)ぬ父親(たーりー)、母親(あやー)前(めー)んかい行(い)ぢ、『黄金産子(くがになしぐゎー)ん生(い)まりとーいびーくとぅ、位牌(とーとーめー)ぬ親御元祖(うやうぐゎんす)ぬ前(めー)とぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かぬ)んかい、報告(てぃうさ)しみてぃくぃみそーり』んでぃ、言(い)みそうやなかい、二箇所(たとぅくる)かい、『黄金産子(くがになしぐゎー)授(さぢ)きてぃくぃみそーち、れでぃがふーでーびる。」んてぃ、報告(てぃーうさー)ち、めんそーれー。」んでぃ、言(い)ちゃくとぅ、夫(うっとぅ)なとーる青年(にーせー)や、「あんすみ。」んち、那覇(なーふぁ)んかい、行(い)んぢさくとぅ、父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、大変(じこー)うっさしみそーち、「とーでぃきとーさ、私達(わったー)や、食(か)むむる物(むん)ねー不自由(ふじゆー)やねーらんしが、産子(なしぐゎー)びけーや、産(なーし)いきらさんくとぅ、君達(いったー)から沢山(だてぇー)ん、産(なーし)ふぃるぎしいよー。」んち、うっさしみそーち、一緒(まじゅー)んし、御仏壇(うぶちだん)ぬ位牌(とーとーめー)とぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かぬ)んかい、「玉黄金(たまくがに)産子(なーしぐゎー)ぬ、授(さじ)かといびーん、うれでぃがふーでーびる。」んち、報告(てぃーうさー)ちくみそーち、家(やー)かい帰(けー)いになたくとぅ、母親(あやー)が、「とー、君達(いったー)や、食物(かみむぬ)んいきらさる筈(はじ)やくとぅ、くぬ米(くみ)持(むっ)ち行(い)んじゃーなかい、なー家族(やーにんじ)わん三人(みっちゃい)なとーくとぅ、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立(した)てぃてぃ、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎてぃ、子供(わらばー)健康(かた)ぬ、祈願(にんぐゎん)、また、家庭(ちねー)ぬ栄果報(さかいがふー)祈願(にんぐゎん)しーよー。」んち、袋(ふくる)んかい、米(くみ)入(いっ)てぃ、持(む)たしみそーちさくとぅ、うぬ婿(むーこー)、「にふぇーでーる。」んち、うぬ袋(ふる)かたみてぃ、帰(けー)とーるばーやしが、途中(みちなかー)いぢ、「袋(ふくろー)あんすか、まぎさーねーらんしが、見掛(みが)きやか、袋(ふくる)ぬ、いぶさぬ、、くれー中(なーか)んかい、ぬーがな入(いっ)ちぇるうぇーさに。」んち、開(あ)きてぃ見(み)ちゃくとぅ、石(いし)ぬ入(いっ)ちぇさくとぅ、「父親(たーりー)ん、頑固者(くゎがっぱらー)、他人(ちゅ)とー違(ちが)とーみせーしが、うれー、父親(たーりー)が、学問(がくむん)優(すぐ)りみそーち、何事(ぬーぐとぅ)ん良(ゆー)わかとーみせーくとぅ、他人(ふかぬちゅ)ぬるわからんくとぅ、うれーしむん、父親(たーりー)が、言(い)みせーしる本当(ふんとー)やくとぅしむしが、母親(あやー)やなー同様(ぬーぬぐとぅ)学問(がくむん)そーみせーしが、いふぇーなー、わかいぐりさぬ人(ちゅ)やみせーっさー。」んち、うぬ石(いせー)取(とぅ)やーに、道端(みちばた)んかいはん投(な)ぎやなかい、家(やー)かい帰(けー)てぃちゃーに妻(とぅぢ)んかい、、「那覇(なーふぁ)に父親(たーりー)ん、母親(あやー)ん、大変(じこー)うっさそーみせーたん。あんし、母親(あやー)が、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立て、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎてぃ、子供(わらび)ぬ健康果報(からたがふー)家庭(ちねー)ぬ栄果報(さかいがふー)祈願(にんぐゎん)しいよんち、米(くみ)持(む)たちぇーみせーしが、父親(たーりー)ん他人(ちゅ)からー、一徹者(ぐゎんくー)んでぃ、言(い)やっとーみせーしが、うれー父親(たーりー)が、他人(ちゅ)やかねー、良(ゆー)わかとーみせーくとぅ、皆(んな)が、父親(たーりー)さこうわからんぬるやくとぅ、父親(たーりー)が言(い)みせーしる本当(ふんとー)やくとぅしむしが、母親(あやー)や、同様(ぬーぬぐとぅ)学問(がくむん)そーみせーしが、いふぇーな、わかいぐりさぬ人(ちゅ)やみせーん、あんせー、火(ふぃ)ぬ神様(かん)仕立てぃてぃ、出産祝(いばぎー)飯(めー)うさぎりんち、米(くみ)びけーや持(む)たしみそーらん、石(いーし)までぃ入(いっ)てぃ持(む)たしみそーち。私(わん)ねー、見掛(みが)きやか袋(ふく)いぶさぬ、途中(みちなかー)うってぃうぬ石(いし)しぇー捨(し)てぃてぃちゃん。やくとぅ、母親(あやー)母親(あやー)やいふぇーわかいぐりさぬ方やみせーん。」りち、話(はなし)いさくとぅ、うぬ妻(とぅぢぇー)、「母親(あやー)がうぬ様な事(くとぅ)しみしぇーたんなーさい、あんしぇーうれー、石(いせー)あらん、ぬーがなるやる、とー貴方(うんじょー)なー一回(ちゅけん)めんそーち、うぬ石(い)取(とぅ)ってぃめんそーれ。」んでぃ言(い)っちゃくとぅ、夫(うっとー)、「えーあんどぅやいる。」んち、また、途中(みちなかー)までぃ行(い)んぢやーに、うぬ石取(とぅ)ってぃちゃーに、妻(とぅぢ)んかい見したくとぅ、妻(とぅぢぇー)、「ああ、くれーただぬ石(いせー)あいびらん、黄金(くがに)ぬ混(ま)んちょる石るやいびーる、やくとぅ、貴方(うんじゅ)難儀(なんじ)しみーんち持(む)たちぇーるばーやあいびらん。困(くま)いるばーねえーくり使(ちけー)よーんちる、持(む)たちぇみせーびーんどー。」んち、夫(うっとぅ)んかい、話(はなし)いさがなーうぬ石(いし)見したくとぅ、「んーん黄金(くがに)んでぃ、言(ゆ)せー、くんぐとぅーるそーいる、くりが黄金(くがに)やれー、なー私達(わったー)や、大変(じこー)ぬ大金持(うぇーきんちゅ)やさ、私(わー)が開(あ)てーる畑(はる)ぐゎーぬ側(すば)んかい、取(とぅ)いいんぢゃちぇーる石(いせー)むるくりとぅ似(に)ちょーるやくとぅ。」んでぃ言(い)っちゃくとぅ、妻(とぅぢ)ぬ、「本当(ふんとー)やいびーみ。」んち、二人(たい)し見(んー)じーが行(い)んぢゃくとぅ、んちゃ、畑(はる)ぐゎーぬ側(すば)んかい取(とぅ)いいんぢゃさっとーる石(いせー)むる黄金(くがに)混(まん)ちさくとぅ、夫(うっとぅ)、「とー、黄金産子(くがになしぐゎー)ん授(さじ)かてぃ、黄金(くがに)んとぅめーとーせー、君達(いったー)母親(あやー)、父親(たーりー)が、私達(わったー)二人(たい)夫婦(みーとぅんだ)なちくぃみそーちゃくとぅる、ありん、くりん、授(さじ)かとーくとぅ、那覇(なーふぁ)んかい行(い)んぢゃーに恩返(うんじ)さーやー。」んち、黄金(くが)ん馬(いぅま)んかい積(ち)でぃ那覇(なーふぁ)うってぃ裕福に暮らちゃんでぃ。うりとー別(びち)やしが、今(なま)ん運(うのー)自身(どぅー)にる有る。飛行機事故、車事故、列車事故、船(ふに)ぬーぬんち、沢山(だてぇーん)事故あしが、うぬ中(うち)にうぬ日(ふぃー)、うぬ時(とぅち)ぬ厄はんしゆーさん、運勢(うんち)尽(ち)りとーる人(ちゅ)、また、運勢(うんち)傾(がたん)ちそーる人(ちょー)、けーまーちゃい、どぅーやまちゃいすしが、運勢(うんち)強(ちゅー)さる人(ちょー)、ただ紙一重(すつとぅ)ぬ事(くとぅ)し免(ぬがー)いん。やくとぅ、「運(ふっちぇー)自分(どぅー)ぬ自身(どぅ)にる有る。」、「運(うん)は天に有り。」んでぃせー間違(まちが)とーん。〔共通語訳〕 「運は我が身に有り」と、言うのは、自分の運は自分自身に有るのであって、「運は天に有り」と、言うのは間違っている。と、言う話である。その昔。那覇に、金銭も沢山ある裕福者の家庭がありました。それで其の家庭は、父、母と、娘の三人暮しだったのですが、父も、母も、大変学問の好きな方々でしたので。其の娘も其の性分を受けて、一生懸命勉強しているのですが、或る時、父が、「運は天に有り」と、話しますと、其の娘は、頭を横に振って「そうでありません。運は自分自身にあるのです。自身より他に、自分の運が有るとは考へられません。だから、昔から沖縄に伝へられている、『運は自身に有り』、此れが本当です」と申しますと、それから口論となり、果ては、父が、「そうか、そんなにお前が父の言う事に反対するならば、お前を、沖縄で一番貧乏者の妻にさせるがよいか」と、申しますと、「はいよろしいです。それでよいです」と答えますと。其の家庭は、下男達を数人使っていますので、其の人達を使って、彼方、此方に行かして搜させますと。「ずっと遠くの方に。親、兄弟、親戚、縁者も居ない、一人暮しで、家も無く、他人の山林の片隅を開いて耕やして作物を作り、残りは海に行って、魚や、蟹を取って来て食べ、洞窟の入口には簾を下げて寝起している青年が居そうだから、お前は其の人の妻にさせようね」と申しますと。「はいよろしいです」と、出て行って、其の青と夫婦になって暮しているうちに、二・三年すると男の子が生れましたので、妻になっている娘は「貴方は、那覇の、父上、母上の処に行かれて玉のような男の子が生れましたので、佛壇の御元祖様と、台所の火の神様に報告させて下さい、とおっしゃって、二ヶ所に『男の子が授かり有難うございます、立派な男にして下さい』と、手を合せて拝んで来て下さい。」と、申しますと、夫は「よ‐し行って来る」と、言って那覇に父上、母上に話しますと。「そうか、よくやった」と父上も母上も大変喜ばれて「私達は、食べる物には不自由はしないが、子供だけは少ない。だから、君達からは沢山産んで、子孫繁昌させなさいよ」と、言はれて喜ばれ一緒に、佛壇のト―ト―メ―と、火の神様に「玉黄金の様な男の子が授かりました。大変有難うございます」と合掌して報告して下さいました。そして家に帰る時になると、母上が「さ―君達は、食べる物も少ない筈だから、此の米も持って行って。もう家族も三人になっているから、火の神様を仕立て上げて、出産祝の御飯を炊いて上げ、子供の健康と、家運の隆盛を祈願しなさい」と、言はれて、袋に米を入れて持たして下さいました。すると其の婿は「有難うございます」礼をのべて、其の袋を担いで帰ったのですが、途中迄来ると「袋はあまり大きくはないが。目掛よりも袋が重いので、此れは何か外の物が入っているに違いないと思い。途中で開けて見ると、石が入っているので。「父上も頑固者で、他人とは異なっていらっしゃるが、それは、父上が、学問に優れておられて。何事もよく御存知だからであり、他の人達がわからないからである。又父上の申されるのが本当だから、それでよいが。母上は、同様に学問なさっておられるが、少し理解しにくい方だ」と、言ながら、其の石を道の側に投捨て家に帰って来て、妻に。那覇の父上も、母上も喜んで下さって、帰りに母上が、火の神様を仕立て、出産祝の赤飯を炊いて上げ、子供、家族の繁栄を祈願しなさい。と、言はれてお米を持たされたが、父上も他人からは、一徹者と言はれているが、其れは、父上が、何事も、皆よりよくわかっておられるからであって、他の人が父上のようにわからないからであり、父上の申されるのが本当だから。それはよいが。母上は同じ様に、学問なさっておられるが。少しわかりにくいお方だ。それは、火の神様を仕立て、出産祝の赤飯を炊いて上げなさい。と、言はれて、米だけは持たさないで、石迄入れて持たして下さった。私は目掛より袋が重いので、途中で其の石を捨て来た。だから、母上は少し理解しにくいお方だ、と、話しますと。其の妻は、「母上が其の様な事をなさったのですか。それでは、其れは石ではなくて、何物かでしょうから、貴方はもう一度行かれて、其の石を取って来て下さい。」と言ますと。夫は「え―そうだったのか」と、言って、又途中迄行って其の石を取って来て妻に見せますと、妻は其れを見て、「あら、此れはただの石ではありません、黄金の混った石なのです。だから、母上が貴方を苦労させる為に持たしたのではありません。困った時には此れを使いなさい、と持たしたのですよ」と、夫に話しながら其の石を見せますと、「う―ん黄金というのは此の様にしているのか、此れが黄金であるならば、私達は、大変な大金持だ、私が開いた、小さな畑の側に取出してある石は皆此れと似ているから」と話しますと、其の妻は「本当でございますか」と、話し、二人で行って見ますと、成程少さな畑の側に取り出してある石は、全部黄金が混っていますので、夫が「そうだ。黄金の様な子供も授かり、黄金も拾ったのは君の母上や、父上が私達二人を夫婦にして下さったから。あれも、これも、授かったのだから、那覇に行って恩返ししようね」と、話し合って、黄金を馬に積み、那覇に行って裕福に暮したとの事である。又此れとは別の話になるが。今でも運は自分、自身に有る。飛行機事故、車事故、列車事故、船等と、沢山事故は有るが、其の中で。其の日、其の時の厄を凌きれず。運が尽たり、運が傾いたりする人は。死亡したり、怪我をするかと思うと紙一重の差で助かる人も居るのである。だから、運は自分、自身に有るのであって「運は天に有り」と言うのは間違いである。平成9年2月17日 高江洲亮・赤嶺素花女翻字 T1A3
全体の記録時間数 7:52
物語の時間数 7:52
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP