
モーイ親方の生い立ちというのはねえ、昔は今も時代劇にあるように寺小屋というのがあって、学問は坊さんが全部教えておった。だから、友達としては、「このモーイのカンターという人は、一緒に勉強すると、もしかすると私達より優れた者になるだろう。あの人を勉強させないようにするには、どうしたらいいのだろうか。」と思っていたので、自分は早く行って勉強してしまって、友達が来る時分は道中(みちなか)で遊んでおって、「どうして学校へ行って勉強習って何になるか、さあ、今日は鰻取りして遊んでこよう。」とほかの友達も遊び仲間に引っこんでしまうわけ。自分はすでに前に勉強してきて、自分は三日勉強するのに、二日はやつら遊ばしてしまったり、自分は三日も勉強してもやつらには一日しか勉強させないという策をとっておったらしいんだなあ。それが、もうやがて成人になろうという時に、そのモーイのお父さんは三司官じゃったらしいね。今の国務大臣とか、ほら大臣がおるさあねえ、琉球では、そういう大臣を三司宮と言って、表(うむてぃ)三司官という言葉があるんだ。この三司官が決めて王様に伝言して政治を行なったという。で、その時に薩摩から、「三重城(みぐしく)を掬ってこい。また、必ず雄鶏の卵も入れなさい。もうひとつはかまどの灰で縄をなって、いつまでに持って来なさい。」という注文が期限つけてあったが、「この三つの間題解けなかったら、琉球を薩摩からやる。」と言うことで使いが出たらしいんだ。で、お父さん家に帰ってから思案さあねえ。モーイは、「どうしたんですか、何を心配していらっしゃるのですか、まず教えて下さい。」と言っても、お父さんは、「私達でさえも分からないのに、お前達に分かるものではない。貴方たちは勉強しておけばいい。」と言って、毎日、そんなにしていらっしゃるので、「ねえ、お父さん、しまいには病気になってしまいますよ。言ってみなければ誰が分かるか分からないでしょう。だからまず言ってみて下さい。親の心配事は子供の心配事でもあるし、お父さんが心配して私が心配しないというわけはないのですから、まず話してみて下さい。」と言ったので、「実は、こういうわけだ。」「そうしたら、それはいつですか。」「もうあさってが期限である。」と。「心配しないで下さい。私が引き受けましょう。」と言って、そのモーイのカンターは薩摩の使いの前に行って、「矢礼ではございますが、今日の役目は、私の父の役目でございましたが、私の親は今日、子を生むと産気づいて来れませんので私が来ました。」と言ってので、「男が子を生むことがあるか。」と言ったので、「雄鶏も子を生むことがあるでしょうか。」と言ったので、雄鶏の卵はこれでお終い。「それでは、次はいつ三重城を薩摩に持って来るか。」「貴方たちもお分かりのように、沖縄は貧乏国でございます。ですから、それを掬う道具もございませんし、乗せる船もございません。薩摩からこれを乗せる船と道具と竿を作ってきて下さい。私が薩摩に運んで行きますから。」「それでは灰で縄をなってきたか。」「なってきました。」「どれ、ここに見せてごらん。」藁をなってこれを焼いたら縄だから藁の灰はそのまま残るよ。それを、「はい、差し上げましょう。」と出したので立派になわれておると言うんだ。薩摩からの使いの人は帰って行って、「全部、その案は解かれてしまいました。」と、殿様に報告すると、「その人間を見たい。連れて来い。」と言うので、「さあ、貴方は、この船に乗って薩摩の御主加那志前(うすがなしーめー)の所に来い。」と言うので、「もう殺されるだろうなあ。」と沖縄では騒動しているわけだが、そうしたら、モーイは、「なあに大丈夫だよ。」と言って行ったら、「あんたか、あの間題を解いたのは。」「はい、私でございます。」「それはよくやってくれた。何でもいいから貴方の望みをただひとつ言いなさい。叶えてあげよう。」「ほんとに叶えてくれますか。」と言うと、「叶えてあげる。あんたがほしいものじゃったらなんでも遠慮なくいいなさい。」と。「じゃあ、そんな大きい王様のお言葉だから間違いないでしょうね。」「間違いない。」「じゃ、ただひとつのお願いがあります。」「何か。」と。「一日でいいから、あんたのそこに私を座らせて、薩摩王にして下さい。」と。何でもいいといったもんだから、薩摩王はやむをえず一日薩摩王に座るこを許すと、王様だから、「琉球処分に関する書類を全部持って来て焼きなさい。」と沖縄をいじめる書類全部焼かせて、それを焼いたら、「はい、今すぐ沖縄に船を出しなさい。」と沖縄に船を出させたというんだ。それで沖縄の税金がいくらか軽くなったという、そんな伝説がある。
| レコード番号 | 47O412369 |
|---|---|
| CD番号 | 47O41C091 |
| 決定題名 | モーイ親方(シマグチ混) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 兼城孝栄 |
| 話者名かな | かねしろこうえい |
| 生年月日 | 19160315 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 石川市石川 |
| 記録日 | 19820613 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石川市T08A06 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | - |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | モーイ親方,勉強,三司官,薩摩,三重城,雄鶏の卵,灰縄,産気,船と道具,薩摩の御主加那志前,間題を解いた,薩摩王,沖縄の税金 |
| 梗概(こうがい) | モーイ親方の生い立ちというのはねえ、昔は今も時代劇にあるように寺小屋というのがあって、学問は坊さんが全部教えておった。だから、友達としては、「このモーイのカンターという人は、一緒に勉強すると、もしかすると私達より優れた者になるだろう。あの人を勉強させないようにするには、どうしたらいいのだろうか。」と思っていたので、自分は早く行って勉強してしまって、友達が来る時分は道中(みちなか)で遊んでおって、「どうして学校へ行って勉強習って何になるか、さあ、今日は鰻取りして遊んでこよう。」とほかの友達も遊び仲間に引っこんでしまうわけ。自分はすでに前に勉強してきて、自分は三日勉強するのに、二日はやつら遊ばしてしまったり、自分は三日も勉強してもやつらには一日しか勉強させないという策をとっておったらしいんだなあ。それが、もうやがて成人になろうという時に、そのモーイのお父さんは三司官じゃったらしいね。今の国務大臣とか、ほら大臣がおるさあねえ、琉球では、そういう大臣を三司宮と言って、表(うむてぃ)三司官という言葉があるんだ。この三司官が決めて王様に伝言して政治を行なったという。で、その時に薩摩から、「三重城(みぐしく)を掬ってこい。また、必ず雄鶏の卵も入れなさい。もうひとつはかまどの灰で縄をなって、いつまでに持って来なさい。」という注文が期限つけてあったが、「この三つの間題解けなかったら、琉球を薩摩からやる。」と言うことで使いが出たらしいんだ。で、お父さん家に帰ってから思案さあねえ。モーイは、「どうしたんですか、何を心配していらっしゃるのですか、まず教えて下さい。」と言っても、お父さんは、「私達でさえも分からないのに、お前達に分かるものではない。貴方たちは勉強しておけばいい。」と言って、毎日、そんなにしていらっしゃるので、「ねえ、お父さん、しまいには病気になってしまいますよ。言ってみなければ誰が分かるか分からないでしょう。だからまず言ってみて下さい。親の心配事は子供の心配事でもあるし、お父さんが心配して私が心配しないというわけはないのですから、まず話してみて下さい。」と言ったので、「実は、こういうわけだ。」「そうしたら、それはいつですか。」「もうあさってが期限である。」と。「心配しないで下さい。私が引き受けましょう。」と言って、そのモーイのカンターは薩摩の使いの前に行って、「矢礼ではございますが、今日の役目は、私の父の役目でございましたが、私の親は今日、子を生むと産気づいて来れませんので私が来ました。」と言ってので、「男が子を生むことがあるか。」と言ったので、「雄鶏も子を生むことがあるでしょうか。」と言ったので、雄鶏の卵はこれでお終い。「それでは、次はいつ三重城を薩摩に持って来るか。」「貴方たちもお分かりのように、沖縄は貧乏国でございます。ですから、それを掬う道具もございませんし、乗せる船もございません。薩摩からこれを乗せる船と道具と竿を作ってきて下さい。私が薩摩に運んで行きますから。」「それでは灰で縄をなってきたか。」「なってきました。」「どれ、ここに見せてごらん。」藁をなってこれを焼いたら縄だから藁の灰はそのまま残るよ。それを、「はい、差し上げましょう。」と出したので立派になわれておると言うんだ。薩摩からの使いの人は帰って行って、「全部、その案は解かれてしまいました。」と、殿様に報告すると、「その人間を見たい。連れて来い。」と言うので、「さあ、貴方は、この船に乗って薩摩の御主加那志前(うすがなしーめー)の所に来い。」と言うので、「もう殺されるだろうなあ。」と沖縄では騒動しているわけだが、そうしたら、モーイは、「なあに大丈夫だよ。」と言って行ったら、「あんたか、あの間題を解いたのは。」「はい、私でございます。」「それはよくやってくれた。何でもいいから貴方の望みをただひとつ言いなさい。叶えてあげよう。」「ほんとに叶えてくれますか。」と言うと、「叶えてあげる。あんたがほしいものじゃったらなんでも遠慮なくいいなさい。」と。「じゃあ、そんな大きい王様のお言葉だから間違いないでしょうね。」「間違いない。」「じゃ、ただひとつのお願いがあります。」「何か。」と。「一日でいいから、あんたのそこに私を座らせて、薩摩王にして下さい。」と。何でもいいといったもんだから、薩摩王はやむをえず一日薩摩王に座るこを許すと、王様だから、「琉球処分に関する書類を全部持って来て焼きなさい。」と沖縄をいじめる書類全部焼かせて、それを焼いたら、「はい、今すぐ沖縄に船を出しなさい。」と沖縄に船を出させたというんだ。それで沖縄の税金がいくらか軽くなったという、そんな伝説がある。 |
| 全体の記録時間数 | 7:01 |
| 物語の時間数 | 7:01 |
| 言語識別 | 混在 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |