
うちの母が生きておる頃よく聞いた話だがね。家の近くの森でね、今でもよく、朝、鳩(はーとぅ)が鳴くよね。昔はコーボートゥといってね、青い鳩がおったさあね。あれがよく鳴きよったんだ。そったら、うちの母は、「あれは、シンネーボージャーがうむいふきとーん。」といいよった。うむいというのは、・おもろね、それをふきとーん〔さえずる〕といっていた。「そのシンネンボージャーっていうのは何かあ。」といって、私が聞いたらね、この話をしよったんだ。昔ね、伊波の部落によ、シンネーボージャーといってね、大泥棒(おおどろぼー)がいたそうだよね。それで部落の人が、こいつは捕らえて打ち殺してやらねばならんといってね、やったもんだから、そのシンネンボージャーは、ずうっと山原に逃げて行ってしまったんだ。ところが、何カ年か経ってねシンネンボージャーは帰ってきたんだ。帰ってきたら、もう部落の人が知ったものだから、今度こそ捕えて打ち殺さねばならんといってね、やったもんだからよ、シンネーボージャーは、昔の友だちがいたさあね、その家へ駆け込んで行って、助けてくれといって、裏座(くちゃ)に隠れてしまったというんだ。とうとう部落の人は、もうしらみつぶしにね、探すことになったんだね。そうすると、そのシンネーボージャーは、その隠れた家(うち)を飛び出してね、前に大きな竹やぶがあって御願所(うがんじゅ)があった。そこに大きな岩があるがね、その岩陰に隠れてしまって。そうするとね、その最初に逃げ込んだ友だちの家(うち)の人が、友だちだけどもねそれが見つけたんだよね。まあ、それを告げんと、自分が危ないと思ったんだろうね。そいで、「ここに居る。」といゆうたんだね。友だちの名前はトゥクーという名(なー)だったんだね。なもんだから、シンネーボージャーは、トゥクーを見てね、「お前が告げたなあ。トゥクーどーやー、猫(まやー)どーやー〔トゥクーというやつは、猫のようなやつだなあ〕。」といゆうたそうだがね。そうして、そこに部落の人、みんな寄ってきて、とうとう取り囲んで、取り押えたさあね。そして縄をかけて、まあ、そこでもさんざんたたいたんだろうね。縄でくくりつけて十字路(あじまー)という、部落の真ん中まで引っ張って行って、そこで、さんざんに懲(こ)らしめて、半死半生(はんしはんしょう)の状態にまでしたんだね。それから、「もうこれで死んでおるから、みんなで引っ張って行こう。」といってね、縄をかけてよ、部落中の人が、男も女も総出で引っ張ったんだがね。あの時、「この縄を持たんのは、縄を引っ張らん者は、村八分(むらばれー)する。」といってね。いうたもんだから、部落の人々は全部かかって、こう、ずうっと引っ張って行ったんだね。あの石ころ道をコロコロコロ。そうすると、もう夕方になり暮れかかっておったんだろうね。松明(たいまつ)をつけて、そうしたら、いろいろいたずらをするさあね。股座(またぐら)に松明を差し込んだりして、まあ残酷なやり方をして。そうして、伊波城址の西側にね、ボンボンぐわー洞窟(がま)といってほら穴があるがよ、そこまで引っ張って行ってよ、投げ込んだというんだね。しかし、投げ込むまでも、本当はまだ生きていたという話があるんだね。ところが、その時よ、ある一軒だけはね、それに加わらなかったという。なぜかというと、その家(うち)は浜下(はまう)りしていたんだ。浜下(はまう)りがあるでしょう、浜下(はまう)りしていたために、その家は縄を引くのに参加しなかったんだね。そうするとシンネーボージャーは、「僕を引っ張った人々の家(うち)は衰えて、それから、僕を引かなかった家(うち)は大いに栄えなさい。」といよったというんだね。そったら、参加しなかった家はね、代々よく栄えて今日(こんにち)に至っておると、そういう話がある。
| レコード番号 | 47O412290 |
|---|---|
| CD番号 | 47O41C088 |
| 決定題名 | シンニンボージャー(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 伊波信光 |
| 話者名かな | いはしんこう |
| 生年月日 | 19010221 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 石川市伊波 |
| 記録日 | 19820314 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石川市T05A02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | いしかわの民話伝説編P140 |
| キーワード | シンニンボージャー,石川市伊波,伊波信光(1901・明治34年2月21日生) 鳩,コーボートゥ,青い鳩,シンネーボージャー,伊波の部落,大泥棒,トゥクー,ほら穴 |
| 梗概(こうがい) | うちの母が生きておる頃よく聞いた話だがね。家の近くの森でね、今でもよく、朝、鳩(はーとぅ)が鳴くよね。昔はコーボートゥといってね、青い鳩がおったさあね。あれがよく鳴きよったんだ。そったら、うちの母は、「あれは、シンネーボージャーがうむいふきとーん。」といいよった。うむいというのは、・おもろね、それをふきとーん〔さえずる〕といっていた。「そのシンネンボージャーっていうのは何かあ。」といって、私が聞いたらね、この話をしよったんだ。昔ね、伊波の部落によ、シンネーボージャーといってね、大泥棒(おおどろぼー)がいたそうだよね。それで部落の人が、こいつは捕らえて打ち殺してやらねばならんといってね、やったもんだから、そのシンネンボージャーは、ずうっと山原に逃げて行ってしまったんだ。ところが、何カ年か経ってねシンネンボージャーは帰ってきたんだ。帰ってきたら、もう部落の人が知ったものだから、今度こそ捕えて打ち殺さねばならんといってね、やったもんだからよ、シンネーボージャーは、昔の友だちがいたさあね、その家へ駆け込んで行って、助けてくれといって、裏座(くちゃ)に隠れてしまったというんだ。とうとう部落の人は、もうしらみつぶしにね、探すことになったんだね。そうすると、そのシンネーボージャーは、その隠れた家(うち)を飛び出してね、前に大きな竹やぶがあって御願所(うがんじゅ)があった。そこに大きな岩があるがね、その岩陰に隠れてしまって。そうするとね、その最初に逃げ込んだ友だちの家(うち)の人が、友だちだけどもねそれが見つけたんだよね。まあ、それを告げんと、自分が危ないと思ったんだろうね。そいで、「ここに居る。」といゆうたんだね。友だちの名前はトゥクーという名(なー)だったんだね。なもんだから、シンネーボージャーは、トゥクーを見てね、「お前が告げたなあ。トゥクーどーやー、猫(まやー)どーやー〔トゥクーというやつは、猫のようなやつだなあ〕。」といゆうたそうだがね。そうして、そこに部落の人、みんな寄ってきて、とうとう取り囲んで、取り押えたさあね。そして縄をかけて、まあ、そこでもさんざんたたいたんだろうね。縄でくくりつけて十字路(あじまー)という、部落の真ん中まで引っ張って行って、そこで、さんざんに懲(こ)らしめて、半死半生(はんしはんしょう)の状態にまでしたんだね。それから、「もうこれで死んでおるから、みんなで引っ張って行こう。」といってね、縄をかけてよ、部落中の人が、男も女も総出で引っ張ったんだがね。あの時、「この縄を持たんのは、縄を引っ張らん者は、村八分(むらばれー)する。」といってね。いうたもんだから、部落の人々は全部かかって、こう、ずうっと引っ張って行ったんだね。あの石ころ道をコロコロコロ。そうすると、もう夕方になり暮れかかっておったんだろうね。松明(たいまつ)をつけて、そうしたら、いろいろいたずらをするさあね。股座(またぐら)に松明を差し込んだりして、まあ残酷なやり方をして。そうして、伊波城址の西側にね、ボンボンぐわー洞窟(がま)といってほら穴があるがよ、そこまで引っ張って行ってよ、投げ込んだというんだね。しかし、投げ込むまでも、本当はまだ生きていたという話があるんだね。ところが、その時よ、ある一軒だけはね、それに加わらなかったという。なぜかというと、その家(うち)は浜下(はまう)りしていたんだ。浜下(はまう)りがあるでしょう、浜下(はまう)りしていたために、その家は縄を引くのに参加しなかったんだね。そうするとシンネーボージャーは、「僕を引っ張った人々の家(うち)は衰えて、それから、僕を引かなかった家(うち)は大いに栄えなさい。」といよったというんだね。そったら、参加しなかった家はね、代々よく栄えて今日(こんにち)に至っておると、そういう話がある。 |
| 全体の記録時間数 | 6:18 |
| 物語の時間数 | 6:10 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |