
唐旅したサムレー(士族)が、狐に化けたきれいな女に誘惑された。そのことを妻が分かって、狐は犬を怖がるというので、それを背負って行ってみると、やはり思ったとおり、洞穴の中に夫もいたって。それで、「あなたをお迎えに来ましたよ。」と言うと、狐は、「私の夫であって、おまえの夫ではない。私はね、この里之子と一緒になってから長いことになるよ。去年からなんだよ。」と言ったので、妻は、「おまえは去年からで、私は七、八年になるんだよ。」と言って、狐は負けたって。そうしたら、狐は、「この里之子を私にくれるのであれば、あなたにこの四角い枡をあげよう。これは儲けようと思って、この角を振ると儲ける。また、この角を振ると長命できる。また、この角は自分の思いどおりになる。この角はおまえが憎い者が死ねばと思えば死ぬ。」と言った。すると、「私はおまえが憎いのでおまえは死ね。」と言ったが、狐は死ななかった。このようにして妻に負けてしまい、妻が夫を連れて行こうとした。そうしたら、その狐が、「私は身重になっているよ。私は妊娠しているがこの子はどうするの。」と言ったから、夫は扇を投げて、「その子が身の丈ほどに成長したらこの扇をあげなさい、これは私の扇だから、どこでも私の扇であると分かるから。」と言って渡した。そのサムレー(士族)はとても身分や家柄のいい人なので、狐にその扇を渡したわけ。そうしているうちに、狐の子は成長してから、扇を持って首里にやって来た。来たところで指南役といって、若按司に武勇や学問を教える役調べがあった。また、沖縄に帰って来て妻との間にできた子はカマレーという名であるが、カマレーは、とても強者であった。また、カマレーの相手は悪者であった。これと武勇させてみたらしい、そうしたら、そのカマレー(神山の嫡子)が勝ったが、立ち上がったところをうしろから思いきり押し倒された。相手は、「私が勝っているのだ。」と叫び、ブシの魂というのはそういうものだと言って、自分が勝っていると言い張ったので、カマレーは指南役の勝負に負けてしまった。そこへ、二十になった狐の子が扇を持ってターリーを捜しに来ていた。そこでは、指南役の勝負をしているところだったので、「私にも、勝負をさせてください。」と言ったが、相手の親の湧川はさせたくない。自分の子が勝っていたから、「だめだ、だめだ、もう勝負はしない。」と言っていやがった。しまいには、御主加那志前が、「させなさい。誰が強いのか分からないから、国のためには強い者がいいのだから勝負をさせてみなさい。」と言って、勝負をさせてみた。湧川の子は狐の子にまったく太刀打ちできない。湧川の子は勝負に負けたので、「おまえは、どこから来たか。」と聞いた。狐の子は扇を出して、「暑い。」と言って扇いだ。カマレーの親はそれを見つめて、その子に名をたずねると、「私には名はありません。この扇の主が私の親です。」と言った。そうしたら、カマレーの親は扇を見て、「これは、私の扇であるが…。」と言うと、「それなら、あなたは私のターリー(お父さん)です。私のアヤー(お母さん)が、『この扇の主がおまえの父親だから、捜しなさい』と、行かせてくれました。」と言った。それで、その子が指南役になった。そうしたら、ターリーが、嫡子のカマレーに、「むこうは、おまえのヤッチー(兄)だよ。」と言い、狐の子の兄には、「これは、おまえの弟のカマレーだよ。」と言った。「私にとっては、これは弟のカマレー。カマレーにとって、私は兄にあたる。」と、いつまでもそのようにしているわけだよ。
| レコード番号 | 47O422094 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C064 |
| 決定題名 | 狐女房 枡の角(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 枡の角で人を叩くな |
| 話者名 | 平川ムダル |
| 話者名かな | ひらかわむだる |
| 生年月日 | 18930211 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 具志川市安慶名 |
| 記録日 | 19800805 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T59 A7 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下97頁 ふるさとの昔ばなし113頁 |
| キーワード | 唐旅,サムレー,狐,枡の角,妻,扇,指南役 |
| 梗概(こうがい) | 唐旅したサムレー(士族)が、狐に化けたきれいな女に誘惑された。そのことを妻が分かって、狐は犬を怖がるというので、それを背負って行ってみると、やはり思ったとおり、洞穴の中に夫もいたって。それで、「あなたをお迎えに来ましたよ。」と言うと、狐は、「私の夫であって、おまえの夫ではない。私はね、この里之子と一緒になってから長いことになるよ。去年からなんだよ。」と言ったので、妻は、「おまえは去年からで、私は七、八年になるんだよ。」と言って、狐は負けたって。そうしたら、狐は、「この里之子を私にくれるのであれば、あなたにこの四角い枡をあげよう。これは儲けようと思って、この角を振ると儲ける。また、この角を振ると長命できる。また、この角は自分の思いどおりになる。この角はおまえが憎い者が死ねばと思えば死ぬ。」と言った。すると、「私はおまえが憎いのでおまえは死ね。」と言ったが、狐は死ななかった。このようにして妻に負けてしまい、妻が夫を連れて行こうとした。そうしたら、その狐が、「私は身重になっているよ。私は妊娠しているがこの子はどうするの。」と言ったから、夫は扇を投げて、「その子が身の丈ほどに成長したらこの扇をあげなさい、これは私の扇だから、どこでも私の扇であると分かるから。」と言って渡した。そのサムレー(士族)はとても身分や家柄のいい人なので、狐にその扇を渡したわけ。そうしているうちに、狐の子は成長してから、扇を持って首里にやって来た。来たところで指南役といって、若按司に武勇や学問を教える役調べがあった。また、沖縄に帰って来て妻との間にできた子はカマレーという名であるが、カマレーは、とても強者であった。また、カマレーの相手は悪者であった。これと武勇させてみたらしい、そうしたら、そのカマレー(神山の嫡子)が勝ったが、立ち上がったところをうしろから思いきり押し倒された。相手は、「私が勝っているのだ。」と叫び、ブシの魂というのはそういうものだと言って、自分が勝っていると言い張ったので、カマレーは指南役の勝負に負けてしまった。そこへ、二十になった狐の子が扇を持ってターリーを捜しに来ていた。そこでは、指南役の勝負をしているところだったので、「私にも、勝負をさせてください。」と言ったが、相手の親の湧川はさせたくない。自分の子が勝っていたから、「だめだ、だめだ、もう勝負はしない。」と言っていやがった。しまいには、御主加那志前が、「させなさい。誰が強いのか分からないから、国のためには強い者がいいのだから勝負をさせてみなさい。」と言って、勝負をさせてみた。湧川の子は狐の子にまったく太刀打ちできない。湧川の子は勝負に負けたので、「おまえは、どこから来たか。」と聞いた。狐の子は扇を出して、「暑い。」と言って扇いだ。カマレーの親はそれを見つめて、その子に名をたずねると、「私には名はありません。この扇の主が私の親です。」と言った。そうしたら、カマレーの親は扇を見て、「これは、私の扇であるが…。」と言うと、「それなら、あなたは私のターリー(お父さん)です。私のアヤー(お母さん)が、『この扇の主がおまえの父親だから、捜しなさい』と、行かせてくれました。」と言った。それで、その子が指南役になった。そうしたら、ターリーが、嫡子のカマレーに、「むこうは、おまえのヤッチー(兄)だよ。」と言い、狐の子の兄には、「これは、おまえの弟のカマレーだよ。」と言った。「私にとっては、これは弟のカマレー。カマレーにとって、私は兄にあたる。」と、いつまでもそのようにしているわけだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 5:05 |
| 物語の時間数 | 5:05 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |