
ええ、キジムナーの話を、ひとつやってみましょう。昔、ヤックヮナー(大ふぐりな人)がいたそうだ。マクマギーだということだね。ちょうど、八月十五夜には、万人が一か所に集まって、月を眺めるのだが、この人は、もう、ふぐりが大きくて、よそには皆と一緒に行けなかった。「今日は、八月十五夜で月眺めの日だから。」と言って、自分の家の前に、ござを持って行って涼もうとしていた。そこに、キジムナーがひょっこり来たようだね。キジムナーが、「おい、今日は一緒に海に漁をしに行こう。」と誘った。そしたら、この人は、「今日は、ほんとは、村の人たちが一か所に揃って月眺めの日だが、私はマクが大きくて歩けないのでここに座っているのに、お前が、『海に行こう』と言っても歩けないよ。」と言った。キジムナーは、「それなら、そのマクを私が持つなら行くか。」と言ったので、「ああ、お前が持つなら行くよ。」と言い、キジムナーと大ふぐりな人は、漁に行ったそうだ。そうして、海に入るときになって、「魚は、私がたくさん取ってあげるので、海の中では、屁はへるなよ。」とキジムナーが言った。キジムナーは屁を恐がるらしいよ。屁はへるなよということなのに、ウネ、ンチャ、いいあんばいに魚を取っていたら、すっかり忘れて、屁をパーとへってしまった。すると、このキジムナーは、すっとんでどこに行ってしまったのか分からなくなってしまった。しかたないので、この人は魚を担いで家に帰って来た。翌朝、魚をこしらえて食べようとすると、隣の大ふぐりな人が来て、「どうして、お前は、今日はこんなに早く起きているのか。」と聞いた。「昨夜、私は宝を逃がしてしまったよ。」「何だ、その宝というのは。」「ほら、私のマクはなくなっているさ。」「どうして、なくなったのか。」「お前もわかるように、昨夜は、八月十五夜で月眺めの日でしょう。」「そうだな。」「皆は、あの岳に登って月を眺めるが、私は向こうまで歩けないので、家の前にござを持って行って、涼もうとしたら、ウネ、そこに、キジムナーが来て『一緒に、漁に行かないか』と、誘ったので、私は、漁には行けないよ。マクが大きくて、歩くことができないから、今日は、一人でここにいるんだよ。そうでなければ、あの岳に登って、皆と一緒に月を眺めるのだが。」と言ったら、「じゃあ、おれがそのマクを持てば行くか。」と言ったから、「お前が、マクを持つなら行くさ。」とキジムナーに言ったわけ。そうしたら、「『それなら、私が持とう。どれ』と、マクを持ち上げられたら、私は軽くなって行くことができたさあ。」と言われ、行ったわけ。「そして、行ってどうなったか。」「アギジャビヨー、海に入るときに、『海の中で、屁はへるなよ』と言われていたのに、海に入ると同時に魚が取れて、私にどんどん持たせるし、それに、マクもなくなっているので、すっかり忘れて屁をへってしまったよ。そしたらこのキジムナーは、どに行ったのか吹っ飛んでしまっていない。それで、私はこのまま家に帰ってきたわけだよ。今、魚を煮て食べようとしているところだよ。ほら、お前も、食べろ。」と言って、魚を食べさせた。そしたら、「ああ、お前の言う宝は、それだったのか。」と言ったら、「ああ、宝を逃がしてしまったよ。」「それでは、今日は私が、お前の家の門の方にござを持って行って涼もう。そうすれば、また、来るかな。」「それは、どうかな。」と、言ったようだね。そうして、この隣の大ふぐりな人が、ござを敷いて涼もうとしていると、キジムナーが来て、「屁はへるなと言ったのに、お前は屁をへって私をびっくりさせたな。お前のマクはとっても重かったよ、ほれ、返す。」と言って、隣の人は代わりに二つくっつけられて、よけいに大きくなったって。だから、人の真似はするなというのは、そういうことだよ。
| レコード番号 | 47O421802 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C056 |
| 決定題名 | キジムナー(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | キジムナーとヤックワナー |
| 話者名 | 古謝振裕 |
| 話者名かな | こじゃしんゆう |
| 生年月日 | 19080605 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市西原 |
| 記録日 | 19800801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T50 B6 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻上764頁 通観416頁 ふるさとの昔ばなし13頁 |
| キーワード | キジムナー,ヤックワン,8月15夜,月見,ゴザ,屁,魚,海,宝,マク, |
| 梗概(こうがい) | ええ、キジムナーの話を、ひとつやってみましょう。昔、ヤックヮナー(大ふぐりな人)がいたそうだ。マクマギーだということだね。ちょうど、八月十五夜には、万人が一か所に集まって、月を眺めるのだが、この人は、もう、ふぐりが大きくて、よそには皆と一緒に行けなかった。「今日は、八月十五夜で月眺めの日だから。」と言って、自分の家の前に、ござを持って行って涼もうとしていた。そこに、キジムナーがひょっこり来たようだね。キジムナーが、「おい、今日は一緒に海に漁をしに行こう。」と誘った。そしたら、この人は、「今日は、ほんとは、村の人たちが一か所に揃って月眺めの日だが、私はマクが大きくて歩けないのでここに座っているのに、お前が、『海に行こう』と言っても歩けないよ。」と言った。キジムナーは、「それなら、そのマクを私が持つなら行くか。」と言ったので、「ああ、お前が持つなら行くよ。」と言い、キジムナーと大ふぐりな人は、漁に行ったそうだ。そうして、海に入るときになって、「魚は、私がたくさん取ってあげるので、海の中では、屁はへるなよ。」とキジムナーが言った。キジムナーは屁を恐がるらしいよ。屁はへるなよということなのに、ウネ、ンチャ、いいあんばいに魚を取っていたら、すっかり忘れて、屁をパーとへってしまった。すると、このキジムナーは、すっとんでどこに行ってしまったのか分からなくなってしまった。しかたないので、この人は魚を担いで家に帰って来た。翌朝、魚をこしらえて食べようとすると、隣の大ふぐりな人が来て、「どうして、お前は、今日はこんなに早く起きているのか。」と聞いた。「昨夜、私は宝を逃がしてしまったよ。」「何だ、その宝というのは。」「ほら、私のマクはなくなっているさ。」「どうして、なくなったのか。」「お前もわかるように、昨夜は、八月十五夜で月眺めの日でしょう。」「そうだな。」「皆は、あの岳に登って月を眺めるが、私は向こうまで歩けないので、家の前にござを持って行って、涼もうとしたら、ウネ、そこに、キジムナーが来て『一緒に、漁に行かないか』と、誘ったので、私は、漁には行けないよ。マクが大きくて、歩くことができないから、今日は、一人でここにいるんだよ。そうでなければ、あの岳に登って、皆と一緒に月を眺めるのだが。」と言ったら、「じゃあ、おれがそのマクを持てば行くか。」と言ったから、「お前が、マクを持つなら行くさ。」とキジムナーに言ったわけ。そうしたら、「『それなら、私が持とう。どれ』と、マクを持ち上げられたら、私は軽くなって行くことができたさあ。」と言われ、行ったわけ。「そして、行ってどうなったか。」「アギジャビヨー、海に入るときに、『海の中で、屁はへるなよ』と言われていたのに、海に入ると同時に魚が取れて、私にどんどん持たせるし、それに、マクもなくなっているので、すっかり忘れて屁をへってしまったよ。そしたらこのキジムナーは、どに行ったのか吹っ飛んでしまっていない。それで、私はこのまま家に帰ってきたわけだよ。今、魚を煮て食べようとしているところだよ。ほら、お前も、食べろ。」と言って、魚を食べさせた。そしたら、「ああ、お前の言う宝は、それだったのか。」と言ったら、「ああ、宝を逃がしてしまったよ。」「それでは、今日は私が、お前の家の門の方にござを持って行って涼もう。そうすれば、また、来るかな。」「それは、どうかな。」と、言ったようだね。そうして、この隣の大ふぐりな人が、ござを敷いて涼もうとしていると、キジムナーが来て、「屁はへるなと言ったのに、お前は屁をへって私をびっくりさせたな。お前のマクはとっても重かったよ、ほれ、返す。」と言って、隣の人は代わりに二つくっつけられて、よけいに大きくなったって。だから、人の真似はするなというのは、そういうことだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 4:05 |
| 物語の時間数 | 4:05 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |