
昔は、カマンタというものがあったでしょう。カマンタは大きな鍋の蓋だよ。こんなふうに作ってあるの。昔、古くなってよれよれになったカマンタは、藪の中に捨てていたよ。自分らが小さいころは。それで、そのカマンタの下にこもっているアカマターは、人を騙すと言われていた。そのアカマターは、カマンタの中で成長したわけさ。そうして、人に化けてきれいな男になって、きれいな女を騙したわけさ。そうしたら、その騙されている女は、まちがいなく人間だと信じているわけ。ところが、隣に百歳近くなられるお婆さんがおられて、毎日のようにその男が通って来るのを分かっているわけ。お婆さんには、アカマターになって見えるのだが、本人には分からないわけ。それで、「おい、おまえたちのところに通って来る男を、本当の人間だと考えているのか。」と言ったら、「何ですか、お婆さんは何のことをおっしゃっているのですか。」と返答したので、「あれは、本当の人間ではないよ。」とおっしゃったらしいね。そうして、その女は不思議に思って、「どうして、本当の人間だからこそ、家に入って来るのであって、そうでなければ入っては来ないのではないですか。私たちは結婚するつもりでおりますよ。」と言ったって。そうしたら、お婆さんは、「そうならね、その男が来て、おまえと会ってから帰るときに、針に長い糸をつけて男の鼻頭に立てて行かせなさい。」とおっしゃったらしい。それでも、娘はやるかやるまいかととても迷いに迷っていたというが、「お年寄りは神であられるというから、神のおっしゃることは守らなければならない。」と言って、針に長い糸を通して、それを鼻頭に立てて帰したところ、カマンタの下に入って行ったって。その女はびっくり仰天して、「お婆さん、あなたがおっしゃったのは本当ですよ。」と言ったって。「何が。」と言ったら、「ちょっと、いらしてみて下さい。」と言って、お婆さんにお目にかけたらしいね、その女が。そうしたら、「おまえは、そのままにしていると命とりになるから、三月三日には浜下りしなさいよ。」とおっしゃったらしい。「それで、浜下りするとどうなりますか。」と言ったら、「ともかく、私の言うことを聞きなさい。」と言われ、浜下りしたらしいね。そしたら籠いっぱい子を産んであったって。アカマターの子を。そうして、その娘の命を救ってね。そのお婆さんは神だと、朝も晩も神だと信じていたって。そのような話をなさっていた。その道理からカマンターは地面には置くな、木に下げろと。そのカマンタが古くなると、かならず木に下げていたって。カマンタの下に育つアカマターは、物の精を食って人に化けるって、普通のアカマターは化けないってよ。カマンタの下で育つアカマターはね、人を騙したって。昔話だよ、その話を聞いた。本当なのか嘘なのかは私には分らないよ。
| レコード番号 | 47O421708 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C053 |
| 決定題名 | 蛇婿入り |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 渡口カナ |
| 話者名かな | とぐちかな |
| 生年月日 | 19080814 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 具志川市米原 |
| 記録日 | 19800804 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T48 A11 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下75頁 |
| キーワード | カマンタ,アカマタ,針,糸,浜下り,三月三日, |
| 梗概(こうがい) | 昔は、カマンタというものがあったでしょう。カマンタは大きな鍋の蓋だよ。こんなふうに作ってあるの。昔、古くなってよれよれになったカマンタは、藪の中に捨てていたよ。自分らが小さいころは。それで、そのカマンタの下にこもっているアカマターは、人を騙すと言われていた。そのアカマターは、カマンタの中で成長したわけさ。そうして、人に化けてきれいな男になって、きれいな女を騙したわけさ。そうしたら、その騙されている女は、まちがいなく人間だと信じているわけ。ところが、隣に百歳近くなられるお婆さんがおられて、毎日のようにその男が通って来るのを分かっているわけ。お婆さんには、アカマターになって見えるのだが、本人には分からないわけ。それで、「おい、おまえたちのところに通って来る男を、本当の人間だと考えているのか。」と言ったら、「何ですか、お婆さんは何のことをおっしゃっているのですか。」と返答したので、「あれは、本当の人間ではないよ。」とおっしゃったらしいね。そうして、その女は不思議に思って、「どうして、本当の人間だからこそ、家に入って来るのであって、そうでなければ入っては来ないのではないですか。私たちは結婚するつもりでおりますよ。」と言ったって。そうしたら、お婆さんは、「そうならね、その男が来て、おまえと会ってから帰るときに、針に長い糸をつけて男の鼻頭に立てて行かせなさい。」とおっしゃったらしい。それでも、娘はやるかやるまいかととても迷いに迷っていたというが、「お年寄りは神であられるというから、神のおっしゃることは守らなければならない。」と言って、針に長い糸を通して、それを鼻頭に立てて帰したところ、カマンタの下に入って行ったって。その女はびっくり仰天して、「お婆さん、あなたがおっしゃったのは本当ですよ。」と言ったって。「何が。」と言ったら、「ちょっと、いらしてみて下さい。」と言って、お婆さんにお目にかけたらしいね、その女が。そうしたら、「おまえは、そのままにしていると命とりになるから、三月三日には浜下りしなさいよ。」とおっしゃったらしい。「それで、浜下りするとどうなりますか。」と言ったら、「ともかく、私の言うことを聞きなさい。」と言われ、浜下りしたらしいね。そしたら籠いっぱい子を産んであったって。アカマターの子を。そうして、その娘の命を救ってね。そのお婆さんは神だと、朝も晩も神だと信じていたって。そのような話をなさっていた。その道理からカマンターは地面には置くな、木に下げろと。そのカマンタが古くなると、かならず木に下げていたって。カマンタの下に育つアカマターは、物の精を食って人に化けるって、普通のアカマターは化けないってよ。カマンタの下で育つアカマターはね、人を騙したって。昔話だよ、その話を聞いた。本当なのか嘘なのかは私には分らないよ。 |
| 全体の記録時間数 | 4:50 |
| 物語の時間数 | 4:50 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |