
始めは、雪の降る時期に、継子は、「クーイユ(鯉)を取ってこい。」と継親に言いつけられた。お父さんが病気なので、クーイユを取ってきて食べさせないと治らない、と言っているわけだね。継子は、親の言うことを聞かないといけないといって、隣の坊主の家に行って、「このように言いつけられているが、どうしたらそのクーイユを取ることができるかなあ。」と聞いたら、「それなら、おまえ、クーイユのいるところが分かるんだったら、その上で仰向けになって寝ていなさい。氷が溶けて穴があくから、そのときには、手を入れて取りなさい。」と言って、坊主が教えたから、「そうですか。」と言って、坊主が教えた通りにすると、氷が溶けたので手を入れて取れたそうだよ、クーイユは。一匹取ったわけだ。そうして、持って行って食べさせようとした。これは継母が継子を雪冷えさせて殺そうとしていたわけだが、死ななかった。今度は、継親は、継子にチンガー(井戸)を掘らせ、掘っている最中に石を落として、殺そうと考えたんだね。それで、チンガー掘ることになったわけだ。そうして、チンガーを掘り終えそうになったので、またも坊主の家に行って、「私は親からチンガーを掘りなさいと言いつけられているが、どうしたらよいでしょうか。」と言って、坊主に教えを乞うたら、坊主は、「そうであるなら、おまえの親は、落とし穴を掘らせておまえを殺そうとしているから、横穴を掘って逃げ道を作ってから、完成したと言いなさい。」と言った。そして、横穴を掘って完成した日に、継母は、人に頼んで石を落とさせようと、そこに持ってきて置いてあったそうだ。やはり、石を落として継子を殺すつもりだからね。そこで、継子は横穴にはいりこんでいたから、落としたところで、死なない。横穴から逃げて、坊主の家に行ったようだ。坊主が、「おまえの親は、おまえを殺そうとしたことがはっきり分かったから、私がシチトゥバという馬を与えるからそれに乗って、マンサージを巻いて馬が行くまま山奥へ行きなさい。」と言われたので、継子は、「分かりました。」と言って、馬に乗って行った。山奥には、金持ちの家が一軒あったそうだよ。お金持ちだったから、四人の下男を使っていたそうだね。今は、下男というのはいないけど、昔は下男がいた。その下男というのは、月十円借りる間は何年間も使われているわけよ。(十円の代金の利息で、元はきれることなく、利息だけで使われていたそうだよ)このような者が四人いたそうだね。そこで、「私も使ってくださいませんか。」と言ったら、それは、下男ではないでしょう、お金は借りないで、使われるだけだから。それで、その金持ちの家は、その人と五人になったわけだ。その人はいつも物を食べるときには、親が入ってきて殺すかもしれないと思い、灰を被っていたそうだ。ヘーバーになっていたわけだね。みんなで、ヘーバー、ヘーバーと呼んでいたという話。いつ捜し出されて、殺されるかも知れないと、灰を被っていたら分からないだろうと、親に分からないよにしていたわけだ。ところが、これは、昔の王様の子どもだそうだよ。それで、私も使ってくれませんかと言ったから、「はい、使ってもよい。」と、そこが、「本当に使ってよい。」と言ったから、一緒になって、五人になっているわけよ。それで、ヘーバーはいつも草を刈りて、家畜を飼うように言いつけられていた。自分が乗ってきた馬は、そこの家のそばに洞窟があったそうで、そこにつないでおき、そこに入って行き、いつも、自分の馬はいちばん先に草を刈りてきて喰わせてから、また、主人の家畜の分は刈りてきたという話だね。こうして、自分の馬と一緒に、常日頃、飼って、そこの仕事をしているわけだね。そのうちに、八月十五夜になって、シシトゥーバという馬に乗りマンサージを巻いた人が出るいう噂話が出ていたわけ。十五夜に走らせるそうだと言って、みんなでその馬を見に行こうと準備していた。そうして、「おい、ヘーバー、おまえは行かないのか。」と言ったら、「いやいや、私は行かない。」と。みんながいる間は、いつも灰を被っていたって。みんなは着替えてから、その馬を見にと出かけているが、そのシシトゥーバに乗るのはヘーバーなんだが、そいつらには分からないわけよ。それで、灰を被っているヘーバーは、みんなが家から出たから、自分は急いで川で浴びて、洞窟から着物も出してりっぱに装い、マンサージを巻いてシシトゥーバに乗って行ったようだ。家の人たちより先にウマナー(馬場)に着き、馬を走らせていたそうだね。そうして、「ほら、シシトゥバという馬が走っているよ。」と、家族は大変喜んだ。「このヘーバーは、シシトゥバに乗っているのも見逃してね。」などと言って、笑ったようだね。「私には、そんなことまではあたらないですよ。」と言って、自分のことなんだが知らないふりをして。そうして、ヘーバーは、先に家に帰って灰を被っていたから、分からないわけよ。それを、二階から娘が見ていたそうだね。ヘーバーが馬を走らせるのも、家から出ていくのも、洞窟から出して、毎日、草を喰わすのも、浴びせたりするのを見ていたようだね。それで、ヘーバーが普通の人ではないことを、娘は認めていたわけだ。そうして、ヘーバーの妻になりたいとの思いがあった。娘は、親に願っているわけよ。「この家族の中に私の夫となる人がいるから、私がまりを投げるから、その人が私の夫。」と言ったから、「おまえは、自分が使っている者を夫にするのか。」と言うと、「する。」と言ったわけだ。親としては夫にはさせないと言っても、娘が夫にするわけだから仕方ないからとさせたようだね。そうして、四人の下男、いや五人だが。四人は一人一人出したが、全然まりは投げなかったので、「珍しいなあ、私たち四人のうちの一人にまりを投げると思うのだけど。」と言って、その四人は話したようだが、「仕方がない、ヘーバー、試しに行ってみなさい、おまえに投げるかも知れないから。」と言ったから、ヘーバーは、「私はヘーバーだから、私に投げるはずはないよ。」と言ったって。そうして、ヘーバーが出たからまりを投げたそうだよ。出たがらなかったから、みんなで手をつかまえて引きずり出したら、ヘーバーに投げてあったという話。それから、ヘーバーがここで儲けてあるお金を持って、また、そこの主人が家を造ってくれ、お店をさせてね、そのように夫婦で暮らした。女の親(継母)は、捜してきていたという話だよ、物乞いになってからね。夫が死んでしまったから物乞いになって落ちぶれたようだね。子どもを捜すと落ちぶれているが、ヘーバーの妻は心もりっぱであったって。夫は他の物乞いが来たら、少しずつしかお金をあげないが、それ(継母)が来たら多く与えたので、妻は、なにが意味があると思い夫に聞いた。「ねえ、あなたはその人が来たら多く物を与えて、別の人が来たら少ししか与えないが、なにか意味があるのでしょう、わけを聞かしてくれないか。」と言ったから、そのときになって、自分の親(継母)だと言ったそうだ。「親に捜し出されて殺されるかも知れないと、私はいつも灰を被ってヘーバーになっていたんだよ。」と言っていた。それで終わり。
| レコード番号 | 47O421469 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C045 |
| 決定題名 | 灰坊(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | ヘーバーの話 |
| 話者名 | 稲福蒲太 |
| 話者名かな | いなふくかまた |
| 生年月日 | 18971010 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市兼箇段 |
| 記録日 | 19800809 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川T42 A11 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下385頁 通観537頁 |
| キーワード | 継子,雪,鯉,病気,坊主,クーイユ,氷,チンガー,馬,灰坊,まり,乞食 |
| 梗概(こうがい) | 始めは、雪の降る時期に、継子は、「クーイユ(鯉)を取ってこい。」と継親に言いつけられた。お父さんが病気なので、クーイユを取ってきて食べさせないと治らない、と言っているわけだね。継子は、親の言うことを聞かないといけないといって、隣の坊主の家に行って、「このように言いつけられているが、どうしたらそのクーイユを取ることができるかなあ。」と聞いたら、「それなら、おまえ、クーイユのいるところが分かるんだったら、その上で仰向けになって寝ていなさい。氷が溶けて穴があくから、そのときには、手を入れて取りなさい。」と言って、坊主が教えたから、「そうですか。」と言って、坊主が教えた通りにすると、氷が溶けたので手を入れて取れたそうだよ、クーイユは。一匹取ったわけだ。そうして、持って行って食べさせようとした。これは継母が継子を雪冷えさせて殺そうとしていたわけだが、死ななかった。今度は、継親は、継子にチンガー(井戸)を掘らせ、掘っている最中に石を落として、殺そうと考えたんだね。それで、チンガー掘ることになったわけだ。そうして、チンガーを掘り終えそうになったので、またも坊主の家に行って、「私は親からチンガーを掘りなさいと言いつけられているが、どうしたらよいでしょうか。」と言って、坊主に教えを乞うたら、坊主は、「そうであるなら、おまえの親は、落とし穴を掘らせておまえを殺そうとしているから、横穴を掘って逃げ道を作ってから、完成したと言いなさい。」と言った。そして、横穴を掘って完成した日に、継母は、人に頼んで石を落とさせようと、そこに持ってきて置いてあったそうだ。やはり、石を落として継子を殺すつもりだからね。そこで、継子は横穴にはいりこんでいたから、落としたところで、死なない。横穴から逃げて、坊主の家に行ったようだ。坊主が、「おまえの親は、おまえを殺そうとしたことがはっきり分かったから、私がシチトゥバという馬を与えるからそれに乗って、マンサージを巻いて馬が行くまま山奥へ行きなさい。」と言われたので、継子は、「分かりました。」と言って、馬に乗って行った。山奥には、金持ちの家が一軒あったそうだよ。お金持ちだったから、四人の下男を使っていたそうだね。今は、下男というのはいないけど、昔は下男がいた。その下男というのは、月十円借りる間は何年間も使われているわけよ。(十円の代金の利息で、元はきれることなく、利息だけで使われていたそうだよ)このような者が四人いたそうだね。そこで、「私も使ってくださいませんか。」と言ったら、それは、下男ではないでしょう、お金は借りないで、使われるだけだから。それで、その金持ちの家は、その人と五人になったわけだ。その人はいつも物を食べるときには、親が入ってきて殺すかもしれないと思い、灰を被っていたそうだ。ヘーバーになっていたわけだね。みんなで、ヘーバー、ヘーバーと呼んでいたという話。いつ捜し出されて、殺されるかも知れないと、灰を被っていたら分からないだろうと、親に分からないよにしていたわけだ。ところが、これは、昔の王様の子どもだそうだよ。それで、私も使ってくれませんかと言ったから、「はい、使ってもよい。」と、そこが、「本当に使ってよい。」と言ったから、一緒になって、五人になっているわけよ。それで、ヘーバーはいつも草を刈りて、家畜を飼うように言いつけられていた。自分が乗ってきた馬は、そこの家のそばに洞窟があったそうで、そこにつないでおき、そこに入って行き、いつも、自分の馬はいちばん先に草を刈りてきて喰わせてから、また、主人の家畜の分は刈りてきたという話だね。こうして、自分の馬と一緒に、常日頃、飼って、そこの仕事をしているわけだね。そのうちに、八月十五夜になって、シシトゥーバという馬に乗りマンサージを巻いた人が出るいう噂話が出ていたわけ。十五夜に走らせるそうだと言って、みんなでその馬を見に行こうと準備していた。そうして、「おい、ヘーバー、おまえは行かないのか。」と言ったら、「いやいや、私は行かない。」と。みんながいる間は、いつも灰を被っていたって。みんなは着替えてから、その馬を見にと出かけているが、そのシシトゥーバに乗るのはヘーバーなんだが、そいつらには分からないわけよ。それで、灰を被っているヘーバーは、みんなが家から出たから、自分は急いで川で浴びて、洞窟から着物も出してりっぱに装い、マンサージを巻いてシシトゥーバに乗って行ったようだ。家の人たちより先にウマナー(馬場)に着き、馬を走らせていたそうだね。そうして、「ほら、シシトゥバという馬が走っているよ。」と、家族は大変喜んだ。「このヘーバーは、シシトゥバに乗っているのも見逃してね。」などと言って、笑ったようだね。「私には、そんなことまではあたらないですよ。」と言って、自分のことなんだが知らないふりをして。そうして、ヘーバーは、先に家に帰って灰を被っていたから、分からないわけよ。それを、二階から娘が見ていたそうだね。ヘーバーが馬を走らせるのも、家から出ていくのも、洞窟から出して、毎日、草を喰わすのも、浴びせたりするのを見ていたようだね。それで、ヘーバーが普通の人ではないことを、娘は認めていたわけだ。そうして、ヘーバーの妻になりたいとの思いがあった。娘は、親に願っているわけよ。「この家族の中に私の夫となる人がいるから、私がまりを投げるから、その人が私の夫。」と言ったから、「おまえは、自分が使っている者を夫にするのか。」と言うと、「する。」と言ったわけだ。親としては夫にはさせないと言っても、娘が夫にするわけだから仕方ないからとさせたようだね。そうして、四人の下男、いや五人だが。四人は一人一人出したが、全然まりは投げなかったので、「珍しいなあ、私たち四人のうちの一人にまりを投げると思うのだけど。」と言って、その四人は話したようだが、「仕方がない、ヘーバー、試しに行ってみなさい、おまえに投げるかも知れないから。」と言ったから、ヘーバーは、「私はヘーバーだから、私に投げるはずはないよ。」と言ったって。そうして、ヘーバーが出たからまりを投げたそうだよ。出たがらなかったから、みんなで手をつかまえて引きずり出したら、ヘーバーに投げてあったという話。それから、ヘーバーがここで儲けてあるお金を持って、また、そこの主人が家を造ってくれ、お店をさせてね、そのように夫婦で暮らした。女の親(継母)は、捜してきていたという話だよ、物乞いになってからね。夫が死んでしまったから物乞いになって落ちぶれたようだね。子どもを捜すと落ちぶれているが、ヘーバーの妻は心もりっぱであったって。夫は他の物乞いが来たら、少しずつしかお金をあげないが、それ(継母)が来たら多く与えたので、妻は、なにが意味があると思い夫に聞いた。「ねえ、あなたはその人が来たら多く物を与えて、別の人が来たら少ししか与えないが、なにか意味があるのでしょう、わけを聞かしてくれないか。」と言ったから、そのときになって、自分の親(継母)だと言ったそうだ。「親に捜し出されて殺されるかも知れないと、私はいつも灰を被ってヘーバーになっていたんだよ。」と言っていた。それで終わり。 |
| 全体の記録時間数 | 9:23 |
| 物語の時間数 | 9:23 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |