
昔、近所に泥棒がいたらしいのだが、それの話を一つ申しあげます。隣近所なので、捕まえることもできないし、とてももてあましていたが、ちょうど大晦日の夜、家畜小屋にその泥棒が隠れるのを、主人が見て、「今日もまた、盗みをしに来たな。」と。そこで、夕飯を食べ終わったところで、下男たちをみんな上座に集めて、「おまえたちは、どうして私がこんなに金持ちになったと思うか。」と聞いたら、「一生懸命働いたので、金持ちになられたのではないでしょうか。」と言った。「そうではない。私はもっぱら泥棒をして金持ちになったんだよ。」と言った。下男たちが、「それで、あなたは、こんなに盗んで金持ちになるまで、一回も捕まえられないで、どうして盗みをなさったのですか。」と聞いたから、「泥棒はやりようがあれば、絶対捕まることはない。おまえたちに、そのことを教えてあげるとしよう。」と、わざと大声を出して、泥棒に聞かせる考えで、牛小屋に泥棒が隠れるのを見ているので。そうして、「台所で、芋の皮をこねる臼に、自分の着ている着物も脱いで着せて、褌もはずして掛けて、帽子も被っているなら帽子も被せて、そうして、その拍子に盗みをすると、絶対分からない。どんなに盗みをしても、誰にも捕まらないよ。」と言った。すると、泥棒はそれを聞いていたらしいのである。泥棒に、聞かそうということだから、それから、「さあもう、みんな夕飯も食べたし寝ようか。」と言って、みんなは寝てしまった。すぐ、泥棒は入って来て、〔台所の臼に〕着物を脱いで着せて、褌もはずして掛けて、帽子も被せた。その拍子に主人が、「泥棒だあ。」って叫んだら、フリチンになって逃げてしまった、裸になっているさあね、泥棒は。そうしたら、翌朝、みんなに、「夕べ、私が話したのは、実は、私は働いて儲けたのであって、泥棒をして儲けたわけではないんだよ。しかし、夕べは牛小屋に泥棒が入るのを見たもんだから、その泥棒に聞かせようと思って話たのであって、ほら、台所の臼を見てご覧。」と言ったら、もう、着物を着て、帯もしめて褌も掛けて、帽子も被っているでしょう。だから、その盗人は近所だもんだから、顔も見せない。そのときから、すっかり直っていたって。「ああ、私が盗みをするのを以前から分かっていたんだなあ。」と。
| レコード番号 | 47O420986 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C031 |
| 決定題名 | 盗人と臼(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 盗人の話 |
| 話者名 | 幸喜得英 |
| 話者名かな | こうきとくえい |
| 生年月日 | 19120120 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市西原 |
| 記録日 | 19800801 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T29 A8 |
| 元テープ管理者 | 伝承話資料センター |
| 分類 | 13 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下675頁 |
| キーワード | 泥棒,大歳,盗人,臼,着物,ふんどし,帽子, |
| 梗概(こうがい) | 昔、近所に泥棒がいたらしいのだが、それの話を一つ申しあげます。隣近所なので、捕まえることもできないし、とてももてあましていたが、ちょうど大晦日の夜、家畜小屋にその泥棒が隠れるのを、主人が見て、「今日もまた、盗みをしに来たな。」と。そこで、夕飯を食べ終わったところで、下男たちをみんな上座に集めて、「おまえたちは、どうして私がこんなに金持ちになったと思うか。」と聞いたら、「一生懸命働いたので、金持ちになられたのではないでしょうか。」と言った。「そうではない。私はもっぱら泥棒をして金持ちになったんだよ。」と言った。下男たちが、「それで、あなたは、こんなに盗んで金持ちになるまで、一回も捕まえられないで、どうして盗みをなさったのですか。」と聞いたから、「泥棒はやりようがあれば、絶対捕まることはない。おまえたちに、そのことを教えてあげるとしよう。」と、わざと大声を出して、泥棒に聞かせる考えで、牛小屋に泥棒が隠れるのを見ているので。そうして、「台所で、芋の皮をこねる臼に、自分の着ている着物も脱いで着せて、褌もはずして掛けて、帽子も被っているなら帽子も被せて、そうして、その拍子に盗みをすると、絶対分からない。どんなに盗みをしても、誰にも捕まらないよ。」と言った。すると、泥棒はそれを聞いていたらしいのである。泥棒に、聞かそうということだから、それから、「さあもう、みんな夕飯も食べたし寝ようか。」と言って、みんなは寝てしまった。すぐ、泥棒は入って来て、〔台所の臼に〕着物を脱いで着せて、褌もはずして掛けて、帽子も被せた。その拍子に主人が、「泥棒だあ。」って叫んだら、フリチンになって逃げてしまった、裸になっているさあね、泥棒は。そうしたら、翌朝、みんなに、「夕べ、私が話したのは、実は、私は働いて儲けたのであって、泥棒をして儲けたわけではないんだよ。しかし、夕べは牛小屋に泥棒が入るのを見たもんだから、その泥棒に聞かせようと思って話たのであって、ほら、台所の臼を見てご覧。」と言ったら、もう、着物を着て、帯もしめて褌も掛けて、帽子も被っているでしょう。だから、その盗人は近所だもんだから、顔も見せない。そのときから、すっかり直っていたって。「ああ、私が盗みをするのを以前から分かっていたんだなあ。」と。 |
| 全体の記録時間数 | 2:03 |
| 物語の時間数 | 2:03 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |