
内地で、ある上様がいた。上様は三人の側人を使われていたって。三人のうちから、一人を選んでお側人になることになっていたって。三人のうち二人は兄弟であるわけ。一人は百合若といって、大武士でもあるし何でも上様の意に適って、お側人に上がるのは百合若と決まっていたって。「百合若ができるのであって、私たち兄弟二人ではとてもできない。武士でもないし、百合若には敵わないから。」と言って、二人ともいやがったらしい。そうしたら、ある日、仲間の兄弟は、船頭をだきこみ金もたくさん与えて、どうするかを考えたわけ。そうして、百合若に、「さあ、今日は暇でもあるし、花木などもたくさんあって、とても珍しい小さな国があるというから、遊びながら見てきましょう。」と言って連れ出した。百合若は、仲間がたくらみがあるとは思わないで、「そうしようか。」と言って、三人でヨイヨイ船頭も一緒に行ったらしい。その島から、珍しい物を見て舟に戻ったら、船頭とほかの二人が相談ができているとも知らずに、百合若はゆったりとしていた。帰りながら百合若に、「さあ、百合若さん、家へのお土産を持って行くものがないから、今度は、あの無人島に行って、くだものやらなにか珍しいものを取ってきて、上様にお土産を持って行きましょうね。」と、一人が言ったら、「それはいい考えだ。そうしよう。」と、無人島に行ったらしい、いろんなものを取るために。その無人島は海の真ん中であるって。そうしたら、船頭とほかの二人が相談ができているとは思ってないから、百合若も珍しいものやくだものを捜そうと、遠くに行ったらしい。何ということか、百合若に帰ろうとも言わない。百合若を無人島に置き去りにする考えだから。けんかをしようとしても勝てない。何をやっても百合若には敵わないので、あとは知恵を出して、百合若も殺す考えをしたわけだ。「これを生かしておいたのでは、私たちの位は上がらない。」と言って。兄弟二人で相談して、百合若がお土産になるものを捜しに行っているすきに、船頭も一緒に舟に乗って自分たちは戻って行った。百合若が、無人島で置き去りにされているとは知らないので、百合若の妻は、「うちの主人はどこに行ったの、どうして連れてこなかったの。」と、帰ってきた二人の仲間に聞いた。すると、「百合若が武士だということを分かったのか、戦船に追われて、二、三十人に囲まれ、戦っている間に私たちは逃げてきた。百合若のことは諦めて位牌も作って崇めた方がいいよ。」と言った。そうしたら、「どうして、あなたたちは、何をしにうちの主人まで連れて行って、そんな戦をさせたのか。」と聞いたから、「私たちは戦に行ったのではない。島へ行って、いろんな楽しみをしようとしたのだが、どこからか戦船がやって来て、二、三十人ぐらいに追われて、おまえの夫は武士だということが知れて、あれが戦っている間に、私たちはようやく逃げてきたんだ。」と言った。そう言われて、妻は納得した。そうして、百合若は、一緒に来た二人を捜してもいないさあ、帰ってしまっているのだから。百合若は、四年間も無人島に置き去りにされた。四年間のうち、夏はまる裸になって過ごした。着けている着物を大事にしておかないと、ぼろになってなくなってしまう。そうして冬になると、いつも火にあたったりして、着物は大事にしておいた。四年の間、髭ものびほうだいにのび、髪も長くなってユルユルして、着物も乞食の着物のようになってしまった。しかし、その無人島のそばを通る船はなかったって。ある日、マグロとか何とかの大きな魚を取る船が、島から見えたので、このときとばかりに、百合若は、「助けてくれー。」と、こっちだよと手招きをしながら助けを求めた。泣き叫んだから、髪もとても長くたらしているものだから、女に見えたのか、「女か男か分からないが、あんなに叫ぶのに、今日は魚は取らなくてもいいから、あの女を助けてこよう、きっと何ごとかあるようだぞ。さあ、この船を無人島に着けてみよう。」と言って、その漁船を島に着けた。「どうしたのですか、あなたは、男なのか、女なのか。」と聞いたら、「私は、男であるが仲間に騙された。私は、上様に使われていた百合若という者だが、仲間に騙されて、無人島に置き去りにされ、このなりになっている。どうか向こうまで私を連れて行ってくれ。」と言ったので、「それだけのことならよろしいです。さあ、この人をお連れしよう。」と、百合若は漁船に助けられて、帰った。そうして、百合若は、わざわざ、上様の家に行った。そこでは、「おまえはどこから来たか、おまえはギンジャヤー(乞食)なのか。物乞いなのか。どこから来たか。」などと言われた。百合若とはまったく分からないわけ。ほら、髭もこんなに長く生えているのだから。ぜんぜん、百合若とは分からない。「私は物乞いではありません。ただ歩きながら、人の家の掃除をしています。どうかここの掃除人をさせてください。ここの家には入らなくてもいいですから。」と言ったら、「そこまでいうなら、掃除人をさせなさい。」と言って、上様の家の掃除人になった。知らんふりして、そこで拭き掃除をしたり何したりして、決して百合若とは言わないでいた。ある日のこと、上様の側人で、無人島に百合若をおきざりにした兄弟二人が、「今日は、暇だから、弁当を使用人に支度させて、野原で遊んでこよう。」「そうしよう。」「あのギンジャヤーみたいな者も連れて行こう。」「いやいや、その者も連れて行くのか。」「それじゃあ、おまえも行くかと聞いてごらん。」と言って、「おい、今日は、おまえも一緒に野原に遊びに行かないか。」と誘った。「はい、いいですよ。私も連れて行って下さい。」と言った。みな、百合若とは思ってないのだから。すると、百合若が使ってある弓が上様の座のあたりに立ててあった。「あの弓も持てください。」と言ったら、誘った二人は、「あははっ。」と笑って、「おまえは何とでも言うな、おまえがあの弓を持って行くというのか。」と言った。また、「はい、あの弓も持ってください。」と言った。「おまえは、何だってあの弓までも持てと。あれはどのような武士が使った弓と思っているのだ。おまえは、その弓まで持って行くというのか。」「はい、私が持ちますから。」「何、おまえにあの弓が持てるというのか。」「あなた方は遊びにいらっしゃるのに、弓なども持って行って、松を射ったりするのが楽しみじゃないですか。」「それもそうだな。おまえが持つなら、持たせてみよう。」と言われ、しかし、とても重いらしく、「これを持つというのか、どんなに重い弓だから、おまえがこれを持つというのか。」「はい、私が持ちます。」「それじゃあ、持ってみなさい。」と持たした。自分が使っていた弓だから、百合若にとってはなんでもない。そうして、野原で松を射ったりして、大いに遊んだ。その兄弟二人と一緒に。この兄弟は、きれいな着物を着て、大威張りしていた。そうして、野原に行って松を射ったりしていると、百合若が、「おまえたちは、あの松の木を弓で射ることができるか。」と二人に聞いた。「できるさ、射ってみようか。」と言うと、「それじゃあ、射ってみろ。」と。射りはしたが、二人は当てることはできなかった。「あとで、この者たちを射り殺してやろう。」と、百合若は二人にやられたことを思って、殺す考えをしていた。やがて家に帰ろうというときに、「おまえたち、今度は向こうの松の葉を射ってみろよ。」と、二人に言ったって。「私たちに、射ることができるはずないじゃないか。」と言ったので、「では、私が射ってみよう。」と言った。「ちゃんちゃらおかしいことだ。おまえがあの松を射るとな。おまえね、これは何という武士が使っていた道具だから、おまえがこの弓を持って、松を射るというのか。」と言ったが、「どれ、私が射ってみよう。」「ほう、おまえは、何という武士がこの弓を使ったのか分かっているのか。」「いや、分からん。これは何という武士が使ったのか。」「これは、百合若というたいそうな武士が使ったものだよ。」と。自分のことであるのだが、そうしたら、「誰が使われたものであってもいいさ。どれ、私が射ってみよう。」と言って、一回目は松をパチっと射ると当たった。「何と珍しいこともあるものだな、このギンジャヤーは的をあてるのも上手だな。」などと言った。そうして、「もう一回には二人を射り殺してやろう。」と言って、そして、「今度は、川の向こうの松を射るから、二人並んで立って、あれを見ていてくれないか。」と言った。二人を並べ、向こうの方を見つめさせていたわけさ。そうして、すぐ弓でパチといっきょに二人を倒した。すると、一緒にいた女中などは、あわてふためき、「ハキサミヨーナー、もう一大事になった。」と騒いでいた。そうして、その弓は自分でを持って、百合若は、「さあ、家に帰ろう。」と、みなを連れて帰った。上様の前に行き、「お元気ですか。」と言ったら、「何だ、おまえはどこのギンジャヤーか、そこには入るな。」と怒ったが、「私は百合若です。」と言った。上様は目を丸くなされ、そのときになって、「おまえは生きていたのか。おまえは死んだといって、あいつらは戻ってきたが、生きていたんだね、本当におまえは百合若だね。」と。「私は百合若です。」と言って、「そうか、そうか、おまえは百合若だったのか。」「はい。」と。「本当なんだな。」「あの弓は私の物です。」「そうか、それじゃあ、おまえが私のお側人だ。あいつらは。」と聞いたので、「私が射殺しました。あいつらにやられたことが憎くて、私も死ぬ思いをしたものだから。私は無人島で殺されるところを生きて帰ってきましたが、奴らを生かしておけないと。上様はあいつらを射殺したことを、心苦しくお思いですか。私はどうなってもよろしいです。私は、奴らにされたことをどうしても許すことはできなかったのです。」と言ったら、「ああ、良くやった。あいつらはこれくらいのことはやらないといけない。」と言って許してくれた。それから、上様も喜ばれて、散髪屋を連れてきて百合若の散髪をさせ、着物も着替えさせ髭も剃らせると、元の百合若にもどった。そうして、百合若は、またお側人になったって。そういう話も聞いた。内地で、ある上様がいた。上様は三人の側人を使われていたって。三人のうちから、一人を選んでお側人になることになっていたって。三人のうち二人は兄弟であるわけ。一人は百合若といって、大武士でもあるし何でも上様の意に適って、お側人に上がるのは百合若と決まっていたって。「百合若ができるのであって、私たち兄弟二人ではとてもできない。武士でもないし、百合若には敵わないから。」と言って、二人ともいやがったらしい。そうしたら、ある日、仲間の兄弟は、船頭をだきこみ金もたくさん与えて、どうするかを考えたわけ。そうして、百合若に、「さあ、今日は暇でもあるし、花木などもたくさんあって、とても珍しい小さな国があるというから、遊びながら見てきましょう。」と言って連れ出した。百合若は、仲間がたくらみがあるとは思わないで、「そうしようか。」と言って、三人でヨイヨイ船頭も一緒に行ったらしい。その島から、珍しい物を見て舟に戻ったら、船頭とほかの二人が相談ができているとも知らずに、百合若はゆったりとしていた。帰りながら百合若に、「さあ、百合若さん、家へのお土産を持って行くものがないから、今度は、あの無人島に行って、くだものやらなにか珍しいものを取ってきて、上様にお土産を持って行きましょうね。」と、一人が言ったら、「それはいい考えだ。そうしよう。」と、無人島に行ったらしい、いろんなものを取るために。その無人島は海の真ん中であるって。そうしたら、船頭とほかの二人が相談ができているとは思ってないから、百合若も珍しいものやくだものを捜そうと、遠くに行ったらしい。何ということか、百合若に帰ろうとも言わない。百合若を無人島に置き去りにする考えだから。けんかをしようとしても勝てない。何をやっても百合若には敵わないので、あとは知恵を出して、百合若も殺す考えをしたわけだ。「これを生かしておいたのでは、私たちの位は上がらない。」と言って。兄弟二人で相談して、百合若がお土産になるものを捜しに行っているすきに、船頭も一緒に舟に乗って自分たちは戻って行った。百合若が、無人島で置き去りにされているとは知らないので、百合若の妻は、「うちの主人はどこに行ったの、どうして連れてこなかったの。」と、帰ってきた二人の仲間に聞いた。すると、「百合若が武士だということを分かったのか、戦船に追われて、二、三十人に囲まれ、戦っている間に私たちは逃げてきた。百合若のことは諦めて位牌も作って崇めた方がいいよ。」と言った。そうしたら、「どうして、あなたたちは、何をしにうちの主人まで連れて行って、そんな戦をさせたのか。」と聞いたから、「私たちは戦に行ったのではない。島へ行って、いろんな楽しみをしようとしたのだが、どこからか戦船がやって来て、二、三十人ぐらいに追われて、おまえの夫は武士だということが知れて、あれが戦っている間に、私たちはようやく逃げてきたんだ。」と言った。そう言われて、妻は納得した。そうして、百合若は、一緒に来た二人を捜してもいないさあ、帰ってしまっているのだから。百合若は、四年間も無人島に置き去りにされた。四年間のうち、夏はまる裸になって過ごした。着けている着物を大事にしておかないと、ぼろになってなくなってしまう。そうして冬になると、いつも火にあたったりして、着物は大事にしておいた。四年の間、髭ものびほうだいにのび、髪も長くなってユルユルして、着物も乞食の着物のようになってしまった。しかし、その無人島のそばを通る船はなかったって。ある日、マグロとか何とかの大きな魚を取る船が、島から見えたので、このときとばかりに、百合若は、「助けてくれー。」と、こっちだよと手招きをしながら助けを求めた。泣き叫んだから、髪もとても長くたらしているものだから、女に見えたのか、「女か男か分からないが、あんなに叫ぶのに、今日は魚は取らなくてもいいから、あの女を助けてこよう、きっと何ごとかあるようだぞ。さあ、この船を無人島に着けてみよう。」と言って、その漁船を島に着けた。「どうしたのですか、あなたは、男なのか、女なのか。」と聞いたら、「私は、男であるが仲間に騙された。私は、上様に使われていた百合若という者だが、仲間に騙されて、無人島に置き去りにされ、このなりになっている。どうか向こうまで私を連れて行ってくれ。」と言ったので、「それだけのことならよろしいです。さあ、この人をお連れしよう。」と、百合若は漁船に助けられて、帰った。そうして、百合若は、わざわざ、上様の家に行った。そこでは、「おまえはどこから来たか、おまえはギンジャヤー(乞食)なのか。物乞いなのか。どこから来たか。」などと言われた。百合若とはまったく分からないわけ。ほら、髭もこんなに長く生えているのだから。ぜんぜん、百合若とは分からない。「私は物乞いではありません。ただ歩きながら、人の家の掃除をしています。どうかここの掃除人をさせてください。ここの家には入らなくてもいいですから。」と言ったら、「そこまでいうなら、掃除人をさせなさい。」と言って、上様の家の掃除人になった。知らんふりして、そこで拭き掃除をしたり何したりして、決して百合若とは言わないでいた。ある日のこと、上様の側人で、無人島に百合若をおきざりにした兄弟二人が、「今日は、暇だから、弁当を使用人に支度させて、野原で遊んでこよう。」「そうしよう。」「あのギンジャヤーみたいな者も連れて行こう。」「いやいや、その者も連れて行くのか。」「それじゃあ、おまえも行くかと聞いてごらん。」と言って、「おい、今日は、おまえも一緒に野原に遊びに行かないか。」と誘った。「はい、いいですよ。私も連れて行って下さい。」と言った。みな、百合若とは思ってないのだから。すると、百合若が使ってある弓が上様の座のあたりに立ててあった。「あの弓も持てください。」と言ったら、誘った二人は、「あははっ。」と笑って、「おまえは何とでも言うな、おまえがあの弓を持って行くというのか。」と言った。また、「はい、あの弓も持ってください。」と言った。「おまえは、何だってあの弓までも持てと。あれはどのような武士が使った弓と思っているのだ。おまえは、その弓まで持って行くというのか。」「はい、私が持ちますから。」「何、おまえにあの弓が持てるというのか。」「あなた方は遊びにいらっしゃるのに、弓なども持って行って、松を射ったりするのが楽しみじゃないですか。」「それもそうだな。おまえが持つなら、持たせてみよう。」と言われ、しかし、とても重いらしく、「これを持つというのか、どんなに重い弓だから、おまえがこれを持つというのか。」「はい、私が持ちます。」「それじゃあ、持ってみなさい。」と持たした。自分が使っていた弓だから、百合若にとってはなんでもない。そうして、野原で松を射ったりして、大いに遊んだ。その兄弟二人と一緒に。この兄弟は、きれいな着物を着て、大威張りしていた。そうして、野原に行って松を射ったりしていると、百合若が、「おまえたちは、あの松の木を弓で射ることができるか。」と二人に聞いた。「できるさ、射ってみようか。」と言うと、「それじゃあ、射ってみろ。」と。射りはしたが、二人は当てることはできなかった。「あとで、この者たちを射り殺してやろう。」と、百合若は二人にやられたことを思って、殺す考えをしていた。やがて家に帰ろうというときに、「おまえたち、今度は向こうの松の葉を射ってみろよ。」と、二人に言ったって。「私たちに、射ることができるはずないじゃないか。」と言ったので、「では、私が射ってみよう。」と言った。「ちゃんちゃらおかしいことだ。おまえがあの松を射るとな。おまえね、これは何という武士が使っていた道具だから、おまえがこの弓を持って、松を射るというのか。」と言ったが、「どれ、私が射ってみよう。」「ほう、おまえは、何という武士がこの弓を使ったのか分かっているのか。」「いや、分からん。これは何という武士が使ったのか。」「これは、百合若というたいそうな武士が使ったものだよ。」と。自分のことであるのだが、そうしたら、「誰が使われたものであってもいいさ。どれ、私が射ってみよう。」と言って、一回目は松をパチっと射ると当たった。「何と珍しいこともあるものだな、このギンジャヤーは的をあてるのも上手だな。」などと言った。そうして、「もう一回には二人を射り殺してやろう。」と言って、そして、「今度は、川の向こうの松を射るから、二人並んで立って、あれを見ていてくれないか。」と言った。二人を並べ、向こうの方を見つめさせていたわけさ。そうして、すぐ弓でパチといっきょに二人を倒した。すると、一緒にいた女中などは、あわてふためき、「ハキサミヨーナー、もう一大事になった。」と騒いでいた。そうして、その弓は自分でを持って、百合若は、「さあ、家に帰ろう。」と、みなを連れて帰った。上様の前に行き、「お元気ですか。」と言ったら、「何だ、おまえはどこのギンジャヤーか、そこには入るな。」と怒ったが、「私は百合若です。」と言った。上様は目を丸くなされ、そのときになって、「おまえは生きていたのか。おまえは死んだといって、あいつらは戻ってきたが、生きていたんだね、本当におまえは百合若だね。」と。「私は百合若です。」と言って、「そうか、そうか、おまえは百合若だったのか。」「はい。」と。「本当なんだな。」「あの弓は私の物です。」「そうか、それじゃあ、おまえが私のお側人だ。あいつらは。」と聞いたので、「私が射殺しました。あいつらにやられたことが憎くて、私も死ぬ思いをしたものだから。私は無人島で殺されるところを生きて帰ってきましたが、奴らを生かしておけないと。上様はあいつらを射殺したことを、心苦しくお思いですか。私はどうなってもよろしいです。私は、奴らにされたことをどうしても許すことはできなかったのです。」と言ったら、「ああ、良くやった。あいつらはこれくらいのことはやらないといけない。」と言って許してくれた。それから、上様も喜ばれて、散髪屋を連れてきて百合若の散髪をさせ、着物も着替えさせ髭も剃らせると、元の百合若にもどった。そうして、百合若は、またお側人になったって。そういう話も聞いた。
| レコード番号 | 47O420972 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C030 |
| 決定題名 | 百合若大臣(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 大和のブシの話 |
| 話者名 | 目取真ウト |
| 話者名かな | めどえうまうと |
| 生年月日 | 18900804 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 具志川市田場 |
| 記録日 | 19800809 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T28 B2 |
| 元テープ管理者 | 伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下309頁 具志川市の民話ふるさとの昔ばなし132頁 通観430頁 |
| キーワード | 百合若大臣,ブシ,船頭,無人島,野遊び,弓, |
| 梗概(こうがい) | 内地で、ある上様がいた。上様は三人の側人を使われていたって。三人のうちから、一人を選んでお側人になることになっていたって。三人のうち二人は兄弟であるわけ。一人は百合若といって、大武士でもあるし何でも上様の意に適って、お側人に上がるのは百合若と決まっていたって。「百合若ができるのであって、私たち兄弟二人ではとてもできない。武士でもないし、百合若には敵わないから。」と言って、二人ともいやがったらしい。そうしたら、ある日、仲間の兄弟は、船頭をだきこみ金もたくさん与えて、どうするかを考えたわけ。そうして、百合若に、「さあ、今日は暇でもあるし、花木などもたくさんあって、とても珍しい小さな国があるというから、遊びながら見てきましょう。」と言って連れ出した。百合若は、仲間がたくらみがあるとは思わないで、「そうしようか。」と言って、三人でヨイヨイ船頭も一緒に行ったらしい。その島から、珍しい物を見て舟に戻ったら、船頭とほかの二人が相談ができているとも知らずに、百合若はゆったりとしていた。帰りながら百合若に、「さあ、百合若さん、家へのお土産を持って行くものがないから、今度は、あの無人島に行って、くだものやらなにか珍しいものを取ってきて、上様にお土産を持って行きましょうね。」と、一人が言ったら、「それはいい考えだ。そうしよう。」と、無人島に行ったらしい、いろんなものを取るために。その無人島は海の真ん中であるって。そうしたら、船頭とほかの二人が相談ができているとは思ってないから、百合若も珍しいものやくだものを捜そうと、遠くに行ったらしい。何ということか、百合若に帰ろうとも言わない。百合若を無人島に置き去りにする考えだから。けんかをしようとしても勝てない。何をやっても百合若には敵わないので、あとは知恵を出して、百合若も殺す考えをしたわけだ。「これを生かしておいたのでは、私たちの位は上がらない。」と言って。兄弟二人で相談して、百合若がお土産になるものを捜しに行っているすきに、船頭も一緒に舟に乗って自分たちは戻って行った。百合若が、無人島で置き去りにされているとは知らないので、百合若の妻は、「うちの主人はどこに行ったの、どうして連れてこなかったの。」と、帰ってきた二人の仲間に聞いた。すると、「百合若が武士だということを分かったのか、戦船に追われて、二、三十人に囲まれ、戦っている間に私たちは逃げてきた。百合若のことは諦めて位牌も作って崇めた方がいいよ。」と言った。そうしたら、「どうして、あなたたちは、何をしにうちの主人まで連れて行って、そんな戦をさせたのか。」と聞いたから、「私たちは戦に行ったのではない。島へ行って、いろんな楽しみをしようとしたのだが、どこからか戦船がやって来て、二、三十人ぐらいに追われて、おまえの夫は武士だということが知れて、あれが戦っている間に、私たちはようやく逃げてきたんだ。」と言った。そう言われて、妻は納得した。そうして、百合若は、一緒に来た二人を捜してもいないさあ、帰ってしまっているのだから。百合若は、四年間も無人島に置き去りにされた。四年間のうち、夏はまる裸になって過ごした。着けている着物を大事にしておかないと、ぼろになってなくなってしまう。そうして冬になると、いつも火にあたったりして、着物は大事にしておいた。四年の間、髭ものびほうだいにのび、髪も長くなってユルユルして、着物も乞食の着物のようになってしまった。しかし、その無人島のそばを通る船はなかったって。ある日、マグロとか何とかの大きな魚を取る船が、島から見えたので、このときとばかりに、百合若は、「助けてくれー。」と、こっちだよと手招きをしながら助けを求めた。泣き叫んだから、髪もとても長くたらしているものだから、女に見えたのか、「女か男か分からないが、あんなに叫ぶのに、今日は魚は取らなくてもいいから、あの女を助けてこよう、きっと何ごとかあるようだぞ。さあ、この船を無人島に着けてみよう。」と言って、その漁船を島に着けた。「どうしたのですか、あなたは、男なのか、女なのか。」と聞いたら、「私は、男であるが仲間に騙された。私は、上様に使われていた百合若という者だが、仲間に騙されて、無人島に置き去りにされ、このなりになっている。どうか向こうまで私を連れて行ってくれ。」と言ったので、「それだけのことならよろしいです。さあ、この人をお連れしよう。」と、百合若は漁船に助けられて、帰った。そうして、百合若は、わざわざ、上様の家に行った。そこでは、「おまえはどこから来たか、おまえはギンジャヤー(乞食)なのか。物乞いなのか。どこから来たか。」などと言われた。百合若とはまったく分からないわけ。ほら、髭もこんなに長く生えているのだから。ぜんぜん、百合若とは分からない。「私は物乞いではありません。ただ歩きながら、人の家の掃除をしています。どうかここの掃除人をさせてください。ここの家には入らなくてもいいですから。」と言ったら、「そこまでいうなら、掃除人をさせなさい。」と言って、上様の家の掃除人になった。知らんふりして、そこで拭き掃除をしたり何したりして、決して百合若とは言わないでいた。ある日のこと、上様の側人で、無人島に百合若をおきざりにした兄弟二人が、「今日は、暇だから、弁当を使用人に支度させて、野原で遊んでこよう。」「そうしよう。」「あのギンジャヤーみたいな者も連れて行こう。」「いやいや、その者も連れて行くのか。」「それじゃあ、おまえも行くかと聞いてごらん。」と言って、「おい、今日は、おまえも一緒に野原に遊びに行かないか。」と誘った。「はい、いいですよ。私も連れて行って下さい。」と言った。みな、百合若とは思ってないのだから。すると、百合若が使ってある弓が上様の座のあたりに立ててあった。「あの弓も持てください。」と言ったら、誘った二人は、「あははっ。」と笑って、「おまえは何とでも言うな、おまえがあの弓を持って行くというのか。」と言った。また、「はい、あの弓も持ってください。」と言った。「おまえは、何だってあの弓までも持てと。あれはどのような武士が使った弓と思っているのだ。おまえは、その弓まで持って行くというのか。」「はい、私が持ちますから。」「何、おまえにあの弓が持てるというのか。」「あなた方は遊びにいらっしゃるのに、弓なども持って行って、松を射ったりするのが楽しみじゃないですか。」「それもそうだな。おまえが持つなら、持たせてみよう。」と言われ、しかし、とても重いらしく、「これを持つというのか、どんなに重い弓だから、おまえがこれを持つというのか。」「はい、私が持ちます。」「それじゃあ、持ってみなさい。」と持たした。自分が使っていた弓だから、百合若にとってはなんでもない。そうして、野原で松を射ったりして、大いに遊んだ。その兄弟二人と一緒に。この兄弟は、きれいな着物を着て、大威張りしていた。そうして、野原に行って松を射ったりしていると、百合若が、「おまえたちは、あの松の木を弓で射ることができるか。」と二人に聞いた。「できるさ、射ってみようか。」と言うと、「それじゃあ、射ってみろ。」と。射りはしたが、二人は当てることはできなかった。「あとで、この者たちを射り殺してやろう。」と、百合若は二人にやられたことを思って、殺す考えをしていた。やがて家に帰ろうというときに、「おまえたち、今度は向こうの松の葉を射ってみろよ。」と、二人に言ったって。「私たちに、射ることができるはずないじゃないか。」と言ったので、「では、私が射ってみよう。」と言った。「ちゃんちゃらおかしいことだ。おまえがあの松を射るとな。おまえね、これは何という武士が使っていた道具だから、おまえがこの弓を持って、松を射るというのか。」と言ったが、「どれ、私が射ってみよう。」「ほう、おまえは、何という武士がこの弓を使ったのか分かっているのか。」「いや、分からん。これは何という武士が使ったのか。」「これは、百合若というたいそうな武士が使ったものだよ。」と。自分のことであるのだが、そうしたら、「誰が使われたものであってもいいさ。どれ、私が射ってみよう。」と言って、一回目は松をパチっと射ると当たった。「何と珍しいこともあるものだな、このギンジャヤーは的をあてるのも上手だな。」などと言った。そうして、「もう一回には二人を射り殺してやろう。」と言って、そして、「今度は、川の向こうの松を射るから、二人並んで立って、あれを見ていてくれないか。」と言った。二人を並べ、向こうの方を見つめさせていたわけさ。そうして、すぐ弓でパチといっきょに二人を倒した。すると、一緒にいた女中などは、あわてふためき、「ハキサミヨーナー、もう一大事になった。」と騒いでいた。そうして、その弓は自分でを持って、百合若は、「さあ、家に帰ろう。」と、みなを連れて帰った。上様の前に行き、「お元気ですか。」と言ったら、「何だ、おまえはどこのギンジャヤーか、そこには入るな。」と怒ったが、「私は百合若です。」と言った。上様は目を丸くなされ、そのときになって、「おまえは生きていたのか。おまえは死んだといって、あいつらは戻ってきたが、生きていたんだね、本当におまえは百合若だね。」と。「私は百合若です。」と言って、「そうか、そうか、おまえは百合若だったのか。」「はい。」と。「本当なんだな。」「あの弓は私の物です。」「そうか、それじゃあ、おまえが私のお側人だ。あいつらは。」と聞いたので、「私が射殺しました。あいつらにやられたことが憎くて、私も死ぬ思いをしたものだから。私は無人島で殺されるところを生きて帰ってきましたが、奴らを生かしておけないと。上様はあいつらを射殺したことを、心苦しくお思いですか。私はどうなってもよろしいです。私は、奴らにされたことをどうしても許すことはできなかったのです。」と言ったら、「ああ、良くやった。あいつらはこれくらいのことはやらないといけない。」と言って許してくれた。それから、上様も喜ばれて、散髪屋を連れてきて百合若の散髪をさせ、着物も着替えさせ髭も剃らせると、元の百合若にもどった。そうして、百合若は、またお側人になったって。そういう話も聞いた。内地で、ある上様がいた。上様は三人の側人を使われていたって。三人のうちから、一人を選んでお側人になることになっていたって。三人のうち二人は兄弟であるわけ。一人は百合若といって、大武士でもあるし何でも上様の意に適って、お側人に上がるのは百合若と決まっていたって。「百合若ができるのであって、私たち兄弟二人ではとてもできない。武士でもないし、百合若には敵わないから。」と言って、二人ともいやがったらしい。そうしたら、ある日、仲間の兄弟は、船頭をだきこみ金もたくさん与えて、どうするかを考えたわけ。そうして、百合若に、「さあ、今日は暇でもあるし、花木などもたくさんあって、とても珍しい小さな国があるというから、遊びながら見てきましょう。」と言って連れ出した。百合若は、仲間がたくらみがあるとは思わないで、「そうしようか。」と言って、三人でヨイヨイ船頭も一緒に行ったらしい。その島から、珍しい物を見て舟に戻ったら、船頭とほかの二人が相談ができているとも知らずに、百合若はゆったりとしていた。帰りながら百合若に、「さあ、百合若さん、家へのお土産を持って行くものがないから、今度は、あの無人島に行って、くだものやらなにか珍しいものを取ってきて、上様にお土産を持って行きましょうね。」と、一人が言ったら、「それはいい考えだ。そうしよう。」と、無人島に行ったらしい、いろんなものを取るために。その無人島は海の真ん中であるって。そうしたら、船頭とほかの二人が相談ができているとは思ってないから、百合若も珍しいものやくだものを捜そうと、遠くに行ったらしい。何ということか、百合若に帰ろうとも言わない。百合若を無人島に置き去りにする考えだから。けんかをしようとしても勝てない。何をやっても百合若には敵わないので、あとは知恵を出して、百合若も殺す考えをしたわけだ。「これを生かしておいたのでは、私たちの位は上がらない。」と言って。兄弟二人で相談して、百合若がお土産になるものを捜しに行っているすきに、船頭も一緒に舟に乗って自分たちは戻って行った。百合若が、無人島で置き去りにされているとは知らないので、百合若の妻は、「うちの主人はどこに行ったの、どうして連れてこなかったの。」と、帰ってきた二人の仲間に聞いた。すると、「百合若が武士だということを分かったのか、戦船に追われて、二、三十人に囲まれ、戦っている間に私たちは逃げてきた。百合若のことは諦めて位牌も作って崇めた方がいいよ。」と言った。そうしたら、「どうして、あなたたちは、何をしにうちの主人まで連れて行って、そんな戦をさせたのか。」と聞いたから、「私たちは戦に行ったのではない。島へ行って、いろんな楽しみをしようとしたのだが、どこからか戦船がやって来て、二、三十人ぐらいに追われて、おまえの夫は武士だということが知れて、あれが戦っている間に、私たちはようやく逃げてきたんだ。」と言った。そう言われて、妻は納得した。そうして、百合若は、一緒に来た二人を捜してもいないさあ、帰ってしまっているのだから。百合若は、四年間も無人島に置き去りにされた。四年間のうち、夏はまる裸になって過ごした。着けている着物を大事にしておかないと、ぼろになってなくなってしまう。そうして冬になると、いつも火にあたったりして、着物は大事にしておいた。四年の間、髭ものびほうだいにのび、髪も長くなってユルユルして、着物も乞食の着物のようになってしまった。しかし、その無人島のそばを通る船はなかったって。ある日、マグロとか何とかの大きな魚を取る船が、島から見えたので、このときとばかりに、百合若は、「助けてくれー。」と、こっちだよと手招きをしながら助けを求めた。泣き叫んだから、髪もとても長くたらしているものだから、女に見えたのか、「女か男か分からないが、あんなに叫ぶのに、今日は魚は取らなくてもいいから、あの女を助けてこよう、きっと何ごとかあるようだぞ。さあ、この船を無人島に着けてみよう。」と言って、その漁船を島に着けた。「どうしたのですか、あなたは、男なのか、女なのか。」と聞いたら、「私は、男であるが仲間に騙された。私は、上様に使われていた百合若という者だが、仲間に騙されて、無人島に置き去りにされ、このなりになっている。どうか向こうまで私を連れて行ってくれ。」と言ったので、「それだけのことならよろしいです。さあ、この人をお連れしよう。」と、百合若は漁船に助けられて、帰った。そうして、百合若は、わざわざ、上様の家に行った。そこでは、「おまえはどこから来たか、おまえはギンジャヤー(乞食)なのか。物乞いなのか。どこから来たか。」などと言われた。百合若とはまったく分からないわけ。ほら、髭もこんなに長く生えているのだから。ぜんぜん、百合若とは分からない。「私は物乞いではありません。ただ歩きながら、人の家の掃除をしています。どうかここの掃除人をさせてください。ここの家には入らなくてもいいですから。」と言ったら、「そこまでいうなら、掃除人をさせなさい。」と言って、上様の家の掃除人になった。知らんふりして、そこで拭き掃除をしたり何したりして、決して百合若とは言わないでいた。ある日のこと、上様の側人で、無人島に百合若をおきざりにした兄弟二人が、「今日は、暇だから、弁当を使用人に支度させて、野原で遊んでこよう。」「そうしよう。」「あのギンジャヤーみたいな者も連れて行こう。」「いやいや、その者も連れて行くのか。」「それじゃあ、おまえも行くかと聞いてごらん。」と言って、「おい、今日は、おまえも一緒に野原に遊びに行かないか。」と誘った。「はい、いいですよ。私も連れて行って下さい。」と言った。みな、百合若とは思ってないのだから。すると、百合若が使ってある弓が上様の座のあたりに立ててあった。「あの弓も持てください。」と言ったら、誘った二人は、「あははっ。」と笑って、「おまえは何とでも言うな、おまえがあの弓を持って行くというのか。」と言った。また、「はい、あの弓も持ってください。」と言った。「おまえは、何だってあの弓までも持てと。あれはどのような武士が使った弓と思っているのだ。おまえは、その弓まで持って行くというのか。」「はい、私が持ちますから。」「何、おまえにあの弓が持てるというのか。」「あなた方は遊びにいらっしゃるのに、弓なども持って行って、松を射ったりするのが楽しみじゃないですか。」「それもそうだな。おまえが持つなら、持たせてみよう。」と言われ、しかし、とても重いらしく、「これを持つというのか、どんなに重い弓だから、おまえがこれを持つというのか。」「はい、私が持ちます。」「それじゃあ、持ってみなさい。」と持たした。自分が使っていた弓だから、百合若にとってはなんでもない。そうして、野原で松を射ったりして、大いに遊んだ。その兄弟二人と一緒に。この兄弟は、きれいな着物を着て、大威張りしていた。そうして、野原に行って松を射ったりしていると、百合若が、「おまえたちは、あの松の木を弓で射ることができるか。」と二人に聞いた。「できるさ、射ってみようか。」と言うと、「それじゃあ、射ってみろ。」と。射りはしたが、二人は当てることはできなかった。「あとで、この者たちを射り殺してやろう。」と、百合若は二人にやられたことを思って、殺す考えをしていた。やがて家に帰ろうというときに、「おまえたち、今度は向こうの松の葉を射ってみろよ。」と、二人に言ったって。「私たちに、射ることができるはずないじゃないか。」と言ったので、「では、私が射ってみよう。」と言った。「ちゃんちゃらおかしいことだ。おまえがあの松を射るとな。おまえね、これは何という武士が使っていた道具だから、おまえがこの弓を持って、松を射るというのか。」と言ったが、「どれ、私が射ってみよう。」「ほう、おまえは、何という武士がこの弓を使ったのか分かっているのか。」「いや、分からん。これは何という武士が使ったのか。」「これは、百合若というたいそうな武士が使ったものだよ。」と。自分のことであるのだが、そうしたら、「誰が使われたものであってもいいさ。どれ、私が射ってみよう。」と言って、一回目は松をパチっと射ると当たった。「何と珍しいこともあるものだな、このギンジャヤーは的をあてるのも上手だな。」などと言った。そうして、「もう一回には二人を射り殺してやろう。」と言って、そして、「今度は、川の向こうの松を射るから、二人並んで立って、あれを見ていてくれないか。」と言った。二人を並べ、向こうの方を見つめさせていたわけさ。そうして、すぐ弓でパチといっきょに二人を倒した。すると、一緒にいた女中などは、あわてふためき、「ハキサミヨーナー、もう一大事になった。」と騒いでいた。そうして、その弓は自分でを持って、百合若は、「さあ、家に帰ろう。」と、みなを連れて帰った。上様の前に行き、「お元気ですか。」と言ったら、「何だ、おまえはどこのギンジャヤーか、そこには入るな。」と怒ったが、「私は百合若です。」と言った。上様は目を丸くなされ、そのときになって、「おまえは生きていたのか。おまえは死んだといって、あいつらは戻ってきたが、生きていたんだね、本当におまえは百合若だね。」と。「私は百合若です。」と言って、「そうか、そうか、おまえは百合若だったのか。」「はい。」と。「本当なんだな。」「あの弓は私の物です。」「そうか、それじゃあ、おまえが私のお側人だ。あいつらは。」と聞いたので、「私が射殺しました。あいつらにやられたことが憎くて、私も死ぬ思いをしたものだから。私は無人島で殺されるところを生きて帰ってきましたが、奴らを生かしておけないと。上様はあいつらを射殺したことを、心苦しくお思いですか。私はどうなってもよろしいです。私は、奴らにされたことをどうしても許すことはできなかったのです。」と言ったら、「ああ、良くやった。あいつらはこれくらいのことはやらないといけない。」と言って許してくれた。それから、上様も喜ばれて、散髪屋を連れてきて百合若の散髪をさせ、着物も着替えさせ髭も剃らせると、元の百合若にもどった。そうして、百合若は、またお側人になったって。そういう話も聞いた。 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| 全体の記録時間数 | 12:45 |
| 物語の時間数 | 12:45 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |