大歳の黄金俵(シマグチ)

概要

正月元旦の日であったらしい。与那覇親雲上は、那覇の久米村におられたので、元旦には、崇元寺の東から登って行ったところにある八幡の寺に、唐の寺に参られる。そうしたら、アカチラというところが向こうにあるので、元旦の日には、「着物も帯も出しなさい、アカチラの潮が引いているときに、八幡は拝んでこよう、寺は拝んでこよう。」と言って、港川のアカチラの潮が引いているときに、元旦には正装して、八幡に唐の御美拝(朝賀)しに行かれるときに、泊高橋を越えてやがて崇元寺にさしかかろうとするときに、東から小さい小父さんが、クバ笠でもない、なにやら帽子らしいのを被って、小さい馬に俵を二つ積んでこられたらしい。それで、その人は八幡の寺にいらっしゃるところで出くわしたので、「こんにちわ。」と言うと、「今日は、いい正月ですね。」「はい、いい正月ですね。」と。「あなた様は、与那覇親雲上ではありませんか。」と聞かれたので、「そうですよ。」と。「私は、お使いであなた方に行くところですが、あなた様は、唐の御美拝しに行かれるようですが、それはあとにして、いっときは一緒に戻ってくださいませんか。」と、馬をひいていた人がそう言ったので、「よろしいですよ、お供しましょう。」と、連れてきたわけさ。その人を本当の人間と思って、精霊とは思ってないわけだから。そうしたら、一緒にお連れしてきて、門に馬を立てておいて、台所にいる女たちに、その小父さん(精霊)は、「この俵を運んでくれ。」と言った。俵は二つだったので、「はい。」と言って、女たち二人が出てきて、「その俵は、なんですか。」と聞いたら、「これは炭ですが。」と言った。「でも、この炭は外には置かないでくださいよ。あなた方の炭は、あのように外の軒下に立ててあるが、これは内に入れて保管してくださいよ。決して外には置かないでくださいよ。」と言われ、「はい。」と。女二人は別々に俵を担いで持ってきて、「この小父さんがそのようにおっしゃるから、その炭は、いい炭であるはずだから、内に入れておこうね。」と、内に入れて立ててあったって。その与那覇親雲上は、また、「小父さんは、元旦の日にいらしているのに、さあ早く、熱い茶を沸かして、ご馳走もちゃんと温めて差し上げなさい。」と言ったら、「はい。」と言って、女たちがちゃんとやったが、いなくなっているわけ、精霊だもんだから。それから、与那覇親雲上は、その小父さんに、「早くお入りなさい。」と言おうと、着物も解かずに細帯もかけたまま、筵を敷いたらしい。「どこ行かれたか、あの小父さんは。早くお茶を召し上がってくださいと言いなさい。」と言ったが、「小父さんはおられないのですが。」「なぜなんだ、いま私がお連れしてきたのに、おられないということがあるか。」と言ったら、「私たちが俵を持ってきたら、いらっしゃらないんですもの。」と。みな、その方を人だと思っているのだから、「それじゃあ、その人は別に用事があって、用事をしにいらしているはずだから、私が、八幡を拝んでくる間に、いらっしゃるのであれば、茶も沸かして差し上げて、お茶請けもちゃんと差し上げなさいよ。」と、与那覇親雲上はまた、御美拝しに行ったわけさ、八幡の寺に。それでもいらっしゃらない。夜になっても、女たちはずっと待ちかねているが、天に行ってしまわれたのだから。それで、不思議なことだなといっているうちに、三、四日ぐらい経ってから、寒くなったので、炭を燃やして温まろうと思い、炭を燃やしたところ、「その小父さんが持ってきた炭は、『いい炭で、とても上等だから、内に入れなさいよ』と、おっしゃっておられたから、その炭も混ぜて、うちのターリーに温まってもらおう。」と運んできた。また、その俵は小さくもあるのだから。黄金なんだから。それで、その黄金は、炭のように黒く塗ってあった。そうして、その俵から、炭を取って、火をつけようとしても、消えてしまってつかないので、女たちは、「あんな小父さんているかね、ちゃんとした炭を持っていらっしゃるのであって、火がちっともつかない炭を、私たちに持っていらして。あの炭は捨ててしまったらいいですのに。」と、台所で文句をいろいろ言ったらしい。なかなか火がつかないのだから。「おまえたちは、炭の火のつけかたを知らないだけだ。炭に火がつかないことがあるものか。」と、与那覇親雲上がおっしゃって、「私がつけてみよう、どれ。」と、お取りになって火をつけても、与那覇親雲上がやってもつかない。「不思議なことだな。」と首を振られて、その炭を取って、自分の持っている手拭いで拭いてみられたら、黄金になったわけ。「アキサミヨーナー、ありがとうございます。」と、すぐ外に出られて、「精霊であられたんですね、この黄金を持っていらしたんですね。こんなに嬉しいことはない。これをおまえたちは炭だと思っているのか、早く運んで、裏座にちゃんと筵を敷いて、立てておきなさい。炭ではないよ。これは宝なんだよ。」とおっしゃられて、裏座でちゃんと崇めたわけさ。それから、与那覇親雲上は、裕福になられたって、その二つの俵のおかげで。その人はとても心が良くて、こう言われている。「私が、あなた方に使いに行ったのは、あなたの心が良いので、寒い思いをしている人には着物を着けさせ、ひもじい思いをしている人には食べ物を与え、貧乏人を助けてあげ、、あなたの心が良いので、天がご覧になられて、私は天のお使いをしただけで、天に戻ってくるように言われております。」と言われて、戻ったという、その人は。与那覇親雲上という人は、三十六姓が南山に下りられて、南山から分かれていった久米村、唐からの分かれであるわけさ。日本からの分かれではないわけ。三十六姓からの分かれ。この話はこれで終わり。

再生時間:7:42

民話詳細DATA

レコード番号 47O420968
CD番号 47O42C030
決定題名 大歳の黄金俵(シマグチ)
話者がつけた題名 与那覇ペーチンが精霊に助けられた話
話者名 目取真ウト
話者名かな めどえうまうと
生年月日 18900804
性別
出身地 具志川市田場
記録日 19800809
記録者の所属組織 沖縄口承文芸調査団
元テープ番号 具志川市T28 A3
元テープ管理者 伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 具志川市史第3巻下300頁 通観62頁
キーワード 与那覇ペーチン,正月,安里八幡宮,俵,老人,炭,黄金,
梗概(こうがい) 正月元旦の日であったらしい。与那覇親雲上は、那覇の久米村におられたので、元旦には、崇元寺の東から登って行ったところにある八幡の寺に、唐の寺に参られる。そうしたら、アカチラというところが向こうにあるので、元旦の日には、「着物も帯も出しなさい、アカチラの潮が引いているときに、八幡は拝んでこよう、寺は拝んでこよう。」と言って、港川のアカチラの潮が引いているときに、元旦には正装して、八幡に唐の御美拝(朝賀)しに行かれるときに、泊高橋を越えてやがて崇元寺にさしかかろうとするときに、東から小さい小父さんが、クバ笠でもない、なにやら帽子らしいのを被って、小さい馬に俵を二つ積んでこられたらしい。それで、その人は八幡の寺にいらっしゃるところで出くわしたので、「こんにちわ。」と言うと、「今日は、いい正月ですね。」「はい、いい正月ですね。」と。「あなた様は、与那覇親雲上ではありませんか。」と聞かれたので、「そうですよ。」と。「私は、お使いであなた方に行くところですが、あなた様は、唐の御美拝しに行かれるようですが、それはあとにして、いっときは一緒に戻ってくださいませんか。」と、馬をひいていた人がそう言ったので、「よろしいですよ、お供しましょう。」と、連れてきたわけさ。その人を本当の人間と思って、精霊とは思ってないわけだから。そうしたら、一緒にお連れしてきて、門に馬を立てておいて、台所にいる女たちに、その小父さん(精霊)は、「この俵を運んでくれ。」と言った。俵は二つだったので、「はい。」と言って、女たち二人が出てきて、「その俵は、なんですか。」と聞いたら、「これは炭ですが。」と言った。「でも、この炭は外には置かないでくださいよ。あなた方の炭は、あのように外の軒下に立ててあるが、これは内に入れて保管してくださいよ。決して外には置かないでくださいよ。」と言われ、「はい。」と。女二人は別々に俵を担いで持ってきて、「この小父さんがそのようにおっしゃるから、その炭は、いい炭であるはずだから、内に入れておこうね。」と、内に入れて立ててあったって。その与那覇親雲上は、また、「小父さんは、元旦の日にいらしているのに、さあ早く、熱い茶を沸かして、ご馳走もちゃんと温めて差し上げなさい。」と言ったら、「はい。」と言って、女たちがちゃんとやったが、いなくなっているわけ、精霊だもんだから。それから、与那覇親雲上は、その小父さんに、「早くお入りなさい。」と言おうと、着物も解かずに細帯もかけたまま、筵を敷いたらしい。「どこ行かれたか、あの小父さんは。早くお茶を召し上がってくださいと言いなさい。」と言ったが、「小父さんはおられないのですが。」「なぜなんだ、いま私がお連れしてきたのに、おられないということがあるか。」と言ったら、「私たちが俵を持ってきたら、いらっしゃらないんですもの。」と。みな、その方を人だと思っているのだから、「それじゃあ、その人は別に用事があって、用事をしにいらしているはずだから、私が、八幡を拝んでくる間に、いらっしゃるのであれば、茶も沸かして差し上げて、お茶請けもちゃんと差し上げなさいよ。」と、与那覇親雲上はまた、御美拝しに行ったわけさ、八幡の寺に。それでもいらっしゃらない。夜になっても、女たちはずっと待ちかねているが、天に行ってしまわれたのだから。それで、不思議なことだなといっているうちに、三、四日ぐらい経ってから、寒くなったので、炭を燃やして温まろうと思い、炭を燃やしたところ、「その小父さんが持ってきた炭は、『いい炭で、とても上等だから、内に入れなさいよ』と、おっしゃっておられたから、その炭も混ぜて、うちのターリーに温まってもらおう。」と運んできた。また、その俵は小さくもあるのだから。黄金なんだから。それで、その黄金は、炭のように黒く塗ってあった。そうして、その俵から、炭を取って、火をつけようとしても、消えてしまってつかないので、女たちは、「あんな小父さんているかね、ちゃんとした炭を持っていらっしゃるのであって、火がちっともつかない炭を、私たちに持っていらして。あの炭は捨ててしまったらいいですのに。」と、台所で文句をいろいろ言ったらしい。なかなか火がつかないのだから。「おまえたちは、炭の火のつけかたを知らないだけだ。炭に火がつかないことがあるものか。」と、与那覇親雲上がおっしゃって、「私がつけてみよう、どれ。」と、お取りになって火をつけても、与那覇親雲上がやってもつかない。「不思議なことだな。」と首を振られて、その炭を取って、自分の持っている手拭いで拭いてみられたら、黄金になったわけ。「アキサミヨーナー、ありがとうございます。」と、すぐ外に出られて、「精霊であられたんですね、この黄金を持っていらしたんですね。こんなに嬉しいことはない。これをおまえたちは炭だと思っているのか、早く運んで、裏座にちゃんと筵を敷いて、立てておきなさい。炭ではないよ。これは宝なんだよ。」とおっしゃられて、裏座でちゃんと崇めたわけさ。それから、与那覇親雲上は、裕福になられたって、その二つの俵のおかげで。その人はとても心が良くて、こう言われている。「私が、あなた方に使いに行ったのは、あなたの心が良いので、寒い思いをしている人には着物を着けさせ、ひもじい思いをしている人には食べ物を与え、貧乏人を助けてあげ、、あなたの心が良いので、天がご覧になられて、私は天のお使いをしただけで、天に戻ってくるように言われております。」と言われて、戻ったという、その人は。与那覇親雲上という人は、三十六姓が南山に下りられて、南山から分かれていった久米村、唐からの分かれであるわけさ。日本からの分かれではないわけ。三十六姓からの分かれ。この話はこれで終わり。
全体の記録時間数 7:42
物語の時間数 7:42
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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