
ある村で、一か所は男が生まれ、また、奥の家では女が生まれたって。そうしたら、天の神様が、「私は龍宮の神様に、『西の村に女が生まれ、男も生まれているので福分をつけて来い』と言いつけられているのだが、おまえも一緒に行こう。」とおっしゃったから、「私は今日は暇がありません。私の家に泊まっておられる方がいるので。」と言うと、「それなら、私一人で行って福をつけて来ようね。」とおっしゃられてでかけられた。一番めに男の子が生まれた家に行くと、その家はもう真っ暗闇で、冷たい風がビュービュー吹いて向かうことができないほど福分がない。福分をつけようにも福分がつけられない。つけられなくて、その神様は、「ああ、男だけどな、福分がつけられない。」と、残念に思いながら戻った。次に、女の子が生まれた家に行ってみると、そこは屋敷も明々として、家も明るく熱気があって、「何とこの女は、どんなに福分を持っているのか分からない。これはとてつもない福分を持っている。」と言って、その神様はまた、「こんなにも福分を持っているので、おまえの福分は額に印をつけてやろうね。」と言って、「アンマークートーターガンンーダン(おかあさん以外は誰も見ない)。」と言って、額に指さしておまじまいするでしょう、あれは、それから出たわけよ。「アンマークートーターガンンーダン。」と言って、額に印をつけた。また、男の子を生んだ方の父親は猟師だったらしい。その男の子が生まれた日は、海には一羽も鳥が見えない。もう、疲れ果てて海の近くで涼みながら寝ていた。そのとき、神様が話をなさっているのを聞いたわけ。「これは、私の妻も妊娠していたが、まさか妻のことではないだろうな。」と言って、家に帰ってみると、やはり子どもが生まれていたって。「私の家では男が生まれたんだな。」と。「もう、どこをうろついていたの、家のことも気にかけずに。ほら男の子が生まれたんだよ。」と妻が言うが、「そうなのか。」と。そうして、福分は二つある。その男の子には福分はない。女の子の福分は大きいということは聞いていたので、ハーカラミーカラ(黙って秘密にして)もらさないわけさ。「うちの男の子は福分がないというから、女の子と夫婦にすればその女の子に引き上げられて、物を食べられるようにならないかな。」と、男の方の親は思った。〔大人になって、二人は結婚することになった。〕ところが、男の方には福分はない、女は徳を持って生まれているから、夫婦としてはふつりあいだった。それで、二人には子どもは生まれなかった。男は自分一人で儲けて、裕福になったという。裕福になったら、自分一人で儲けたかのように大いばりして、尾類料亭に出入りして、妻を追い出す企みをした。そうしたら、妻はモーシーという名であるが、 「おい、モーシー、おまえはこの家から出て行けよ。」と言うと、「あれ、なんとでも言うんだね。二人一緒にがんばって働いたから裕福になったのに。今ごろになって私に出て行けとは、どういうことなの。」 「おまえのような者、おまえが何を儲けたというのだ、私が儲けたんだ。」と言って、その男にはなんの福分もないのに、妻にさんざん文句を言っていた。そこへ、友だちのチラーがやって来て、「どうしたのモーシー、こんなに早く起きて。」と聞いたから、「今日は早起きしたので、芋も煮てお茶も沸かしてあるから飲んでよ、チラー。」と言った。「あなたの夫はどこに行ったの。」と聞いたので、「その辺にいるんじゃない。」と言って、モーシーは隠すのが上手であるわけ。そうして、「どういうことなの、あの夫がこんなに早く起きるなんて。」と、チラーが言うと、「その辺を歩いているはずだよ。」と。二人がお茶を飲んでいるところに、夫が尾類を連れて来て、「おまえは出て行けといっても、まだそこにいるのか。おまえは、痛めつけられないと出て行かないのか。」と文句を言ったわけさ。そうしたら、たまりかねたチラーが、 「この恩知らず、誰の頑張りで金持ちになったか分からないくせに、そのように大口をたたいて。おまえ一人で儲けたと考えているのか。」と言い返した。「何を言うか、私一人で儲けたのであって、あんな奴になにが儲けられるというのだ。今すぐ出て行け。おまえら二人、ここから出て行かなければ、二人とも痛めつけてやるからな。自分の物を持ってさっさと出て行け。」と夫が言ったわけ。尾類もそこに待たしてあるし、やむなく、「出て行ってやるさ。早く準備しなさいモーシー。あんたの道具を全部持ちなさい。さあうちに行こう。」と言った。チラーは一人者であるわけ。そうして、チラーの家に行ったから夫と尾類の二人はとても喜んだ。お金がある間はなにもしない、金持ちなんだから。二人とも、飲んだり食ったりしたものだから、あっという間にお金はなくなった。女は尾類だから、金があるあいだはとても喜んでいたが、お金がなくなったら、夫に、「今日は、芋を掘って来い。」また、「水を汲んで来い。」今度は、「薪を取って来い。」といろいろ言いつけた。「なんだと、おまえは女のくせに、私にこんなにも仕事を言いつけやがって。」と言ったら、「なんだって、あんたは私には、『なにもさせないから』と言って、連れて来たのではないのか。」と言った。そうこうしているうちに、その夫は病に罹ってしまったので、「おまえのような奴は、死のうが生きようが私の知ったことではないさ。」と言って、その尾類は逃げて行ってしまった。そうして、その男は生きられなくなって、死んでしまったわけさ。そうしたら、モーシーは、「あのね、チラー、私は難儀して働いて儲けたお金を、あいつらに食われてしまっては、気がおさまらないから、ハンジ(易者)の家まで行って来よう。」と言って、家を出た翌日には、スムチ(易者)の家に行ってみた。そのスムチは、「あんたはいいときに家を出た。おまえとその男とは結ばれないよ。おまえの福分で裕福にはなっていたが、あれはいまに一文無しになるから。あんたの夫になるべき人は、西銘の村にちゃんと待っているよ。その人とあんたは結ばれて、裕福になって子どもも生んで暮らしなさい。あんたの福分と分かれた夫との福分では結ばれない。それで、あんたは出されたんだから。あんたは、西銘村で落ちついてこそ裕福なるんだよ。」とおっしゃったって。そこで、言われたとおり、西銘村に行ってみると、そこには炭焼きのカナーといういい男がいるらしい。チラーとモーシーの二人は炭焼きのカナーを捜して行きながら、途中で雨に濡れてびしょびしょになったが、雨宿りする場所もなくてずぶ濡れになっていた。「ねえモーシー、この家で雨宿りをして行こうね。」と言って、雨宿りをした家はカナーのところであった。そのカナーは独り者である。それで、カナーが、「どうしたのだ、おまえたちはどこの人か、どこから来たのか。こんなに雨に濡れてどこに行こうとしているのだ。」と聞いたから、「私たちは、行く当てはないが。西銘の村はここですか。」と言った。「ここだよ。」と。「私たちは、西銘村を捜して歩いて来たのですよ。」と。「そうなら、おまえたちはびしょ濡れだし、やがて日も暮れるので、私の着物を汚いと思わないで着替えて、おまえたちが着ている着物は、炭焼き車のそばで干しておきなさい。」と言った。着物は翌日にはちゃんと乾いていた。そうして、乾いた着物を着て、それからしみじみと話しはじめたわけさ。「私は夫に追い出されて、気も休まらずに来たんですよ。それで、どこという当てもなく、ただ足の向くまま歩いていたのですよ。」と言ったら、「ああ、そういうことだったのか。」と。「私は炭焼きをしなくても食べては行けるが、炭は儲けが多いのでやっているんだよ。そういうことなら、私があんたの家を造ってあげるから、うちには私の焼いた炭を買う人がたくさん来るので、それを売って儲けは二人で分けよう。おまえに損はさせないから炭売りをしなさいね。」と言った。ほらもう、女は福分が大きいので、女が炭売りをするようになってからというもの、炭を買う人たちが大勢来て、焼き上がると同時に売れるもんだからモーシーは、あっという間に、金持ちになった。また、子どもも妊娠しているわけ。そうして、モーシーは子どもも生んで金持ちになって裕福に暮らしているが、モーシーを追い出した男は一文無しになって、命もなくなったって。モーシーはカナーととても裕福に暮らしたって。その話であるわけ。そこだよ、夫ユシ妻ユシ(夫が教えたり、妻が教えたり)というのは。それが大事という話。
| レコード番号 | 47O420948 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C029 |
| 決定題名 | 産神問答(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 目取真ウト |
| 話者名かな | めどえうまうと |
| 生年月日 | 18900804 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 具志川市田場 |
| 記録日 | 19800808 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川市T26 B15 |
| 元テープ管理者 | 伝承話資料センター |
| 分類 | 12 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻下175頁 通観18頁 具志川市の民話ふるさとの昔ばなし131頁 |
| キーワード | 龍宮の神様,福分,鍋すみ,額漁,縁組,炭焼き,尾類,徳 |
| 梗概(こうがい) | ある村で、一か所は男が生まれ、また、奥の家では女が生まれたって。そうしたら、天の神様が、「私は龍宮の神様に、『西の村に女が生まれ、男も生まれているので福分をつけて来い』と言いつけられているのだが、おまえも一緒に行こう。」とおっしゃったから、「私は今日は暇がありません。私の家に泊まっておられる方がいるので。」と言うと、「それなら、私一人で行って福をつけて来ようね。」とおっしゃられてでかけられた。一番めに男の子が生まれた家に行くと、その家はもう真っ暗闇で、冷たい風がビュービュー吹いて向かうことができないほど福分がない。福分をつけようにも福分がつけられない。つけられなくて、その神様は、「ああ、男だけどな、福分がつけられない。」と、残念に思いながら戻った。次に、女の子が生まれた家に行ってみると、そこは屋敷も明々として、家も明るく熱気があって、「何とこの女は、どんなに福分を持っているのか分からない。これはとてつもない福分を持っている。」と言って、その神様はまた、「こんなにも福分を持っているので、おまえの福分は額に印をつけてやろうね。」と言って、「アンマークートーターガンンーダン(おかあさん以外は誰も見ない)。」と言って、額に指さしておまじまいするでしょう、あれは、それから出たわけよ。「アンマークートーターガンンーダン。」と言って、額に印をつけた。また、男の子を生んだ方の父親は猟師だったらしい。その男の子が生まれた日は、海には一羽も鳥が見えない。もう、疲れ果てて海の近くで涼みながら寝ていた。そのとき、神様が話をなさっているのを聞いたわけ。「これは、私の妻も妊娠していたが、まさか妻のことではないだろうな。」と言って、家に帰ってみると、やはり子どもが生まれていたって。「私の家では男が生まれたんだな。」と。「もう、どこをうろついていたの、家のことも気にかけずに。ほら男の子が生まれたんだよ。」と妻が言うが、「そうなのか。」と。そうして、福分は二つある。その男の子には福分はない。女の子の福分は大きいということは聞いていたので、ハーカラミーカラ(黙って秘密にして)もらさないわけさ。「うちの男の子は福分がないというから、女の子と夫婦にすればその女の子に引き上げられて、物を食べられるようにならないかな。」と、男の方の親は思った。〔大人になって、二人は結婚することになった。〕ところが、男の方には福分はない、女は徳を持って生まれているから、夫婦としてはふつりあいだった。それで、二人には子どもは生まれなかった。男は自分一人で儲けて、裕福になったという。裕福になったら、自分一人で儲けたかのように大いばりして、尾類料亭に出入りして、妻を追い出す企みをした。そうしたら、妻はモーシーという名であるが、 「おい、モーシー、おまえはこの家から出て行けよ。」と言うと、「あれ、なんとでも言うんだね。二人一緒にがんばって働いたから裕福になったのに。今ごろになって私に出て行けとは、どういうことなの。」 「おまえのような者、おまえが何を儲けたというのだ、私が儲けたんだ。」と言って、その男にはなんの福分もないのに、妻にさんざん文句を言っていた。そこへ、友だちのチラーがやって来て、「どうしたのモーシー、こんなに早く起きて。」と聞いたから、「今日は早起きしたので、芋も煮てお茶も沸かしてあるから飲んでよ、チラー。」と言った。「あなたの夫はどこに行ったの。」と聞いたので、「その辺にいるんじゃない。」と言って、モーシーは隠すのが上手であるわけ。そうして、「どういうことなの、あの夫がこんなに早く起きるなんて。」と、チラーが言うと、「その辺を歩いているはずだよ。」と。二人がお茶を飲んでいるところに、夫が尾類を連れて来て、「おまえは出て行けといっても、まだそこにいるのか。おまえは、痛めつけられないと出て行かないのか。」と文句を言ったわけさ。そうしたら、たまりかねたチラーが、 「この恩知らず、誰の頑張りで金持ちになったか分からないくせに、そのように大口をたたいて。おまえ一人で儲けたと考えているのか。」と言い返した。「何を言うか、私一人で儲けたのであって、あんな奴になにが儲けられるというのだ。今すぐ出て行け。おまえら二人、ここから出て行かなければ、二人とも痛めつけてやるからな。自分の物を持ってさっさと出て行け。」と夫が言ったわけ。尾類もそこに待たしてあるし、やむなく、「出て行ってやるさ。早く準備しなさいモーシー。あんたの道具を全部持ちなさい。さあうちに行こう。」と言った。チラーは一人者であるわけ。そうして、チラーの家に行ったから夫と尾類の二人はとても喜んだ。お金がある間はなにもしない、金持ちなんだから。二人とも、飲んだり食ったりしたものだから、あっという間にお金はなくなった。女は尾類だから、金があるあいだはとても喜んでいたが、お金がなくなったら、夫に、「今日は、芋を掘って来い。」また、「水を汲んで来い。」今度は、「薪を取って来い。」といろいろ言いつけた。「なんだと、おまえは女のくせに、私にこんなにも仕事を言いつけやがって。」と言ったら、「なんだって、あんたは私には、『なにもさせないから』と言って、連れて来たのではないのか。」と言った。そうこうしているうちに、その夫は病に罹ってしまったので、「おまえのような奴は、死のうが生きようが私の知ったことではないさ。」と言って、その尾類は逃げて行ってしまった。そうして、その男は生きられなくなって、死んでしまったわけさ。そうしたら、モーシーは、「あのね、チラー、私は難儀して働いて儲けたお金を、あいつらに食われてしまっては、気がおさまらないから、ハンジ(易者)の家まで行って来よう。」と言って、家を出た翌日には、スムチ(易者)の家に行ってみた。そのスムチは、「あんたはいいときに家を出た。おまえとその男とは結ばれないよ。おまえの福分で裕福にはなっていたが、あれはいまに一文無しになるから。あんたの夫になるべき人は、西銘の村にちゃんと待っているよ。その人とあんたは結ばれて、裕福になって子どもも生んで暮らしなさい。あんたの福分と分かれた夫との福分では結ばれない。それで、あんたは出されたんだから。あんたは、西銘村で落ちついてこそ裕福なるんだよ。」とおっしゃったって。そこで、言われたとおり、西銘村に行ってみると、そこには炭焼きのカナーといういい男がいるらしい。チラーとモーシーの二人は炭焼きのカナーを捜して行きながら、途中で雨に濡れてびしょびしょになったが、雨宿りする場所もなくてずぶ濡れになっていた。「ねえモーシー、この家で雨宿りをして行こうね。」と言って、雨宿りをした家はカナーのところであった。そのカナーは独り者である。それで、カナーが、「どうしたのだ、おまえたちはどこの人か、どこから来たのか。こんなに雨に濡れてどこに行こうとしているのだ。」と聞いたから、「私たちは、行く当てはないが。西銘の村はここですか。」と言った。「ここだよ。」と。「私たちは、西銘村を捜して歩いて来たのですよ。」と。「そうなら、おまえたちはびしょ濡れだし、やがて日も暮れるので、私の着物を汚いと思わないで着替えて、おまえたちが着ている着物は、炭焼き車のそばで干しておきなさい。」と言った。着物は翌日にはちゃんと乾いていた。そうして、乾いた着物を着て、それからしみじみと話しはじめたわけさ。「私は夫に追い出されて、気も休まらずに来たんですよ。それで、どこという当てもなく、ただ足の向くまま歩いていたのですよ。」と言ったら、「ああ、そういうことだったのか。」と。「私は炭焼きをしなくても食べては行けるが、炭は儲けが多いのでやっているんだよ。そういうことなら、私があんたの家を造ってあげるから、うちには私の焼いた炭を買う人がたくさん来るので、それを売って儲けは二人で分けよう。おまえに損はさせないから炭売りをしなさいね。」と言った。ほらもう、女は福分が大きいので、女が炭売りをするようになってからというもの、炭を買う人たちが大勢来て、焼き上がると同時に売れるもんだからモーシーは、あっという間に、金持ちになった。また、子どもも妊娠しているわけ。そうして、モーシーは子どもも生んで金持ちになって裕福に暮らしているが、モーシーを追い出した男は一文無しになって、命もなくなったって。モーシーはカナーととても裕福に暮らしたって。その話であるわけ。そこだよ、夫ユシ妻ユシ(夫が教えたり、妻が教えたり)というのは。それが大事という話。 |
| 全体の記録時間数 | 12:07 |
| 物語の時間数 | 12:07 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |