
御主加那志前に、御子が生まれた。そうして、沖縄の三線上手は、知念という人であった。ミーハギ知念。知念を呼んで、「沖縄には、君と野村の二人が三線は上手なので、御子が生まれた祝いの日には、三線を弾いてくれ。」と言ったら、「まだ、野村とは調弦をやっていません。」と言ったって。「沖縄の三線の上手な者は、あなた方二人でだが、調弦もやってないと、そんなことが言えるのか。」と言ったら、「それなら、呼んで下さい。」と、野村は呼ばれて来たわけさ。そうしたら、「四(中弦)の調弦させろ。」と言われて、中弦の調弦させたら、「そうですか。」と言った。「そうだ。」「さあ、それでは、横笛を持って来ようか。」と、言って合わせたら、合わないって。「だあ、どうして、合いますか。わかっておりますか。」と言った。そうして、知念が、また、中弦を調弦すると、ちゃんと合ったって。そうこうして、御子の祝の日になったわけさ。そうしたら、吉屋が、嘉例をつけるといって、手事をしていたら、「むこうで、待っておけ。」と言った。「なぜ。」と言ったら、「ここに入って来て、これに大きな歌を詠め。」と言われた。「はい。」と、言い、『幹や天かみてぃ 枝や国うすてぃ〔幹は天までそびえ、枝は国をおおい〕ひじや地ぬ底に 果てきぬ見らん〔根は地の底に、果てが見えない〕』と、詠んだって。もう、幹は天までそびえと言って、花とか木とか何でもいいわけ。枝は国を覆って、根は地の底まで這って、果てが見えないと詠んだ。そうしたら、「さあ、今度は、一番小さな歌を詠め。」と言ったら、「はい。」と言って。芥子の種は、煙草の種よりも、小さいらしい。私も、煙草の種というもは、見たことはないが、芥子の種というのは、あれより、もっと小さいって。そして、『芥子ぬ種なかい 御殿ぐゎや作てぃ 〔芥子の種に、御殿を造って〕うりが内うてぃ 遊ぶうりさ〔その中で 遊ぶ楽しさ〕』と、詠んだ。それで、吉屋は、「何をしろ。」と言われれば、すぐできたから、沖縄の歌人は吉屋と言われている。
| レコード番号 | 47O420673 |
|---|---|
| CD番号 | 47O42C021 |
| 決定題名 | 吉屋チルー(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | ミーハギ知念と吉屋チルー |
| 話者名 | 天願蒲戸 |
| 話者名かな | てんがんかまと |
| 生年月日 | 19031120 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 具志川市字具志川 |
| 記録日 | 19800504 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸調査団 |
| 元テープ番号 | 具志川T17 A15 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 具志川市史第3巻上711頁 |
| キーワード | 御主加那志,ミーハギ知念,三線,調弦,チンダミ,誕生祝い,嘉例, |
| 梗概(こうがい) | 御主加那志前に、御子が生まれた。そうして、沖縄の三線上手は、知念という人であった。ミーハギ知念。知念を呼んで、「沖縄には、君と野村の二人が三線は上手なので、御子が生まれた祝いの日には、三線を弾いてくれ。」と言ったら、「まだ、野村とは調弦をやっていません。」と言ったって。「沖縄の三線の上手な者は、あなた方二人でだが、調弦もやってないと、そんなことが言えるのか。」と言ったら、「それなら、呼んで下さい。」と、野村は呼ばれて来たわけさ。そうしたら、「四(中弦)の調弦させろ。」と言われて、中弦の調弦させたら、「そうですか。」と言った。「そうだ。」「さあ、それでは、横笛を持って来ようか。」と、言って合わせたら、合わないって。「だあ、どうして、合いますか。わかっておりますか。」と言った。そうして、知念が、また、中弦を調弦すると、ちゃんと合ったって。そうこうして、御子の祝の日になったわけさ。そうしたら、吉屋が、嘉例をつけるといって、手事をしていたら、「むこうで、待っておけ。」と言った。「なぜ。」と言ったら、「ここに入って来て、これに大きな歌を詠め。」と言われた。「はい。」と、言い、『幹や天かみてぃ 枝や国うすてぃ〔幹は天までそびえ、枝は国をおおい〕ひじや地ぬ底に 果てきぬ見らん〔根は地の底に、果てが見えない〕』と、詠んだって。もう、幹は天までそびえと言って、花とか木とか何でもいいわけ。枝は国を覆って、根は地の底まで這って、果てが見えないと詠んだ。そうしたら、「さあ、今度は、一番小さな歌を詠め。」と言ったら、「はい。」と言って。芥子の種は、煙草の種よりも、小さいらしい。私も、煙草の種というもは、見たことはないが、芥子の種というのは、あれより、もっと小さいって。そして、『芥子ぬ種なかい 御殿ぐゎや作てぃ 〔芥子の種に、御殿を造って〕うりが内うてぃ 遊ぶうりさ〔その中で 遊ぶ楽しさ〕』と、詠んだ。それで、吉屋は、「何をしろ。」と言われれば、すぐできたから、沖縄の歌人は吉屋と言われている。 |
| 全体の記録時間数 | 2:37 |
| 物語の時間数 | 2:37 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |