
男、女の兄妹がおったみたい。それで、この兄さんがよ、とにかく家出をしたらしいよ。お家から出てよ、何日なるのか何ヵ月なるのか何年なるのかそこまでわからんけれども、人間というのは悪い人間は鬼の心と言うでしょう。それで、聞くところによるとよ、「あんた家(ち)の兄さんはもう鬼になっている。」という世間の噂だけども、妹は、もういくら世間から噂が聞いてもよ、自分の兄弟だからかわいいでしょう。「まさかうちの兄さんはよ、そんな人間ではない。」とこれを信じなかったらしいよ。それで、信じなかったけれども、あんまりもう噂になっているから、それでもう、「噂で聞くだけでは、信用できないから自分の目二つで確かめてみないといけない。」ということを思っておったらしい。ところが、それじゃこの兄さんはどこにおるかといえばよ、こっちに商工道路があるでしょう。その西から海に下におりるこの道の傍に、昔の鍬、鎌を叩いて仕上げる鍛冶屋(か じ やー)があったらしいから鍛冶屋(かじやー)と言うんです。そこには、海の波が打って、岩がこうなっているんですよね。そこは奥行きもあるところもあれば、無いところもあって、兄さんはああいうところに住んでおるということを聞かされたもんだから、妹は、「それじゃ、行ってみる。」と言ってよ、この兄さんはもう鬼になって心変わっているというもんだから、妹は、これはまた女の知恵といってよ、兄さんは日頃から餅が好きであったみたいさな。だからこの妹はもう上等に餅を作ってよ、その餅の中に、あんこに小さい庭の石っころよ、あれを込めたのを持ってよ、妹には子供がいたからその子供をおんぶして行ったらしいですよね。ところがこの兄さんはよ、「何しにきたか。」といったからよ、「いや、あんたはよ、家出して何ヵ月ぐらいになるからよ、飯も、ご飯も食べておるのか食べていないのか、もう心配してよ、あんたが日頃好きな餅を作って持ってきましたよ。」と言ったら、喜んでよ、その餅を食べたらしいよね。普通の人だったら、餅に石が入っておったのを食べたら取って投げ捨てるでしょう。けど、石もよ、兄さんはがりがり食べたらしい。それで、妹は、「あはあ、これはもう世間の噂のあるように、やっぱ人間は変わっておるなあ。これを食べた後は、もう自分の兄妹であるか親であるかの見境もわからんようになっておるな。」とちゃんと察したんでしょう。子供なんかさらって子ども殺して食べておることも聞いたというからよ、この妹は、「これはもう話しに聞いたように、この子ども殺して食べるか。」と思ってよ、まず、もうこの洞窟(が ま)から逃げることをまず考えたんだよな。そこで、子どももおんぶしているでしょう。その子どもをねじってよ泣かしたらしいよ。そしたら、兄さんが、「なぜ泣くか。」と言ったらさ、「うんこやりたいから泣いておる。」と言ったからよ、この兄さんは、「こっちにさせなさい。」と言うたらしいよ。それで、「いや、こっちにさせたらよ、こっちで臭くて眠れないからよ、外で一回させてきます。」と妹は言うたらしい。「それじゃもうこれをつけて行け。」と言って、兄さんは、何かこういう紐があったから、妹を逃がさんように紐をどこかにくくって出したらしいよ。そうしたら、妹は、こう引っ張ってみては、「あはあ、これは逃げるかなあと思って、こんなに引っ張って見てるなあ。」とちゃんと分かったんでしょう。だから、ゆっくり行って、こっちに何かバンザクか何かの木があったから、あれにくくっておいてよ、もうそのあい間に逃げたらしいよね。ところが兄さんはあんまり遅いもんだからよ、出てみたらもう逃げて行くのが見えたらしいよな。逃げたところは、どこかと思えば、平家の落ち武者の墓場を作ってあるところで、そこに走って逃げたけど、追いかけて来るのは鬼だから、人間の妹が逃げられなくなって、そこに根っこの方が洞窟みたいにこういう穴があいておる梯梧かガジュマルの大木があったらしいよね。それで、この根っこに入ったらしいよな。入ったらしい。この兄さん追いかけやって来て、こっちに入ったを見たから、妹を引っ張って出そうとしたけど、出せなかったもんだから、やっぱ自分の何か洞窟(が ま)に道具があったのか、「あれ取ってきたら、もう出される。」と行って戻っていったらしい。その合間でまたこの妹は逃げたらしい。それで、それからがこの妹は、「こっちの墓の平家の落ち武者のこの方(かた)は普通の人間ではない。この人は神であって助けてもらった。」ということで、それからそこを神としてよ祀られてよ、一人二人これをこの信仰しておったもんがよ、あとはもう、「それではいかない。」と言って、この真栄里部落の信仰の場として拝んだということを聞いておりますよ。それで、真栄里ではもうこの安居御嶽しか信仰の場はありません。
| レコード番号 | 47O341366 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C104 |
| 決定題名 | 安居御嶽由来(共通語) |
| 話者がつけた題名 | アングオンの話 |
| 話者名 | 浜端正雄 |
| 話者名かな | はまはたまさお |
| 生年月日 | 19181030 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県石垣市字真栄里 |
| 記録日 | 19970912 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 石垣市真栄里 T83 A02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 12,20 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | お祖父さんから聞いた |
| 文字化資料 | 石垣島の民話 P158 |
| キーワード | 兄妹,鬼,世間の噂,鍛冶屋,餅,石,子供,洞窟,紐,平家の落ち武者,墓場を,梯梧,ガジュマル,大木,道具,逃げた,神,真栄里部落,信仰,安居御嶽 |
| 梗概(こうがい) | 男、女の兄妹がおったみたい。それで、この兄さんがよ、とにかく家出をしたらしいよ。お家から出てよ、何日なるのか何ヵ月なるのか何年なるのかそこまでわからんけれども、人間というのは悪い人間は鬼の心と言うでしょう。それで、聞くところによるとよ、「あんた家(ち)の兄さんはもう鬼になっている。」という世間の噂だけども、妹は、もういくら世間から噂が聞いてもよ、自分の兄弟だからかわいいでしょう。「まさかうちの兄さんはよ、そんな人間ではない。」とこれを信じなかったらしいよ。それで、信じなかったけれども、あんまりもう噂になっているから、それでもう、「噂で聞くだけでは、信用できないから自分の目二つで確かめてみないといけない。」ということを思っておったらしい。ところが、それじゃこの兄さんはどこにおるかといえばよ、こっちに商工道路があるでしょう。その西から海に下におりるこの道の傍に、昔の鍬、鎌を叩いて仕上げる鍛冶屋(か じ やー)があったらしいから鍛冶屋(かじやー)と言うんです。そこには、海の波が打って、岩がこうなっているんですよね。そこは奥行きもあるところもあれば、無いところもあって、兄さんはああいうところに住んでおるということを聞かされたもんだから、妹は、「それじゃ、行ってみる。」と言ってよ、この兄さんはもう鬼になって心変わっているというもんだから、妹は、これはまた女の知恵といってよ、兄さんは日頃から餅が好きであったみたいさな。だからこの妹はもう上等に餅を作ってよ、その餅の中に、あんこに小さい庭の石っころよ、あれを込めたのを持ってよ、妹には子供がいたからその子供をおんぶして行ったらしいですよね。ところがこの兄さんはよ、「何しにきたか。」といったからよ、「いや、あんたはよ、家出して何ヵ月ぐらいになるからよ、飯も、ご飯も食べておるのか食べていないのか、もう心配してよ、あんたが日頃好きな餅を作って持ってきましたよ。」と言ったら、喜んでよ、その餅を食べたらしいよね。普通の人だったら、餅に石が入っておったのを食べたら取って投げ捨てるでしょう。けど、石もよ、兄さんはがりがり食べたらしい。それで、妹は、「あはあ、これはもう世間の噂のあるように、やっぱ人間は変わっておるなあ。これを食べた後は、もう自分の兄妹であるか親であるかの見境もわからんようになっておるな。」とちゃんと察したんでしょう。子供なんかさらって子ども殺して食べておることも聞いたというからよ、この妹は、「これはもう話しに聞いたように、この子ども殺して食べるか。」と思ってよ、まず、もうこの洞窟(が ま)から逃げることをまず考えたんだよな。そこで、子どももおんぶしているでしょう。その子どもをねじってよ泣かしたらしいよ。そしたら、兄さんが、「なぜ泣くか。」と言ったらさ、「うんこやりたいから泣いておる。」と言ったからよ、この兄さんは、「こっちにさせなさい。」と言うたらしいよ。それで、「いや、こっちにさせたらよ、こっちで臭くて眠れないからよ、外で一回させてきます。」と妹は言うたらしい。「それじゃもうこれをつけて行け。」と言って、兄さんは、何かこういう紐があったから、妹を逃がさんように紐をどこかにくくって出したらしいよ。そうしたら、妹は、こう引っ張ってみては、「あはあ、これは逃げるかなあと思って、こんなに引っ張って見てるなあ。」とちゃんと分かったんでしょう。だから、ゆっくり行って、こっちに何かバンザクか何かの木があったから、あれにくくっておいてよ、もうそのあい間に逃げたらしいよね。ところが兄さんはあんまり遅いもんだからよ、出てみたらもう逃げて行くのが見えたらしいよな。逃げたところは、どこかと思えば、平家の落ち武者の墓場を作ってあるところで、そこに走って逃げたけど、追いかけて来るのは鬼だから、人間の妹が逃げられなくなって、そこに根っこの方が洞窟みたいにこういう穴があいておる梯梧かガジュマルの大木があったらしいよね。それで、この根っこに入ったらしいよな。入ったらしい。この兄さん追いかけやって来て、こっちに入ったを見たから、妹を引っ張って出そうとしたけど、出せなかったもんだから、やっぱ自分の何か洞窟(が ま)に道具があったのか、「あれ取ってきたら、もう出される。」と行って戻っていったらしい。その合間でまたこの妹は逃げたらしい。それで、それからがこの妹は、「こっちの墓の平家の落ち武者のこの方(かた)は普通の人間ではない。この人は神であって助けてもらった。」ということで、それからそこを神としてよ祀られてよ、一人二人これをこの信仰しておったもんがよ、あとはもう、「それではいかない。」と言って、この真栄里部落の信仰の場として拝んだということを聞いておりますよ。それで、真栄里ではもうこの安居御嶽しか信仰の場はありません。 |
| 全体の記録時間数 | 17:39 |
| 物語の時間数 | 9:36 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |