ふかの援助(共通語)

概要

昭和七年、私達が高等科の時にですね、修学旅行で黒島の仲本(なかもと)に行ったことがありました。あの黒島は東筋(あがりすじ)、仲本、それから保里(ほり)、伊古(いこ)、あともう一つの五ヵ所の部落からなっているんすよ。この多良間真牛(たらまもうし)という男の人は仲本部落の出身なんですよ。あの人がね、やっぱり黒島は田んぼがないもんだから、西表は土地が広いから、黒島から西表へ渡ってですね、そこで開墾して、田んぼを作っていたらしいんですよ。で、その人がね、ちょうど西表へ渡ろうとする時にですね、嵐にあって流されたらしいですよ。
 その時に多良間真牛が流されていった所がそこは西表の無人島とかね、多良間島の近くの島といったかね。ほんとに誰も一人もいない所に着いたけど、幸いにして、一つの籠に昔の粟とか、お茶とかを入れたを持っていて、それを持ったまま流れて行ったから、それを山の中に植えて、そこでもう昼は農業をして、山菜を取ったり、夜の間海に出て魚を捕ってきたりして、自分で自給自足で生活して、まる二ヵ年生活しておられたらしいですよ。それでほんとにもう、これはおとぎ話みたいだけど、ちょうどその人が夜にご飯を炊こうとして、薪を燃やしている時に、うとうと居眠りしていたらしいですね。その時に、髭の長い爺さんが現れてね、「あんたはすぐに海に行きなさい。」と言われたらしいですよ。多良間真牛が目覚めて浜に出たら月夜だったんですよ。その晩、海に出てボラがあっちこっちいっぱいいるものだから、ボラを一生懸命捕るのに熱中している時に、何か大物が自分の股の下に来てですね、ひょこっと乗せたらしいよ。乗せられたもんだからね、「これは何事かね。もう自分はこれまでね、この地に流されてきたんだけれど、もうこれで自分はおしまいだね。」と思って諦めて連れて行くままに来たらしいですよ。ちょうど島に着いたのが夜明けで、ぼうとしたころに、多良間真牛を降ろして海に戻ったらしいよ。それがフカだったんですって。朝早くね、潮が引いたもんだから、この島の方が、何か捕りにきたんでしょう。その人が見たら、もうこの多良間真牛はまるでお化けみたいな顔しているもんだからね、「大変だ大変だ。」と島に戻って行ったからね、多良間真牛も行って島の人に、「聞いてくれ聞いてくれ、私はこの村ではないが、私はね、多良間家の真牛という者だ。」と言うと、「うひゃあ、この人もう死んで三年になるよ。今日はもうこの人の法事だよ。」と言っているからね、「いや、聞いてくれ。」と話したら、もうそれを聞いた人は仲本(なかもと)部落に行っても話したらね、もうみんな騒いでね、「とにかく迎えに行こう。」と行って迎えに来たから仲本に行ったらね、その日は多良間真牛本人の三年忌の法事をしておられたと聞いたそうだ。それからその後は、この多良間では、全然食べないようにしているということを聞きまして、また、その家には、そのフカが助けた掛け軸までちゃんと残っていたんですよ。この掛け軸というのは、髭をぼうぼうと生やした多良間真牛がね、渦巻いた海の中に彷徨っている船なんかの絵で、今でもあのお家はあるんじゃないですかね。

再生時間:4:43

民話詳細DATA

レコード番号 47O341303
CD番号 47O34C100
決定題名 ふかの援助(共通語)
話者がつけた題名 多良間真牛
話者名 前盛菊
話者名かな まえもりきく
生年月日 19171011
性別
出身地 沖縄県石垣市字真栄里
記録日 19970912
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石垣市真栄里 T79 A03
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料
キーワード 黒島,多良間真牛,仲本部落,西表,開墾,田んぼ,嵐,流された,無人島,籠,粟,お茶,自給自足,居眠り,髭の長い爺さん,月夜,股の下,フカ,三年忌,法事,掛け軸
梗概(こうがい) 昭和七年、私達が高等科の時にですね、修学旅行で黒島の仲本(なかもと)に行ったことがありました。あの黒島は東筋(あがりすじ)、仲本、それから保里(ほり)、伊古(いこ)、あともう一つの五ヵ所の部落からなっているんすよ。この多良間真牛(たらまもうし)という男の人は仲本部落の出身なんですよ。あの人がね、やっぱり黒島は田んぼがないもんだから、西表は土地が広いから、黒島から西表へ渡ってですね、そこで開墾して、田んぼを作っていたらしいんですよ。で、その人がね、ちょうど西表へ渡ろうとする時にですね、嵐にあって流されたらしいですよ。  その時に多良間真牛が流されていった所がそこは西表の無人島とかね、多良間島の近くの島といったかね。ほんとに誰も一人もいない所に着いたけど、幸いにして、一つの籠に昔の粟とか、お茶とかを入れたを持っていて、それを持ったまま流れて行ったから、それを山の中に植えて、そこでもう昼は農業をして、山菜を取ったり、夜の間海に出て魚を捕ってきたりして、自分で自給自足で生活して、まる二ヵ年生活しておられたらしいですよ。それでほんとにもう、これはおとぎ話みたいだけど、ちょうどその人が夜にご飯を炊こうとして、薪を燃やしている時に、うとうと居眠りしていたらしいですね。その時に、髭の長い爺さんが現れてね、「あんたはすぐに海に行きなさい。」と言われたらしいですよ。多良間真牛が目覚めて浜に出たら月夜だったんですよ。その晩、海に出てボラがあっちこっちいっぱいいるものだから、ボラを一生懸命捕るのに熱中している時に、何か大物が自分の股の下に来てですね、ひょこっと乗せたらしいよ。乗せられたもんだからね、「これは何事かね。もう自分はこれまでね、この地に流されてきたんだけれど、もうこれで自分はおしまいだね。」と思って諦めて連れて行くままに来たらしいですよ。ちょうど島に着いたのが夜明けで、ぼうとしたころに、多良間真牛を降ろして海に戻ったらしいよ。それがフカだったんですって。朝早くね、潮が引いたもんだから、この島の方が、何か捕りにきたんでしょう。その人が見たら、もうこの多良間真牛はまるでお化けみたいな顔しているもんだからね、「大変だ大変だ。」と島に戻って行ったからね、多良間真牛も行って島の人に、「聞いてくれ聞いてくれ、私はこの村ではないが、私はね、多良間家の真牛という者だ。」と言うと、「うひゃあ、この人もう死んで三年になるよ。今日はもうこの人の法事だよ。」と言っているからね、「いや、聞いてくれ。」と話したら、もうそれを聞いた人は仲本(なかもと)部落に行っても話したらね、もうみんな騒いでね、「とにかく迎えに行こう。」と行って迎えに来たから仲本に行ったらね、その日は多良間真牛本人の三年忌の法事をしておられたと聞いたそうだ。それからその後は、この多良間では、全然食べないようにしているということを聞きまして、また、その家には、そのフカが助けた掛け軸までちゃんと残っていたんですよ。この掛け軸というのは、髭をぼうぼうと生やした多良間真牛がね、渦巻いた海の中に彷徨っている船なんかの絵で、今でもあのお家はあるんじゃないですかね。
全体の記録時間数 5:43
物語の時間数 4:43
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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