魚女房(共通語)

概要

昔々、一人の漁師が投網(とあみ)で魚を捕って暮らしていた。ある日、その日に限って獲物(えもの)がないので、「そろそろ帰ろうかな。」と思って最後の網を投げて引上げると、美しい魚が一匹入っていた。あまり美しい魚なので、漁師は、食べるのが惜しくなって家の水甕(みずがめ)で飼うことにした。漁師は次の日、いつものように漁に出て、夕方になって家に帰ってみると、たくさんの御馳走(ごちそう)が並んでいた。漁師は、「どこかの家でお祝いでもあって届けてくれたんだろう。」と思って久々の御馳走を平らげた。次の日も、また次の日も家に帰ると御馳走があるので、不思議に思って近くに住む物知りの年寄りに聞いてみた。「毎日家に帰ると御馳走が並んでいる。お祝いがあったとも聞かないけど、どうして毎日御馳走があるんだろう。」と言うと物知りの年寄りは、「そんなら、明日はいつものように漁に出たら、いつもより早めに帰って水甕(みじがーみ)の上に大きな蒲葵扇(くばおうぎ)を被せなさい。」と知恵を授けてくれた。漁師は翌日早々に漁を切上げると、大きな蒲葵扇を持って家へ帰った。家では、誰もいないはずだが、台所に煙が立っていた。台所を見たいと思ったが急いで水甕に行き、教えられたように蒲葵扇を水甕の上にばっと被せた。するといつの間にか漁師の側に美しい娘が立っていた。漁師が驚いて、「あなたは誰ですか。」と尋ねると、「私は甕の中の魚です。あなたに助けていただいたお礼に食事を作っていました。」と言った。それから、人間の娘になった魚は漁師と仲良く暮らすようになり、家は豊かになった。そんなある日、漁師がふともらした。「不思議なこともあるもんだ。魚から人間になれるなんて。」娘はそれを聞くと、「あなたは言ってはならないことをおっしゃいました。私はもう海に帰らなければなりません。」と言った。漁師が「帰れるものなら帰りなさい。」と言うと、女性は箒で台所を掃くと竈の灰をみんな取り出して風呂敷に包み頭に乗せて家を出て行った。漁師は「どこへ行くんだろう。」と後をつけて行くと女性は海へ行き、波の中に入ってとうとう見えなくなってしまった。漁師は、「仕方がないな。でもあの豊かな家で一人で暮すさ。」と思って家へ帰ると、家は昔のあばら家になっていた。漁師は悲しくなって、また戻って娘が入った海に行くと、「バンドンクイ〔私も行く〕、バンドンクイ。バノンドンクイーバノンドンクイー」と言って、行ったり来たりして鳴いているうちに、その漁師はとうとうバンドンクイと鳴くクイナ鳥になってしまった。

再生時間:4:26

民話詳細DATA

レコード番号 47O340503
CD番号 47O34C035
決定題名 魚女房(共通語)
話者がつけた題名 クイナ鳥の由来
話者名 山根慶子
話者名かな やまねけいこ
生年月日 19241105
性別
出身地 沖縄県石垣市字新川
記録日 19970913
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石垣市字新川 T43 A10
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12
発句(ほっく) むかしむかし
伝承事情 慶応元年生まれのお祖母さんから聞いた
文字化資料 石垣島の民話 P17 八重山諸島民話集 P29
キーワード 漁師,投網,美しい魚,水甕,飼う,御馳走,物知りの年寄り,蒲葵扇,知恵,美しい娘,お礼,正体,人間の娘,豊か,立派な家,言ってはならないこと,約束,箒,竈の灰,風呂敷,海,あばら家,バンドンクイ,クイナ鳥,魚女房,禁止
梗概(こうがい) 昔々、一人の漁師が投網(とあみ)で魚を捕って暮らしていた。ある日、その日に限って獲物(えもの)がないので、「そろそろ帰ろうかな。」と思って最後の網を投げて引上げると、美しい魚が一匹入っていた。あまり美しい魚なので、漁師は、食べるのが惜しくなって家の水甕(みずがめ)で飼うことにした。漁師は次の日、いつものように漁に出て、夕方になって家に帰ってみると、たくさんの御馳走(ごちそう)が並んでいた。漁師は、「どこかの家でお祝いでもあって届けてくれたんだろう。」と思って久々の御馳走を平らげた。次の日も、また次の日も家に帰ると御馳走があるので、不思議に思って近くに住む物知りの年寄りに聞いてみた。「毎日家に帰ると御馳走が並んでいる。お祝いがあったとも聞かないけど、どうして毎日御馳走があるんだろう。」と言うと物知りの年寄りは、「そんなら、明日はいつものように漁に出たら、いつもより早めに帰って水甕(みじがーみ)の上に大きな蒲葵扇(くばおうぎ)を被せなさい。」と知恵を授けてくれた。漁師は翌日早々に漁を切上げると、大きな蒲葵扇を持って家へ帰った。家では、誰もいないはずだが、台所に煙が立っていた。台所を見たいと思ったが急いで水甕に行き、教えられたように蒲葵扇を水甕の上にばっと被せた。するといつの間にか漁師の側に美しい娘が立っていた。漁師が驚いて、「あなたは誰ですか。」と尋ねると、「私は甕の中の魚です。あなたに助けていただいたお礼に食事を作っていました。」と言った。それから、人間の娘になった魚は漁師と仲良く暮らすようになり、家は豊かになった。そんなある日、漁師がふともらした。「不思議なこともあるもんだ。魚から人間になれるなんて。」娘はそれを聞くと、「あなたは言ってはならないことをおっしゃいました。私はもう海に帰らなければなりません。」と言った。漁師が「帰れるものなら帰りなさい。」と言うと、女性は箒で台所を掃くと竈の灰をみんな取り出して風呂敷に包み頭に乗せて家を出て行った。漁師は「どこへ行くんだろう。」と後をつけて行くと女性は海へ行き、波の中に入ってとうとう見えなくなってしまった。漁師は、「仕方がないな。でもあの豊かな家で一人で暮すさ。」と思って家へ帰ると、家は昔のあばら家になっていた。漁師は悲しくなって、また戻って娘が入った海に行くと、「バンドンクイ〔私も行く〕、バンドンクイ。バノンドンクイーバノンドンクイー」と言って、行ったり来たりして鳴いているうちに、その漁師はとうとうバンドンクイと鳴くクイナ鳥になってしまった。
全体の記録時間数 4:35
物語の時間数 4:26
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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