フカに助けられた男(共通語)

概要

昔、波照間でよ、崎山節を作った垣本松吉って言う人がお盆は暇だから魚捕りに行ったんですよ。ところがこの垣本松吉って言う人はよ、魚捕りに行ったままお盆を済ましても家に帰ってこんから部落で捜索したんですよ。しかし、捜索しても全然行方は分からんのですよ。そして、これは私の若いときの話ですが、そのころ崎山にいた私に、西表炭鉱の人から、私が責任者になって西表炭鉱の屋根を葺く茅(かや)を刈ってくれって頼みに来たんですよ。だから、私は崎山と網取、船浮三か村の人を頼んで崎山裏のユクイチーヂの下というところから茅を刈ったんです。その茅刈りのときは、朝は八時に行って夕方五時に帰って来るんですよ。朝行ったらわしら行く途中に田んぼの畦(あぜ)に裸の男の人が座っとるんですよ。そのとき私等は、組を作って歩いて行くからよ、組の人が、「やあ、これ炭鉱の逃亡人だ。」と言うさ、「そうかな。」と私も言っておるうちに、そこに、保田盛(ふ た もり)て言う人が、田んぼの見回りに来とるんですが、その人は、裸の男の人を見て、死んどると思ってよ、ゆっくり行っとるわけ。「どっかの炭鉱の逃亡人が来てここで死んどる。厄介なことになったな。」と思っておったら、寝ている男が飛び起きたから、保田盛(ふ た もり)さんも、起き上がった男もびっくりして、こうなった。向こうもびっくりして、ここもびっくりして。びっくりしてよ、二人ともびっくりして、保田盛(ふ た もり)さんが、「あんたはどこから来たか。」て言うたんですが、相手も無口で物言わんのですよ。私が、「あんた食事はどうか。」と聞いても、やはりものを言わず、黙っておるんですよ。見たらお腹空いてるようだから、保田盛さんは村に帰って、自分の家(うち)で弁当作らして、部落の会長の宮良松さんには、「ああいう者が私の田んぼに来とる。」と報告したら、会長は早速その人を見にきて、この人が見たら、「水中眼鏡(すいちゅうめがね)を持っておるから、これ炭鉱の鉱夫の逃亡人でない。これはどこの人か。」と言うんです。会長は自分の着物持って来ておるから、その着物を着せてやって、「あんたはどこから来たか。」と聞いても目をキョロキョロして見るばかりで物も言わん。そして今度は、保田盛さんが持ってきたご飯やお茶はみんなたいらげたらしい。着物も着せてあるから、今度は部落に行こうと言って立たせようとしても全然立たんのですよ。だから今度は、会長の宮良松さんは、一緒に来た人達に、「私らはここで担架を作って担架に乗せてイドマリまで歩いて降りるから、残りは行って船をイドマリて言うところに回してこい。」言って、担架を作って乗せるとイドマリに送って船に乗せて来て船が浜に着いたから担架を担いで浜に降りたんですよ。そして、「ハイザカに駐在所はあるからハイザカに行こう。」って皆が行ったんですよ。今度は巡査の前だから物言うと思って行ったら巡査がいくら言うてもこの男の人は、黙って目はキョロキョロしてわしら見たり巡査見たりしているが、巡査の前でも物言わんですよ。あっという間に日は暮れたから、巡査が、「あんたらはこれまで連れてきてくれてありがとう。日は暮れておるからあんた方は帰りなさい。これは私が見て紹介をやる。」と言うから、わしらは帰ったんですよ。帰ったら後で巡査から、「これは波照間の人であって、垣本松吉と言う。」と通知があったんですよ。そのとき八重山市庁長の仲本幸信と言う人が来とって、その人は波照間の出身だから、その人に聞いたんですよ。そしたら、「これは私らの親戚で、行方不明になったから捜索していたがここに来たのが不思議だ。」と言って、「あなたはどんなにして、波照間から崎山まで泳いで来たか。」と聞いたら、「鱶な、鱶、鱶。」て言う。昔は鮫を鱶というから身体を見たら、太い股が赤くただれているんですよ。「なるほど。鱶に乗って崎山まで来とったな。」と仲本幸信さんは思ってみんなに報告しとるんですよ。「ああ、そうか。鱶に助けてもらってありがたかったな。」てみんな喜んでたんですよ。さあそれから、仲本幸信さんは、「この人は、崎山節を作った垣本マツに引っ張られて崎山まで来たんだな。」て言っていたんです。この垣本松吉という人は、「波照間に帰っても助けて。」と言う一言以外は何とも言わんですよ。そして、女の人が見えたらどこまでも追っかけたから部落でこれを出さんように牢屋みたいなのを作って、そこに入れておいても、力があるからそれを壊して出たこともあったんですよ。そういうふうにしておるうちに後は亡くなったそうです。

再生時間:8:31

民話詳細DATA

レコード番号 47O340752
CD番号 47O34C058
決定題名 フカに助けられた男(共通語)
話者がつけた題名
話者名 川平永美
話者名かな かびらえいび
生年月日 19030218
性別
出身地 沖縄県竹富町網取
記録日 19970310
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 石垣市登野城 T02 A07
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 12,20
発句(ほっく)
伝承事情 お祖父さん、お祖母さんから聞いた
文字化資料
キーワード 波照間,崎山節,垣本松吉,お盆,魚捕り,崎山,西表炭鉱,ユクイチーヂ,田んぼの畦,裸の男の人,保田盛さん,びっくりして,無口,宮良松さん,水中眼鏡,担架,イドマリ,ハイザカ,駐在所,巡査,八重山市庁長,仲本幸信,親戚,行方不明,捜索,鱶,太い股,赤くただれている,牢屋
梗概(こうがい) 昔、波照間でよ、崎山節を作った垣本松吉って言う人がお盆は暇だから魚捕りに行ったんですよ。ところがこの垣本松吉って言う人はよ、魚捕りに行ったままお盆を済ましても家に帰ってこんから部落で捜索したんですよ。しかし、捜索しても全然行方は分からんのですよ。そして、これは私の若いときの話ですが、そのころ崎山にいた私に、西表炭鉱の人から、私が責任者になって西表炭鉱の屋根を葺く茅(かや)を刈ってくれって頼みに来たんですよ。だから、私は崎山と網取、船浮三か村の人を頼んで崎山裏のユクイチーヂの下というところから茅を刈ったんです。その茅刈りのときは、朝は八時に行って夕方五時に帰って来るんですよ。朝行ったらわしら行く途中に田んぼの畦(あぜ)に裸の男の人が座っとるんですよ。そのとき私等は、組を作って歩いて行くからよ、組の人が、「やあ、これ炭鉱の逃亡人だ。」と言うさ、「そうかな。」と私も言っておるうちに、そこに、保田盛(ふ た もり)て言う人が、田んぼの見回りに来とるんですが、その人は、裸の男の人を見て、死んどると思ってよ、ゆっくり行っとるわけ。「どっかの炭鉱の逃亡人が来てここで死んどる。厄介なことになったな。」と思っておったら、寝ている男が飛び起きたから、保田盛(ふ た もり)さんも、起き上がった男もびっくりして、こうなった。向こうもびっくりして、ここもびっくりして。びっくりしてよ、二人ともびっくりして、保田盛(ふ た もり)さんが、「あんたはどこから来たか。」て言うたんですが、相手も無口で物言わんのですよ。私が、「あんた食事はどうか。」と聞いても、やはりものを言わず、黙っておるんですよ。見たらお腹空いてるようだから、保田盛さんは村に帰って、自分の家(うち)で弁当作らして、部落の会長の宮良松さんには、「ああいう者が私の田んぼに来とる。」と報告したら、会長は早速その人を見にきて、この人が見たら、「水中眼鏡(すいちゅうめがね)を持っておるから、これ炭鉱の鉱夫の逃亡人でない。これはどこの人か。」と言うんです。会長は自分の着物持って来ておるから、その着物を着せてやって、「あんたはどこから来たか。」と聞いても目をキョロキョロして見るばかりで物も言わん。そして今度は、保田盛さんが持ってきたご飯やお茶はみんなたいらげたらしい。着物も着せてあるから、今度は部落に行こうと言って立たせようとしても全然立たんのですよ。だから今度は、会長の宮良松さんは、一緒に来た人達に、「私らはここで担架を作って担架に乗せてイドマリまで歩いて降りるから、残りは行って船をイドマリて言うところに回してこい。」言って、担架を作って乗せるとイドマリに送って船に乗せて来て船が浜に着いたから担架を担いで浜に降りたんですよ。そして、「ハイザカに駐在所はあるからハイザカに行こう。」って皆が行ったんですよ。今度は巡査の前だから物言うと思って行ったら巡査がいくら言うてもこの男の人は、黙って目はキョロキョロしてわしら見たり巡査見たりしているが、巡査の前でも物言わんですよ。あっという間に日は暮れたから、巡査が、「あんたらはこれまで連れてきてくれてありがとう。日は暮れておるからあんた方は帰りなさい。これは私が見て紹介をやる。」と言うから、わしらは帰ったんですよ。帰ったら後で巡査から、「これは波照間の人であって、垣本松吉と言う。」と通知があったんですよ。そのとき八重山市庁長の仲本幸信と言う人が来とって、その人は波照間の出身だから、その人に聞いたんですよ。そしたら、「これは私らの親戚で、行方不明になったから捜索していたがここに来たのが不思議だ。」と言って、「あなたはどんなにして、波照間から崎山まで泳いで来たか。」と聞いたら、「鱶な、鱶、鱶。」て言う。昔は鮫を鱶というから身体を見たら、太い股が赤くただれているんですよ。「なるほど。鱶に乗って崎山まで来とったな。」と仲本幸信さんは思ってみんなに報告しとるんですよ。「ああ、そうか。鱶に助けてもらってありがたかったな。」てみんな喜んでたんですよ。さあそれから、仲本幸信さんは、「この人は、崎山節を作った垣本マツに引っ張られて崎山まで来たんだな。」て言っていたんです。この垣本松吉という人は、「波照間に帰っても助けて。」と言う一言以外は何とも言わんですよ。そして、女の人が見えたらどこまでも追っかけたから部落でこれを出さんように牢屋みたいなのを作って、そこに入れておいても、力があるからそれを壊して出たこともあったんですよ。そういうふうにしておるうちに後は亡くなったそうです。
全体の記録時間数 9:05
物語の時間数 8:31
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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