昔、大川家の先祖の人が山奥に木こりに行って山仕事しとったら、猫がもうものすごい鳴き声でわあわあわあわめいてるらしいですね。それが同じ所でで鳴いているもんだから、「これはおかしいぞ。」と覗きに行ったらしいですね。そしたら、猫が片足をなんか穴に突っ込んでわいわい騒いでるもんで、「これはヤシガニに咬まれて穴の中に足突っ込んでいるんだな。」と分かったから自分が持ってる鋸(のこ)で、ヤシガニの鋏を切って放してやったらしいんですよ。猫はもう片足から血どろどろ流しながら、そのまま逃げたらしいんですね。その人は、「やれやれ。」と自分の仕事をし、仕事を終わって家に帰ってきたら、その自分が放してやった片足の傷ついた猫が、ニャオっていって自分を迎えたってさ。「おかしいぞ。これはなんだろう。」って言ってね、「やっぱり生き物でも助けた人は分かるんだな。」って、その後はもう猫を家族同様にして、暮らしていたらしいですね。あるとき、その人が与那国で集めた人頭税の米俵を石垣まで運ぶようになったらしいですよね。だから、猫に、「んじゃ、石垣に行って来るよ。ちゃんと家の番しなさいよ。」と猫に言いつけて、出たらしいんだ。だけど船が港口を出ると、その猫が船底からニャオって出てきたらしいですね。「これはおかしいぞ。」っと思ってね、与那国の人は猫や犬を船に乗せて旅をするととっても縁起が悪いと昔から言われてるから、「これはいけない。」とまた家に連れ帰って柱に繋いでね、「今日は、一緒には行けないから、あんたは後を着いてこないで家の番しときなさいよ。」とちゃんと話してまた出て来たらしいんだけど、今度は島を離れて向こうの西表との間まで行くと船底からまたその猫が出てきたってさ。そこまで来たら船を返すことはできないから、「もう、しょうがない。」と、そのまま石垣まで連れて行った。その後で宮古からも石垣からも、首里の王様のところに一緒に米俵が届くと、与那国と判のついた俵がだけが全然無傷で届いた。与那国から石垣までは、そのころは帆前船だから、一〇日か半月ぐらいかかるか分からないけど、一番遠い与那国の印のつい俵だけが鼠に咬まれないで届いて不思議たからね、王様は、「これは不思議だ。調査してきなさい。」と役人を使って調べると、与那国から米俵を運んできた船には、猫が乗っていたことが分かったから、それを王様に報告すると、そのころ首里の倉庫にはたくさん鼠がいたので、猫という猫みんな連れてきて鼠を退治させようとしたが、退治できなかったから、王様は、「じゃ、その猫だったら大丈夫だ。ぜひその猫を買ってきなさい。」と言うので、今度は与那国の大川家の先祖の家まで役人が来て、「その猫を譲ってくれ。」と言ったので、その人は、「はい、どうぞ譲ります。」と言うから猫を船に乗っけて行ったら、その猫は大川家に逃げて来てるわけですよね。それが二回も逃げて来たので役人は仕方なく首里に帰って、王様に、「猫は飼い主から離れないから、自分達にはもう手に負えません。」と言ったら、王様は、「それじゃ、飼い主も一緒に連れてきなさい。」と言うから、また役人は折り返して与那国に来て、大川家の人に、「飼い主のあんたも猫に一緒来いという命令だ。」と言ったので、その人はもう驚いてですね、「自分は悪いことした覚えはないから首里には行かない。」と言うので、役人はあわてて、「そういうことじゃない。王様が猫を欲しいっていうんだから、ぜひ猫と一緒に来て下さい。」と今度は土下座して拝んで頼んだ。その人は事情が分かったので、「そんなら、猫も譲って私も首里に行くから、土下座しないでゆっくりしなさい。さあ、もっと寄って来て、お茶も飲みなさい、煙草も吸いなさい。」と言って、猫と一緒に船に乗った。その人は猫と一緒に首里に行って猫を倉庫に放したら、その晩にうちに倉庫にたくさんいた鼠をみんな喰いつぶして大手柄をしたから、王様はとても喜んで、「これはもう願ったり適ったりだ。あんたには雲親上(ぺーち ん)という位をあげるから、この猫は自分に譲ってくれ。」と言うので、その人はその猫を首里の王様の所に置いて与那国の家に帰ってきた。そしたら、どうした帰ってきたか分からないが、家の中からまたニャオという猫の鳴き声がした。なんと、首里に置いてきたはずの猫がちゃんと家に帰ってきていた。それでね、ここの与那国の猫小(まやーぐぁー)って言う歌でも与那国の猫は、鼠(うやんちゅ)騙しが上手で、与那国の女は男を騙すのが上手だって歌っているが、これは本当は王様を騙したってことは言えないから替え歌にして作っているんです。今、この雲親上(ぺーち ん)のお墓は割目(わりめ)という所にあって、子孫達がちゃんと掃除して祀っていますよ。
| レコード番号 | 47O341689 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C128 |
| 決定題名 | 与那国の猫小(共通語) |
| 話者がつけた題名 | 与那国のマヤーグワァー |
| 話者名 | 冨里康子 |
| 話者名かな | ふさとやすこ |
| 生年月日 | 19160723 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡与那国町祖納 |
| 記録日 | 19960918 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那国町祖納 T04 B05 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | ムカシ |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 八重山諸島民話集 P 103 |
| キーワード | 大川家,先祖,猫,ヤシガニ,与那国,人頭税,米俵,石垣,船底,与那国,首里,王様,鼠,退治,飼い主,雲親上,猫小,まやーぐぁー,歌,替え歌,お墓,割目 |
| 梗概(こうがい) | 昔、大川家の先祖の人が山奥に木こりに行って山仕事しとったら、猫がもうものすごい鳴き声でわあわあわあわめいてるらしいですね。それが同じ所でで鳴いているもんだから、「これはおかしいぞ。」と覗きに行ったらしいですね。そしたら、猫が片足をなんか穴に突っ込んでわいわい騒いでるもんで、「これはヤシガニに咬まれて穴の中に足突っ込んでいるんだな。」と分かったから自分が持ってる鋸(のこ)で、ヤシガニの鋏を切って放してやったらしいんですよ。猫はもう片足から血どろどろ流しながら、そのまま逃げたらしいんですね。その人は、「やれやれ。」と自分の仕事をし、仕事を終わって家に帰ってきたら、その自分が放してやった片足の傷ついた猫が、ニャオっていって自分を迎えたってさ。「おかしいぞ。これはなんだろう。」って言ってね、「やっぱり生き物でも助けた人は分かるんだな。」って、その後はもう猫を家族同様にして、暮らしていたらしいですね。あるとき、その人が与那国で集めた人頭税の米俵を石垣まで運ぶようになったらしいですよね。だから、猫に、「んじゃ、石垣に行って来るよ。ちゃんと家の番しなさいよ。」と猫に言いつけて、出たらしいんだ。だけど船が港口を出ると、その猫が船底からニャオって出てきたらしいですね。「これはおかしいぞ。」っと思ってね、与那国の人は猫や犬を船に乗せて旅をするととっても縁起が悪いと昔から言われてるから、「これはいけない。」とまた家に連れ帰って柱に繋いでね、「今日は、一緒には行けないから、あんたは後を着いてこないで家の番しときなさいよ。」とちゃんと話してまた出て来たらしいんだけど、今度は島を離れて向こうの西表との間まで行くと船底からまたその猫が出てきたってさ。そこまで来たら船を返すことはできないから、「もう、しょうがない。」と、そのまま石垣まで連れて行った。その後で宮古からも石垣からも、首里の王様のところに一緒に米俵が届くと、与那国と判のついた俵がだけが全然無傷で届いた。与那国から石垣までは、そのころは帆前船だから、一〇日か半月ぐらいかかるか分からないけど、一番遠い与那国の印のつい俵だけが鼠に咬まれないで届いて不思議たからね、王様は、「これは不思議だ。調査してきなさい。」と役人を使って調べると、与那国から米俵を運んできた船には、猫が乗っていたことが分かったから、それを王様に報告すると、そのころ首里の倉庫にはたくさん鼠がいたので、猫という猫みんな連れてきて鼠を退治させようとしたが、退治できなかったから、王様は、「じゃ、その猫だったら大丈夫だ。ぜひその猫を買ってきなさい。」と言うので、今度は与那国の大川家の先祖の家まで役人が来て、「その猫を譲ってくれ。」と言ったので、その人は、「はい、どうぞ譲ります。」と言うから猫を船に乗っけて行ったら、その猫は大川家に逃げて来てるわけですよね。それが二回も逃げて来たので役人は仕方なく首里に帰って、王様に、「猫は飼い主から離れないから、自分達にはもう手に負えません。」と言ったら、王様は、「それじゃ、飼い主も一緒に連れてきなさい。」と言うから、また役人は折り返して与那国に来て、大川家の人に、「飼い主のあんたも猫に一緒来いという命令だ。」と言ったので、その人はもう驚いてですね、「自分は悪いことした覚えはないから首里には行かない。」と言うので、役人はあわてて、「そういうことじゃない。王様が猫を欲しいっていうんだから、ぜひ猫と一緒に来て下さい。」と今度は土下座して拝んで頼んだ。その人は事情が分かったので、「そんなら、猫も譲って私も首里に行くから、土下座しないでゆっくりしなさい。さあ、もっと寄って来て、お茶も飲みなさい、煙草も吸いなさい。」と言って、猫と一緒に船に乗った。その人は猫と一緒に首里に行って猫を倉庫に放したら、その晩にうちに倉庫にたくさんいた鼠をみんな喰いつぶして大手柄をしたから、王様はとても喜んで、「これはもう願ったり適ったりだ。あんたには雲親上(ぺーち ん)という位をあげるから、この猫は自分に譲ってくれ。」と言うので、その人はその猫を首里の王様の所に置いて与那国の家に帰ってきた。そしたら、どうした帰ってきたか分からないが、家の中からまたニャオという猫の鳴き声がした。なんと、首里に置いてきたはずの猫がちゃんと家に帰ってきていた。それでね、ここの与那国の猫小(まやーぐぁー)って言う歌でも与那国の猫は、鼠(うやんちゅ)騙しが上手で、与那国の女は男を騙すのが上手だって歌っているが、これは本当は王様を騙したってことは言えないから替え歌にして作っているんです。今、この雲親上(ぺーち ん)のお墓は割目(わりめ)という所にあって、子孫達がちゃんと掃除して祀っていますよ。 |
| 全体の記録時間数 | 6:26 |
| 物語の時間数 | 6:26 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◯ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |