昔とぅん、昔、晴明(せいめい)という人とトゥブンコと言う人が二人がいて、その二人が沖縄で一番頭の良い人だったが、その二人が争いをした。「この島は、私が治めるのだ。」「私が治めるのだ。」と二人で争っているうちに、晴明という人は神様の所にある本を習ってきてはじめて島を治めることができると考えて、神様に習おうと天に上ることにした。すると、それを聞いたトゥブンコは晴明に言った。「俺はいまさら天に行って習わなくても分かっている。」晴明は、「いや、やはり天に行かなければ分からない。」と言うと、トゥブンコが、「そんなら賭けをしよう。どちらが負けても、負けた方の首を取ることにしよう。」晴明もその賭けをすることを承知して、妻に送られて家を出て、天に行って習うために山に上って行くと、途中に大きな河があった。どうしてその河を渡ろうかと思案していると、そこに大きな蛇がいて、「あなたはどうしてここに来たのか。」と聞いた。「私は神様から習うために天に行こうと思っている。」「そうか、じゃこの河は私が渡してやるから、私らどうすれば龍になれか聞いて来て下さらないかね。」「じゃ、あなたが川を渡してくれたら、私が聞いてきてあげよう。」と言った。蛇は晴明を背中に乗せて河を渡してくれた。またどんどん遠い山まで行って頂上に近くに登って行くと、そこに家があって、その家にはとても美しく生まれついた子だが、生まれた時から口のきけない娘がいた。その家の人が晴明に聞いた。「あなたはどうして来たのですか。」「私は神様から習うために天に行こうと思っている。」「それなら、私が天に乗せて神様の所へ上らせてあげるから、私の子供はどうすれば物が言うようになるか、聞いてきて下さらないかね。」と言ったので、「はい。」と言うと、「じゃ、目を閉じて下さい。」と目を閉じさせると晴明はちょっとの間で天に上がって神様の傍にいた。晴明は神様の所の本を貰って、その本に書いてあることを教えてもらった。その後で、晴明が、「龍になるはずの蛇が龍になれないでいて、どうすれば自分は龍になれるか聞いてきてくれと言うが、どうすればいいのですかね。」と尋ねると、「その龍は美しい玉を二つ持っている。その美しい玉一つを人に分けたら、龍になれると言いなさい。」と教えた。また、「一軒家の女の子が物が言えないでいるが、どうすれば物が言えるようになるか聞いて来て下さいと頼まれたましたが、どうすれば答えればいいのでしょうか。」と言うと、「それは、自分が物を言いたくなれば物を言うようになる。」とおっしゃった。晴明が下へ降りてきて、物を言わない娘の家に来ると、その家の人たちは、「私の子供はどうすれば物が言えるとおっしゃったかね。」と言ったので、「あなたの子供は、自分が物を言いたくなれば物を言うようになるとおっしゃった。」と教えて、また下へ降りてくると、河の所にいる蛇がいた。蛇は、「どうすれば自分は龍になれるとおっしゃったかね。」と聞いた。「あなたが美しい玉を二つ持っているから、その玉一つを人にくれたらすぐ龍になって天に昇れると教えて下さった。」と言ったので、すぐに蛇はその美しい玉一つを晴明に分けてあげると、蛇はすぐ龍になり、天に上がっていった。晴明が天から家に帰って来てその夜疲れて寝ていると、妻が晴明の本を盗みトゥブンコのところに持って行った。トブンコがその本を書き写すと、妻はまたそれを元のところに返しておいた。次の日、夜が明けるとトゥブンコが来た。「さあ、お前は天に行って習ってくると言ったが、何を習って来たか。」と言ったので、「私は神様の本を習ってきた。」と言ったところ、「じゃ、どんな物か。」と言ったので、「こんな物だ。」と出すと、その本を妻が盗んでトゥブンコに書かせたていたから、「そんな物だったら、私も前々から持っている。お前の負けだ。約束だから、お前の首を取る。」と言っているうちに、天からごらんになっていた神様が降りてこられて、トゥブンコに言った。「お前は誰から習った物か。」と尋ねたら、トゥブンコは何も返答することができなくなって、「負けた。」と言った。神様は、トゥブンコと晴明の妻は一緒になっているから、トゥブンコと晴明の妻の首も一緒に取って捨て天に昇って行った。晴明がお礼に天に行った帰りに口のきけない娘の家の前を通ると、その娘が、「私があなたの妻になります。」と始めて物を言った。晴明は、その娘と夫婦になって島に帰ると、晴明は大変な大物になり、島中の行事や決まりを決めたので、その徳を讃えて、晴明を祭る行事を清明祭というようになった。だから、この島では清明祭では祖先への祭りごとではなく晴明という人を島中の人が拝んでいるんだよ。
| レコード番号 | 47O341500 |
|---|---|
| CD番号 | 47O34C116 |
| 決定題名 | 清明祭の由来(方言) |
| 話者がつけた題名 | 山神と童子 |
| 話者名 | 前粟蔵永渡 |
| 話者名かな | まえあわぐらえいと |
| 生年月日 | 19061102 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県八重山郡与那国町 |
| 記録日 | 19760803 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那国町久部良 T50 B04 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | ンカチトンソー、ンカチ |
| 伝承事情 | 姉の夫のおじさんで美崎さんという瓦焼職人の人から聞いた。採訪時から数えて十年ほど前に孫に話したこともある。 |
| 文字化資料 | 日本昔話通観第26巻 P390 八重山諸島民話集 P70 |
| キーワード | 晴明,トゥブンコ,沖縄,争い,治める,神様,本,天,賭け,首,妻,山,河,蛇,龍,家,口のきけない娘,美しい玉,盗み,行事,決まり,清明祭 |
| 梗概(こうがい) | 昔とぅん、昔、晴明(せいめい)という人とトゥブンコと言う人が二人がいて、その二人が沖縄で一番頭の良い人だったが、その二人が争いをした。「この島は、私が治めるのだ。」「私が治めるのだ。」と二人で争っているうちに、晴明という人は神様の所にある本を習ってきてはじめて島を治めることができると考えて、神様に習おうと天に上ることにした。すると、それを聞いたトゥブンコは晴明に言った。「俺はいまさら天に行って習わなくても分かっている。」晴明は、「いや、やはり天に行かなければ分からない。」と言うと、トゥブンコが、「そんなら賭けをしよう。どちらが負けても、負けた方の首を取ることにしよう。」晴明もその賭けをすることを承知して、妻に送られて家を出て、天に行って習うために山に上って行くと、途中に大きな河があった。どうしてその河を渡ろうかと思案していると、そこに大きな蛇がいて、「あなたはどうしてここに来たのか。」と聞いた。「私は神様から習うために天に行こうと思っている。」「そうか、じゃこの河は私が渡してやるから、私らどうすれば龍になれか聞いて来て下さらないかね。」「じゃ、あなたが川を渡してくれたら、私が聞いてきてあげよう。」と言った。蛇は晴明を背中に乗せて河を渡してくれた。またどんどん遠い山まで行って頂上に近くに登って行くと、そこに家があって、その家にはとても美しく生まれついた子だが、生まれた時から口のきけない娘がいた。その家の人が晴明に聞いた。「あなたはどうして来たのですか。」「私は神様から習うために天に行こうと思っている。」「それなら、私が天に乗せて神様の所へ上らせてあげるから、私の子供はどうすれば物が言うようになるか、聞いてきて下さらないかね。」と言ったので、「はい。」と言うと、「じゃ、目を閉じて下さい。」と目を閉じさせると晴明はちょっとの間で天に上がって神様の傍にいた。晴明は神様の所の本を貰って、その本に書いてあることを教えてもらった。その後で、晴明が、「龍になるはずの蛇が龍になれないでいて、どうすれば自分は龍になれるか聞いてきてくれと言うが、どうすればいいのですかね。」と尋ねると、「その龍は美しい玉を二つ持っている。その美しい玉一つを人に分けたら、龍になれると言いなさい。」と教えた。また、「一軒家の女の子が物が言えないでいるが、どうすれば物が言えるようになるか聞いて来て下さいと頼まれたましたが、どうすれば答えればいいのでしょうか。」と言うと、「それは、自分が物を言いたくなれば物を言うようになる。」とおっしゃった。晴明が下へ降りてきて、物を言わない娘の家に来ると、その家の人たちは、「私の子供はどうすれば物が言えるとおっしゃったかね。」と言ったので、「あなたの子供は、自分が物を言いたくなれば物を言うようになるとおっしゃった。」と教えて、また下へ降りてくると、河の所にいる蛇がいた。蛇は、「どうすれば自分は龍になれるとおっしゃったかね。」と聞いた。「あなたが美しい玉を二つ持っているから、その玉一つを人にくれたらすぐ龍になって天に昇れると教えて下さった。」と言ったので、すぐに蛇はその美しい玉一つを晴明に分けてあげると、蛇はすぐ龍になり、天に上がっていった。晴明が天から家に帰って来てその夜疲れて寝ていると、妻が晴明の本を盗みトゥブンコのところに持って行った。トブンコがその本を書き写すと、妻はまたそれを元のところに返しておいた。次の日、夜が明けるとトゥブンコが来た。「さあ、お前は天に行って習ってくると言ったが、何を習って来たか。」と言ったので、「私は神様の本を習ってきた。」と言ったところ、「じゃ、どんな物か。」と言ったので、「こんな物だ。」と出すと、その本を妻が盗んでトゥブンコに書かせたていたから、「そんな物だったら、私も前々から持っている。お前の負けだ。約束だから、お前の首を取る。」と言っているうちに、天からごらんになっていた神様が降りてこられて、トゥブンコに言った。「お前は誰から習った物か。」と尋ねたら、トゥブンコは何も返答することができなくなって、「負けた。」と言った。神様は、トゥブンコと晴明の妻は一緒になっているから、トゥブンコと晴明の妻の首も一緒に取って捨て天に昇って行った。晴明がお礼に天に行った帰りに口のきけない娘の家の前を通ると、その娘が、「私があなたの妻になります。」と始めて物を言った。晴明は、その娘と夫婦になって島に帰ると、晴明は大変な大物になり、島中の行事や決まりを決めたので、その徳を讃えて、晴明を祭る行事を清明祭というようになった。だから、この島では清明祭では祖先への祭りごとではなく晴明という人を島中の人が拝んでいるんだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 8:59 |
| 物語の時間数 | 8:50 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |