猫女房(方言)

概要

昔、夫婦と子供が三人いる五人家族があった。夫は野良仕事で、妻は家事をしながら、子供を育てていた。そのうちに子供たちは成長したが、ある日、母親がご飯を炊き、鍋を竈から下ろして、お釜で炊いた芋を、叩きおにぎりにするつもりなのに、三人の子供たちが見ていると、母がしぐさが人間でなく猫のように四本足の前足二本でしているのを見てびっくりして、「お母さんが猫になった。なんと不思議なことだ。」と驚いて、お父さんの野良帰りを待ちかねているうち、父が帰って来たので、お父さんに、「うちの母さんは猫になって、ご飯を炊いていたがどうしたことか。」と言うと、父はこれは大変だと、隣りの物知りの親を訪ねて、「何かよい方法はないか、教えて下さい。」と頼むと、「そういうことでしたら、今晩、針目に糸を通して準備しておいて、妻が床に入り寝入ったころに本人に気付かれないように、髪の髷に挿しておきなさい。」と教えられたので、夫は教えられたように準備して待ち、晩になり仕事が済み、妻が寝床に入ったので、寝入ったころ髷に知らぬ振りで、相手に気付かれないように挿しておき自分も寝て、次の朝早く起きると、妻は床からいなくなり、夫は庭に出て見たら、針目に貫いた糸は、家から道づたいに張られであるので、夫はそれをしるべにたどって行くと、村外れの岩穴の中に入っていくので、夫はその岩穴の入り口の側に隠れて、不思議なことだと思って、立ち止まっていると、中から話し声が聞えてきた。耳をすまして聞くと妻の猫が、「ああ、痛いよ、痛いよ。お願いだから、私の頭に挿された針を取って捨てて下さい。私は大変なことになっているから助けて。」と言うと、そこにいた友達の猫が、「君は今日限りの命だ。人間を騙した罰だ。今日限り死んでしまうよ。」と言うと、妻の猫が、「笑わすな。私は簡単に敵討ちして見せるよ。今晩中に家に帰って、私が三声鳴けば、私の夫は今晩中に死ぬんだ。」と言い張ると、その友達が、「人間は馬鹿じゃないよ。君がいくらたくらんでも、人間は君よりは物わかりがよくうわ手だよ。人間が、『大和(やまと)の、からすみ山から、飛び出た運取り猫。こら大きな口よ。ダシカフグもあるぞ。クラングウ縄もあるぞ。ダシカフグで突き抜いて、クラングウ縄で縛り付け、高い松の木の頂上に吊し下げて、南風に晒らし、北風に吹き晒らすぞ。これ口の大きいやつ』と言えば、君は死んでしまう。」と猫の友達が言ったので、立ち聞きしてぃた夫は、良いことを聞いたと家に戻って、子供たちと夕飯を済まして、床に入り寝ていると人が寝静まったころ、妻の猫が言ったとおり猫の鳴き声がするので、「こいつにやられてたまるか。」と起き上がると、今朝、聞いたとおりに、「大和のからすみ山から、飛び出て来た運取り猫。こら、口の大きい猫。ダシカフグもあるぞ。クラングウ縄もあるぞ、ダシカフグで突き抜き、クラングウ縄で縛り付けて、高い松の木の頂上に吊るし下げ、南風に晒らし、北風に吹き晒らすぞ。これ口の大きいやつ。」と地割れするくらいの足音を立てて言うと、猫はパッと鳴き止んだので、「帰っていったんだなあ。」と、安心して床に入り、翌朝早く起きて家を一回りすると、猫は家の後ろで死んでいた。

再生時間:3:15

民話詳細DATA

レコード番号 47O341489
CD番号 47O34C115
決定題名 猫女房(方言)
話者がつけた題名
話者名 前粟蔵永渡
話者名かな まえあわぐらえいと
生年月日 19061102
性別
出身地 沖縄県八重山郡与那国町
記録日 19760803
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 与那国町久部良 T50 A05
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく) ンカチトンソー
伝承事情 姉の夫のおじさんで美崎さんという瓦焼職人の人から聞いた。採訪時から数えて十年ほど前に孫に話したこともある。
文字化資料 日本昔話通観第26巻 P397 八重山諸島民話集 P113
キーワード 母親,芋,叩き,子供,しぐさ,猫,父,物知り,針目,糸,髪の髷,しるべ,岩穴,話し声,友達の猫,罰,敵討ち,三声,大和,からすみ山,運取り猫,大きな口,ダシカフグ,クラングウ縄,松の木
梗概(こうがい) 昔、夫婦と子供が三人いる五人家族があった。夫は野良仕事で、妻は家事をしながら、子供を育てていた。そのうちに子供たちは成長したが、ある日、母親がご飯を炊き、鍋を竈から下ろして、お釜で炊いた芋を、叩きおにぎりにするつもりなのに、三人の子供たちが見ていると、母がしぐさが人間でなく猫のように四本足の前足二本でしているのを見てびっくりして、「お母さんが猫になった。なんと不思議なことだ。」と驚いて、お父さんの野良帰りを待ちかねているうち、父が帰って来たので、お父さんに、「うちの母さんは猫になって、ご飯を炊いていたがどうしたことか。」と言うと、父はこれは大変だと、隣りの物知りの親を訪ねて、「何かよい方法はないか、教えて下さい。」と頼むと、「そういうことでしたら、今晩、針目に糸を通して準備しておいて、妻が床に入り寝入ったころに本人に気付かれないように、髪の髷に挿しておきなさい。」と教えられたので、夫は教えられたように準備して待ち、晩になり仕事が済み、妻が寝床に入ったので、寝入ったころ髷に知らぬ振りで、相手に気付かれないように挿しておき自分も寝て、次の朝早く起きると、妻は床からいなくなり、夫は庭に出て見たら、針目に貫いた糸は、家から道づたいに張られであるので、夫はそれをしるべにたどって行くと、村外れの岩穴の中に入っていくので、夫はその岩穴の入り口の側に隠れて、不思議なことだと思って、立ち止まっていると、中から話し声が聞えてきた。耳をすまして聞くと妻の猫が、「ああ、痛いよ、痛いよ。お願いだから、私の頭に挿された針を取って捨てて下さい。私は大変なことになっているから助けて。」と言うと、そこにいた友達の猫が、「君は今日限りの命だ。人間を騙した罰だ。今日限り死んでしまうよ。」と言うと、妻の猫が、「笑わすな。私は簡単に敵討ちして見せるよ。今晩中に家に帰って、私が三声鳴けば、私の夫は今晩中に死ぬんだ。」と言い張ると、その友達が、「人間は馬鹿じゃないよ。君がいくらたくらんでも、人間は君よりは物わかりがよくうわ手だよ。人間が、『大和(やまと)の、からすみ山から、飛び出た運取り猫。こら大きな口よ。ダシカフグもあるぞ。クラングウ縄もあるぞ。ダシカフグで突き抜いて、クラングウ縄で縛り付け、高い松の木の頂上に吊し下げて、南風に晒らし、北風に吹き晒らすぞ。これ口の大きいやつ』と言えば、君は死んでしまう。」と猫の友達が言ったので、立ち聞きしてぃた夫は、良いことを聞いたと家に戻って、子供たちと夕飯を済まして、床に入り寝ていると人が寝静まったころ、妻の猫が言ったとおり猫の鳴き声がするので、「こいつにやられてたまるか。」と起き上がると、今朝、聞いたとおりに、「大和のからすみ山から、飛び出て来た運取り猫。こら、口の大きい猫。ダシカフグもあるぞ。クラングウ縄もあるぞ、ダシカフグで突き抜き、クラングウ縄で縛り付けて、高い松の木の頂上に吊るし下げ、南風に晒らし、北風に吹き晒らすぞ。これ口の大きいやつ。」と地割れするくらいの足音を立てて言うと、猫はパッと鳴き止んだので、「帰っていったんだなあ。」と、安心して床に入り、翌朝早く起きて家を一回りすると、猫は家の後ろで死んでいた。
全体の記録時間数 4:37
物語の時間数 3:15
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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