昔々、上与那原(いーゆなばる)には上与那原子(いーゆなばるしー)という人がいて、下与那原(しちゃゆなばる)には下与那原子(しちゃふなばるしー)という人がいた。二人は闘牛場に一緒に行ったり、いつもどこに何があるから一緒に行こうと言って、非常に仲が良かったそうです。ある日、二人はイザイに出たが、海に行ったら、まだ潮が引いてなかった。少し早いもんだから、浜辺で話をしている時に、上与那原子が下与那原子に言った。「私たち二人はこんなに仲がいいから、あなたに男の子が出来ても女の子が出来ても、私に男の子が出来ても女の子が出来てもいいから、互いの子供たちを結婚させよう」と。そしたら、下与那原子は、「私たちはこんなに仲がいが、もしもその結婚がうまくいっても、そのあとに破産したら、私たちの友情も破産するんじゃないか」「いや、別に破産することはないさ」と、二人でそんな話をしていたって。それから、二人は、眠気がさして寝てしまった。そしたら、下与那原子は、遠い山から火の玉が来る夢をみた。その火の玉が、下与那原子の頭の上に来たらなくなったって。下与那原子は、「これはおかしいなぁ、火の玉が来たんだが」といって目を覚ましてしまった。海を見たら、潮が引いていて、イザイをするのにちょうどよかったから、イザイをして帰っていったって。また、上与那原子は、「下与那原子には女の子が生まれて、上与那原子には男の子が生まれる。下与那原子の女の子は、米の倉を建てて、生涯裕福に暮らせるチヂスーである」という夢を見た。上与那原子は、「これは悪い夢を見たんなぁ」と言って、一言も話さなかったそうだ。それから、数年後、上与那原子、下与那原子二人の妻が妊娠した。上与那原子には男の子、下与那原子には女の子が生まれたって。それから年数もたって、子供達が十七、八に成ったときに、以前の約束もあったので、上与那原子と下与那原子に子供達は結婚することになった。二人が結婚したら、その家はたいへん金持ちになった。それから何十年後、ますます金持ちになったその家では、日雇い人夫も四、五人使うほどまでになった。ある日、夫が妻に言った。「今日の使用人たちは新米(みーめー)を炊いて食べさせなさいよ」と。妻は「はい」と答えた。そらから、夫は二、三日用事があるといって、出かけて行った。夫が出かけた後で、妻は不安になった。「自分たちの米倉には、米はたくさんあるけど、この米は去年刈り取った米だから、これを炊いて新米とはいえない。これはどうしたらいいかねぇ」と大変心配したそうです。心配した妻が、自分の家の田んぼを回ってみたら、稲の穂がまだ青くして先だけ熟れていた。妻は、自分で刈り取ろうとおもったんだけれど、どうしても刈り取ることができない。それで、使用人たちを連れていって刈らせて、新米を炊いてあげたそうです。それから夫が帰ってきて、「私たちの稲はどれくらい実ったかなぁ」と言って、田んぼを回ってみたら、稲が刈り取られている。「ああ、これは泥棒にあったんだなぁ」と思って、家に帰ってきてみれば、庭に刈り取った稲があった。「誰がこの稲を刈りなさいと言ったか」と聞いたら、妻は、「あなたが言いました」と。「私は稲を刈りなさいと言ったのか」「そうではないんですけど、あなたが、『今日の使用人たちには新米を炊いて食べさせなさいよ』と言いました。でも、米倉にある米は去年の米で、それを炊いてあげても新米にはなりません。それで私は、自分たちの田んぼに使用人たちを連れていって、稲を刈り取らせて、新米を炊いてあげました。」と言ったら夫は、「このぐらいのこともわからん女が、私の家で勤まるか。お前は離縁だ」と言ったそうです。それから、その家はたいへん金持ちだったので、「おまえには、小判九斤分けてやるから」と言われて、妻はなくなく離縁されて、家を出ていった。家を出された女は、小判九斤を持って山原(やんばる)に下っていった。「だれが一番、私の夫としてふさわしいのかねぇ」と思って、あちらこちら山原中回ってみたら、あるところに炭焼 (すみや)きのおじいさんがいたそうです。女は、この人は確かに私の夫になる人だと思って、自分から、「私を嫁にしてください」と言った。おじいさんは、「冗談を言いなさるな、あなたの様な方が私みたいな炭焼きの妻になるのか」「はい、なります。生涯食べていけるだけの宝物を持っておりますから、ぜひ私をあなたの妻にしてください」女がそう言うので、おじいさんは、「あなたは何を持っているのか」と聞いた。女が小判を持っているというので、おじいさんは、「私は小判というのは、話には聞いたことがあるが、見たことがないから見せてくれんか」と言った。女が差し出した小判を見て、おじいさんはびっくりして言った。「あなたは冗談が好きだねえ。これは、黒(くる)マー石(いさー)じゃないか」と。女は「この炭焼きのおじいさんは、とても徳のある人だと思うんだけど、違うのかねえ。この人にはあまり徳はないのかねえ」と思ったけど、まずはということで、おじいさんに言ってみた。「私にあなたの炭焼き小屋を見せてくれませんか」「どうぞ見てください」と言ったので、行ってみたら、その炭焼き場は半分ぐらい小判で造られていた。女は、この人は確かに徳のある人だと言って、おじいさんと結婚して、炭焼き小屋から小判と石とを寄り分けて、非常に金持ちになったそうですよ。それから二十年ほどたち、女を追い出した元の夫である男は大変貧乏になっていた。男は、毎日ミーバラーを作って、それを売り歩いて生活していた。ある日、男は、女の家にもミーバラーを売りに来た。そしたら、女の方では、これは私の元の夫であるとわかるんだけれども、男にはわからない。女は召使に「いつの日に、いくつのミーバラーが必要ですから、注文しなさい」と言いつけた。男が喜んで注文の品を持ってきたら、女は男を一番座敷に案内した。そして、男に言った。「あなたは私がわかりますか」「わからん」「よく見てください」だけど、男はいくら見てもわからないと答えた。そしたら、女には、昔から眉と眉の間にあざがあったので、「これを見てください」と言った。そのとき、男は、はっとして、自分が追い出した妻だと気づいた。その時、男は、そのまま庭に出て、舌をかみ切って死んだそうです。女は、「どうしよう。でも、今の夫にこの事が知れたら悪いから」と言って、男を庭に埋めたそうです。それからあと、女は、毎日、朝のお茶を、男を埋めた所に湯飲みの一杯ずつかけた。おかしいなあと思った今の夫であるおじいさんが、いろいろ聞くけど、どうしても女は言わない。「なぜ、あなたはこんな事をするのか」と聞いても、「いえ、私は茶碗をゆすいでいるんですよ。なんでもありませんよ〕と答えるだけだった。そのようにして、女がお茶をかけたのが、沖縄の御茶当(うちゃとー)の始まりです。そうしているうちに、その男を埋めたところから一本の木が生えてきた。女がその葉をちぎって口に入れたら、心が落ちついた。それで、これは自分の慰めになると言って飲んだのが煙草の始まりです。それでも、おじいさんは、女に、「あなたが毎日、庭でそんな事をしているので、私も夢を見てしまって、どうしても寝つけないから、わけを話してくれんか」と言ったので、とうとう女は元の夫のことをおじいさんに告げた。「実は、あなたと結婚する前にこういう人がいたんだけどれども、こんなわけで、離縁されました。あなたと結婚する前に小判九斤を持ってきたのは、その人からもらった物です」と言った。わけを聞いたおじいさんは、「しかし、屋敷に人を葬るという事はできないから、どうしてもこれは外に出さなきゃいけない」と言って、墓を造って葬った。それから、その家はますます栄えたそうです。また、屋敷内に人を葬らずに外に出すというのは、それからだそうです。
| レコード番号 | 47O410903 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C029 |
| 決定題名 | 御茶当と煙草の始まり(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 兼城太勇 |
| 話者名かな | かねしろたいゆう |
| 生年月日 | 19120415 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 与那城村照間 |
| 記録日 | 19861125 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 与那城村T04B02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | よなぐすくの民話P80 |
| キーワード | 上与那原子,下与那原子,仲が良い,浜辺,子供たちを結婚,火の玉,米の倉,金持ち,新,稲,離縁,山原,炭焼きのおじいさん,宝物,ミーバラー,朝のお茶,御茶当,一本の木,煙草 |
| 梗概(こうがい) | 昔々、上与那原(いーゆなばる)には上与那原子(いーゆなばるしー)という人がいて、下与那原(しちゃゆなばる)には下与那原子(しちゃふなばるしー)という人がいた。二人は闘牛場に一緒に行ったり、いつもどこに何があるから一緒に行こうと言って、非常に仲が良かったそうです。ある日、二人はイザイに出たが、海に行ったら、まだ潮が引いてなかった。少し早いもんだから、浜辺で話をしている時に、上与那原子が下与那原子に言った。「私たち二人はこんなに仲がいいから、あなたに男の子が出来ても女の子が出来ても、私に男の子が出来ても女の子が出来てもいいから、互いの子供たちを結婚させよう」と。そしたら、下与那原子は、「私たちはこんなに仲がいが、もしもその結婚がうまくいっても、そのあとに破産したら、私たちの友情も破産するんじゃないか」「いや、別に破産することはないさ」と、二人でそんな話をしていたって。それから、二人は、眠気がさして寝てしまった。そしたら、下与那原子は、遠い山から火の玉が来る夢をみた。その火の玉が、下与那原子の頭の上に来たらなくなったって。下与那原子は、「これはおかしいなぁ、火の玉が来たんだが」といって目を覚ましてしまった。海を見たら、潮が引いていて、イザイをするのにちょうどよかったから、イザイをして帰っていったって。また、上与那原子は、「下与那原子には女の子が生まれて、上与那原子には男の子が生まれる。下与那原子の女の子は、米の倉を建てて、生涯裕福に暮らせるチヂスーである」という夢を見た。上与那原子は、「これは悪い夢を見たんなぁ」と言って、一言も話さなかったそうだ。それから、数年後、上与那原子、下与那原子二人の妻が妊娠した。上与那原子には男の子、下与那原子には女の子が生まれたって。それから年数もたって、子供達が十七、八に成ったときに、以前の約束もあったので、上与那原子と下与那原子に子供達は結婚することになった。二人が結婚したら、その家はたいへん金持ちになった。それから何十年後、ますます金持ちになったその家では、日雇い人夫も四、五人使うほどまでになった。ある日、夫が妻に言った。「今日の使用人たちは新米(みーめー)を炊いて食べさせなさいよ」と。妻は「はい」と答えた。そらから、夫は二、三日用事があるといって、出かけて行った。夫が出かけた後で、妻は不安になった。「自分たちの米倉には、米はたくさんあるけど、この米は去年刈り取った米だから、これを炊いて新米とはいえない。これはどうしたらいいかねぇ」と大変心配したそうです。心配した妻が、自分の家の田んぼを回ってみたら、稲の穂がまだ青くして先だけ熟れていた。妻は、自分で刈り取ろうとおもったんだけれど、どうしても刈り取ることができない。それで、使用人たちを連れていって刈らせて、新米を炊いてあげたそうです。それから夫が帰ってきて、「私たちの稲はどれくらい実ったかなぁ」と言って、田んぼを回ってみたら、稲が刈り取られている。「ああ、これは泥棒にあったんだなぁ」と思って、家に帰ってきてみれば、庭に刈り取った稲があった。「誰がこの稲を刈りなさいと言ったか」と聞いたら、妻は、「あなたが言いました」と。「私は稲を刈りなさいと言ったのか」「そうではないんですけど、あなたが、『今日の使用人たちには新米を炊いて食べさせなさいよ』と言いました。でも、米倉にある米は去年の米で、それを炊いてあげても新米にはなりません。それで私は、自分たちの田んぼに使用人たちを連れていって、稲を刈り取らせて、新米を炊いてあげました。」と言ったら夫は、「このぐらいのこともわからん女が、私の家で勤まるか。お前は離縁だ」と言ったそうです。それから、その家はたいへん金持ちだったので、「おまえには、小判九斤分けてやるから」と言われて、妻はなくなく離縁されて、家を出ていった。家を出された女は、小判九斤を持って山原(やんばる)に下っていった。「だれが一番、私の夫としてふさわしいのかねぇ」と思って、あちらこちら山原中回ってみたら、あるところに炭焼 (すみや)きのおじいさんがいたそうです。女は、この人は確かに私の夫になる人だと思って、自分から、「私を嫁にしてください」と言った。おじいさんは、「冗談を言いなさるな、あなたの様な方が私みたいな炭焼きの妻になるのか」「はい、なります。生涯食べていけるだけの宝物を持っておりますから、ぜひ私をあなたの妻にしてください」女がそう言うので、おじいさんは、「あなたは何を持っているのか」と聞いた。女が小判を持っているというので、おじいさんは、「私は小判というのは、話には聞いたことがあるが、見たことがないから見せてくれんか」と言った。女が差し出した小判を見て、おじいさんはびっくりして言った。「あなたは冗談が好きだねえ。これは、黒(くる)マー石(いさー)じゃないか」と。女は「この炭焼きのおじいさんは、とても徳のある人だと思うんだけど、違うのかねえ。この人にはあまり徳はないのかねえ」と思ったけど、まずはということで、おじいさんに言ってみた。「私にあなたの炭焼き小屋を見せてくれませんか」「どうぞ見てください」と言ったので、行ってみたら、その炭焼き場は半分ぐらい小判で造られていた。女は、この人は確かに徳のある人だと言って、おじいさんと結婚して、炭焼き小屋から小判と石とを寄り分けて、非常に金持ちになったそうですよ。それから二十年ほどたち、女を追い出した元の夫である男は大変貧乏になっていた。男は、毎日ミーバラーを作って、それを売り歩いて生活していた。ある日、男は、女の家にもミーバラーを売りに来た。そしたら、女の方では、これは私の元の夫であるとわかるんだけれども、男にはわからない。女は召使に「いつの日に、いくつのミーバラーが必要ですから、注文しなさい」と言いつけた。男が喜んで注文の品を持ってきたら、女は男を一番座敷に案内した。そして、男に言った。「あなたは私がわかりますか」「わからん」「よく見てください」だけど、男はいくら見てもわからないと答えた。そしたら、女には、昔から眉と眉の間にあざがあったので、「これを見てください」と言った。そのとき、男は、はっとして、自分が追い出した妻だと気づいた。その時、男は、そのまま庭に出て、舌をかみ切って死んだそうです。女は、「どうしよう。でも、今の夫にこの事が知れたら悪いから」と言って、男を庭に埋めたそうです。それからあと、女は、毎日、朝のお茶を、男を埋めた所に湯飲みの一杯ずつかけた。おかしいなあと思った今の夫であるおじいさんが、いろいろ聞くけど、どうしても女は言わない。「なぜ、あなたはこんな事をするのか」と聞いても、「いえ、私は茶碗をゆすいでいるんですよ。なんでもありませんよ〕と答えるだけだった。そのようにして、女がお茶をかけたのが、沖縄の御茶当(うちゃとー)の始まりです。そうしているうちに、その男を埋めたところから一本の木が生えてきた。女がその葉をちぎって口に入れたら、心が落ちついた。それで、これは自分の慰めになると言って飲んだのが煙草の始まりです。それでも、おじいさんは、女に、「あなたが毎日、庭でそんな事をしているので、私も夢を見てしまって、どうしても寝つけないから、わけを話してくれんか」と言ったので、とうとう女は元の夫のことをおじいさんに告げた。「実は、あなたと結婚する前にこういう人がいたんだけどれども、こんなわけで、離縁されました。あなたと結婚する前に小判九斤を持ってきたのは、その人からもらった物です」と言った。わけを聞いたおじいさんは、「しかし、屋敷に人を葬るという事はできないから、どうしてもこれは外に出さなきゃいけない」と言って、墓を造って葬った。それから、その家はますます栄えたそうです。また、屋敷内に人を葬らずに外に出すというのは、それからだそうです。 |
| 全体の記録時間数 | 18:11 |
| 物語の時間数 | 17:21 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |