昔のですね、政治を執る偉い方々がですよ、島回りをして、お帰りなる場合にですよ、夜が暮れてしまって、「まあ自宅に帰るのがですね、無理だから、一夜(ひとや)この部落で、まあ泊まっていかなけりゃいかないな。」と思ってですよ、そして、もうあちらこちら歩き回っても、なかなか家が見つからんそうです。そして、ずっと前に行ったら、一軒の家が見うけられたそうです。そして、偉い方々がですよ、この家に行ったらね、て、この家にはですね、一人暮らしのお婆さんが、おられたそうですよ。「お婆さん、御免ください。」と言って、お婆さんが、「はい。」と言ったら、「まあ、今日は、家に帰ろうと思っていますが、時間が遅くなって、夜になっていますから、一晩あんたの家に、宿させてくれ。泊まらせてくれ。」と言うたもんですからね、お婆さんはですね、一人暮らしで、まあ、家も立派な家ではないですからね、「まあ、あなたがたね、お姿を見る場合には、お侍のようにありますんで、この家でお泊り願うのは無理ですから、まあ、別に行ってください。」と言われたもんですからね、このお侍さんは、「まあ、家はどんな家でも構いませんからね、一晩だけ泊まらしてくれ。」と言うたもんですから、「そんならあんたが、自分らのこの家を汚いと思わなければ、お泊りになってください。」そして泊まるようになったそうですよ。このお婆さんは、一人暮らしの貧乏な方ですからね、御飯炊いてあげることは出来なかった。「じゃ、お茶だけでも準備してあげなきゃいけない。」と思ってですよ、お茶になりましたからね、さあ、この欠けてもいない立派な茶碗ですがね、その茶碗をですね、口に入るくらいポンと割ってですよ、「その割った所からね、どうぞお茶をあがってください。」と。それで、このお侍さんは不審に考えてですよ、「何でお婆さん、この新しい湯呑みを割って、うちにお茶を飲ましますか。」と。このお婆さんが曰くですよ、「この湯呑みはですね、自分らが平生、口にしている湯呑みで、そういう事情で、このままお茶をおあげするには、まあ失礼になりますから、この割った所からお使いになってください。」と言うたもんですから、このお侍さんは、「ああ、そうか。」と。「そんなら、せっかくだからこっちから、お茶を飲みましょうなあ。」と言って、この欠けた所からお茶をおあがりになったそうですよ。そして、偉い方々は、その家に一晩お泊りになって、翌日お帰りになったそうです。もうこのこの欠けた所からね、このお侍がお茶を飲んでいるという話が世間に広がってよ、「あんな偉い人でもね、こういう湯呑みを利用して、お茶をお使いになっているから、我々普通の人間らが、これを汚いからと言って、捨てることはいけない。我々も欠けた湯呑みでも碗でも粗末にしていかない。割れるまでは利用しなけりゃいけない。」と、これからですね、欠けても捨てなかったと。そして、昔の人は欠けても、平気にお茶をあげると。自分らの幼い時までも、欠け茶碗でもよ、湯呑みでもこのままで買い替えないで使ってね、汚いと言わなかったです。
| レコード番号 | 47O381413 |
|---|---|
| CD番号 | 47O38C072 |
| 決定題名 | 欠け茶碗の飲み口 (共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 東江三助 |
| 話者名かな | あがりえさんすけ |
| 生年月日 | 19030315 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県島尻郡伊平屋村字前泊 |
| 記録日 | 19850226 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 島尻郡伊平屋村前泊 T29 B13 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 伊平屋村民話集 P 165 |
| キーワード | 島回り,侍,貧乏,茶碗,お茶,欠け茶碗 |
| 梗概(こうがい) | 昔のですね、政治を執る偉い方々がですよ、島回りをして、お帰りなる場合にですよ、夜が暮れてしまって、「まあ自宅に帰るのがですね、無理だから、一夜(ひとや)この部落で、まあ泊まっていかなけりゃいかないな。」と思ってですよ、そして、もうあちらこちら歩き回っても、なかなか家が見つからんそうです。そして、ずっと前に行ったら、一軒の家が見うけられたそうです。そして、偉い方々がですよ、この家に行ったらね、て、この家にはですね、一人暮らしのお婆さんが、おられたそうですよ。「お婆さん、御免ください。」と言って、お婆さんが、「はい。」と言ったら、「まあ、今日は、家に帰ろうと思っていますが、時間が遅くなって、夜になっていますから、一晩あんたの家に、宿させてくれ。泊まらせてくれ。」と言うたもんですからね、お婆さんはですね、一人暮らしで、まあ、家も立派な家ではないですからね、「まあ、あなたがたね、お姿を見る場合には、お侍のようにありますんで、この家でお泊り願うのは無理ですから、まあ、別に行ってください。」と言われたもんですからね、このお侍さんは、「まあ、家はどんな家でも構いませんからね、一晩だけ泊まらしてくれ。」と言うたもんですから、「そんならあんたが、自分らのこの家を汚いと思わなければ、お泊りになってください。」そして泊まるようになったそうですよ。このお婆さんは、一人暮らしの貧乏な方ですからね、御飯炊いてあげることは出来なかった。「じゃ、お茶だけでも準備してあげなきゃいけない。」と思ってですよ、お茶になりましたからね、さあ、この欠けてもいない立派な茶碗ですがね、その茶碗をですね、口に入るくらいポンと割ってですよ、「その割った所からね、どうぞお茶をあがってください。」と。それで、このお侍さんは不審に考えてですよ、「何でお婆さん、この新しい湯呑みを割って、うちにお茶を飲ましますか。」と。このお婆さんが曰くですよ、「この湯呑みはですね、自分らが平生、口にしている湯呑みで、そういう事情で、このままお茶をおあげするには、まあ失礼になりますから、この割った所からお使いになってください。」と言うたもんですから、このお侍さんは、「ああ、そうか。」と。「そんなら、せっかくだからこっちから、お茶を飲みましょうなあ。」と言って、この欠けた所からお茶をおあがりになったそうですよ。そして、偉い方々は、その家に一晩お泊りになって、翌日お帰りになったそうです。もうこのこの欠けた所からね、このお侍がお茶を飲んでいるという話が世間に広がってよ、「あんな偉い人でもね、こういう湯呑みを利用して、お茶をお使いになっているから、我々普通の人間らが、これを汚いからと言って、捨てることはいけない。我々も欠けた湯呑みでも碗でも粗末にしていかない。割れるまでは利用しなけりゃいけない。」と、これからですね、欠けても捨てなかったと。そして、昔の人は欠けても、平気にお茶をあげると。自分らの幼い時までも、欠け茶碗でもよ、湯呑みでもこのままで買い替えないで使ってね、汚いと言わなかったです。 |
| 全体の記録時間数 | 9:28 |
| 物語の時間数 | 8:53 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |