昔、中部の屋良村にあった話。長男と弟とは非常に仲が悪くてね、兄は、「お前が何が分かるか、お前は何も分からない。」といつも仲が悪かったから、もう兄弟でいつも喧嘩ばっかりしてね、それで、兄は別の友達とお椀一つからご飯を食べるくらい仲よくしてね、向こう屋良(やら)漏地(むるち)と言ってね、池の側にトーノチン〔高梁〕を作っていたそうですよ。トーノチンの実は熟してね、刈り取りの時分になってきたら、もうこれを鰻が屋良の漏地から上って来て食べよったとよ。だから、兄は、「これは是非殺さなければかん。」言うてね、棒と鎌を持って畑の近くで、鰻が出てくるまで隠れていたそうですよ。鰻が出てくるのは、十二時頃なので、今出て来るか、今出て来るかと隠れていたら、ちょうど一時頃にいよいよ鰻が真っ黒くしてね、沼から上って来たとよ。それで兄は、「今、どんなしたらよいか、一応見てからしか出来ない。」と言うてね、見ていたらやっぱハブでも腰から上は立つからね、鰻も腰から上は立つ。鰻は体を起こして立ってね、もう立ってどんどんトーノチンを食べよったとよ。そのときに夜だから鰻が真っ黒くなっていて、人間か鰻か見分けがつかなかったわけさ。そうして、「今度こそは殺してやる。」と言うてね、棒で叩いて、鎌で叩いたから、これで鰻は倒れたとよ。だからもう兄は、悪いことをしたと思っているから、ブルブル震えてね、自然に目の前は真っ暗になり、自分が殺したのは人間なのか、他のものかもわからない。「自分は人を殺して大変、夜が明けないうちに片づけないと私は大変なことになるさ。」と言って、兄は、今度はもう非常に仲のよい友達のところに頼って行って、「自分が畑にいたら、何者かが来て自分の作ったトーノチンをトーノチンを切って取るのを見たから、殺そうとは思わなかったが、怒ってしまって、すぐ棒で叩いて鎌でやったら、倒れて死んでいるから、もう夜の明けないうちに人が見ないうちに行って片づけよう。」と言ったら、友達は、「お前とはお椀一つからご飯を食べる仲だが、人を殺してしまったのでは私まで罪に落ちるよ。もう人に聞かれたらこれは人を殺したんだとすぐ分かってしまうからお前の言うことは絶対聞かない。」と。今度は弟に頼んでみようと、弟の家の門まで来たんだが、今までは目の上のたんこぶのような仲の悪い兄弟であったから、中に入る勇気がなくて来ては引っ込んだりして、もう弟が兄を見て目が会うと後ろに引っ込んだりして、弟の家の中に入ることが出来ないで、ヒンプンのところに立っていたら、「何だ。ヤッチー、何んで後に引っ込んだりして、堂々と入ってこないか。」と弟が話かけたので、兄は泣く泣く正座をして弟に頭を下げると、弟は、「あれ、なんで今日は普段と変わっているな。あれ、ヤッチー、私は何もしてないが、なぜ兄さんは私に頭を下げるのですか。」と聞くと、「今までやったことは悪かった。もう水に流してくれ。兄弟しか頼れないと思って私は来たのだ。」と兄が言うと、「これはまた、どうしたのですか。」と弟が言ったから、兄は、「私は屋良の沼の側にトーノチンを植えているがね、誰かがいつもトーノチンを食べてしまって、私は腹が立ってきて、もう怒って、今日は雨風がだらだらと降っているので、夕闇になると、今日は来るはず、わからないが来るはずだと思って、私は隠れて待っていたら、思ったとおり、沼の上の方に立って、もうトージメーを全部切ってしまったから、私は怒ってすぐそこへ行き、棒で叩いたので、この人は倒れて転んであそこに死んでいるが、それで、友達のところへ行って死体を片づけるのを手伝ってくれないかと頼むと、出来ないと断られてしまった。弟に頼るしかないとこうして来た。」と。すると弟は、「人間は十の指が同じようにあるように、こんなして、兄さんがこれだけ分かってくれたんだもの、一緒に死体を片づけるさ。」と言って、弟が棒とモッコを持ってトーノチンの畑まで行ったんだが、兄は真っ黒い死体の近くまで来ると、恐がってぶるぶる震えて、そこへ寄っていけないんだよ。弟が行って見たらね、「あれ、ヤッチー、人じゃないよ。」「何だ、カマデー〔弟〕どうなっているのかよう。」「あれえ、これは鰻だよ。」と言って、死んだのは鰻と分かったから、もうそれから鰻を二人でかついで家に来て、立派にこしらえて、大きな鰻だから、みんな近所にも配っていたら、「人ではなく、大鰻を捕ったといっているさあ。」という話を兄の仲のよい友人が聞いて、その人は兄の頼みごとを聞かなかったので、恥ずかしそうにして、兄の家の門まで来てもよ、もうそこに入ることができないでいるよ。それで、この弟が、「おい、ここに来なさい。一緒に鰻を食べようよ。」と言ったら友達は、「もう人間は正直にして仲よくしなければいけないな。」と言って、これから三人仲よくして、「人間は誠をしていたら、角が立たないというからね。」と言ったそうだ。
| レコード番号 | 47O380883 |
|---|---|
| CD番号 | 47O38C045 |
| 決定題名 | 兄弟の仲直り うなぎ退治(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 仲里文蔵 |
| 話者名かな | なかざとぶんぞう |
| 生年月日 | 19101107 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県島尻郡伊平屋村字田名 |
| 記録日 | 19800907 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 島尻郡伊平屋村田名 T08 A12 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 伊平屋村民話集 P167 |
| キーワード | 屋良村,兄弟,喧嘩,屋良漏地,トーノチン,鰻,鎌,友達,罪,トージメー,死体,ヤッチー,カマデー |
| 梗概(こうがい) | 昔、中部の屋良村にあった話。長男と弟とは非常に仲が悪くてね、兄は、「お前が何が分かるか、お前は何も分からない。」といつも仲が悪かったから、もう兄弟でいつも喧嘩ばっかりしてね、それで、兄は別の友達とお椀一つからご飯を食べるくらい仲よくしてね、向こう屋良(やら)漏地(むるち)と言ってね、池の側にトーノチン〔高梁〕を作っていたそうですよ。トーノチンの実は熟してね、刈り取りの時分になってきたら、もうこれを鰻が屋良の漏地から上って来て食べよったとよ。だから、兄は、「これは是非殺さなければかん。」言うてね、棒と鎌を持って畑の近くで、鰻が出てくるまで隠れていたそうですよ。鰻が出てくるのは、十二時頃なので、今出て来るか、今出て来るかと隠れていたら、ちょうど一時頃にいよいよ鰻が真っ黒くしてね、沼から上って来たとよ。それで兄は、「今、どんなしたらよいか、一応見てからしか出来ない。」と言うてね、見ていたらやっぱハブでも腰から上は立つからね、鰻も腰から上は立つ。鰻は体を起こして立ってね、もう立ってどんどんトーノチンを食べよったとよ。そのときに夜だから鰻が真っ黒くなっていて、人間か鰻か見分けがつかなかったわけさ。そうして、「今度こそは殺してやる。」と言うてね、棒で叩いて、鎌で叩いたから、これで鰻は倒れたとよ。だからもう兄は、悪いことをしたと思っているから、ブルブル震えてね、自然に目の前は真っ暗になり、自分が殺したのは人間なのか、他のものかもわからない。「自分は人を殺して大変、夜が明けないうちに片づけないと私は大変なことになるさ。」と言って、兄は、今度はもう非常に仲のよい友達のところに頼って行って、「自分が畑にいたら、何者かが来て自分の作ったトーノチンをトーノチンを切って取るのを見たから、殺そうとは思わなかったが、怒ってしまって、すぐ棒で叩いて鎌でやったら、倒れて死んでいるから、もう夜の明けないうちに人が見ないうちに行って片づけよう。」と言ったら、友達は、「お前とはお椀一つからご飯を食べる仲だが、人を殺してしまったのでは私まで罪に落ちるよ。もう人に聞かれたらこれは人を殺したんだとすぐ分かってしまうからお前の言うことは絶対聞かない。」と。今度は弟に頼んでみようと、弟の家の門まで来たんだが、今までは目の上のたんこぶのような仲の悪い兄弟であったから、中に入る勇気がなくて来ては引っ込んだりして、もう弟が兄を見て目が会うと後ろに引っ込んだりして、弟の家の中に入ることが出来ないで、ヒンプンのところに立っていたら、「何だ。ヤッチー、何んで後に引っ込んだりして、堂々と入ってこないか。」と弟が話かけたので、兄は泣く泣く正座をして弟に頭を下げると、弟は、「あれ、なんで今日は普段と変わっているな。あれ、ヤッチー、私は何もしてないが、なぜ兄さんは私に頭を下げるのですか。」と聞くと、「今までやったことは悪かった。もう水に流してくれ。兄弟しか頼れないと思って私は来たのだ。」と兄が言うと、「これはまた、どうしたのですか。」と弟が言ったから、兄は、「私は屋良の沼の側にトーノチンを植えているがね、誰かがいつもトーノチンを食べてしまって、私は腹が立ってきて、もう怒って、今日は雨風がだらだらと降っているので、夕闇になると、今日は来るはず、わからないが来るはずだと思って、私は隠れて待っていたら、思ったとおり、沼の上の方に立って、もうトージメーを全部切ってしまったから、私は怒ってすぐそこへ行き、棒で叩いたので、この人は倒れて転んであそこに死んでいるが、それで、友達のところへ行って死体を片づけるのを手伝ってくれないかと頼むと、出来ないと断られてしまった。弟に頼るしかないとこうして来た。」と。すると弟は、「人間は十の指が同じようにあるように、こんなして、兄さんがこれだけ分かってくれたんだもの、一緒に死体を片づけるさ。」と言って、弟が棒とモッコを持ってトーノチンの畑まで行ったんだが、兄は真っ黒い死体の近くまで来ると、恐がってぶるぶる震えて、そこへ寄っていけないんだよ。弟が行って見たらね、「あれ、ヤッチー、人じゃないよ。」「何だ、カマデー〔弟〕どうなっているのかよう。」「あれえ、これは鰻だよ。」と言って、死んだのは鰻と分かったから、もうそれから鰻を二人でかついで家に来て、立派にこしらえて、大きな鰻だから、みんな近所にも配っていたら、「人ではなく、大鰻を捕ったといっているさあ。」という話を兄の仲のよい友人が聞いて、その人は兄の頼みごとを聞かなかったので、恥ずかしそうにして、兄の家の門まで来てもよ、もうそこに入ることができないでいるよ。それで、この弟が、「おい、ここに来なさい。一緒に鰻を食べようよ。」と言ったら友達は、「もう人間は正直にして仲よくしなければいけないな。」と言って、これから三人仲よくして、「人間は誠をしていたら、角が立たないというからね。」と言ったそうだ。 |
| 全体の記録時間数 | 6:19 |
| 物語の時間数 | 5:53 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |