昔、ずっと大昔、今から、もう何百年前の話ですが、お爺さんもお婆さんも六十一歳になると、この世での生活はここまでとの国からの命令だから、自分の親であっても、必ず連れていって捨てなくてはならない立場になってしまったので、ある日、一人息子のお母さんのことですが、そのお母さんは、その話を一人息子に話ししたからね、もう可哀相になって、自分の親をもう捨てることもできないと色々考えもしているが、お母さんは、「私が家にいたら、私一人のために、親戚や家族みんなを巻き添えにして、国に罰せられてしまう。これはその歳まで生きなさいという生まれたころからの定めだから。だから、是非とも遠く離れた所まで、連れて行って、捨ててほしい。」と、一人息子に話をしたようだ。そうしたら、その一人息子は、「国の命令だから。自分も母親を連れていかなければならないのかなあ。」と。そして、ずっと離れた山奥に、お母さんをおぶって連れていくことになった。そのお母さんは、一間、一間ごと、通ってきた道々に、木の枝一本ずつ折って、落とし落とししていた。もう何里か離れた山奥に連れて行き、お母さんを座らせてから、長男はお母さんに、「本当は、自分を産んだ親は愛しいものだ。こんな離れたところまで連れてきて、捨てたくはないんだけど、国から命令されたことだから。お母さん、これも定めなのだから、行った山で極楽しなさいよ。」そこで親子話し合いをして、涙をながし、泣き別れをした。そして一人息子は帰ったらしい。その帰り際に、お母さんが一言、「お前ね、私を連れてきた道沿いには、木の枝一本ずつ折って、これを一間ずつ、一間離れるごとに、木の枝を折って落としてあるから、この道を辿って、お前は帰りなさいよう。」と、ああ、なんと、お母さんが自分の息子にそう話をしたので、その息子さんは木の枝を辿って家に帰っていったらしい。 その長男は家へ帰ってはきたものの、帰って来てからも、親のことばかり思って、「うちのお母さんは、今時分どうしているのやら、生きているかなあ、死んでいるのかなあ。」
と言って、食事も喉が通らず、寝る時間にも眠れない。その子はもう親の事を思うとじっとしておれず、とうとう三日目には、またも自分の親を見に、会わないといけないと捜しに行って、家から夜、木の枝を見つけながら、道を辿り自分のお母さんの所へ着いたら、お母さんは、息子が行くまで生きていた。「さあ、私と一緒に家に帰りましょう。私はね、家へ帰って行っても、お母さんのことを思うと、夜も眠れない。食べ物も食べられない。心配でたまらないから、私と一緒に帰りましょう。」と、お母さんに言うけど、お母さんは、「お前が、そんなして情を掛けるので言うのだけど、国からの命令なんだから、私一人のためにね、あなたちを犠牲にするわけにはいかないから、ここで極楽するから、家へ帰りなさい。」と、そう言うけど、「私が家へお母さんをお迎えして、それから、お母さんを養うために、どうにか方法をとるから。」と、それでとうとうお母さんはその嫡子に負けてしまって、また家に帰って来た。 帰って来てからは、誰にも見られないように、お母さんを自分の家の地下に穴掘ってから、お母さんが住まうための地下室を造って、お母さんのそこへ差し入れをして、ご飯などをお上げして、お母さんを養っていたらしい。 ある日、唐の国から、大和の国に三つの問題が出された。その問題がもう合格したら、戦(いくさ)はしないが、合格しなければ戦で押し寄せてくることになったんだね。最初の問題は、木灰で五十尋の縄を綯えとの試験が出されたもんだから、この国の人は誰もが分からん。もうそれだから、その長男は家へ帰ってから、お母さんのところへ行き聞いた。「お母さん、こんな問題が出ているがお母さん分からんね。この問題が合格できないと、戦が起こり攻め寄せてくるということなんだが。」と言ったらね、このお母さんは、「これは、簡単なことだよ。五十尋の綱を綯ってから、これを焼いたらね、ちょうど木灰で綱を綯ったような形になるからね、そんなしてから出しなさい。」ってから言ったからね、この長男は、そんなしてから、綱五十尋綯ってから、これに火をつけ焼いてから、そんなして出したからね、この一番目の試験は合格して。 また、二番目の試験は、この同じ色の馬二頭、またも大きさも色も、なにもかも同じ色の馬の親と子とを見分ける試験をしたからね、アイエーまたこの国の人、誰もが分からん。またこの長男は家に帰ってきてお母さんの所へ行き聞いたから、「馬は最初ね、起きたら草食べるさね、そのとき自分の産んだ子に先にやって、また後から食べるのは親なんだからね、こんなして試験出しなさい。」と言ったからね、また、こんなしたから、この試験も合格して、合格したからまた三番目の試験は、角材二本、あの同じ大きさの角材、根も梢も同じ材木二本、「根と梢とを見分けなさい。」ってから、問題出したからね、これもまた誰もが分からん。またこれもお母さんに聞くことにしたら、「池の中にこの材木を入れたらね、一番下に沈むのは根元、また浮き上ってるものは、梢、端ってのこと、こんなして出しなさいよ。」って言ったから、これもまたこんして出したらね、この試験も合格して、もう三っつの問題、長男が全部合格したから、この国の偉い人たちも、「これは中々見事。神さまのようだ。このような試験問題を合格するのだから。」と大層褒められ、それから戦も止めることになって、数えられないほどの褒美をこの長男にですよ、与え、もう褒美も貰ってからね、そうしてそれからが、その後から昔は年の功(くー)や亀(かーみ)ぬ甲(くー)〔経験には勝てない〕と言って、年寄りは長生きしただけ物分かりがよくてね、相当もうどんなことがあっても今からは、年寄は生きれるだけは、六十なっても、七十なっても、九十なっても、百までも生きてる限り年寄達を大切にして、長生きさせることは、後は国のためになることだからね、今から後はもう、六十一になっても、絶対に人間を捨ててはいけないということになったって。
| レコード番号 | 47O380721 |
|---|---|
| CD番号 | 47O38C036 |
| 決定題名 | 姥捨山(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 名嘉ヤス |
| 話者名かな | なかやす |
| 生年月日 | 19141207 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県島尻郡伊平屋村字我喜屋 |
| 記録日 | 19800908 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 島尻郡伊平屋村我喜屋 T02 A02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | むかし |
| 伝承事情 | 先生の家で先生から聞いた。 |
| 文字化資料 | 伊平屋村民話集 P181 |
| キーワード | 親,一人息子,山奥,木の枝,命令,犠牲,極楽,穴,唐の国,大和の国,問題,戦,木灰,縄,馬,角材,根,梢,褒美,年の功 |
| 梗概(こうがい) | 昔、ずっと大昔、今から、もう何百年前の話ですが、お爺さんもお婆さんも六十一歳になると、この世での生活はここまでとの国からの命令だから、自分の親であっても、必ず連れていって捨てなくてはならない立場になってしまったので、ある日、一人息子のお母さんのことですが、そのお母さんは、その話を一人息子に話ししたからね、もう可哀相になって、自分の親をもう捨てることもできないと色々考えもしているが、お母さんは、「私が家にいたら、私一人のために、親戚や家族みんなを巻き添えにして、国に罰せられてしまう。これはその歳まで生きなさいという生まれたころからの定めだから。だから、是非とも遠く離れた所まで、連れて行って、捨ててほしい。」と、一人息子に話をしたようだ。そうしたら、その一人息子は、「国の命令だから。自分も母親を連れていかなければならないのかなあ。」と。そして、ずっと離れた山奥に、お母さんをおぶって連れていくことになった。そのお母さんは、一間、一間ごと、通ってきた道々に、木の枝一本ずつ折って、落とし落とししていた。もう何里か離れた山奥に連れて行き、お母さんを座らせてから、長男はお母さんに、「本当は、自分を産んだ親は愛しいものだ。こんな離れたところまで連れてきて、捨てたくはないんだけど、国から命令されたことだから。お母さん、これも定めなのだから、行った山で極楽しなさいよ。」そこで親子話し合いをして、涙をながし、泣き別れをした。そして一人息子は帰ったらしい。その帰り際に、お母さんが一言、「お前ね、私を連れてきた道沿いには、木の枝一本ずつ折って、これを一間ずつ、一間離れるごとに、木の枝を折って落としてあるから、この道を辿って、お前は帰りなさいよう。」と、ああ、なんと、お母さんが自分の息子にそう話をしたので、その息子さんは木の枝を辿って家に帰っていったらしい。 その長男は家へ帰ってはきたものの、帰って来てからも、親のことばかり思って、「うちのお母さんは、今時分どうしているのやら、生きているかなあ、死んでいるのかなあ。」 と言って、食事も喉が通らず、寝る時間にも眠れない。その子はもう親の事を思うとじっとしておれず、とうとう三日目には、またも自分の親を見に、会わないといけないと捜しに行って、家から夜、木の枝を見つけながら、道を辿り自分のお母さんの所へ着いたら、お母さんは、息子が行くまで生きていた。「さあ、私と一緒に家に帰りましょう。私はね、家へ帰って行っても、お母さんのことを思うと、夜も眠れない。食べ物も食べられない。心配でたまらないから、私と一緒に帰りましょう。」と、お母さんに言うけど、お母さんは、「お前が、そんなして情を掛けるので言うのだけど、国からの命令なんだから、私一人のためにね、あなたちを犠牲にするわけにはいかないから、ここで極楽するから、家へ帰りなさい。」と、そう言うけど、「私が家へお母さんをお迎えして、それから、お母さんを養うために、どうにか方法をとるから。」と、それでとうとうお母さんはその嫡子に負けてしまって、また家に帰って来た。 帰って来てからは、誰にも見られないように、お母さんを自分の家の地下に穴掘ってから、お母さんが住まうための地下室を造って、お母さんのそこへ差し入れをして、ご飯などをお上げして、お母さんを養っていたらしい。 ある日、唐の国から、大和の国に三つの問題が出された。その問題がもう合格したら、戦(いくさ)はしないが、合格しなければ戦で押し寄せてくることになったんだね。最初の問題は、木灰で五十尋の縄を綯えとの試験が出されたもんだから、この国の人は誰もが分からん。もうそれだから、その長男は家へ帰ってから、お母さんのところへ行き聞いた。「お母さん、こんな問題が出ているがお母さん分からんね。この問題が合格できないと、戦が起こり攻め寄せてくるということなんだが。」と言ったらね、このお母さんは、「これは、簡単なことだよ。五十尋の綱を綯ってから、これを焼いたらね、ちょうど木灰で綱を綯ったような形になるからね、そんなしてから出しなさい。」ってから言ったからね、この長男は、そんなしてから、綱五十尋綯ってから、これに火をつけ焼いてから、そんなして出したからね、この一番目の試験は合格して。 また、二番目の試験は、この同じ色の馬二頭、またも大きさも色も、なにもかも同じ色の馬の親と子とを見分ける試験をしたからね、アイエーまたこの国の人、誰もが分からん。またこの長男は家に帰ってきてお母さんの所へ行き聞いたから、「馬は最初ね、起きたら草食べるさね、そのとき自分の産んだ子に先にやって、また後から食べるのは親なんだからね、こんなして試験出しなさい。」と言ったからね、また、こんなしたから、この試験も合格して、合格したからまた三番目の試験は、角材二本、あの同じ大きさの角材、根も梢も同じ材木二本、「根と梢とを見分けなさい。」ってから、問題出したからね、これもまた誰もが分からん。またこれもお母さんに聞くことにしたら、「池の中にこの材木を入れたらね、一番下に沈むのは根元、また浮き上ってるものは、梢、端ってのこと、こんなして出しなさいよ。」って言ったから、これもまたこんして出したらね、この試験も合格して、もう三っつの問題、長男が全部合格したから、この国の偉い人たちも、「これは中々見事。神さまのようだ。このような試験問題を合格するのだから。」と大層褒められ、それから戦も止めることになって、数えられないほどの褒美をこの長男にですよ、与え、もう褒美も貰ってからね、そうしてそれからが、その後から昔は年の功(くー)や亀(かーみ)ぬ甲(くー)〔経験には勝てない〕と言って、年寄りは長生きしただけ物分かりがよくてね、相当もうどんなことがあっても今からは、年寄は生きれるだけは、六十なっても、七十なっても、九十なっても、百までも生きてる限り年寄達を大切にして、長生きさせることは、後は国のためになることだからね、今から後はもう、六十一になっても、絶対に人間を捨ててはいけないということになったって。 |
| 全体の記録時間数 | 16:35 |
| 物語の時間数 | 14:04 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |