ええ、女が(外で)シッコして立つときには、「ペッヒャ。」と言うでしょう、あれはフームンだよ。フームンといったら、何か無事を祈る、返しことばをフームン。昔はシッコ、女がシッコしたら、必ず、「ペッ。」と言うよ。これを言わなかった女はとても美人だったってね。村一番の美人だったけど、洞窟の前の畑でシッコするとね、この洞窟の中にね、アカマタが住んでいてね、この女が小便すると、その音を聞いて、この女が、「ペッ。」と、言ったらアカマタは化けなかったけれど、この女が、「ペッ。」と、言わないで立って行くと、アカマタが出て来て、すぐシッコの上にね、字を書いて、呼び字というけど。呼び字というのは、すぐ女を呼ぶわけ、アカマタの雄が、雄が約十センチくらい真黒い字を書いて、君たちがわかるかな、あれは字なんだってよ、何か雀でも何でも、あれの字で呼んですぐ、アカマタが口を開いたままでも、すぐ口に入るようになる恐しい字をアカマタは持っているってよ。ん。「ペッ。」と言わなかったので、女はだまされたわけさあね。アカマタが若い男になってね。若い男になって、それで毎夜この女のところへ、女の子のところへしのんで来てね、それでアカマタに字を書かれた女はだまされているんだからね、もう美男子になって来ていて、「ああこんな(美男子)の男もいるかなあ、私の夫にしないといけないなあ。」と思って、まあ、心の中でとても思っていたみたいだな。そうだけど、毎夜通って来て、歌も上手でね。この化物だよ。歌も上手で、門に来てこの女の子を呼び出そうとしてね、そのときには、歌を歌ってもう、この女はだまされているから、この女の心はアカマタにいつも会いたがってね、会いたがったけど、だけどこの女の母親がね、怪しいと思って、母親は家で芭蕉を紡いでいて、昔の芭蕉、着物の芭蕉を紡いで、一生けん命やっていたけど、娘が沈んでいるので、娘が自分の子どもが沈んでいるのを見てね、不思議だ思って、「どうしてこの子は、こんなに早く恋を‥‥。男と恋をするのか。」と思った。この男は、化け物なのに、この女はそうは思わず男と思っているわけさあね。それで毎日行き来していたけど、後は娘が出ていかなくなったので、このアカマタが入って来て、男になって美男子になって家に入って来たってよ。それで毎日歌っったり、何したりして聞かせて、ほんとにだまそうとしているわけさあね。それで、二、三日通ったというけれど、出て行くときは、夜明け方になったら必ずまた出てきよったって。で、出て行くときに、出て行くときは必ず後ろ向きになって後ずさりしてしてね、門まで後ずさりして出て、いつも行き来したってよ。それでこの女の親はこれ見て、「これは不思議な者だな。これは怪しい者だな。」と思って、三日目になるとね、この娘によ、「さあ、おまえ。この男は不思議な者だから、私が紡いでいるこの芭蕉を針に通してね、針に通して、男に知られないようにして、この男の後ろの着物に刺しなさいよ。」と言って、親が言いつけたので、それで言われた通りにしたってよ。またこれが後ずさりして出てね、夜明け方に出て行ったので、「さあ、これはどこに行くのかこれの様子を見よう。」と言ってね、この女の親はこの芭蕉を一杯紡いでいるでしょう、これの後を追って行って、芭蕉をたどって行ったら、小便したね、シッコした洞窟の中の大木の下に入って行って、この針を立てたまま蛇がとぐろを巻いていたってよ。だから、これは人間ではなかったよ。これはもう蛇だったんだよ。ほんとに、昔話は蛇が、アカマタが化けたということは、ほんとうのことだったって、それに理由づけた話だけどね。だから女は……。今はこのように迷信といって、そんなことはないけれど、今の中年の約五〇歳以上の年寄り方は今でもするよ。どこにでも向かってシッコするでしょう。必ず女は立つときには、「ペッヒャ。」と、言ってつばを吐くよ。あれは返しことばといって。これだけよ。つばのペッヒャという字は、十書くとペッヒャ、へという字を十書くとフームンらしい。ん。何かをやるついでに手をタンと打つでしょうね、手を打つのはね、あんたなんかの父親なんかも、今でも、「ペッヒャ。」と必ず言うんです。これは。だからもう何も悪いものがつかないように、破傷風にならないようにとの意味ってよ。アカマターはなかなか利口なものだね。これは、ほとんどここで、まだ最近のことだが、ほんとにアカマタの子どもを産んだ人がいたってよ。最近山の、ここの山のふもとでだったけどね、この女の子は美人だったけど、それがどうした生れたのか、実際この女の性器にアカマタが入ったのか、アカマタの子を産んだってよ、というのがあったよ。このアカマタが化けて、ほとんど、これはもう、美男子になったり、青年になったり、特に、雄の中にもシッコに真黒い字を書くのがいるけど、あれはほんとうに呼び字を持っているという話だよ。女は必ず、女の子が生れたなら、お重を持って行って、もう浜下りをして、浜で潮をなめさせて、「どんなちりふぃじも作ってくれるなよ。」と言って、やっぱり神様に願うのでしょうね。この祭りは悪いものにだまされないように、立派に成長しなさいという行事みたいだよ。いたるところ、女は、大人も子どもも、必ず海に行って、浜下りをして潮を、潮をなめてくるって。あんたなんかところもやっぱり、お重を作って行くんでしょうね。ん。
| レコード番号 | 47O382654 |
|---|---|
| CD番号 | 47O38C137 |
| 決定題名 | 蛇婿入り 字を書くアカマタ 苧環型(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 伊礼亀助 |
| 話者名かな | いれいかめすけ |
| 生年月日 | 19021124 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県島尻郡伊是名村字諸見 |
| 記録日 | 19800905 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 島尻郡伊是名村 T05 A17 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | いぜな島の民話 P11 |
| キーワード | シッコ,フームン,美人,洞窟,アカマタ,呼び字,雀,歌,化物,芭蕉,恋,美男子,針,蛇,つば,破傷風,浜下り,潮 |
| 梗概(こうがい) | ええ、女が(外で)シッコして立つときには、「ペッヒャ。」と言うでしょう、あれはフームンだよ。フームンといったら、何か無事を祈る、返しことばをフームン。昔はシッコ、女がシッコしたら、必ず、「ペッ。」と言うよ。これを言わなかった女はとても美人だったってね。村一番の美人だったけど、洞窟の前の畑でシッコするとね、この洞窟の中にね、アカマタが住んでいてね、この女が小便すると、その音を聞いて、この女が、「ペッ。」と、言ったらアカマタは化けなかったけれど、この女が、「ペッ。」と、言わないで立って行くと、アカマタが出て来て、すぐシッコの上にね、字を書いて、呼び字というけど。呼び字というのは、すぐ女を呼ぶわけ、アカマタの雄が、雄が約十センチくらい真黒い字を書いて、君たちがわかるかな、あれは字なんだってよ、何か雀でも何でも、あれの字で呼んですぐ、アカマタが口を開いたままでも、すぐ口に入るようになる恐しい字をアカマタは持っているってよ。ん。「ペッ。」と言わなかったので、女はだまされたわけさあね。アカマタが若い男になってね。若い男になって、それで毎夜この女のところへ、女の子のところへしのんで来てね、それでアカマタに字を書かれた女はだまされているんだからね、もう美男子になって来ていて、「ああこんな(美男子)の男もいるかなあ、私の夫にしないといけないなあ。」と思って、まあ、心の中でとても思っていたみたいだな。そうだけど、毎夜通って来て、歌も上手でね。この化物だよ。歌も上手で、門に来てこの女の子を呼び出そうとしてね、そのときには、歌を歌ってもう、この女はだまされているから、この女の心はアカマタにいつも会いたがってね、会いたがったけど、だけどこの女の母親がね、怪しいと思って、母親は家で芭蕉を紡いでいて、昔の芭蕉、着物の芭蕉を紡いで、一生けん命やっていたけど、娘が沈んでいるので、娘が自分の子どもが沈んでいるのを見てね、不思議だ思って、「どうしてこの子は、こんなに早く恋を‥‥。男と恋をするのか。」と思った。この男は、化け物なのに、この女はそうは思わず男と思っているわけさあね。それで毎日行き来していたけど、後は娘が出ていかなくなったので、このアカマタが入って来て、男になって美男子になって家に入って来たってよ。それで毎日歌っったり、何したりして聞かせて、ほんとにだまそうとしているわけさあね。それで、二、三日通ったというけれど、出て行くときは、夜明け方になったら必ずまた出てきよったって。で、出て行くときに、出て行くときは必ず後ろ向きになって後ずさりしてしてね、門まで後ずさりして出て、いつも行き来したってよ。それでこの女の親はこれ見て、「これは不思議な者だな。これは怪しい者だな。」と思って、三日目になるとね、この娘によ、「さあ、おまえ。この男は不思議な者だから、私が紡いでいるこの芭蕉を針に通してね、針に通して、男に知られないようにして、この男の後ろの着物に刺しなさいよ。」と言って、親が言いつけたので、それで言われた通りにしたってよ。またこれが後ずさりして出てね、夜明け方に出て行ったので、「さあ、これはどこに行くのかこれの様子を見よう。」と言ってね、この女の親はこの芭蕉を一杯紡いでいるでしょう、これの後を追って行って、芭蕉をたどって行ったら、小便したね、シッコした洞窟の中の大木の下に入って行って、この針を立てたまま蛇がとぐろを巻いていたってよ。だから、これは人間ではなかったよ。これはもう蛇だったんだよ。ほんとに、昔話は蛇が、アカマタが化けたということは、ほんとうのことだったって、それに理由づけた話だけどね。だから女は……。今はこのように迷信といって、そんなことはないけれど、今の中年の約五〇歳以上の年寄り方は今でもするよ。どこにでも向かってシッコするでしょう。必ず女は立つときには、「ペッヒャ。」と、言ってつばを吐くよ。あれは返しことばといって。これだけよ。つばのペッヒャという字は、十書くとペッヒャ、へという字を十書くとフームンらしい。ん。何かをやるついでに手をタンと打つでしょうね、手を打つのはね、あんたなんかの父親なんかも、今でも、「ペッヒャ。」と必ず言うんです。これは。だからもう何も悪いものがつかないように、破傷風にならないようにとの意味ってよ。アカマターはなかなか利口なものだね。これは、ほとんどここで、まだ最近のことだが、ほんとにアカマタの子どもを産んだ人がいたってよ。最近山の、ここの山のふもとでだったけどね、この女の子は美人だったけど、それがどうした生れたのか、実際この女の性器にアカマタが入ったのか、アカマタの子を産んだってよ、というのがあったよ。このアカマタが化けて、ほとんど、これはもう、美男子になったり、青年になったり、特に、雄の中にもシッコに真黒い字を書くのがいるけど、あれはほんとうに呼び字を持っているという話だよ。女は必ず、女の子が生れたなら、お重を持って行って、もう浜下りをして、浜で潮をなめさせて、「どんなちりふぃじも作ってくれるなよ。」と言って、やっぱり神様に願うのでしょうね。この祭りは悪いものにだまされないように、立派に成長しなさいという行事みたいだよ。いたるところ、女は、大人も子どもも、必ず海に行って、浜下りをして潮を、潮をなめてくるって。あんたなんかところもやっぱり、お重を作って行くんでしょうね。ん。 |
| 全体の記録時間数 | 9:20 |
| 物語の時間数 | 8:53 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |