昔むかし、あるところに二軒隣どうしの家があった。一軒の家には母親と娘、もう一軒の家には父親と息子がいた。そこで母親と父親が結婚し、娘と息子が結婚した。ところが娘の方が鬼になり、毎晩夜になると村人を襲って食べていた。初めは気付かなかったが、回数が増え、村の半数が食べられた頃に気付いた。そしてしまいにその鬼は、自分の親や夫も食べようと思うようになっていた。それで夫が気付き両親に相談した。両親は「私たちは年だから死んでもいいが、お前は若いから逃げなさい」といい、馬に乗せて逃がした。鬼は夫が逃げたので、牛などの家畜や生き物などを食べ尽くしてしまった。 一方、夫の方はある村に着き、大きな屋敷に下働きとして働かせてもらい、その家で信用され、気に入られて婿になった。二、三百人を使うほどの大金持ちになった。二、三ヵ年が過ぎて、親たちはどうしているだろうかと気になり、家に帰りたくなった。妻が行くなと止めるがきかず、故郷へ帰ることになった。 そのとき妻が「危なくなったらこの玉を投げなさい」といい、2個の玉を夫に渡した。夫が玉を持って故郷に帰ってみると、元の妻の鬼が村人を一人残らず食べてしまっていた。自分の家に入ると蜘蛛の巣がかかっていた。そのとき元の妻に見付かり、「どこに行っていたのか」ときかれる。夫は不安に思う。鬼になった妻は、夫を食べようと思い、「浜へ鎌をとぎに行くので、お前さんはここでずっと太鼓を叩いていなさい」といって、浜へ行った。夫が太鼓を叩いていると両親の幽霊が出てきて、「この太鼓は私たちが叩いているから、お前はその間に逃げなさい」という。それで夫は馬に乗って逃げた。鬼が帰ってくると、太鼓の音が天井から聞こえるので、天井に上がってみたが誰もいない。今度は下の方で聞こえるので、降りていくとそこにも誰もいない。鬼はやっとだまされたと知り、夫の後を追いかけた。しばらくして鬼は夫を見付けた。 それで夫はびっくりして、妻からもらった玉を一個投げ付けた。するとその玉は針の山になった。夫は、鬼が針の山を抜け出る間に逃げた。するとまた、鬼が追いついてきたので、今度は二番目の玉を投げると、この玉から火が出て鬼は焼き殺されてしまった。そうして家に帰ると、妻は夫の帰りを心配し、一週間になっているという。夫はこれは大変だといい、「一週間ならまだ連れ戻せる。連れてくる」といって馬に乗り、元の妻が葬られている墓へ行き、そこに夜中までいた。夜になると老人や女、子供たちの幽霊が出てきたので、夫がここに新しく死んだ人が来なかったか」ときくと誰も知らない。また子供たちが石なぐーという遊びをやっていたが、一人足りない。そこで夫が「私を入れてくれ」というと、子供たちは「大人はいらない」といって断わるが、一人どうしても足りないので、その夫を遊びの仲間に入れた。そうして遊んでいるうちに、妻が洗濯物を頭に乗せてやってきた。妻は阿弥陀に仕えていて、洗濯をする仕事をしている。夫が妻を捕まえようとするが、消えて捕まれない。また年寄りの霊魂が現れて、この老人が左脇の方から手を入れて抱きかかえると捕まえられると知らせてくれる。夫がそのようにすると、妻は捕まえられた。妻が「私は阿弥陀に仕えている身なので帰れない」夫が、私が連れて行くといって、閻魔大王の前へ行き、「私の妻は長命かどうかきくと、閻魔王は「まだ死ぬ運命ではないが、長命でない」という。そこで夫は刀を逆さまに立て、「阿弥陀が何か、閻魔大王が何か。後生の世がある限り、みんな殺してやる」という。それを閻魔大王が、「これをここにおいていては、後生の世は大変だ。早く帰しなさい」といい、それで妻は腐りかけていたが、生き返った。馬に乗って帰る途中、馬の後ろ足が跳ねたときは、ワジル川を通るときだから目を開けてはいけないよ、という。二人とも馬に乗り、ワジル川を渡るときは、約束どおり目を閉じ、家の前に馬が着いてブルブル振ったので二人とも下りて、ご馳走をつくり、家中でお祝いをした。
| レコード番号 | 47O230171 |
|---|---|
| CD番号 | 47O23C010 |
| 決定題名 | 鬼になった嫁(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 豊村幸徳 |
| 話者名かな | とよむらこうとく |
| 生年月日 | 19060805 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県粟国村字東55番地 |
| 記録日 | 19760817 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄国際大学口承研 |
| 元テープ番号 | 粟国T07A04 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | むかしむかし |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 粟国島の民話P223 |
| キーワード | 鬼,太鼓,二つの玉,阿弥陀,閻魔大王 |
| 梗概(こうがい) | 昔むかし、あるところに二軒隣どうしの家があった。一軒の家には母親と娘、もう一軒の家には父親と息子がいた。そこで母親と父親が結婚し、娘と息子が結婚した。ところが娘の方が鬼になり、毎晩夜になると村人を襲って食べていた。初めは気付かなかったが、回数が増え、村の半数が食べられた頃に気付いた。そしてしまいにその鬼は、自分の親や夫も食べようと思うようになっていた。それで夫が気付き両親に相談した。両親は「私たちは年だから死んでもいいが、お前は若いから逃げなさい」といい、馬に乗せて逃がした。鬼は夫が逃げたので、牛などの家畜や生き物などを食べ尽くしてしまった。 一方、夫の方はある村に着き、大きな屋敷に下働きとして働かせてもらい、その家で信用され、気に入られて婿になった。二、三百人を使うほどの大金持ちになった。二、三ヵ年が過ぎて、親たちはどうしているだろうかと気になり、家に帰りたくなった。妻が行くなと止めるがきかず、故郷へ帰ることになった。 そのとき妻が「危なくなったらこの玉を投げなさい」といい、2個の玉を夫に渡した。夫が玉を持って故郷に帰ってみると、元の妻の鬼が村人を一人残らず食べてしまっていた。自分の家に入ると蜘蛛の巣がかかっていた。そのとき元の妻に見付かり、「どこに行っていたのか」ときかれる。夫は不安に思う。鬼になった妻は、夫を食べようと思い、「浜へ鎌をとぎに行くので、お前さんはここでずっと太鼓を叩いていなさい」といって、浜へ行った。夫が太鼓を叩いていると両親の幽霊が出てきて、「この太鼓は私たちが叩いているから、お前はその間に逃げなさい」という。それで夫は馬に乗って逃げた。鬼が帰ってくると、太鼓の音が天井から聞こえるので、天井に上がってみたが誰もいない。今度は下の方で聞こえるので、降りていくとそこにも誰もいない。鬼はやっとだまされたと知り、夫の後を追いかけた。しばらくして鬼は夫を見付けた。 それで夫はびっくりして、妻からもらった玉を一個投げ付けた。するとその玉は針の山になった。夫は、鬼が針の山を抜け出る間に逃げた。するとまた、鬼が追いついてきたので、今度は二番目の玉を投げると、この玉から火が出て鬼は焼き殺されてしまった。そうして家に帰ると、妻は夫の帰りを心配し、一週間になっているという。夫はこれは大変だといい、「一週間ならまだ連れ戻せる。連れてくる」といって馬に乗り、元の妻が葬られている墓へ行き、そこに夜中までいた。夜になると老人や女、子供たちの幽霊が出てきたので、夫がここに新しく死んだ人が来なかったか」ときくと誰も知らない。また子供たちが石なぐーという遊びをやっていたが、一人足りない。そこで夫が「私を入れてくれ」というと、子供たちは「大人はいらない」といって断わるが、一人どうしても足りないので、その夫を遊びの仲間に入れた。そうして遊んでいるうちに、妻が洗濯物を頭に乗せてやってきた。妻は阿弥陀に仕えていて、洗濯をする仕事をしている。夫が妻を捕まえようとするが、消えて捕まれない。また年寄りの霊魂が現れて、この老人が左脇の方から手を入れて抱きかかえると捕まえられると知らせてくれる。夫がそのようにすると、妻は捕まえられた。妻が「私は阿弥陀に仕えている身なので帰れない」夫が、私が連れて行くといって、閻魔大王の前へ行き、「私の妻は長命かどうかきくと、閻魔王は「まだ死ぬ運命ではないが、長命でない」という。そこで夫は刀を逆さまに立て、「阿弥陀が何か、閻魔大王が何か。後生の世がある限り、みんな殺してやる」という。それを閻魔大王が、「これをここにおいていては、後生の世は大変だ。早く帰しなさい」といい、それで妻は腐りかけていたが、生き返った。馬に乗って帰る途中、馬の後ろ足が跳ねたときは、ワジル川を通るときだから目を開けてはいけないよ、という。二人とも馬に乗り、ワジル川を渡るときは、約束どおり目を閉じ、家の前に馬が着いてブルブル振ったので二人とも下りて、ご馳走をつくり、家中でお祝いをした。 |
| 全体の記録時間数 | 17:09 |
| 物語の時間数 | 16:30 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |