モーイは十四、五歳になっても、お役所務めの勉強をしようともしない。人の家の鶏小屋をあけて、鶏どうし喧嘩させて、もう遊んでばかりいた。腕白坊主で父親の言うことも母親の言うことも一つも聞かなかった。モーイ親方の家は、弟子や下男や奉公人もたくさん使っているので、大層お金持ちなんだね。そこへ、ある日、食べることもできなくて、何でも人の物を盗んで食べている男の親子の盗人が、「今日は、モーイ親方の家に入って、腹いっぱい御馳走を食べてこよう」と言って、入って来た。モーイの家では、モーイを勉強させるといって、夜食を作って、鍋に御馳走がいっぱいあった。この親子盗人は、それをみんな平らげて、「満腹したなあ。これで命が助かった」と言って帰って行った。そのとき、モーイは、かますの中に入って、出口の玄関のところで寝ていた。それに、この盗人がつまずいた。「おいマチャー、金持ちの人にこそ物は教えられるもんだ。腹いっぱい御馳走を食べたのに、わしらに米俵まで持たせてやるといって、ここに俵が転がっているよ。さあ、担いでいこう」と言った。その時、モーイがかますの中から出てきて、盗人だとは言わないで、「火事だぞー」と叫んだ。その家では、バケツを持ってくる人、水を担いでくる人もいて、もう大騒ぎになった。モーイ親方の父親も母親も出てきて、「でかしたぞ」と言った。そして、「モーイは、これほどの知恵もあるね」と言って、盗人に、「どんなわけがあって、お前達はここに来て、つまみ食いをして、うちの長男の夜食にと置いていたのを、全部食べてしまったのか。そのわけを言いなさい」とたずねた。盗人は、「自分たちは土地や畑というものは何もない。人の土地を借りようにも、借地料さえ払えない。あとは、盗みでもして食っていかないと生きていけないので、食いつないでいくためにやりました。お許し下さい」と言った。「そうか、それなら土地代も何もいらない。私達は空いた土地がたくさんあるから、そこを立派に耕して、お前達親子で働いて、野菜や(穀物や)いろんなものがとれるようになったら、私達は恩儀はもらってもいいから、ここでがんばってくれ」と言ったので、喜んで、それから盗みもしなかった。この伊野波親方は心が広く何でもやって、ますます富み栄えて、この盗人にも土地も貸して、土地代も五年間は納めなくてもよいと言うからここで働けるようになって、五か年過ぎて自分達の土地になったので、土地代を納めるようになったという話。
| レコード番号 | 47O220498 |
|---|---|
| CD番号 | 47O22C023 |
| 決定題名 | モーイ親方 盗人恵み(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | モーイ親方 盗人恵み |
| 話者名 | 前田マツエ |
| 話者名かな | まえだまつえ |
| 生年月日 | 19091133 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県大宜味村饒波 |
| 記録日 | 19830304 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 大宜味村饒波T20B12 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 笑話 |
| 発句(ほっく) | もーいや |
| 伝承事情 | 年寄りから |
| 文字化資料 | 『おおぎみの昔話』(平成10年3月31日 大宜味村教育委員会発行)P192 |
| キーワード | モーイ,十四、五歳,お役所務めの勉強,鶏,腕白坊主,父親,母親,弟子,下男,奉公人,金持ち,男の親子の盗人,御馳走,夜食,鍋,平らげ,満腹,命が助かる,かますの中,出口,玄関,米俵,火事だぞー,大騒ぎ,知恵,伊野波親方,富み栄え,土地を貸す,土地代,五年間,納めなくてよい |
| 梗概(こうがい) | モーイは十四、五歳になっても、お役所務めの勉強をしようともしない。人の家の鶏小屋をあけて、鶏どうし喧嘩させて、もう遊んでばかりいた。腕白坊主で父親の言うことも母親の言うことも一つも聞かなかった。モーイ親方の家は、弟子や下男や奉公人もたくさん使っているので、大層お金持ちなんだね。そこへ、ある日、食べることもできなくて、何でも人の物を盗んで食べている男の親子の盗人が、「今日は、モーイ親方の家に入って、腹いっぱい御馳走を食べてこよう」と言って、入って来た。モーイの家では、モーイを勉強させるといって、夜食を作って、鍋に御馳走がいっぱいあった。この親子盗人は、それをみんな平らげて、「満腹したなあ。これで命が助かった」と言って帰って行った。そのとき、モーイは、かますの中に入って、出口の玄関のところで寝ていた。それに、この盗人がつまずいた。「おいマチャー、金持ちの人にこそ物は教えられるもんだ。腹いっぱい御馳走を食べたのに、わしらに米俵まで持たせてやるといって、ここに俵が転がっているよ。さあ、担いでいこう」と言った。その時、モーイがかますの中から出てきて、盗人だとは言わないで、「火事だぞー」と叫んだ。その家では、バケツを持ってくる人、水を担いでくる人もいて、もう大騒ぎになった。モーイ親方の父親も母親も出てきて、「でかしたぞ」と言った。そして、「モーイは、これほどの知恵もあるね」と言って、盗人に、「どんなわけがあって、お前達はここに来て、つまみ食いをして、うちの長男の夜食にと置いていたのを、全部食べてしまったのか。そのわけを言いなさい」とたずねた。盗人は、「自分たちは土地や畑というものは何もない。人の土地を借りようにも、借地料さえ払えない。あとは、盗みでもして食っていかないと生きていけないので、食いつないでいくためにやりました。お許し下さい」と言った。「そうか、それなら土地代も何もいらない。私達は空いた土地がたくさんあるから、そこを立派に耕して、お前達親子で働いて、野菜や(穀物や)いろんなものがとれるようになったら、私達は恩儀はもらってもいいから、ここでがんばってくれ」と言ったので、喜んで、それから盗みもしなかった。この伊野波親方は心が広く何でもやって、ますます富み栄えて、この盗人にも土地も貸して、土地代も五年間は納めなくてもよいと言うからここで働けるようになって、五か年過ぎて自分達の土地になったので、土地代を納めるようになったという話。 |
| 全体の記録時間数 | 4:15 |
| 物語の時間数 | 4:15 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |