ブナガヤの火あたり(共通語)

概要

私が小学六年の夏休み頃、自分の目で見た話。東村の境界に大川と言う大きな川があるが、このあたりは、昔は物凄く木が茂っていた。そこから材木を切り倒して筏を作って流して、それで生活をした人が相当いた。それで、「あんまり無茶に伐採されたらシマが大変なことになる」と言って、県から、俗にヤマビサと言われる監視員が立てられ、朝八時頃から晩の五時頃まで監視させていた。そうやって、向こうの山から木を伐り倒したり、筏を流して材料持って帰ったりするのは違反といって、禁じられていた。廃藩時代に、首里から追い出された役人は、土地も全然くれないで追い出されたから、行く所がなく山原の山の中に逃げたりして、すごく苦しかった。それで根路銘の山を畑にするということで、全部国や県から分けてもらったが、上原は、畑が全然ない。だから、石ころの山に段々畑を自分の力で開拓して、細々と生きておった。そういう環境だから、畑もあまり出来ない。やろう思っても開拓できる土地がないということで、ずうっと山の中に行って、そこで、罪を犯してでも禁じられておったが、生きるために山の木を伐採する仕事をやっておった。私が尋常六年の夏頃、夜、監視員が帰る時分は夕方の五時だから、うちの叔父さん四人と私の五人が、ここから大分遠い山に六時頃から出掛けて、二時間くらいで目的地に着いた。そこで、大きな鰻や海老、鮎などを捕るために大きい川に行った。今だったら感電死させるところだが、あの時分は、川上で大きな葉っぱのササキというワジクを切って砂盛って、又切って砂盛って二人ずつ交代交代で叩いて、このようなのを二つ作って、それが川下に流れて行くと鰻がそれを食べて、中毒して、フラフラーとなったり穴に入ったりするから、それを捕るためにやった。私とお父さんと二人は、一番最初に寝た。山の中だから何が来るか分からんから、火を沢山焚いて、暖を取りながら寝ておった。僕は山の中に寝るのは初めてだから、とっても恐ろしかった。それでお父さんの横にへばりついて寝ておった。しばらくして、何気なしに、「確かに枯れ木を踏んで歩くような音がするなあ」と思って、息を飲んで親父の胸にすがってじぃーと見ておった。そうしたら、寝ておったからはっきりした顔の輪郭は分からないが、向こうから人が来るんだ。「おかしいなあ」と思って、じぃーと近寄って来るのを見たら人じゃない。「何だろう」と思っていたら、そのブナガヤが火にあたるいうて、人の寝ておる横にこんなして来て、手を火にあぶっておるんですよ。そのときただいっぺん見たきりだけど、長い間見たんです。そのときは寝ていて下から見ているからはっきりは分からないが、大きさは人間の子供くらいで、高さが私の膝くらいの高さだったと思うんですよ。髪の毛は普通の人間の髪の毛ですよ。その髪の毛をだらーっと垂らしているから顔の上ははっきりは分からんが、顔は赤黒いというのかな。そのかわりここから下が全部丸見えで、下は全部分かる。あんまり尻(けつ)は大きくない。一番特徴は下のキンタマですよ。ちょうど体の半分ぐらいの大きいキンタマが二つとも今にも切れそうにぶら下がっておるわけ。だから、「あれはあれだけ走るのにどうしてあんなに長いものぶら下げて歩くのかな」と思って、自分も考えてみたんだが、非常に長くて足元まであって重そうだけど、薄っぺらで何か触ったら切れるような感じがするんです。ただ場合によっては自分に害する者にはこれでからまる武器になっているかも分かりません。それを後で人に話したら、みんな笑っておったんです。私はそのとき、もう気持ち悪くてね、「これ大変だなあ」と思っていたら、親父は、夜になったら自分の廻りにそれが必ず来ると知っておるわけ。それで、これが来たときに燃やしたら音がする青竹を三本くらい切っておいていたわけです。青竹を燃やしたら空気の関係で大きな音立てるでしょう。それが見えたから、親父は、足でゆっくり青竹を火の中にくべたわけ。しばらくしたら大きな音がパパーンと鳴ったわけ。そうしたら、奥山にある椎の木なんかがササササーと大きな音を立てて、それが逃げて行った。怖くて、親父に言うたら、「もう来ない」と言うから安心した。案の定、その後は来なかった。その後、私はまた交代して同じ所に行って魚捕りをした。その次も叔父さんなんかは行ったんだが、私はもう行かなかった。一回行って止めたんです。後からうちの叔父さんに聞いたら、「これは確かにおる。人に害するもんじゃない。ブナガヤは非常に力持ちで二人前の仕事するよ」と言うから、「どういうことですか」と言うと、「木を伐るのは深い山だから、ブナガヤと友達になると山の入口まで木を担いで運んでくれて、また山に帰る」って。叔父さんの話では、その友達の人が来たら、必ず、そのブナガヤはどこからともなくこっちに来て、それで柱作るために木なんかをこんなして削っておるでしょう。そうすると、そこの後ろの木が抜かれんように石を持っているんだって。「それは危ないから退け」と言っても退かん。それで昼の弁当は自分の物とこのブナガヤの物と二つ持って行って、自分が食べたら必ずこのブナガヤにもやるんです。そのブナガヤの巣がここになっておったわけです。そこに行くたびにブナガヤが来て、あんな大きな木を人間が運ぶのは大変だけど、ブナガヤが材木を運んでくれるから非常に助かったらしいです。叔父さんが言うには、ブナガヤは、言葉は全然喋らん。それで、ブナガヤは奥山の中に大きい枯れた椎の木の穴に隠れておって、人が来ても分からなかった。ある程度、人間を怖がることもあるらしいが、慣れたら平気だって。「ブナガヤお早う」と言うと、来るらしい。食べ物は、奥山に行ったら川の縁に大きな蟹おるから、その蟹の目玉をくり抜いて食べたりしているから川をずっと廻ったら、必ず目の玉を取られた蟹とか海老とか魚とか、そういったのがたくさん見えますよ。うちの叔父さんはブナガヤに非常に助けられたりして、現在の財産作ったという謂われがあって、叔父さんは惴慶山というが、ブナガヤ惴慶松という名前付いておる。それで子供は、今、浦添市の経塚におります。亡くなられたから、生きておったら、ブナガヤの話をいっぱいしてブナガヤの立派な資料を作れるんだがなあと思います。人の話では、ブナガヤというのは人間を非常に害して、火を付けて火傷させたりするというようなことやるということを聞いておったんですが、うちの叔父さんの話では、「絶対にそんなことはしない、非常によく人のことやってくれるし、また人なつっこい立派な動物だ」と言うのです。

再生時間:15:46

民話詳細DATA

レコード番号 47O220380
CD番号 47O22C018
決定題名 ブナガヤの火あたり(共通語)
話者がつけた題名 ブナガヤ
話者名 浜元正雄
話者名かな はまもとまさお
生年月日 19041127
性別
出身地 沖縄県大宜味村上原
記録日 19830304
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 大宜味村根路銘T16B04
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 世間話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料
キーワード 見た話,東村の境界,大川,木が茂っていた,材木を切り倒し,筏で流す,ヤマビサ,監視員,違反,禁じられた,廃藩時代,首里,追い出された役人,土地,山原,山の中,根路銘,山を畑に,段々畑,開拓,伐採する仕事,叔父,鰻,海老,鮎,感電死,大きな葉っぱ,ササキ,ワジク,中毒,お父さん,火を沢山焚く,枯れ木を踏んで歩く音,ブナガヤが火にあたる,手を火にあぶる,人間の子供くらい,髪の毛,顔は赤黒,下が全部丸見え,尻(けつ)は大きくない,大きいキンタマ,青竹,三本,青竹を燃やす,大きな音,火の中にくべた,奥山,椎の木,魚捕り,ブナガヤ,力持ち,二人前の仕事,友達になる,木を担いで運ぶ,弁当,二つ,材木を運んでくれる,川の縁,大きな蟹,目玉,助けられた,財産作った,ブナガヤ端慶山,
梗概(こうがい) 私が小学六年の夏休み頃、自分の目で見た話。東村の境界に大川と言う大きな川があるが、このあたりは、昔は物凄く木が茂っていた。そこから材木を切り倒して筏を作って流して、それで生活をした人が相当いた。それで、「あんまり無茶に伐採されたらシマが大変なことになる」と言って、県から、俗にヤマビサと言われる監視員が立てられ、朝八時頃から晩の五時頃まで監視させていた。そうやって、向こうの山から木を伐り倒したり、筏を流して材料持って帰ったりするのは違反といって、禁じられていた。廃藩時代に、首里から追い出された役人は、土地も全然くれないで追い出されたから、行く所がなく山原の山の中に逃げたりして、すごく苦しかった。それで根路銘の山を畑にするということで、全部国や県から分けてもらったが、上原は、畑が全然ない。だから、石ころの山に段々畑を自分の力で開拓して、細々と生きておった。そういう環境だから、畑もあまり出来ない。やろう思っても開拓できる土地がないということで、ずうっと山の中に行って、そこで、罪を犯してでも禁じられておったが、生きるために山の木を伐採する仕事をやっておった。私が尋常六年の夏頃、夜、監視員が帰る時分は夕方の五時だから、うちの叔父さん四人と私の五人が、ここから大分遠い山に六時頃から出掛けて、二時間くらいで目的地に着いた。そこで、大きな鰻や海老、鮎などを捕るために大きい川に行った。今だったら感電死させるところだが、あの時分は、川上で大きな葉っぱのササキというワジクを切って砂盛って、又切って砂盛って二人ずつ交代交代で叩いて、このようなのを二つ作って、それが川下に流れて行くと鰻がそれを食べて、中毒して、フラフラーとなったり穴に入ったりするから、それを捕るためにやった。私とお父さんと二人は、一番最初に寝た。山の中だから何が来るか分からんから、火を沢山焚いて、暖を取りながら寝ておった。僕は山の中に寝るのは初めてだから、とっても恐ろしかった。それでお父さんの横にへばりついて寝ておった。しばらくして、何気なしに、「確かに枯れ木を踏んで歩くような音がするなあ」と思って、息を飲んで親父の胸にすがってじぃーと見ておった。そうしたら、寝ておったからはっきりした顔の輪郭は分からないが、向こうから人が来るんだ。「おかしいなあ」と思って、じぃーと近寄って来るのを見たら人じゃない。「何だろう」と思っていたら、そのブナガヤが火にあたるいうて、人の寝ておる横にこんなして来て、手を火にあぶっておるんですよ。そのときただいっぺん見たきりだけど、長い間見たんです。そのときは寝ていて下から見ているからはっきりは分からないが、大きさは人間の子供くらいで、高さが私の膝くらいの高さだったと思うんですよ。髪の毛は普通の人間の髪の毛ですよ。その髪の毛をだらーっと垂らしているから顔の上ははっきりは分からんが、顔は赤黒いというのかな。そのかわりここから下が全部丸見えで、下は全部分かる。あんまり尻(けつ)は大きくない。一番特徴は下のキンタマですよ。ちょうど体の半分ぐらいの大きいキンタマが二つとも今にも切れそうにぶら下がっておるわけ。だから、「あれはあれだけ走るのにどうしてあんなに長いものぶら下げて歩くのかな」と思って、自分も考えてみたんだが、非常に長くて足元まであって重そうだけど、薄っぺらで何か触ったら切れるような感じがするんです。ただ場合によっては自分に害する者にはこれでからまる武器になっているかも分かりません。それを後で人に話したら、みんな笑っておったんです。私はそのとき、もう気持ち悪くてね、「これ大変だなあ」と思っていたら、親父は、夜になったら自分の廻りにそれが必ず来ると知っておるわけ。それで、これが来たときに燃やしたら音がする青竹を三本くらい切っておいていたわけです。青竹を燃やしたら空気の関係で大きな音立てるでしょう。それが見えたから、親父は、足でゆっくり青竹を火の中にくべたわけ。しばらくしたら大きな音がパパーンと鳴ったわけ。そうしたら、奥山にある椎の木なんかがササササーと大きな音を立てて、それが逃げて行った。怖くて、親父に言うたら、「もう来ない」と言うから安心した。案の定、その後は来なかった。その後、私はまた交代して同じ所に行って魚捕りをした。その次も叔父さんなんかは行ったんだが、私はもう行かなかった。一回行って止めたんです。後からうちの叔父さんに聞いたら、「これは確かにおる。人に害するもんじゃない。ブナガヤは非常に力持ちで二人前の仕事するよ」と言うから、「どういうことですか」と言うと、「木を伐るのは深い山だから、ブナガヤと友達になると山の入口まで木を担いで運んでくれて、また山に帰る」って。叔父さんの話では、その友達の人が来たら、必ず、そのブナガヤはどこからともなくこっちに来て、それで柱作るために木なんかをこんなして削っておるでしょう。そうすると、そこの後ろの木が抜かれんように石を持っているんだって。「それは危ないから退け」と言っても退かん。それで昼の弁当は自分の物とこのブナガヤの物と二つ持って行って、自分が食べたら必ずこのブナガヤにもやるんです。そのブナガヤの巣がここになっておったわけです。そこに行くたびにブナガヤが来て、あんな大きな木を人間が運ぶのは大変だけど、ブナガヤが材木を運んでくれるから非常に助かったらしいです。叔父さんが言うには、ブナガヤは、言葉は全然喋らん。それで、ブナガヤは奥山の中に大きい枯れた椎の木の穴に隠れておって、人が来ても分からなかった。ある程度、人間を怖がることもあるらしいが、慣れたら平気だって。「ブナガヤお早う」と言うと、来るらしい。食べ物は、奥山に行ったら川の縁に大きな蟹おるから、その蟹の目玉をくり抜いて食べたりしているから川をずっと廻ったら、必ず目の玉を取られた蟹とか海老とか魚とか、そういったのがたくさん見えますよ。うちの叔父さんはブナガヤに非常に助けられたりして、現在の財産作ったという謂われがあって、叔父さんは惴慶山というが、ブナガヤ惴慶松という名前付いておる。それで子供は、今、浦添市の経塚におります。亡くなられたから、生きておったら、ブナガヤの話をいっぱいしてブナガヤの立派な資料を作れるんだがなあと思います。人の話では、ブナガヤというのは人間を非常に害して、火を付けて火傷させたりするというようなことやるということを聞いておったんですが、うちの叔父さんの話では、「絶対にそんなことはしない、非常によく人のことやってくれるし、また人なつっこい立派な動物だ」と言うのです。
全体の記録時間数 17:42
物語の時間数 15:46
言語識別 共通語
音源の質
テープ番号
予備項目1

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