これは実際にあった話のはずですよ。今もその人達は元気でいるが、今ではだいぶ歳をとって昔人なってしまったが、仲程のお爺とよ、新東前当のお爺が、二人で馬買いに出かけたそうだ。その人たちが馬交換する際、二人で行って、「とう、私の馬、これはどうしても交換しなければならないので、これは儲けるつもりはないので、皆さんの馬と交換してくれんか。」と言って、あっちこっち回って見たが、相手が合点したなら交換できるんだが、交換する相手が容易に見つからないわけさ。だから、契約がもう成立しないでいるうちに、もう昼間も大分過ぎて、二人ともおなかがすいてるんだなあ。で、昔は今のようにして、どこにも食堂は多くないのだから他人の家や知人の家に行って食べないと、食べられやしない。で、どこもかもあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、歩くべき所は歩いて、馬を換えられる家を見つけて、そこで、昼飯にありつこうとするのだが、どうしても換える家が見つからない。「わしらも生き物だから、おにぎりでもジューシーメーでもソーミンチャンプルーでもいい、どこかで飯を食べないといけないが。これは食うところがなくて大変だ。」と言ってね、欲しがっているんだけど容易に当たらんから、「ああ、もう食事の心配までするのかなあ。」二人考えてね、そのうちに、腹が減って我慢出来なくなったわけ。「ああ、飯は食べたいのだが、食事をさせてくれるところはなし。ああそうか、それならどうにか考えよう。食べる考えしようや。」と言って、幸い馬のいるよその家に行って、馬を交換しようとしたのさ。そこでは、まあわざとあまり上等でない馬と交換するのさ。「ねえ、契約金は大きくしようね。美味しいのから買わせて食べようね。」と自分のはそれより良い馬を持っているのだから、上等でない馬のおる家へいってね、「もう私たちは食にもありつけそうもないし、この馬は売ろうか、換えようかしたいと思っているが。」と言ってね。その家の人が連れて来た馬を見ると、自分の家の馬ようも良い馬だから、「あ、そうか。あんたたちの物と換えましょうや。」と、言ったそうだな。もう早く換えることにしてね、「それでは、契約しましょうや。この馬を換えたら、私たちは損をして、あんたはべらぼうに得をするんだが、まあ仕方がないね。」と言うから、相談がまとまってね、換えることになったから契約した。それで、これは一つの策略だからね。その家で御馳走でも作ってもらって二人は食べたでしょうね。それが、あまり自分のものは安くて、こっちのを高くして馬を取り替えると言うことになっているのだから、向こうでも、「これたちはなにかおかしい。」と疑ったのでしょうね。そうしているうちに、昼飯を食べてしまったら二人相談してね。まあ、もう二人は美味しいものから買わせて食べているのだから飢えはしのげたさあ。だけど、そのまま馬を換えたら、自分のは安くさせ、相手のは高く上げての相談はできているからこれたちは損するでしょう。今度は、昔の豚小屋はね、農家では台所のすぐそのそばにあるんです。その台所んところで、そこの家のお母さんがね、盛んに芋を煮るために火を燃やしてるからね、そこに行って、まあ二人の話は、わざと大声でね、一人の馬喰が、「とう、今日はでかしたぞ。今日でホッとした。この生き物をもっているあいだは、これは蹴ったり、噛んだりする馬だから子供たちには危ないし、自分でさえも扱いにくい。いいときに交換したさ。ああ、良く考えて下さった。」「こちらの方はそんなこととは知らないさ。今日は、いい馬喰さんだね。」と言ってね、相槌打ってるわけ。これは、お母さんに聞かすために話してるわけさ。そうしているうちに何というのか、フールを見たら、火の神の石みたいなものが置いてあるようだね。「今日はまたこれで考えて何かの話の種にでもならないか。」と思ったわけさ。この女主がいるところの炊事場と便所とは余り離れていないから、これたちの話聞いてるさ。馬が蹴ったり、噛んだりするってことを聞かされてたから驚いているよね。「あれ、お父たら、これは大変だ、変な馬とってしまって。」と行って考えているのさ。二人が家に入って来て、そのとき夫が台所に来たので、夫に言ったわけ。「今日は変な馬と換えたようよ、あの人たちの言うこと聞いてたら一大事ですよ。この馬を誰も買う人なんかいませんよ。一大事だからもう取り消しなさい。この馬は蹴ったり、噛んだりする大変癖のある馬らしいよ。私達にも子供はいるし、もう大変なことになってしまうよ。」と言うから、夫も、「うーん。」と考えこんだね。「そうだ。これは決まってはいるが、まだお金の取り交わしはしていない。今ならどうにかなるな。」と言って。そうこうしているうちに、やっと相手から言い出して来てね。「折角換えてあるが考えたら、そうだなあ少し換えるのは待ちたいと思うよ。」と、その相手は言っているのさ。「どうして、こんなに換えたのに咎めるのか。」「ふーん、そうなんだが、何やら色々都合があって、この今の馬は私が使うと使いやすくもあり、しばらく待っとくさ。」「ああ、そうしますか。」とこの馬喰の人たちは、不満のような顔をして、それから、飲みながら色々話をし、今度はもう破約したわけね。またその家にね、ちょっとした病人ががいたらしい。その家の夫が、「もうこれも身体が弱くて、困ったものですよ。」と話を切り出してね、「なんですか。」と言ったら、「何の病気か分からないが幾らやっても、医者の薬を飲ましても直らないし、本当に嫌なもんだね。」「ああ、そうなんですか。」と言って、それから、しばらく考えたふりをして、「あれえ、お宅はなんだかいい塩梅ではなさそうだ。火の神の祟りが見えますよ。」本人たちは、本当は何にもそんなもの分からないですよ。この馬喰たちは口が上手いからね、「火の神の祟りが見えますよ。」と言われたら、その家の夫も気になるから、「何が。」って言ったら、フールに置きっぱなしにして、ほっといているを知っているから、「あなたがたは、どうかして火の神をどこかにほったらかしにしているでしょう。」と言ったら、「そうだね、そんな覚えはないが。あ、そうだ。そういえばそうだね。」と言うから、そのときに、一人の馬喰が、「火の神が見えるさ。」と言うと、主人は、「フールのそばに置いているはずだが。」と言うから、「それよ。これの祟りが見えますよ。」「見えますよ、それ願立てて下さいよ。これは火の神からのお通しで大丈夫。何も上のほうの神を拝む必要ないのですよ。火の神にお捧げ下さい。」そんなに言われたが、とにかくそんなもの捧げなくても人間の病気なんて、半分は精神的なものですから治るものなんですよ。それで、フールから石を拾ってきて、御願の真似事をしてやってね、「もうこれで大丈夫。」と言ったから、そこの主も安心したんでしょう。そうしたら、その家の病人の病気がすっかり治ったから、それで、また今度は自分たちも損をしないように契約をし、銭ももらって御馳走になり、家に帰って来た。そうしたら、「は、この人達はさ、良く当たって優れていますね。」と言って、その後から二、三回もよ、「大層、良く当てるユタがいらっしやいますよ。男ユタですが本当に良く当てるユタがおられる。」と宣伝が大きくてね、もう非常に断るのに難儀したという話だよ。これは、飢えは凌げたから成功したといえるが、馬喰たちは、そんな目に良く出合っているからね、昔は、馬喰たちがひもじい思いをしたらそんなことを色々考え、只で食する方法をよく分かっていたようだよ。昔の話は面白いよ。
| レコード番号 | 47O361891 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C072 |
| 決定題名 | 馬交換(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 玉城安亀 |
| 話者名かな | たまきあんき |
| 生年月日 | 18981005 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県北中城村字喜舎場98 |
| 記録日 | 19811213 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村補足調査1班T37B02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P581 |
| キーワード | 馬交換,火の神 |
| 梗概(こうがい) | これは実際にあった話のはずですよ。今もその人達は元気でいるが、今ではだいぶ歳をとって昔人なってしまったが、仲程のお爺とよ、新東前当のお爺が、二人で馬買いに出かけたそうだ。その人たちが馬交換する際、二人で行って、「とう、私の馬、これはどうしても交換しなければならないので、これは儲けるつもりはないので、皆さんの馬と交換してくれんか。」と言って、あっちこっち回って見たが、相手が合点したなら交換できるんだが、交換する相手が容易に見つからないわけさ。だから、契約がもう成立しないでいるうちに、もう昼間も大分過ぎて、二人ともおなかがすいてるんだなあ。で、昔は今のようにして、どこにも食堂は多くないのだから他人の家や知人の家に行って食べないと、食べられやしない。で、どこもかもあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、歩くべき所は歩いて、馬を換えられる家を見つけて、そこで、昼飯にありつこうとするのだが、どうしても換える家が見つからない。「わしらも生き物だから、おにぎりでもジューシーメーでもソーミンチャンプルーでもいい、どこかで飯を食べないといけないが。これは食うところがなくて大変だ。」と言ってね、欲しがっているんだけど容易に当たらんから、「ああ、もう食事の心配までするのかなあ。」二人考えてね、そのうちに、腹が減って我慢出来なくなったわけ。「ああ、飯は食べたいのだが、食事をさせてくれるところはなし。ああそうか、それならどうにか考えよう。食べる考えしようや。」と言って、幸い馬のいるよその家に行って、馬を交換しようとしたのさ。そこでは、まあわざとあまり上等でない馬と交換するのさ。「ねえ、契約金は大きくしようね。美味しいのから買わせて食べようね。」と自分のはそれより良い馬を持っているのだから、上等でない馬のおる家へいってね、「もう私たちは食にもありつけそうもないし、この馬は売ろうか、換えようかしたいと思っているが。」と言ってね。その家の人が連れて来た馬を見ると、自分の家の馬ようも良い馬だから、「あ、そうか。あんたたちの物と換えましょうや。」と、言ったそうだな。もう早く換えることにしてね、「それでは、契約しましょうや。この馬を換えたら、私たちは損をして、あんたはべらぼうに得をするんだが、まあ仕方がないね。」と言うから、相談がまとまってね、換えることになったから契約した。それで、これは一つの策略だからね。その家で御馳走でも作ってもらって二人は食べたでしょうね。それが、あまり自分のものは安くて、こっちのを高くして馬を取り替えると言うことになっているのだから、向こうでも、「これたちはなにかおかしい。」と疑ったのでしょうね。そうしているうちに、昼飯を食べてしまったら二人相談してね。まあ、もう二人は美味しいものから買わせて食べているのだから飢えはしのげたさあ。だけど、そのまま馬を換えたら、自分のは安くさせ、相手のは高く上げての相談はできているからこれたちは損するでしょう。今度は、昔の豚小屋はね、農家では台所のすぐそのそばにあるんです。その台所んところで、そこの家のお母さんがね、盛んに芋を煮るために火を燃やしてるからね、そこに行って、まあ二人の話は、わざと大声でね、一人の馬喰が、「とう、今日はでかしたぞ。今日でホッとした。この生き物をもっているあいだは、これは蹴ったり、噛んだりする馬だから子供たちには危ないし、自分でさえも扱いにくい。いいときに交換したさ。ああ、良く考えて下さった。」「こちらの方はそんなこととは知らないさ。今日は、いい馬喰さんだね。」と言ってね、相槌打ってるわけ。これは、お母さんに聞かすために話してるわけさ。そうしているうちに何というのか、フールを見たら、火の神の石みたいなものが置いてあるようだね。「今日はまたこれで考えて何かの話の種にでもならないか。」と思ったわけさ。この女主がいるところの炊事場と便所とは余り離れていないから、これたちの話聞いてるさ。馬が蹴ったり、噛んだりするってことを聞かされてたから驚いているよね。「あれ、お父たら、これは大変だ、変な馬とってしまって。」と行って考えているのさ。二人が家に入って来て、そのとき夫が台所に来たので、夫に言ったわけ。「今日は変な馬と換えたようよ、あの人たちの言うこと聞いてたら一大事ですよ。この馬を誰も買う人なんかいませんよ。一大事だからもう取り消しなさい。この馬は蹴ったり、噛んだりする大変癖のある馬らしいよ。私達にも子供はいるし、もう大変なことになってしまうよ。」と言うから、夫も、「うーん。」と考えこんだね。「そうだ。これは決まってはいるが、まだお金の取り交わしはしていない。今ならどうにかなるな。」と言って。そうこうしているうちに、やっと相手から言い出して来てね。「折角換えてあるが考えたら、そうだなあ少し換えるのは待ちたいと思うよ。」と、その相手は言っているのさ。「どうして、こんなに換えたのに咎めるのか。」「ふーん、そうなんだが、何やら色々都合があって、この今の馬は私が使うと使いやすくもあり、しばらく待っとくさ。」「ああ、そうしますか。」とこの馬喰の人たちは、不満のような顔をして、それから、飲みながら色々話をし、今度はもう破約したわけね。またその家にね、ちょっとした病人ががいたらしい。その家の夫が、「もうこれも身体が弱くて、困ったものですよ。」と話を切り出してね、「なんですか。」と言ったら、「何の病気か分からないが幾らやっても、医者の薬を飲ましても直らないし、本当に嫌なもんだね。」「ああ、そうなんですか。」と言って、それから、しばらく考えたふりをして、「あれえ、お宅はなんだかいい塩梅ではなさそうだ。火の神の祟りが見えますよ。」本人たちは、本当は何にもそんなもの分からないですよ。この馬喰たちは口が上手いからね、「火の神の祟りが見えますよ。」と言われたら、その家の夫も気になるから、「何が。」って言ったら、フールに置きっぱなしにして、ほっといているを知っているから、「あなたがたは、どうかして火の神をどこかにほったらかしにしているでしょう。」と言ったら、「そうだね、そんな覚えはないが。あ、そうだ。そういえばそうだね。」と言うから、そのときに、一人の馬喰が、「火の神が見えるさ。」と言うと、主人は、「フールのそばに置いているはずだが。」と言うから、「それよ。これの祟りが見えますよ。」「見えますよ、それ願立てて下さいよ。これは火の神からのお通しで大丈夫。何も上のほうの神を拝む必要ないのですよ。火の神にお捧げ下さい。」そんなに言われたが、とにかくそんなもの捧げなくても人間の病気なんて、半分は精神的なものですから治るものなんですよ。それで、フールから石を拾ってきて、御願の真似事をしてやってね、「もうこれで大丈夫。」と言ったから、そこの主も安心したんでしょう。そうしたら、その家の病人の病気がすっかり治ったから、それで、また今度は自分たちも損をしないように契約をし、銭ももらって御馳走になり、家に帰って来た。そうしたら、「は、この人達はさ、良く当たって優れていますね。」と言って、その後から二、三回もよ、「大層、良く当てるユタがいらっしやいますよ。男ユタですが本当に良く当てるユタがおられる。」と宣伝が大きくてね、もう非常に断るのに難儀したという話だよ。これは、飢えは凌げたから成功したといえるが、馬喰たちは、そんな目に良く出合っているからね、昔は、馬喰たちがひもじい思いをしたらそんなことを色々考え、只で食する方法をよく分かっていたようだよ。昔の話は面白いよ。 |
| 全体の記録時間数 | 8:09 |
| 物語の時間数 | 7:42 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |