料亭の女(シマグチ)

概要

普天間の料亭での話だが、そこにバキチーと名付けられた酒好き女がいたそうだ。この女は酒好きで、バケツで酒がぶ飲みしたというから、バキチーという名をつけられたようだね。これがまたね、面白い女で、いたずら好き、他の人をいたずらして喜んでいる人だったらしい。また、この普天間には客馬車引きの馬がいたよ。その料亭の前に馬を繋いで、客馬車呼び込みして、また客馬車夫が酒なんかを飲みながら、客を待っていたんだ。そのバキチーという女はしたたか者で、これが酒を飲むとすぐ腰巻き一つの丸裸になってよ、馬の綱を自分ではずして、馬に乗って、そうしてヒャーヒャーしていた。そう、今のあばずれ女さ。そして、そこは料亭だから、馬喰達が動物の売買に来て、それから酒なんかも出て、うなあ、馬喰たちが動物の契約が決まり、酒を飲んでいたら、このバキチーと言う者、他人にいたずらして喜ぶ人だから、その集まっている馬喰たちに、「あなたがたも皆酒小を飲んで帰ったら、夫婦喧嘩することもあるでしょう。」「そう、そうよ。夫婦喧嘩するさ。しても夫婦喧嘩は痴話喧嘩なんだから、大事なんかにならないよ。自分は夫婦喧嘩をしていても、他人の夫婦喧嘩は面白いだろうから、見てみたいなあ。」とある馬喰が言ったら、また別な馬喰も、「そうだなあ、そんなものにはたいてし当たらないなあ。人の夫婦喧嘩は見たことがないなあ。」と言ったら、そのバキチーという女が、「そうだ。今日は私が夫婦喧嘩をあなたたちにお見せしますから、見て下さいよ。」と言ったら、みんなで酒は飲んでいるのだから、馬喰たちが喜んだわけさ。その料亭は昔、今の高校の前のナン松が有ったところよ。そのナン松の間から、遠い宜野湾の畑がもう砂糖きび畑も芋畑も良く見えるさあ。また、普天間の前あたり、新城の後ろで若夫婦達が芋掘ろうとして、頑張っていたらしいさ。それ見たら、「あの夫婦を私が喧嘩をさせるから、見ていてくださいよ。」と言って、もう酒小飲んでいるし、馬喰たちは、喜んで、「うん、さあさあ、してみろよ。お前も頑張れ。」とけしかけると、その女は、着物小を立派に換えて、そうして、若夫婦達が芋掘っているところへ行ってから、もっともらしく、芋掘っている男にですよ、お辞儀をしつつ、「あら、誰かしらと思ったらあなたさまでしたか。いつもお元気でしたか、どうしてあなたさまは近頃いらっしゃらないのですか。」とあいさつしたけど、男の方は知らん女でしたから、うろたえたようだな。「あれえ、珍しいことだ。」そう思っていると、妻には、バキチーが料亭の女だと装いで分かってしまうので、妻はもうまた嫉妬の気持ちが出てしまったのさ。バキチーは、また、「なぜお見えにならないかと思ったら、その方はあなたの奥さんでしょう。それならたまには、いらっしゃいよ。」「うん。」「美人の妻を見つけたので、それであなたは来なかったのですね。」と言ったら、さあ妻は勘違いし始めてね、それでまたごたごたがおきたね。「まあ、あんたは私が知らないと思ってまだ料亭通いをして飲んでいたんですか。」ともう怒りだした。「ねえ、奥さんがいたって、奥さんは奥さん。いらっしゃいよ、待っていますから。」とバキチーが言ったら、そうすると、「あの女は何ですか。」と妻が言ったのさ。「うん、分からん。さっぱり分からん。」と夫が言っても、「どこが分からんと言うの。嘘をついて、こんなに親しそうにあいさつしているのに知らん振りして分からないと言うの。」「そう言ったって、知らんのは知らないんだから。」妻はもう夫がひた隠しに隠してると考えているのさ。さあ、それから、やきもちしはじめた。「ああ、もうあんた一人で行きなさい。私はもう芋掘らないさあ。」と鍬も置きっぱなしにして、家に一足飛びに帰ったのさ。それから、バキチーが馬喰たちに、「どうですか、みなさん。ご覧になりましたか。」と言ったので、「ほう。」と喝采したそうだ。

再生時間:5:43

民話詳細DATA

レコード番号 47O361889
CD番号 47O36C071
決定題名 料亭の女(シマグチ)
話者がつけた題名 普天間の料亭の女
話者名 玉城安亀
話者名かな たまきあんき
生年月日 18981005
性別
出身地 沖縄県北中城村字喜舎場98
記録日 19811213
記録者の所属組織 沖縄口承文芸学術調査団
元テープ番号 北中城村補足調査1班T37A07
元テープ管理者 沖縄伝承話資料センター
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 北中城の民話 P604
キーワード 普天間,客馬車,料亭,馬喰,バキチー,料亭の女
梗概(こうがい) 普天間の料亭での話だが、そこにバキチーと名付けられた酒好き女がいたそうだ。この女は酒好きで、バケツで酒がぶ飲みしたというから、バキチーという名をつけられたようだね。これがまたね、面白い女で、いたずら好き、他の人をいたずらして喜んでいる人だったらしい。また、この普天間には客馬車引きの馬がいたよ。その料亭の前に馬を繋いで、客馬車呼び込みして、また客馬車夫が酒なんかを飲みながら、客を待っていたんだ。そのバキチーという女はしたたか者で、これが酒を飲むとすぐ腰巻き一つの丸裸になってよ、馬の綱を自分ではずして、馬に乗って、そうしてヒャーヒャーしていた。そう、今のあばずれ女さ。そして、そこは料亭だから、馬喰達が動物の売買に来て、それから酒なんかも出て、うなあ、馬喰たちが動物の契約が決まり、酒を飲んでいたら、このバキチーと言う者、他人にいたずらして喜ぶ人だから、その集まっている馬喰たちに、「あなたがたも皆酒小を飲んで帰ったら、夫婦喧嘩することもあるでしょう。」「そう、そうよ。夫婦喧嘩するさ。しても夫婦喧嘩は痴話喧嘩なんだから、大事なんかにならないよ。自分は夫婦喧嘩をしていても、他人の夫婦喧嘩は面白いだろうから、見てみたいなあ。」とある馬喰が言ったら、また別な馬喰も、「そうだなあ、そんなものにはたいてし当たらないなあ。人の夫婦喧嘩は見たことがないなあ。」と言ったら、そのバキチーという女が、「そうだ。今日は私が夫婦喧嘩をあなたたちにお見せしますから、見て下さいよ。」と言ったら、みんなで酒は飲んでいるのだから、馬喰たちが喜んだわけさ。その料亭は昔、今の高校の前のナン松が有ったところよ。そのナン松の間から、遠い宜野湾の畑がもう砂糖きび畑も芋畑も良く見えるさあ。また、普天間の前あたり、新城の後ろで若夫婦達が芋掘ろうとして、頑張っていたらしいさ。それ見たら、「あの夫婦を私が喧嘩をさせるから、見ていてくださいよ。」と言って、もう酒小飲んでいるし、馬喰たちは、喜んで、「うん、さあさあ、してみろよ。お前も頑張れ。」とけしかけると、その女は、着物小を立派に換えて、そうして、若夫婦達が芋掘っているところへ行ってから、もっともらしく、芋掘っている男にですよ、お辞儀をしつつ、「あら、誰かしらと思ったらあなたさまでしたか。いつもお元気でしたか、どうしてあなたさまは近頃いらっしゃらないのですか。」とあいさつしたけど、男の方は知らん女でしたから、うろたえたようだな。「あれえ、珍しいことだ。」そう思っていると、妻には、バキチーが料亭の女だと装いで分かってしまうので、妻はもうまた嫉妬の気持ちが出てしまったのさ。バキチーは、また、「なぜお見えにならないかと思ったら、その方はあなたの奥さんでしょう。それならたまには、いらっしゃいよ。」「うん。」「美人の妻を見つけたので、それであなたは来なかったのですね。」と言ったら、さあ妻は勘違いし始めてね、それでまたごたごたがおきたね。「まあ、あんたは私が知らないと思ってまだ料亭通いをして飲んでいたんですか。」ともう怒りだした。「ねえ、奥さんがいたって、奥さんは奥さん。いらっしゃいよ、待っていますから。」とバキチーが言ったら、そうすると、「あの女は何ですか。」と妻が言ったのさ。「うん、分からん。さっぱり分からん。」と夫が言っても、「どこが分からんと言うの。嘘をついて、こんなに親しそうにあいさつしているのに知らん振りして分からないと言うの。」「そう言ったって、知らんのは知らないんだから。」妻はもう夫がひた隠しに隠してると考えているのさ。さあ、それから、やきもちしはじめた。「ああ、もうあんた一人で行きなさい。私はもう芋掘らないさあ。」と鍬も置きっぱなしにして、家に一足飛びに帰ったのさ。それから、バキチーが馬喰たちに、「どうですか、みなさん。ご覧になりましたか。」と言ったので、「ほう。」と喝采したそうだ。
全体の記録時間数 6:15
物語の時間数 5:43
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP