昔、真玉橋は、何度かけても流されたそうだ。それで、王様から、橋を架ける工事が浜川親方という方に命令されたんだがね、難しい工事でいくら橋を架けても架からない。それで、この橋を架ける人たちはこれたちは殺されることになって、橋の工事をしている青年たちが泣いているとき、イタバルチルーという女の人が町から来て、泣いているのを見たから、「どうしてお前たちは、ここで泣いているのか。」と言ったらね、「この橋は七回架けても架からない。もう私たちは命を落とすはめになったから泣いているんだよ。」と言ったら、「さあ それじゃあ、私が聞かせるからね、この橋は七色元結をしている女を殺して、この橋に埋めなければね、この橋は架けても架からないから、七色元結をしている女を捜してきて埋めなさいよ。」と言って、この女は家に帰っていったんだよ。それを聞いたから、浜川親方が七色元結をしている女を村の村々、国の国々を捜して歩いても、どうしてもいない。「七色元結をしている女はあれではないか。」って、イタバルチルーという女の人の家に行ったらね、やはり七色元結しているのは、この話を聞かせてくれたその女だったって。七色元結って言うのは、髪結うときに紐をするでしょう。この女は、七つの色の元結で括って髪を結っていたんだよ。イタバルチルーはもう連れて行かれて、殺されて橋に埋められることになったらね、そこの家では、女の子を一人生んでいるんだよ。その娘に、「年ごろになったらね、お前も人より先にものを言ってはいけないよ。私は、人より先にものを言ったために、あの橋に埋められてしまうから。」と言って、連れて行かれて埋められたそうだよ。そしたら、その橋は架かったそうだ。そのときから、この娘はものを言わなくなっているんだよ。この娘は、男の親と田舎に下りて行って、田舎で住んでいたがね、もう十七、八になったら大変きれいな娘になっていたって。そうして、浜にンナ貝を拾いに行ったらね、始めは、四人の娘たちがンナを拾いに来ているんだよ。そして、この娘たちが、「謝敷美童ぬ 謝敷板干瀬ぬ〔謝敷の乙女も 謝敷の浜辺の板も〕美童ぬかぎぬ美らさ〔この美しい乙女の美しさにはかなわない〕。」と、歌っているんだよ。そしたら、この浜川親方の嫡子が田舎下りをして妻を捜していたって。来たら、海の浜辺で娘たちがンナを拾いに来るだろう。そこにもう座って娘たちを見ていたら、この娘たちは、このものを言わない娘の歌を作って歌いながら、ンナを拾っているんだよ。だから、この浜川親方の嫡子が娘たちを呼んで、「おい、お前たちが歌っている歌を私に聞かせてくれないか。」と頼んだら、「今する歌は、なんの節もありません。」とこの娘たちは言っているんだよ。「確か、節があるはずだから、聞かせてくれ。」と言ったから、「この娘さんは、首里からここの田舎に下りて来ましたが、あまりに顔がきれいなので、あれにかけて歌っている歌です。だけど、あの娘は、ものは言いませんよ。」とこの浜川親方に言って、「もう遅くなるから、さあ、私たちは帰ろう。」と言って、この娘たちが帰って行ったんだよ。そしたら、まだこの娘は、自分一人でンナ小を拾っているから、この浜川親方の嫡子が、「浜でンナを取っている娘よ。話があるからここにきなさい。」と言っているがね、ものを言わないし、来ないんだよ。この浜川親方の嫡子は自分で立って行って連れて来てね、「お前は年はいくつなるか。どこの名前はなんというのか。」と言っても、その娘はものを言わないさね。「確かにこの娘であるはずだ。」と言って、だから、浜川親方の嫡子は、その娘と一緒にンナ小ーを拾って、ティールに入れたりするうちにお互いを見てね、もうお互いに恋仲になっているんだよ。そうしていたら、その女の男の親が、「私らの娘は、ンナ取りに行っているがまだ来ない。遅くなっているから捜しに行かないといけない。」と言って、捜しに行ったらもうこの男とンナ小を拾い、拾いして、二人で拾っているでしょう。ティールを腰に下げて、そのティールに入れて。すると、「お前は、こんなに遅くなっても家にも来ないで、どうしたんだ。早く家に歩きなさい。」と男の親が連れていこうとすると、その娘は、またこの男のそばに行ったりしてね、また男の親が連れ帰ろうとしたら、また男のそばに行ったりするから、それで男の親が怒って、「あれはなにか。どれほどの者か。」と言うから、もうこの娘はものは言わないんだから、男の方から、「私は、浜川親方の嫡子です。」と言ったからね、「ああ、そうだったんですか。」と言って、浜川親方といったら知っているだろう。橋の工事の主は、浜川親方だから、その浜川親方に、この娘の母親は埋められて殺されているからね。「ああ、そうなんですかあ。」と、男親はひざまずいて、お辞儀をするんだよ。そうしたらもう、「あなた方の娘さんを私の妻にしてくれませんか。」と言ったから、「もう大変な果報なことですが、私らの娘はものは言いませんよ。」と言っているが、「それでもいいですからください。首里に引き上げて行って、あなたも一緒に楽させますよ。」とこの嫡子が言って、連れて帰ったそうだ。この嫡子には、向こうにまた妻にさせるといって、前に許嫁の縁組をした女がいるんだよ。その結婚の日を選ぶ場合であったって。その日にその娘を家に連れて行ったら、結婚の日を選ぶ場合だから、「あの娘はなにか。」と親が言ったから、「私の妻にするといって、連れてきています。」と言うから、「その娘はものも言わないのに。もの言わない娘を私らの嫁にはできないよ。」と言っていたら、またこの許嫁の女が、「そうです。ものも言わない娘を嫁にはできませんよね。」と、また言うんだよ。そうしたら、その娘の男親が大変泣いて、「ただ一言でも、言ってくれ。お前がものを言わないためにね、また田舎に帰って行かないとならないから、ただ一言でもものを言ってくれ。」とこの娘に大変泣いているんだよ。また、この男が、「ただ一言でも言ってくれないか。」と言っていたら、そこに、ハーベールーが飛んできているんだよ。蝶々が。ハーベールーが飛んできて、すぐ飛び立っと、この女が立って、「しばし待てぃハーベール〔しばらく待ってくれ蝶よ〕私ねー大ぎさる立身すくとぅや〔私は大きく立身しますから〕なーん極楽しみそーりよー〔あなたも極楽へ飛びたってください〕。」と歌ったんだよ。そうしたらもう顔もたいへんきれいだから、この男がね、「さあ、お前はもう一言、言ってくれないか。」と言ったらね、もうこの舅親になる人にね、「私は、死んだ母親からものは言うなと遺言があったから、ものを言わなかったのです。どうか嫁にしてくれませんか。」と言って事情を話すと、男の父親は橋を架けた浜川親方だから、驚いてね、「お前が私らの嫁だよ。お前は家に帰りなさい。」とまたこの縁組していた許嫁の女は追い払われているんだよ。それからもう、「めでたい、めでたい。」と言って、この娘がもの言ったためにすぐもうこの嫁になっているんだよ。
| レコード番号 | 47O361706 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C065 |
| 決定題名 | 真玉橋の人柱(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 仲村ツイ子 |
| 話者名かな | なかむらついこ |
| 生年月日 | 19161110 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県宜野湾市野嵩 |
| 記録日 | 19810925 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村字瑞慶覧調査1班T29A17 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P293 |
| キーワード | 真玉橋の人柱,七色ムーティー,人柱 |
| 梗概(こうがい) | 昔、真玉橋は、何度かけても流されたそうだ。それで、王様から、橋を架ける工事が浜川親方という方に命令されたんだがね、難しい工事でいくら橋を架けても架からない。それで、この橋を架ける人たちはこれたちは殺されることになって、橋の工事をしている青年たちが泣いているとき、イタバルチルーという女の人が町から来て、泣いているのを見たから、「どうしてお前たちは、ここで泣いているのか。」と言ったらね、「この橋は七回架けても架からない。もう私たちは命を落とすはめになったから泣いているんだよ。」と言ったら、「さあ それじゃあ、私が聞かせるからね、この橋は七色元結をしている女を殺して、この橋に埋めなければね、この橋は架けても架からないから、七色元結をしている女を捜してきて埋めなさいよ。」と言って、この女は家に帰っていったんだよ。それを聞いたから、浜川親方が七色元結をしている女を村の村々、国の国々を捜して歩いても、どうしてもいない。「七色元結をしている女はあれではないか。」って、イタバルチルーという女の人の家に行ったらね、やはり七色元結しているのは、この話を聞かせてくれたその女だったって。七色元結って言うのは、髪結うときに紐をするでしょう。この女は、七つの色の元結で括って髪を結っていたんだよ。イタバルチルーはもう連れて行かれて、殺されて橋に埋められることになったらね、そこの家では、女の子を一人生んでいるんだよ。その娘に、「年ごろになったらね、お前も人より先にものを言ってはいけないよ。私は、人より先にものを言ったために、あの橋に埋められてしまうから。」と言って、連れて行かれて埋められたそうだよ。そしたら、その橋は架かったそうだ。そのときから、この娘はものを言わなくなっているんだよ。この娘は、男の親と田舎に下りて行って、田舎で住んでいたがね、もう十七、八になったら大変きれいな娘になっていたって。そうして、浜にンナ貝を拾いに行ったらね、始めは、四人の娘たちがンナを拾いに来ているんだよ。そして、この娘たちが、「謝敷美童ぬ 謝敷板干瀬ぬ〔謝敷の乙女も 謝敷の浜辺の板も〕美童ぬかぎぬ美らさ〔この美しい乙女の美しさにはかなわない〕。」と、歌っているんだよ。そしたら、この浜川親方の嫡子が田舎下りをして妻を捜していたって。来たら、海の浜辺で娘たちがンナを拾いに来るだろう。そこにもう座って娘たちを見ていたら、この娘たちは、このものを言わない娘の歌を作って歌いながら、ンナを拾っているんだよ。だから、この浜川親方の嫡子が娘たちを呼んで、「おい、お前たちが歌っている歌を私に聞かせてくれないか。」と頼んだら、「今する歌は、なんの節もありません。」とこの娘たちは言っているんだよ。「確か、節があるはずだから、聞かせてくれ。」と言ったから、「この娘さんは、首里からここの田舎に下りて来ましたが、あまりに顔がきれいなので、あれにかけて歌っている歌です。だけど、あの娘は、ものは言いませんよ。」とこの浜川親方に言って、「もう遅くなるから、さあ、私たちは帰ろう。」と言って、この娘たちが帰って行ったんだよ。そしたら、まだこの娘は、自分一人でンナ小を拾っているから、この浜川親方の嫡子が、「浜でンナを取っている娘よ。話があるからここにきなさい。」と言っているがね、ものを言わないし、来ないんだよ。この浜川親方の嫡子は自分で立って行って連れて来てね、「お前は年はいくつなるか。どこの名前はなんというのか。」と言っても、その娘はものを言わないさね。「確かにこの娘であるはずだ。」と言って、だから、浜川親方の嫡子は、その娘と一緒にンナ小ーを拾って、ティールに入れたりするうちにお互いを見てね、もうお互いに恋仲になっているんだよ。そうしていたら、その女の男の親が、「私らの娘は、ンナ取りに行っているがまだ来ない。遅くなっているから捜しに行かないといけない。」と言って、捜しに行ったらもうこの男とンナ小を拾い、拾いして、二人で拾っているでしょう。ティールを腰に下げて、そのティールに入れて。すると、「お前は、こんなに遅くなっても家にも来ないで、どうしたんだ。早く家に歩きなさい。」と男の親が連れていこうとすると、その娘は、またこの男のそばに行ったりしてね、また男の親が連れ帰ろうとしたら、また男のそばに行ったりするから、それで男の親が怒って、「あれはなにか。どれほどの者か。」と言うから、もうこの娘はものは言わないんだから、男の方から、「私は、浜川親方の嫡子です。」と言ったからね、「ああ、そうだったんですか。」と言って、浜川親方といったら知っているだろう。橋の工事の主は、浜川親方だから、その浜川親方に、この娘の母親は埋められて殺されているからね。「ああ、そうなんですかあ。」と、男親はひざまずいて、お辞儀をするんだよ。そうしたらもう、「あなた方の娘さんを私の妻にしてくれませんか。」と言ったから、「もう大変な果報なことですが、私らの娘はものは言いませんよ。」と言っているが、「それでもいいですからください。首里に引き上げて行って、あなたも一緒に楽させますよ。」とこの嫡子が言って、連れて帰ったそうだ。この嫡子には、向こうにまた妻にさせるといって、前に許嫁の縁組をした女がいるんだよ。その結婚の日を選ぶ場合であったって。その日にその娘を家に連れて行ったら、結婚の日を選ぶ場合だから、「あの娘はなにか。」と親が言ったから、「私の妻にするといって、連れてきています。」と言うから、「その娘はものも言わないのに。もの言わない娘を私らの嫁にはできないよ。」と言っていたら、またこの許嫁の女が、「そうです。ものも言わない娘を嫁にはできませんよね。」と、また言うんだよ。そうしたら、その娘の男親が大変泣いて、「ただ一言でも、言ってくれ。お前がものを言わないためにね、また田舎に帰って行かないとならないから、ただ一言でもものを言ってくれ。」とこの娘に大変泣いているんだよ。また、この男が、「ただ一言でも言ってくれないか。」と言っていたら、そこに、ハーベールーが飛んできているんだよ。蝶々が。ハーベールーが飛んできて、すぐ飛び立っと、この女が立って、「しばし待てぃハーベール〔しばらく待ってくれ蝶よ〕私ねー大ぎさる立身すくとぅや〔私は大きく立身しますから〕なーん極楽しみそーりよー〔あなたも極楽へ飛びたってください〕。」と歌ったんだよ。そうしたらもう顔もたいへんきれいだから、この男がね、「さあ、お前はもう一言、言ってくれないか。」と言ったらね、もうこの舅親になる人にね、「私は、死んだ母親からものは言うなと遺言があったから、ものを言わなかったのです。どうか嫁にしてくれませんか。」と言って事情を話すと、男の父親は橋を架けた浜川親方だから、驚いてね、「お前が私らの嫁だよ。お前は家に帰りなさい。」とまたこの縁組していた許嫁の女は追い払われているんだよ。それからもう、「めでたい、めでたい。」と言って、この娘がもの言ったためにすぐもうこの嫁になっているんだよ。 |
| 全体の記録時間数 | 7:57 |
| 物語の時間数 | 7:48 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |