昔、野村御殿は、首里の崎山というところだったらしいですよ。タータ御殿ってね、端のほうで、つまりこれは、昔の古典音楽の野村流の元祖の方ですよね。その野村親雲上といわれる方は、着物も着る分しかなく、あんまりいい家ではないし、もう大変な貧乏者でありましたけどね、御主加那志は、野村親雲上を気に入っていて、いつも冗談して話あっていたらしく、それで、大変親しくしていたそうだ。ちょうど今の首里城から崎山の野村御殿はすぐ見えていたらしいが、ある年、野村親雲上の家では、いい天気なもんだからもうぜんぶありったけの着物をアヤーメーがみんな洗濯をしてしまって、竿いっぱい干していたらしい。御主加那志がこれをご覧になったから、「急の御用と言ったら、あいつは着物も洗濯してあんなに干してあるのに、なにを着て来るかなあ。」と言ってですね、使いを出しますと、「野村よ、急の御用だから今すぐ来なさい。」と言って、また、「野村、衣装は御主加那志前だから、立派に着飾っていくのだよ。」と言わせたから、野村親雲上は、もう着るだけの着物を洗濯してしまっていて、なにも着るのがなくて、あとはもう、この儀式に着けていく冠、これを着て、もうちょうど儀式に着けていくような恰好をして行ったって。そして、野村親雲上は、そんな格好で御主加那志前のところに行って、「御主さり。」と言って、行ったからね、御主加那志前は面白がってね、わざと、「どうした。野村、お前はどうしてそんな恰好をしているのだ。」と聞いたんだよ。「ああ、もう、今日は、急な御用と言われたので、御主加那志前がどんな位をくださるのかと思い、こんな恰好をして来ました。」御主加那志前は、着るものがないことを知っていて、呼んだのだから、「ああ、そうか。」といって笑われてね。そうして、「トオ、お前はもうそれであったら、ヒンタ王という位をつけような。」と言っている。御主加那志前がヒンタ王と言ったら、貧乏者の王という意味だが、野村親雲上は、これをお城から言いつけられてね、「どうもありがとうございます。」と言われてね、家に帰って行かれたらしい。家では、アヤーがね、心配していて、野村親雲上に、「なんだったの。」と言ったから、「私たちはもう裕福にはなれないなあ。ずっと貧乏なんだね。アヤー。」と言うから、アヤーが驚いてね、「どうして、あなたはそんなに言うんですか。」と聞いたら、この野村親雲上は、「ああ、私はね、今日は御主加那志から、貧乏の王という位をもらってきているから、もう私たちは金持ちにはなれないねえ。」と言って、それで落胆されていたとの昔話がありますよ。
| レコード番号 | 47O361681 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C064 |
| 決定題名 | 野村ペーチン(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 中村亀一 |
| 話者名かな | なかむらかめいち |
| 生年月日 | 19040531 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県北中城村字島袋 |
| 記録日 | 19810925 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村字島袋調査2班T28A01 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 島袋のお父さんの機嫌のいい時に聞いた |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P350 |
| キーワード | 野村御殿,首里,崎山,タータ御殿,古典音楽,野村流,野村親雲上,ヒンタ王 |
| 梗概(こうがい) | 昔、野村御殿は、首里の崎山というところだったらしいですよ。タータ御殿ってね、端のほうで、つまりこれは、昔の古典音楽の野村流の元祖の方ですよね。その野村親雲上といわれる方は、着物も着る分しかなく、あんまりいい家ではないし、もう大変な貧乏者でありましたけどね、御主加那志は、野村親雲上を気に入っていて、いつも冗談して話あっていたらしく、それで、大変親しくしていたそうだ。ちょうど今の首里城から崎山の野村御殿はすぐ見えていたらしいが、ある年、野村親雲上の家では、いい天気なもんだからもうぜんぶありったけの着物をアヤーメーがみんな洗濯をしてしまって、竿いっぱい干していたらしい。御主加那志がこれをご覧になったから、「急の御用と言ったら、あいつは着物も洗濯してあんなに干してあるのに、なにを着て来るかなあ。」と言ってですね、使いを出しますと、「野村よ、急の御用だから今すぐ来なさい。」と言って、また、「野村、衣装は御主加那志前だから、立派に着飾っていくのだよ。」と言わせたから、野村親雲上は、もう着るだけの着物を洗濯してしまっていて、なにも着るのがなくて、あとはもう、この儀式に着けていく冠、これを着て、もうちょうど儀式に着けていくような恰好をして行ったって。そして、野村親雲上は、そんな格好で御主加那志前のところに行って、「御主さり。」と言って、行ったからね、御主加那志前は面白がってね、わざと、「どうした。野村、お前はどうしてそんな恰好をしているのだ。」と聞いたんだよ。「ああ、もう、今日は、急な御用と言われたので、御主加那志前がどんな位をくださるのかと思い、こんな恰好をして来ました。」御主加那志前は、着るものがないことを知っていて、呼んだのだから、「ああ、そうか。」といって笑われてね。そうして、「トオ、お前はもうそれであったら、ヒンタ王という位をつけような。」と言っている。御主加那志前がヒンタ王と言ったら、貧乏者の王という意味だが、野村親雲上は、これをお城から言いつけられてね、「どうもありがとうございます。」と言われてね、家に帰って行かれたらしい。家では、アヤーがね、心配していて、野村親雲上に、「なんだったの。」と言ったから、「私たちはもう裕福にはなれないなあ。ずっと貧乏なんだね。アヤー。」と言うから、アヤーが驚いてね、「どうして、あなたはそんなに言うんですか。」と聞いたら、この野村親雲上は、「ああ、私はね、今日は御主加那志から、貧乏の王という位をもらってきているから、もう私たちは金持ちにはなれないねえ。」と言って、それで落胆されていたとの昔話がありますよ。 |
| 全体の記録時間数 | 3:50 |
| 物語の時間数 | 3:27 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ○ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |