今もここは十五夜の拝みは大きいですよ。ここは護佐丸の公園で首里、那覇から拝みに来ますから、それで、十五夜には今でも十五夜は夜通し拝みます。今の大西のゴルフ場というところにビジュルモーってありますよ。ここには昔、ビジュル金持といって、金持ちの人がおりましたよ。十五夜の晩のことですな。ビジュル金持の家では平生は立派に御飯を支度して、三回おかずおいしく作って立派に夫に食べさせていました。そうしたら、その十五夜の日にこの家の妻は大きいお腹をしていて、「腹のめぐりがいいから。」と自分の体のために麦飯を支度して、この自分の夫に十五夜の夕飯を差し上げたらしい。そうしたら、夫が怒って、「お前はなんでこの十五夜の晩に私に麦飯を炊いて食べさせるか。今日限り出ていけ。」と言っているらしい。そうしたら、妻の体は大きいお腹をしているのに床の上のほうから、手をつかんで、「お前は今日限り出ていけ。」と言って引きずり出したら、妻はまた台所のほうに隠れているから、そしたら、夫はまた床の方から下りて、台所から手をつかんでまた引っ張り出そうとするが、こんなにされたから、妻はもう家にはおれない。だから、妻は大きいお腹をして、「もう屋敷のどこかに隠れるところがあったら、今日一日は隠れていよう。」と、目ぐるーぐるーして隠れ場を捜していたら、そこへ、クラーグヮーが飛んできて、 「山原のほうへ、足の向くままに逃げなさい。」とこのクラーが言ったんです。そうしたから、「もうクラーがああ言うから、もう山原に逃げるしかない。」って、その妻は山原に逃げて行ったら、もう山原の道は昼間は山の中でも道はあるから歩けるが、もう夜暗くなったから道が捜せない。そこに、木炭を焼く炭焼き人がいて、それで、炭焼き窯といって、そこは火をつけているから、この妻はそれを見つけて、「こんな夜の夜中にもう歩くことはできません。すみませんが今日一晩だけでもここに泊めてください。」と願ったらしい。そうしたら、この炭焼きガマーは、「私は貧乏者だから、こんな炭焼きをしている。これだけの家ではあなたを泊めるには狭い。もう少し先まで歩くと瓦屋がありますからそこで泊まってくれ。」と言ったから、「私はお腹に子どもも持っているし、暗くなっているからもう歩けません。狭くてもいいから泊めてください。」と言うと、炭焼きガマーは、「もう少し歩きなさい。大きな瓦屋がありますから、そこに泊まってください。」と断るので、「もうこんな夜の夜中になったら女では歩けませんから、ぜひ狭くてもここで休ませてください。」と頼んで、ようやくそこの家に入れてもらえた。そしたら、この炭焼きガマの主はお茶を沸かして、出してやったらしい。それで、その妻が、「私は、ビジュルの金持ちという者の妻なんだけど、十五夜の日に麦飯を作って主人に食べさせたら、今日限り出なさいと手をつかんで家を出されたから、山原に足の向くままに逃げてきているのです。今日一晩でも泊めてくれませんか。この持っている子を産んだら、これをあなたの子にしてもいいから私を妻にしてください。」と、わけを話して頼んだら炭焼きガマーは、「私は貧乏者だからいまだに妻も捜していない。それじゃあ、この産まれる子を自分の子にしてもいいから私の妻になってくれ。」と言ってくれたので、その女は炭焼きガマーの妻になった。この女は金持ちであったから、さっそく瓦屋根の家を作って、そこにこの夫婦は住んだそうだ。それで、子どもも生まれて、その子が三つのときまたこの前の夫は貧乏者になってミージョーキー(箕)を一束担いで山原に売りに来ていた。そうしたら、この夫はそこに立派な瓦屋を作ってある家がもとの妻の家とは分からない。妻は一目で元の夫って分かって、「この人は昔は大変な金持ちであったのに、今はこのなりになって、ミージョーキーを作って売る身分になっているんだね。」とたいへん心を傷めてね、そうして、昔の夫が、「ミージョーキーを買ってください。」と言ったら、「一つ、売ってください。」と、一つ買ってやって、「そこの床のほうに座ってくださいよ。」と言って、それで、またこのまかないの者にご立派に飯を炊かせてご飯は出して、道具を台所に片づけたから、これとの子はそのときもう三つになっていましたよ。それで、この三つになる子どもに、「あれは、あんたのお父さんだから、行って首に抱きついて、この二つの耳をひっ切れるほど引っ張ってみなさい、そうしたら分かるかも。」と、この母親が三つになる子どもに言ったら、子どもはすぐに行って首に抱きついて、耳を思いっきり引っ張ったから、この前の夫はこの妻に、「おい、お母さん。あなたの子はこんなに客の耳を引っ張るが、もう少し行儀作法を教えてくれないかね。」と言っているらしい。そうしたら、「こんなミーフラーは自分の子も分からなくて、そう言うんだね。これはミージョーキー屋になりさがったら、自分の子が行って耳をむしるのも分からないんだね。」と妻が夫に言ったらしい。そうしたら、この夫はそれが昔の妻だとわかったからハッとしてね、ここで亡くなったそうだ。この妻はもともとお金はあるのだから自分の子供に、「お前が大きくなったら、ここに墓を掘ってこの人を祭りなさいよ。また、お前が妻子を捜したら、お前にも同じように瓦屋を建ててやるからね。ここにシンジョーを掘って拝みなさいよ。」って言い聞かせたそうだよ。そしたら、この子は大きくなって、妻も捜してから女親から言われたように、この墓を拝んで信心をしていたという話だが。それで、昔からこれだけの金持ちの人でもこの供え物の文句を言ったから、女に金持ちの福を持って行かれているんだから、「供え物を前にしておったら、この妻が支度してあるのは不味くても美味しくても立派なこの供え物だから、供えた物を前にして文句はいうな。不味かったら残して、美味しかったらぜんぶ食べて、妻や子には不味い、美味しいは言ってくれるな。」と言っていて、だから、今もって供え物を前にしておったら、何であっても文句は言いませんよ。これは、昔話だよ。
| レコード番号 | 47O361424 |
|---|---|
| CD番号 | 47O36C054 |
| 決定題名 | 炭焼き長者(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 比嘉亀 |
| 話者名かな | ひがかめ |
| 生年月日 | 18930610 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県北中城村和仁屋 |
| 記録日 | 19810923 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 北中城村字和仁屋調査11班T17A02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | ゴボウを売り歩いていた時に聞いた |
| 文字化資料 | 北中城の民話 P426 |
| キーワード | 炭焼き長者,金持ち,貧乏人,ミージョーキー |
| 梗概(こうがい) | 今もここは十五夜の拝みは大きいですよ。ここは護佐丸の公園で首里、那覇から拝みに来ますから、それで、十五夜には今でも十五夜は夜通し拝みます。今の大西のゴルフ場というところにビジュルモーってありますよ。ここには昔、ビジュル金持といって、金持ちの人がおりましたよ。十五夜の晩のことですな。ビジュル金持の家では平生は立派に御飯を支度して、三回おかずおいしく作って立派に夫に食べさせていました。そうしたら、その十五夜の日にこの家の妻は大きいお腹をしていて、「腹のめぐりがいいから。」と自分の体のために麦飯を支度して、この自分の夫に十五夜の夕飯を差し上げたらしい。そうしたら、夫が怒って、「お前はなんでこの十五夜の晩に私に麦飯を炊いて食べさせるか。今日限り出ていけ。」と言っているらしい。そうしたら、妻の体は大きいお腹をしているのに床の上のほうから、手をつかんで、「お前は今日限り出ていけ。」と言って引きずり出したら、妻はまた台所のほうに隠れているから、そしたら、夫はまた床の方から下りて、台所から手をつかんでまた引っ張り出そうとするが、こんなにされたから、妻はもう家にはおれない。だから、妻は大きいお腹をして、「もう屋敷のどこかに隠れるところがあったら、今日一日は隠れていよう。」と、目ぐるーぐるーして隠れ場を捜していたら、そこへ、クラーグヮーが飛んできて、 「山原のほうへ、足の向くままに逃げなさい。」とこのクラーが言ったんです。そうしたから、「もうクラーがああ言うから、もう山原に逃げるしかない。」って、その妻は山原に逃げて行ったら、もう山原の道は昼間は山の中でも道はあるから歩けるが、もう夜暗くなったから道が捜せない。そこに、木炭を焼く炭焼き人がいて、それで、炭焼き窯といって、そこは火をつけているから、この妻はそれを見つけて、「こんな夜の夜中にもう歩くことはできません。すみませんが今日一晩だけでもここに泊めてください。」と願ったらしい。そうしたら、この炭焼きガマーは、「私は貧乏者だから、こんな炭焼きをしている。これだけの家ではあなたを泊めるには狭い。もう少し先まで歩くと瓦屋がありますからそこで泊まってくれ。」と言ったから、「私はお腹に子どもも持っているし、暗くなっているからもう歩けません。狭くてもいいから泊めてください。」と言うと、炭焼きガマーは、「もう少し歩きなさい。大きな瓦屋がありますから、そこに泊まってください。」と断るので、「もうこんな夜の夜中になったら女では歩けませんから、ぜひ狭くてもここで休ませてください。」と頼んで、ようやくそこの家に入れてもらえた。そしたら、この炭焼きガマの主はお茶を沸かして、出してやったらしい。それで、その妻が、「私は、ビジュルの金持ちという者の妻なんだけど、十五夜の日に麦飯を作って主人に食べさせたら、今日限り出なさいと手をつかんで家を出されたから、山原に足の向くままに逃げてきているのです。今日一晩でも泊めてくれませんか。この持っている子を産んだら、これをあなたの子にしてもいいから私を妻にしてください。」と、わけを話して頼んだら炭焼きガマーは、「私は貧乏者だからいまだに妻も捜していない。それじゃあ、この産まれる子を自分の子にしてもいいから私の妻になってくれ。」と言ってくれたので、その女は炭焼きガマーの妻になった。この女は金持ちであったから、さっそく瓦屋根の家を作って、そこにこの夫婦は住んだそうだ。それで、子どもも生まれて、その子が三つのときまたこの前の夫は貧乏者になってミージョーキー(箕)を一束担いで山原に売りに来ていた。そうしたら、この夫はそこに立派な瓦屋を作ってある家がもとの妻の家とは分からない。妻は一目で元の夫って分かって、「この人は昔は大変な金持ちであったのに、今はこのなりになって、ミージョーキーを作って売る身分になっているんだね。」とたいへん心を傷めてね、そうして、昔の夫が、「ミージョーキーを買ってください。」と言ったら、「一つ、売ってください。」と、一つ買ってやって、「そこの床のほうに座ってくださいよ。」と言って、それで、またこのまかないの者にご立派に飯を炊かせてご飯は出して、道具を台所に片づけたから、これとの子はそのときもう三つになっていましたよ。それで、この三つになる子どもに、「あれは、あんたのお父さんだから、行って首に抱きついて、この二つの耳をひっ切れるほど引っ張ってみなさい、そうしたら分かるかも。」と、この母親が三つになる子どもに言ったら、子どもはすぐに行って首に抱きついて、耳を思いっきり引っ張ったから、この前の夫はこの妻に、「おい、お母さん。あなたの子はこんなに客の耳を引っ張るが、もう少し行儀作法を教えてくれないかね。」と言っているらしい。そうしたら、「こんなミーフラーは自分の子も分からなくて、そう言うんだね。これはミージョーキー屋になりさがったら、自分の子が行って耳をむしるのも分からないんだね。」と妻が夫に言ったらしい。そうしたら、この夫はそれが昔の妻だとわかったからハッとしてね、ここで亡くなったそうだ。この妻はもともとお金はあるのだから自分の子供に、「お前が大きくなったら、ここに墓を掘ってこの人を祭りなさいよ。また、お前が妻子を捜したら、お前にも同じように瓦屋を建ててやるからね。ここにシンジョーを掘って拝みなさいよ。」って言い聞かせたそうだよ。そしたら、この子は大きくなって、妻も捜してから女親から言われたように、この墓を拝んで信心をしていたという話だが。それで、昔からこれだけの金持ちの人でもこの供え物の文句を言ったから、女に金持ちの福を持って行かれているんだから、「供え物を前にしておったら、この妻が支度してあるのは不味くても美味しくても立派なこの供え物だから、供えた物を前にして文句はいうな。不味かったら残して、美味しかったらぜんぶ食べて、妻や子には不味い、美味しいは言ってくれるな。」と言っていて、だから、今もって供え物を前にしておったら、何であっても文句は言いませんよ。これは、昔話だよ。 |
| 全体の記録時間数 | 13:12 |
| 物語の時間数 | 12:18 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |