昔の伝説をひとつやってみましょう。昔といってもいつの昔か知りませんけども、ある所にとても美しい女性の一人暮らしがおったそうです。その女性の隣には、七十ぐらいのお婆さんがおりまして、親子同然仲良く暮してやっていたんだ。ある時、ある一人の男が、散歩がてらその道を通って来たそうですけども。あんまり水が欲しくて、その家を訪ねて来て、男はその家に休んだそうですけども。非常に身なりのいい紳士、侍であったそうですね。それで、男は女を一目見て、「ああ、これは非常に世の中っていうのは、世間は広いもので、社会も出てみなければ、こんなに世の中には美しい女もおるな。」と、非常に感服していたそうです。また、女の方にしても、いつも田舎の一人暮らしなもんですから、この男を一目見て、すでにもう心奪われたという話ですけども。で、その後のいきさつはどうなったかと言えば。男はその人を、女を愛するが為に、毎晩毎晩、雨の日も風の日も通って、どうしたらその人、女に会えるか、また、りっぱに自分の思いを打ち明けられるかと思って、毎晩通ったそうですけれども。雨の日も、雪の日も、風の日も。その女は義理が堅くて、自分の心にこう燃えているけども、打明けることができなかったんです。幸い隣りにお婆さんがおったんですから、そのお婆さんがそれを聞いて、「不思議だ、この男は非常にこうその女に対する愛を求めに来てるなあ。」ちゅう事はお婆さんが察しまして、早速その女の所に行って事情を話したそうでございます。「あんたを毎晩あの、歌を歌ったり、で、泣いたりする男が通って来るけど、あんた分かっているか。」って言ったら、「ええ、すでに分かっています。」と、もう率直に言ったそうですね。そしたら女も、もともと嫌いじゃなくって好きな方ですから、それを率直に認めたそうですけども。んで、お婆さんは、早速男の方に会いまして、「あんたはどういう事情があって、こうして毎晩通って来るか。」と言いましたら、「実は、これこれと、自分は女を嫁にもらいたい、何とか考えてくれんか。」とお婆さんに頼み込んだそうですけど、お婆さんは、仲立ちとして、仲人として両方の仲を取り持って、取り計らったそうでございます。そしたらお婆さんは、女の所へ行って、実はこれこれ話を聞いたら、「あなたを欲しがって、あなたを嫁にしたいというけども、あんたは行く気があるかないか、その返事を承っている。」と言いましたら、「そうです。私はあの人が好きだけども、しかし、好きながらも、そこには問題が三つあるから、その三つの問題を解いてくれたら、私は、その人の妻になります。。」、そう言うたらしいですね。もうお婆さんはその仲を取り持っているものですから、こっちへ行ったりして仲を取り持っていたそうです。で、女が言うには、「あんたの問題というのは、どういう問題か。」と言ったらしいですね。そしたら、第一の問題は、「馬二つに、いいですか、乗馬二つに鞍を一つ掛けて乗ってこい。」と言ったそうですよ。それが一つの問題。そしたら、お婆さんはさっそく男の所へ行って、女の問題は馬二つに、(乗馬、乗り馬だな、昔は乗り馬と言うんだ)、乗馬二つに鞍を一つ掛けて乗ってこい。」と言ったらしいですよ。それはもちろん我々が常識から考えてできないでしょう。馬が二頭で鞍が一つと言えば。同(おんな)し馬一つには鞍が一つしか掛けないからな。「そうかこれは不思議だ、どうしようか。」と考えた。非常にこう、で、「それを一週間のうちに返事すること。」、こうきっぱり女は言ったそうですね。そしたら、男は一生懸命考え込んで。で一週間、いよいよ今日が返事する日になっても、なかなか気は焦っているけども、答えが出てこない。これはどうする、どうせ、女は、自分の妻にしたいし、問題は解けないし、もう気ばっかり焦ってどうする事もできないんだよ。そしたらいよいよその日になって、今度はまたお婆さんが、「もう問題はできましたか。」と聞いて、「もうどうもできないから何とか知恵をかしてくれ。」って言ったらですね。「だから昔からね、年寄りは宝と言うのはここですよ。」と言ったらしいですね。で、いちいちこのお婆さんに諭されたらしいですな。「するとそういう事はどういう事ですか。」と男が聞くと、「あんたの家にはね、あんたの所には、妊娠した馬がおるでしょう。」と言ったら、「ええおります。」。んで、「それで、二つ、とにかく馬二頭になっているから、それを鞍一つ掛けて持って来い、乗って来い。」、「んー、ああなるほど、そうだねえ、まあ常識で考えてみたらば、馬一つに鞍一つはもう決まっているけども、お婆さんが言うとなるほど、ありがとうございました。」、こうお礼を言うて早速、また今度返事をお婆さんが女の所に持って行ったらしいですな。そしたら、今度はお婆さんは、早速その返事を持って女の所へ行ったらしいですよ。んで、「あんたが第一のあの問題は、馬二頭に鞍一つ掛けて持って来いという問題だったけれども、これは、実は、あの人の、男の返事では、妊娠した馬に乗って来いという事ですから、これはどうか。」と言ったら、「これはもう完全に当たっています。その通りです。」で、女は非常に感服してね。で、次の第二の問題は、もう一つ次の問題は、「走川(はいかわ)の水(みじ)ぬ止(とぅ)まいねぇ、止(と)まる時に来い。」と言ったらしいね。川の水が止まった時に来いという事だったらしいよ。そうなるとこれはもちろん、なんぼなんでも、いくらなんぼ乾燥しても、雨が降らなくっても、川の水が止まるって事は絶対ないわけね。多少は、少し流れてる。で、それが止まった時においでちゅう事なったんですよ。ね、これはもう不思議だ、いくら天願川(てんぐゎんがーら・注 )でも、どこの川でも水が止まとるという事は、絶対にないけど、それが止まるという事は滅多にもう、なんぼ何百年と、何十年くらい雨降らなくっても、川の水が止まるという事はないと。それはまた今度は大きな問題になってね、男はね、すごく考えて。でまた、お婆さんはその問題を持って、男の所へ行ったらしいですね。で、「一応第二の問題はこういう問題だけれども、とにかく、それも一週間のうちに必ず返事してくれ。」、そう言ったらしいですよ。さあそれから、第二の問題はできないでしょう。今度はなお焦ってとにかくどうしよう、どうしようと男は。もうその問題を聞かれた場合はなお焦って、でどうする事もできなくって。それも一週間のうちに返事する事、という事になって。それから、今度はお婆さんは言ったけども、「これも一週間のうちに返事する事だから、一週間のうちに返事を聞かしてくれ。」と言ったらしいですよ。さあ男はさっき言った通り焦っているけども、自分の知恵ではどうしても、それはもう解釈する事はできなかったらしい。で、その時は恥を失って、とにかくもう忍んで、お婆さんに「教えてくれ。」と頼み込んだらしい。「いゃー武士じょー、うぬあたいん分からん(おまえは武士なのに、これくらいも分からないのか)。。」て、お婆さんにこう非常に言われたらしいですよ。気ばっかり焦っているけどもね。で、「これはこれ、実はこれこれこういう事だと。昔からね走川(はいかー)の水(みじ)の止まるちゅう事は絶対にない。。」とね。「これはあの人の非常に賢い知恵で持ってあんたは言っただけだ。それがあんたは察してないか。」と、こう非常にこう、まあ笑われていると言うのか、この教訓されたらしいですね。で、「そのわけはどういう事ですか。。」と聞いたら、「実はその訳と言うのは速川(はいかー)の水が止まる事は絶対にないけども、走川(はいかー)の水が止まるというのは人目を忍んで、夜の二時か三時か四時ね、人目に付かんように忍んで来いという事ですよ。」と。「ああそうか、なるほど。走川(はいかー)の水(みじ)止(とぅ)まいん、おそらくまあ乗馬(ぬいうま)に鞍一つ掛けて走川(はいかー)の水(みじ)の止(とぅ)まいんねー来い、と。それは夜一人忍んで来いちゅうわけですよ、ね。そしたら、今度は、お婆さんは仲もっておるから早速その返事を持って今度、女の所へ行ったらしいですよ。「実は第二の問題はこれこれこういう、走川(はいかー)の水(みじ)ぬ止(とぅ)まいねー来いというのは、人の寝静まった、今の一時以後、二時か三時の真夜中に一人忍んで来いちゅう事だけれども、この問題はどうかと、やっぱり当たってるか。」「うん、これは完全に当たっている。」と。もうとにかく、女はね、そんだけの知恵を、その人は偉い方だ、非常にこう、だったら、自分の婿さんになるはずと決め込んでおったらしいですよ。えいどっこいそうではない、お婆さんから教えてもらっているんですよ。女は非常に喜んだらしい。また男も、もう第二問まではいっているからできるだろうと、こうして心ひそかに喜んだけれども。次は第三の問題が大きな問題なってる。もう直接本人同士の問題になってるから。直接本人同士の問題はですね、どうなったかと言えば、「お婆さん、今度は私と本人との一対一の問題だから、ここに来てから私が問題明かすから、今言った通り、馬に鞍掛けてと、とにかく走川(はいかー)の水の止まった時においでなさいと言ってくれ。」としてね。まあ二時か三時かね。で、そこで問題を明かすから、その時言うから、と。で、女はどうするかと言えば、自分の家に蚊帳も吊り、枕を二つ並べてちゃんと寝る準備をしたらしいです。もう自分の一生の夫だから、自分の身を任(まか)してもいいという覚悟を決めて枕を二つ並べて、男が来るのを、二時か三時に来るのを待っておったらしいです。そしたら、女はどうするかと言えば、来てからの勝負だから、ご飯を皿に盛って、箸一本持ってちゃんとそこに置いたんですね。そこにこう、自分の枕元に。そしたら、女は寝ているけども、起き寝しているわけよな。その知恵を試すもんだから、起き寝して待っていたから。ちょうど走川(はいかー)の水の止まる時に、男は忍んで来たらしいですよ。で、その様子をとにかく寝起きして待って見ているんだ、女はね。「どんな事をするだろうか。」とこう言ったけども。で、お婆さんも、「もう一対一の勝負だから、私が教えないから、もうこの時失敗したらば、あんたも諦めないかん。」と言って、男を非常に励ましたらしいけども。「よし、ではとにかく第二回までいったから三回目はどうしても自分だけで明かしてやる。」ちゅう事を心に決めて、行ったんだけれども。で、行ったところが、そのお膳の上にご飯一膳据えて、箸と据えて、ちゃんと作って待ってるらしいよ。枕二つ重ねてね。そしたら、男はどういう事をしたかと言えば、「ああ、あんな遠い所から来るから。」まあ、自分の錯覚だね、遠い所から来るから、まあ腹もへってるからご飯だけ、ご飯を食べて寝なさいという事だという、自分がこう感謝したんだな。そしたら女は起きて待っているんだけど、早速その男は、黙って入って、ご飯から先食べたらしいですな、ご飯をね。この女は初めてだけど非常に親切だ。自分があんな遠い所から来るから、ひもじいからご飯も食べて寝なさいちゅう事をちゃんと準備してあるちゅう事だったのか。その女は自分を非常に愛しているんだあ、思っているという事を察して、ご飯から食べたらしいけども。女は、寝て動作を見ているんだから、早速言ったらしい。「もう、あんたの試験はね、今までは二つ完全に通ってきたけど、今日はもう失敗だから、これはこういう事じゃないから。」と。それともう一つあのね、こうだった。ご飯とね、あの竹の小刀、昔シーグんち有(あ)たしぇー、刀、シーグね。あれを入れてちゃんと待ってるんだ、その試験にはなあ。それを男が見て、どういうことか分からんの、さっきからね。ご飯一膳とそれから竹の中にシーグ入れて待って寝てる。それを見ているんだけども、これはどういう事かと、非常にこう男は思っているけども、自分でそれを解き明かす事できなくて。んで、ご飯から先に食べたもんだから、女は、「もうあんたはね、今まで二つとも、二問題とも完全に明かしたけども、もう今日で失敗だから、私は本当のあんたの妻になることは出来んから、もう諦めて帰りなさい。」と言ったらしいですよ。んで、男はもうすっかり動転してしまって。今までの、思いがいっぺんにひっ飛んでしまってね、もう落胆してしまったらしい。そうしたら、これはどうしようかと、もう男は帰るに帰れない。もう自殺するぐらいの覚悟を決めておったらしいですよ。んで、もうしまいは泣くやらわめくやら、男泣きに泣いたもんだから。女はあんまり気の毒で、もともと自分で夫にしてもいいという覚悟を決めたもんだから、それとなく二人はまた話し合って。やってしたところが、その晩はそれで結合して、もう一緒になろうっていう事を決めて、一つの部屋にこう寝たらしいですな。その寝て、まあとにかくいろんな将来の話もして、そこで夫婦の契りもやるということになったけども。それでまあ一夜のお情けを、とにかく情けを交わしたらしいですな。そしたら、女がいつも朝は早く起きるけども、その日に限って、戸が締まって開かないんだよな。隣のお婆さんは、それをこう気にして、「確かに夕べは問題を明かしに来たけども、今だに戸が開かないのはどういうわけや。」と、こう思って訪ねて行ったらしいですな。んで、訪ねて行ったら、その二人とも重なり合って、そこでもう何て言うのかね、これはもう「泊阿嘉(とぅまいあーかー)。」みたいなことをやってるんだな。とにかくもう気が安心したのか、もう何したのか、自分の望みも叶ったちゅうんで、そこでまあ二人とも死んでしまったんだ。よく、本当か話かそれは分からんけど、まあ死んでしまったわけです。お婆さんはそれを見て、これをこんな事をしたらいかんと思って。んで、お婆さんも男の生まれたところを教えてもらっていたので、早速男の方に通知した。知らして、「自分方のこう、いわゆる、あんたの息子はこういう事になっているんだが、何とか後の始末はしないかん。」ちゅう事なって。んで、向こうから葬式もして。で、葬式した場合において、今度はお父さんの考えで、生きた時から非常に愛し合っておったし、また死んでも、後生(ぐそー)に行っても二人は愛するだろうと、お墓を別々に作ったらしいですね。ここは男、ここは女と。そして、男のお墓の前に杉の木を植えたんだ。女のお墓の前には竹を植えたんだ。竹を植えてね、竹。植えてしまって、だんだんそれが伸びてしまったら、今度は松の木に竹がずっとこう、絡みついて、ずっと伸びていったらしいですね。だから、昔は鉄がなかったから。杉と、まあ杉というか、昔は砂糖入れる樽ね。あれなんかも竹でやってね、今タライでもみんなそうやって、内地お櫃ね、あれもご飯入れてる。あれも全部竹でやったけども最近は鉄が出たからそういう事なって。だから、あれが初めて出て、二人は特に天国行ってもこれぐらい仲良く暮しているちゅう事を表わしたちゅう事だ。で、一つの問題は、何でご飯と、あの竹の中にシーグを入れて、それを試験にやったかというと。女は非常に頭が冴えた女だったんですけども。そしたらその後から話聞いてみたら、お婆さんに聞いた事には、こう言ったそうです。「何もあんたご飯食べる必要ないというのね。食べる必要ない。もう黙ってすぐ寝ればよかった。うん、すぐ寝ればよかったんで、その訳はどういう事かというと、これはシーグと言っているのかしら、シーグ、小刀も。シーグが、竹がこう中にはまってるでしょ。「しぐ抱(だ)ちくま。」と。もうすぐ抱けばいいんであってね、だからその目的分からなくって、ご飯から食べたから、女は「ああもう駄目、あんたは帰りなさい。」とすぐ言ったわけです。「しぐ抱ちくま。」だから、もうすぐ寝てね、すぐ何とも言葉をかけずに、ただ寝れば、それで良かったんだな。だから非常に女が能力が良かったという事ですよ。
| レコード番号 | 47O374320 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C187 |
| 決定題名 | 難題婿(共通語) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 玉木恵優 |
| 話者名かな | たまきけいゆう |
| 生年月日 | 19070708 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県与那城村伊計 |
| 記録日 | 19770508 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村大木T05A07 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集13 大木・長田・牧原の民話P50 |
| キーワード | 美しい女性の一人暮らし,第一の問題,乗馬二つに鞍を一つ,お婆さん,妊娠した馬,第二の問題,走川の水,ご飯,箸一本,竹の小刀,シーグ,ご飯一膳,竹の中にシーグ,ご飯から先に食べた,男泣きに泣いた,夫婦の契り,死んだ,葬式,墓を別々に作った,男のお墓の前に杉の木を植えた,女のお墓の前には竹を植えた,砂糖入れる樽,タライ |
| 梗概(こうがい) | 昔の伝説をひとつやってみましょう。昔といってもいつの昔か知りませんけども、ある所にとても美しい女性の一人暮らしがおったそうです。その女性の隣には、七十ぐらいのお婆さんがおりまして、親子同然仲良く暮してやっていたんだ。ある時、ある一人の男が、散歩がてらその道を通って来たそうですけども。あんまり水が欲しくて、その家を訪ねて来て、男はその家に休んだそうですけども。非常に身なりのいい紳士、侍であったそうですね。それで、男は女を一目見て、「ああ、これは非常に世の中っていうのは、世間は広いもので、社会も出てみなければ、こんなに世の中には美しい女もおるな。」と、非常に感服していたそうです。また、女の方にしても、いつも田舎の一人暮らしなもんですから、この男を一目見て、すでにもう心奪われたという話ですけども。で、その後のいきさつはどうなったかと言えば。男はその人を、女を愛するが為に、毎晩毎晩、雨の日も風の日も通って、どうしたらその人、女に会えるか、また、りっぱに自分の思いを打ち明けられるかと思って、毎晩通ったそうですけれども。雨の日も、雪の日も、風の日も。その女は義理が堅くて、自分の心にこう燃えているけども、打明けることができなかったんです。幸い隣りにお婆さんがおったんですから、そのお婆さんがそれを聞いて、「不思議だ、この男は非常にこうその女に対する愛を求めに来てるなあ。」ちゅう事はお婆さんが察しまして、早速その女の所に行って事情を話したそうでございます。「あんたを毎晩あの、歌を歌ったり、で、泣いたりする男が通って来るけど、あんた分かっているか。」って言ったら、「ええ、すでに分かっています。」と、もう率直に言ったそうですね。そしたら女も、もともと嫌いじゃなくって好きな方ですから、それを率直に認めたそうですけども。んで、お婆さんは、早速男の方に会いまして、「あんたはどういう事情があって、こうして毎晩通って来るか。」と言いましたら、「実は、これこれと、自分は女を嫁にもらいたい、何とか考えてくれんか。」とお婆さんに頼み込んだそうですけど、お婆さんは、仲立ちとして、仲人として両方の仲を取り持って、取り計らったそうでございます。そしたらお婆さんは、女の所へ行って、実はこれこれ話を聞いたら、「あなたを欲しがって、あなたを嫁にしたいというけども、あんたは行く気があるかないか、その返事を承っている。」と言いましたら、「そうです。私はあの人が好きだけども、しかし、好きながらも、そこには問題が三つあるから、その三つの問題を解いてくれたら、私は、その人の妻になります。。」、そう言うたらしいですね。もうお婆さんはその仲を取り持っているものですから、こっちへ行ったりして仲を取り持っていたそうです。で、女が言うには、「あんたの問題というのは、どういう問題か。」と言ったらしいですね。そしたら、第一の問題は、「馬二つに、いいですか、乗馬二つに鞍を一つ掛けて乗ってこい。」と言ったそうですよ。それが一つの問題。そしたら、お婆さんはさっそく男の所へ行って、女の問題は馬二つに、(乗馬、乗り馬だな、昔は乗り馬と言うんだ)、乗馬二つに鞍を一つ掛けて乗ってこい。」と言ったらしいですよ。それはもちろん我々が常識から考えてできないでしょう。馬が二頭で鞍が一つと言えば。同(おんな)し馬一つには鞍が一つしか掛けないからな。「そうかこれは不思議だ、どうしようか。」と考えた。非常にこう、で、「それを一週間のうちに返事すること。」、こうきっぱり女は言ったそうですね。そしたら、男は一生懸命考え込んで。で一週間、いよいよ今日が返事する日になっても、なかなか気は焦っているけども、答えが出てこない。これはどうする、どうせ、女は、自分の妻にしたいし、問題は解けないし、もう気ばっかり焦ってどうする事もできないんだよ。そしたらいよいよその日になって、今度はまたお婆さんが、「もう問題はできましたか。」と聞いて、「もうどうもできないから何とか知恵をかしてくれ。」って言ったらですね。「だから昔からね、年寄りは宝と言うのはここですよ。」と言ったらしいですね。で、いちいちこのお婆さんに諭されたらしいですな。「するとそういう事はどういう事ですか。」と男が聞くと、「あんたの家にはね、あんたの所には、妊娠した馬がおるでしょう。」と言ったら、「ええおります。」。んで、「それで、二つ、とにかく馬二頭になっているから、それを鞍一つ掛けて持って来い、乗って来い。」、「んー、ああなるほど、そうだねえ、まあ常識で考えてみたらば、馬一つに鞍一つはもう決まっているけども、お婆さんが言うとなるほど、ありがとうございました。」、こうお礼を言うて早速、また今度返事をお婆さんが女の所に持って行ったらしいですな。そしたら、今度はお婆さんは、早速その返事を持って女の所へ行ったらしいですよ。んで、「あんたが第一のあの問題は、馬二頭に鞍一つ掛けて持って来いという問題だったけれども、これは、実は、あの人の、男の返事では、妊娠した馬に乗って来いという事ですから、これはどうか。」と言ったら、「これはもう完全に当たっています。その通りです。」で、女は非常に感服してね。で、次の第二の問題は、もう一つ次の問題は、「走川(はいかわ)の水(みじ)ぬ止(とぅ)まいねぇ、止(と)まる時に来い。」と言ったらしいね。川の水が止まった時に来いという事だったらしいよ。そうなるとこれはもちろん、なんぼなんでも、いくらなんぼ乾燥しても、雨が降らなくっても、川の水が止まるって事は絶対ないわけね。多少は、少し流れてる。で、それが止まった時においでちゅう事なったんですよ。ね、これはもう不思議だ、いくら天願川(てんぐゎんがーら・注 )でも、どこの川でも水が止まとるという事は、絶対にないけど、それが止まるという事は滅多にもう、なんぼ何百年と、何十年くらい雨降らなくっても、川の水が止まるという事はないと。それはまた今度は大きな問題になってね、男はね、すごく考えて。でまた、お婆さんはその問題を持って、男の所へ行ったらしいですね。で、「一応第二の問題はこういう問題だけれども、とにかく、それも一週間のうちに必ず返事してくれ。」、そう言ったらしいですよ。さあそれから、第二の問題はできないでしょう。今度はなお焦ってとにかくどうしよう、どうしようと男は。もうその問題を聞かれた場合はなお焦って、でどうする事もできなくって。それも一週間のうちに返事する事、という事になって。それから、今度はお婆さんは言ったけども、「これも一週間のうちに返事する事だから、一週間のうちに返事を聞かしてくれ。」と言ったらしいですよ。さあ男はさっき言った通り焦っているけども、自分の知恵ではどうしても、それはもう解釈する事はできなかったらしい。で、その時は恥を失って、とにかくもう忍んで、お婆さんに「教えてくれ。」と頼み込んだらしい。「いゃー武士じょー、うぬあたいん分からん(おまえは武士なのに、これくらいも分からないのか)。。」て、お婆さんにこう非常に言われたらしいですよ。気ばっかり焦っているけどもね。で、「これはこれ、実はこれこれこういう事だと。昔からね走川(はいかー)の水(みじ)の止まるちゅう事は絶対にない。。」とね。「これはあの人の非常に賢い知恵で持ってあんたは言っただけだ。それがあんたは察してないか。」と、こう非常にこう、まあ笑われていると言うのか、この教訓されたらしいですね。で、「そのわけはどういう事ですか。。」と聞いたら、「実はその訳と言うのは速川(はいかー)の水が止まる事は絶対にないけども、走川(はいかー)の水が止まるというのは人目を忍んで、夜の二時か三時か四時ね、人目に付かんように忍んで来いという事ですよ。」と。「ああそうか、なるほど。走川(はいかー)の水(みじ)止(とぅ)まいん、おそらくまあ乗馬(ぬいうま)に鞍一つ掛けて走川(はいかー)の水(みじ)の止(とぅ)まいんねー来い、と。それは夜一人忍んで来いちゅうわけですよ、ね。そしたら、今度は、お婆さんは仲もっておるから早速その返事を持って今度、女の所へ行ったらしいですよ。「実は第二の問題はこれこれこういう、走川(はいかー)の水(みじ)ぬ止(とぅ)まいねー来いというのは、人の寝静まった、今の一時以後、二時か三時の真夜中に一人忍んで来いちゅう事だけれども、この問題はどうかと、やっぱり当たってるか。」「うん、これは完全に当たっている。」と。もうとにかく、女はね、そんだけの知恵を、その人は偉い方だ、非常にこう、だったら、自分の婿さんになるはずと決め込んでおったらしいですよ。えいどっこいそうではない、お婆さんから教えてもらっているんですよ。女は非常に喜んだらしい。また男も、もう第二問まではいっているからできるだろうと、こうして心ひそかに喜んだけれども。次は第三の問題が大きな問題なってる。もう直接本人同士の問題になってるから。直接本人同士の問題はですね、どうなったかと言えば、「お婆さん、今度は私と本人との一対一の問題だから、ここに来てから私が問題明かすから、今言った通り、馬に鞍掛けてと、とにかく走川(はいかー)の水の止まった時においでなさいと言ってくれ。」としてね。まあ二時か三時かね。で、そこで問題を明かすから、その時言うから、と。で、女はどうするかと言えば、自分の家に蚊帳も吊り、枕を二つ並べてちゃんと寝る準備をしたらしいです。もう自分の一生の夫だから、自分の身を任(まか)してもいいという覚悟を決めて枕を二つ並べて、男が来るのを、二時か三時に来るのを待っておったらしいです。そしたら、女はどうするかと言えば、来てからの勝負だから、ご飯を皿に盛って、箸一本持ってちゃんとそこに置いたんですね。そこにこう、自分の枕元に。そしたら、女は寝ているけども、起き寝しているわけよな。その知恵を試すもんだから、起き寝して待っていたから。ちょうど走川(はいかー)の水の止まる時に、男は忍んで来たらしいですよ。で、その様子をとにかく寝起きして待って見ているんだ、女はね。「どんな事をするだろうか。」とこう言ったけども。で、お婆さんも、「もう一対一の勝負だから、私が教えないから、もうこの時失敗したらば、あんたも諦めないかん。」と言って、男を非常に励ましたらしいけども。「よし、ではとにかく第二回までいったから三回目はどうしても自分だけで明かしてやる。」ちゅう事を心に決めて、行ったんだけれども。で、行ったところが、そのお膳の上にご飯一膳据えて、箸と据えて、ちゃんと作って待ってるらしいよ。枕二つ重ねてね。そしたら、男はどういう事をしたかと言えば、「ああ、あんな遠い所から来るから。」まあ、自分の錯覚だね、遠い所から来るから、まあ腹もへってるからご飯だけ、ご飯を食べて寝なさいという事だという、自分がこう感謝したんだな。そしたら女は起きて待っているんだけど、早速その男は、黙って入って、ご飯から先食べたらしいですな、ご飯をね。この女は初めてだけど非常に親切だ。自分があんな遠い所から来るから、ひもじいからご飯も食べて寝なさいちゅう事をちゃんと準備してあるちゅう事だったのか。その女は自分を非常に愛しているんだあ、思っているという事を察して、ご飯から食べたらしいけども。女は、寝て動作を見ているんだから、早速言ったらしい。「もう、あんたの試験はね、今までは二つ完全に通ってきたけど、今日はもう失敗だから、これはこういう事じゃないから。」と。それともう一つあのね、こうだった。ご飯とね、あの竹の小刀、昔シーグんち有(あ)たしぇー、刀、シーグね。あれを入れてちゃんと待ってるんだ、その試験にはなあ。それを男が見て、どういうことか分からんの、さっきからね。ご飯一膳とそれから竹の中にシーグ入れて待って寝てる。それを見ているんだけども、これはどういう事かと、非常にこう男は思っているけども、自分でそれを解き明かす事できなくて。んで、ご飯から先に食べたもんだから、女は、「もうあんたはね、今まで二つとも、二問題とも完全に明かしたけども、もう今日で失敗だから、私は本当のあんたの妻になることは出来んから、もう諦めて帰りなさい。」と言ったらしいですよ。んで、男はもうすっかり動転してしまって。今までの、思いがいっぺんにひっ飛んでしまってね、もう落胆してしまったらしい。そうしたら、これはどうしようかと、もう男は帰るに帰れない。もう自殺するぐらいの覚悟を決めておったらしいですよ。んで、もうしまいは泣くやらわめくやら、男泣きに泣いたもんだから。女はあんまり気の毒で、もともと自分で夫にしてもいいという覚悟を決めたもんだから、それとなく二人はまた話し合って。やってしたところが、その晩はそれで結合して、もう一緒になろうっていう事を決めて、一つの部屋にこう寝たらしいですな。その寝て、まあとにかくいろんな将来の話もして、そこで夫婦の契りもやるということになったけども。それでまあ一夜のお情けを、とにかく情けを交わしたらしいですな。そしたら、女がいつも朝は早く起きるけども、その日に限って、戸が締まって開かないんだよな。隣のお婆さんは、それをこう気にして、「確かに夕べは問題を明かしに来たけども、今だに戸が開かないのはどういうわけや。」と、こう思って訪ねて行ったらしいですな。んで、訪ねて行ったら、その二人とも重なり合って、そこでもう何て言うのかね、これはもう「泊阿嘉(とぅまいあーかー)。」みたいなことをやってるんだな。とにかくもう気が安心したのか、もう何したのか、自分の望みも叶ったちゅうんで、そこでまあ二人とも死んでしまったんだ。よく、本当か話かそれは分からんけど、まあ死んでしまったわけです。お婆さんはそれを見て、これをこんな事をしたらいかんと思って。んで、お婆さんも男の生まれたところを教えてもらっていたので、早速男の方に通知した。知らして、「自分方のこう、いわゆる、あんたの息子はこういう事になっているんだが、何とか後の始末はしないかん。」ちゅう事なって。んで、向こうから葬式もして。で、葬式した場合において、今度はお父さんの考えで、生きた時から非常に愛し合っておったし、また死んでも、後生(ぐそー)に行っても二人は愛するだろうと、お墓を別々に作ったらしいですね。ここは男、ここは女と。そして、男のお墓の前に杉の木を植えたんだ。女のお墓の前には竹を植えたんだ。竹を植えてね、竹。植えてしまって、だんだんそれが伸びてしまったら、今度は松の木に竹がずっとこう、絡みついて、ずっと伸びていったらしいですね。だから、昔は鉄がなかったから。杉と、まあ杉というか、昔は砂糖入れる樽ね。あれなんかも竹でやってね、今タライでもみんなそうやって、内地お櫃ね、あれもご飯入れてる。あれも全部竹でやったけども最近は鉄が出たからそういう事なって。だから、あれが初めて出て、二人は特に天国行ってもこれぐらい仲良く暮しているちゅう事を表わしたちゅう事だ。で、一つの問題は、何でご飯と、あの竹の中にシーグを入れて、それを試験にやったかというと。女は非常に頭が冴えた女だったんですけども。そしたらその後から話聞いてみたら、お婆さんに聞いた事には、こう言ったそうです。「何もあんたご飯食べる必要ないというのね。食べる必要ない。もう黙ってすぐ寝ればよかった。うん、すぐ寝ればよかったんで、その訳はどういう事かというと、これはシーグと言っているのかしら、シーグ、小刀も。シーグが、竹がこう中にはまってるでしょ。「しぐ抱(だ)ちくま。」と。もうすぐ抱けばいいんであってね、だからその目的分からなくって、ご飯から食べたから、女は「ああもう駄目、あんたは帰りなさい。」とすぐ言ったわけです。「しぐ抱ちくま。」だから、もうすぐ寝てね、すぐ何とも言葉をかけずに、ただ寝れば、それで良かったんだな。だから非常に女が能力が良かったという事ですよ。 |
| 全体の記録時間数 | 16:24 |
| 物語の時間数 | 16:24 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |