吉屋チルー(シマグチ)

概要

吉屋チルーは父親が娘を売りに来て、「いくらで買って下さい。」と言ったんだが、美人ではなかった。それで、そのジュリアンマーが、「美人ではないから、こんな高くはないよ。いくらだったら私は買うよ。」と言った。「美人ではないから」と答えた。するとすぐさまそのジュリアンマーの前で、歌を詠んだようだね。「金々(くんくん)ぬ糸(いとぅ)ぬ なまくつんやりば〔金色の糸が 朽ちるんだったら〕花(はな)ぬやしらみん 朽(く)ちるさびる〔花のように綺麗な糸も 朽ちるでしょう〕。」と歌を詠んだから、ジュリアンマーは、「あーこの子はただの子ではないよ。」と、父親の要求通りの額で買ったという話を聞いた。金色の糸というのは、なかなか朽ちることはないそうだよ。吉屋は仲里大主という大変な金持ちの人とよい仲であったそうだ。その話は、自分の使用人である下男と一緒のことだがね。主人が、「今日は私と一緒に辻に行こうね。」と、下男を誘った。すると、「私は人に使われている身分なので、私などが辻に遊びに行くお金はないですよ。お断りします。」と断ったようだね、しかし主人は、「ああ、今日の金は私が出すから、お前も私と一緒に行こうね。」と二人で出かけて行った。するとそこに着くと、「今日はもう、私の歌を返せる人に私は呼ばれますよ。」と、主人に言った。いつもは自分の客であるんだが、二人一緒に来たので、「今日はもう私の歌を返せる人に呼ばれますよ。」と言ったからね。最初はいつもの常連の客から歌をかけてみた。「上句は私が詠みます。」と。「流(なが)りゆる水(みじ)に 桜花(さくらばな)浮(う)きてぃ〔流れてゆく水に 桜の花が浮いているよ〕。」と吉屋チルーはそれだけを詠ったようだ。「下句はあなたで返して下さい。」と言ってね。すると、「うぬ花(はな) かかるとぅくまんかいかかてぃいちゅさ〔その花は かかるところでひっかかるよ〕。」と言ったって。そしたらもう、そのような人には呼ばれなかった。そして次はまた、お供として来ている下男に、「はい次はあなただよ。」と言ったらてね、するとその下男は、「色(いる)美(じゅ)らさあてぃる すくてぃんちゃる〔あまりの美しさに すくってみたよ〕。」と、手真似したようだね。そうしたら吉屋チルーは、「今日のお客はこの人だよ。私はこの人に呼ばれるんだよ。」と、下男に呼ばれたという話だよ。またその下男は、その下男はまだ十七、十八歳の子供でかなり年下であったらしい。それで部屋に連れて行く時に、その下男にね。「赤木(あかぎ)また枝(ゆだ)に 登(ぬぶ)てぃんちわらび〔赤木の枝にでも 登ったことがあるかこどもよ〕。」と吉屋チルーが言った。すると「吉屋(ゆしや)ウミチルや 年(とぅし)しじゃややてぃん〔吉屋チルーは 年上ではあるんだが〕夜(ゆる)や下(しちゃ)ないる 女(いなぐ)わらび〔夜になると下になる女こどもだよ〕。」と返答したので、すぐその下男に惚れてしまって、その人を客として取ったという話。そのようにして、もう下男に呼ばれたんだからね。ジュリアンマーには金は入ってこなかった。金持ちに呼ばれたんではなくて、下男に呼ばれたのでお金は少ししかないからね。これはもう考え直して、お金を沢山もうけないといけないと思った。そしてジュリアンマーは、癩病にかかっている人を客に取ったようだ。昔はランプであったからね。「今日のお客には、ランプはつけないで呼ばれなさいよ、チルー。」と、ジュリアンマーは言った。もうチルーは癩病患者に呼ばれているんだからね。暗闇の中で呼ばれたもんだから、「これは普通の客とは少し違うな。珍しいことだ。」とチルーは思っていた。そして昔は芭蕉を紡いで織っていたので、辻にもそれはあったんでしょうね。そこのウーバーラの中には、沢山の芭蕉が入っていた。そのチルーは大変頭が良かったので、その芭蕉を針に通して、客が帰る時に着物の裾に止めて帰した。ジュリアンマーが客からお金は沢山取ってあるんだからね。今日のお客は態度がおかしいけど、これはもう後をつけてみないといけないと思った。それでウーバーラの芭蕉を針にさして、昔は着物をつけていたのでその裾に抜いて、だいぶ距離をおいて後からついて行った。そうしたらクンチャーシールに入っていったようだね。そのクンチャーの後を追っていかなければそうすることもなかっただろうに、追っていったばかりにそれを見たチルーは悲観してしまい家に戻り、「一万銭(いちまんじん)欲(ふ)しり 二万銭(にまんじん)捨(ひ)てぃてぃ〔一万の銭欲しさに 二万の銭を捨てて〕新(あたら)しが命(いぬち) 捨(ひ)てぃてぃいちゅさ〔新しい命までも 捨てていくよ〕。」と波之上から身投げをしてしまった。そのようにして吉屋チルーは、亡くなったそうだ。それで亡くなってしまったので、辻に連れ帰ったんだが、兄弟に迎えに来てもらった。実家はそう遠くではなくて恩納辺りの近くの山原であったという話だよ。途中、大湾のアシビナーにさしかかった時、そこではアシビを行なっていた。仲里節のアシビであったようだが、それで兄弟は担いでいる壷を下におろしたようだ。せっかくアシビをやっているんだから、アシビでも見ていこうと腰を下した。人が一杯していたので、その壷を担いでいる人は、見えなかった。それで前の人は、背のびをして見ていたんだが、後の人はカーミの上に登って見物していた。そこでは仲里節の芝居をやっていたんだが、その壷の中から仲里節の歌が、さかんに聞こえてきたそうだ。中に入っている骨が歌っていたようだね。「ああ、これは吉屋チルーが歌っているんだね。」と、その兄弟は芝居を見るのを止めて、急いで家路についたという話だよ。

再生時間:10:00

民話詳細DATA

レコード番号 47O373766
CD番号 47O37C164
決定題名 吉屋チルー(シマグチ)
話者がつけた題名 吉屋チルー
話者名 比嘉カマド
話者名かな ひがかまど
生年月日 19120524
性別
出身地 沖縄県読谷村楚辺
記録日 19890524
記録者の所属組織 読谷ゆうがおの会
元テープ番号 読谷村楚辺T15A13
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 伝説
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集11楚辺の民話 P266
キーワード 吉屋チルー,父親が娘を売りに来た,ジュリアンマー,美人ではない,歌を詠んだ,仲里大主,金持ち,よい仲,辻,下男に呼ばれた,大変頭が良かった,芭蕉,クンチャーシール,波之上から身投げ,恩納辺り,大湾のアシビナー,仲里節のアシビ,壷を下におろした
梗概(こうがい) 吉屋チルーは父親が娘を売りに来て、「いくらで買って下さい。」と言ったんだが、美人ではなかった。それで、そのジュリアンマーが、「美人ではないから、こんな高くはないよ。いくらだったら私は買うよ。」と言った。「美人ではないから」と答えた。するとすぐさまそのジュリアンマーの前で、歌を詠んだようだね。「金々(くんくん)ぬ糸(いとぅ)ぬ なまくつんやりば〔金色の糸が 朽ちるんだったら〕花(はな)ぬやしらみん 朽(く)ちるさびる〔花のように綺麗な糸も 朽ちるでしょう〕。」と歌を詠んだから、ジュリアンマーは、「あーこの子はただの子ではないよ。」と、父親の要求通りの額で買ったという話を聞いた。金色の糸というのは、なかなか朽ちることはないそうだよ。吉屋は仲里大主という大変な金持ちの人とよい仲であったそうだ。その話は、自分の使用人である下男と一緒のことだがね。主人が、「今日は私と一緒に辻に行こうね。」と、下男を誘った。すると、「私は人に使われている身分なので、私などが辻に遊びに行くお金はないですよ。お断りします。」と断ったようだね、しかし主人は、「ああ、今日の金は私が出すから、お前も私と一緒に行こうね。」と二人で出かけて行った。するとそこに着くと、「今日はもう、私の歌を返せる人に私は呼ばれますよ。」と、主人に言った。いつもは自分の客であるんだが、二人一緒に来たので、「今日はもう私の歌を返せる人に呼ばれますよ。」と言ったからね。最初はいつもの常連の客から歌をかけてみた。「上句は私が詠みます。」と。「流(なが)りゆる水(みじ)に 桜花(さくらばな)浮(う)きてぃ〔流れてゆく水に 桜の花が浮いているよ〕。」と吉屋チルーはそれだけを詠ったようだ。「下句はあなたで返して下さい。」と言ってね。すると、「うぬ花(はな) かかるとぅくまんかいかかてぃいちゅさ〔その花は かかるところでひっかかるよ〕。」と言ったって。そしたらもう、そのような人には呼ばれなかった。そして次はまた、お供として来ている下男に、「はい次はあなただよ。」と言ったらてね、するとその下男は、「色(いる)美(じゅ)らさあてぃる すくてぃんちゃる〔あまりの美しさに すくってみたよ〕。」と、手真似したようだね。そうしたら吉屋チルーは、「今日のお客はこの人だよ。私はこの人に呼ばれるんだよ。」と、下男に呼ばれたという話だよ。またその下男は、その下男はまだ十七、十八歳の子供でかなり年下であったらしい。それで部屋に連れて行く時に、その下男にね。「赤木(あかぎ)また枝(ゆだ)に 登(ぬぶ)てぃんちわらび〔赤木の枝にでも 登ったことがあるかこどもよ〕。」と吉屋チルーが言った。すると「吉屋(ゆしや)ウミチルや 年(とぅし)しじゃややてぃん〔吉屋チルーは 年上ではあるんだが〕夜(ゆる)や下(しちゃ)ないる 女(いなぐ)わらび〔夜になると下になる女こどもだよ〕。」と返答したので、すぐその下男に惚れてしまって、その人を客として取ったという話。そのようにして、もう下男に呼ばれたんだからね。ジュリアンマーには金は入ってこなかった。金持ちに呼ばれたんではなくて、下男に呼ばれたのでお金は少ししかないからね。これはもう考え直して、お金を沢山もうけないといけないと思った。そしてジュリアンマーは、癩病にかかっている人を客に取ったようだ。昔はランプであったからね。「今日のお客には、ランプはつけないで呼ばれなさいよ、チルー。」と、ジュリアンマーは言った。もうチルーは癩病患者に呼ばれているんだからね。暗闇の中で呼ばれたもんだから、「これは普通の客とは少し違うな。珍しいことだ。」とチルーは思っていた。そして昔は芭蕉を紡いで織っていたので、辻にもそれはあったんでしょうね。そこのウーバーラの中には、沢山の芭蕉が入っていた。そのチルーは大変頭が良かったので、その芭蕉を針に通して、客が帰る時に着物の裾に止めて帰した。ジュリアンマーが客からお金は沢山取ってあるんだからね。今日のお客は態度がおかしいけど、これはもう後をつけてみないといけないと思った。それでウーバーラの芭蕉を針にさして、昔は着物をつけていたのでその裾に抜いて、だいぶ距離をおいて後からついて行った。そうしたらクンチャーシールに入っていったようだね。そのクンチャーの後を追っていかなければそうすることもなかっただろうに、追っていったばかりにそれを見たチルーは悲観してしまい家に戻り、「一万銭(いちまんじん)欲(ふ)しり 二万銭(にまんじん)捨(ひ)てぃてぃ〔一万の銭欲しさに 二万の銭を捨てて〕新(あたら)しが命(いぬち) 捨(ひ)てぃてぃいちゅさ〔新しい命までも 捨てていくよ〕。」と波之上から身投げをしてしまった。そのようにして吉屋チルーは、亡くなったそうだ。それで亡くなってしまったので、辻に連れ帰ったんだが、兄弟に迎えに来てもらった。実家はそう遠くではなくて恩納辺りの近くの山原であったという話だよ。途中、大湾のアシビナーにさしかかった時、そこではアシビを行なっていた。仲里節のアシビであったようだが、それで兄弟は担いでいる壷を下におろしたようだ。せっかくアシビをやっているんだから、アシビでも見ていこうと腰を下した。人が一杯していたので、その壷を担いでいる人は、見えなかった。それで前の人は、背のびをして見ていたんだが、後の人はカーミの上に登って見物していた。そこでは仲里節の芝居をやっていたんだが、その壷の中から仲里節の歌が、さかんに聞こえてきたそうだ。中に入っている骨が歌っていたようだね。「ああ、これは吉屋チルーが歌っているんだね。」と、その兄弟は芝居を見るのを止めて、急いで家路についたという話だよ。
全体の記録時間数 10:00
物語の時間数 10:00
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP