あのね、旧の十二月、師走(しわーし)の七日ね、読谷楚辺の方にはね、ウナームーチーいうてお餅作るわけ。ムーチーカーサいうてね、カーサがあるわけね。それに入れて包んで蒸してね、これを食べるわけね。そのムーチーの始まりはね、これ首里かどこか知らんけどね。ウニ金城(かなぐしく)ぬウナームーチーいうて始まったわけ。これのわけはね、そこに長男か次男か三男かこんなこと知らんけど、男の子が生まれて、その男の子がまあいえばとてもおとなしい人だったんだけどね。何か用事で出たもんか、また出稼ぎに出て行ったもんか、八重山に渡ってね。で、八重山でいろんな生活をしておったらしいんだけど。生活が苦しかったかそれとも何か知らんけど、山奥に逃げて行って海岸べりの山奥に逃げてね、いろんな食物が無かったか、苦しい生活をしたためか、何か知らんけどまあ鬼になって人間を食うようになっておるという話が、この本島の方に聞こえたわけね。で、家族中全部もう親兄弟は心配してね。自分達のこの家族からこういう鬼が出たという事は世間に対しても迷惑だからね、これはどうしても本当か嘘か確かめてこないといかんということになって。で、まあ年頃になった妹が、八重山に渡って行って、でえ、山の中を探して確かめたらね。本当にもう最初は妹ということ分かってどうもしなかったけど、もうちょっといろんな世間話するうちにはまぁ鬼みたいになってこの自分の妹を食おうとしたわけね。もう怖がって、「こりゃあもう大変だ。本当の鬼になっておる。今度はもう確かめに来ておるわけだから、これどうにかして逃げて家に帰って、家族相談してまた出なおさないといかん。」と言うことになって。何か思いついて、「じゃ私、おしっこに行ってくるから、ちょっと待ってくれんか。」言うたら、「いや、お前逃げる考えだからそのままじゃいかん。じゃあ手に縄でくびってからおしっこにでも行け。」いうて手を縄でね、つながれたわけ。で、そのまま見えない所まで行って、その縄は別の木の枝とか木の根元にくびっておいたら、引っ張ったりしたら、「ああ、逃げてない。」ということ分かって、そのまましておるうちに、その娘は船から逃げて本島の自分の家に帰ったわけね。そしたらもう家に帰って、「本当だったか。」というて家族全部心配して、待っておるもんだから、みんなから聞かれたら、「本当だ。あれもう本当の人間を食って骨もだいぶあった。」とかいうて家族に話したら、「ああ、そうか、じゃあこれをどうしても自分らの家族のことだから、自分らでこれもう退治せねばいかん。」という事になって、それで、「どんなしたらいいかねえ。」と考えた末、「あれ、とても餅が好きだったから餅を食わそう。」言うて、今度は餅を沢山、でえ、その餅をムーチーカーサというけどね、あれに沢山包んで持って行って、それに食わしたらもう腹も切れる、おなかもパンクするぐらい食べてね。そうして餅を持って行って食わしてやるうちに、鬼が、「お前の口は上等だね。」て聞いたら「これ何する口か。」いうから、「これは餅を食べる口だ。」と聞いて。そうしてまあ母達、みんなと相談した結果だから、この家族でお母さん達から相談してきたもんだから自分のこのズロースなんかも全部取って、わざとこの兄弟だから見せたら、「これは何かな。」いうて聞いたもんだから、「これは鬼を食べる口だよ。」まあズロースも取って前にも来たもんだから、怖がってちょっとこの鬼はびっくりしたもんだら、これ確かにこれで効くかもしらんいうて。「これ何か。」いうてまたも聞いたら、「この口はまた餅を食べる口だ。下の方は鬼を食べる口だよ。」言うて、わざっともう兄弟に向かって、前に進んで行ったら、もう「食べられたらいかん。」いうて怖がってからに、海岸の恐ろしい絶壁の所に逃げて行ったもんだからね、追いついて行ったらもう後向きになって逃げるもんだから海に落ちてしまって、深い谷底の海だから、死んだという意味ね。そうしてこのムーチーで殺したということになって、ウニ金城(かなぐしく)ぬウナームーチーいうて、このムーチーが始まった。こんなこと聞いている。
| レコード番号 | 47O373409 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C148 |
| 決定題名 | 鬼餅由来(共通語) |
| 話者がつけた題名 | ムーチーの始まり |
| 話者名 | 松田参次郎 |
| 話者名かな | まつださんじろう |
| 生年月日 | 19080720 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村楚辺 |
| 記録日 | 19770220 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団 |
| 元テープ番号 | 読谷村楚辺T03A06 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集11楚辺の民話 P18 |
| キーワード | 旧の十二月,師走の七日,読谷楚辺,ウナームーチー,ムーチーの始まり,首里,ウニ金城,男の子,八重山,山奥,鬼,人間を食う,妹,退治,餅が好き,餅を食べる口鬼を食べる口,ムーチーで殺した |
| 梗概(こうがい) | あのね、旧の十二月、師走(しわーし)の七日ね、読谷楚辺の方にはね、ウナームーチーいうてお餅作るわけ。ムーチーカーサいうてね、カーサがあるわけね。それに入れて包んで蒸してね、これを食べるわけね。そのムーチーの始まりはね、これ首里かどこか知らんけどね。ウニ金城(かなぐしく)ぬウナームーチーいうて始まったわけ。これのわけはね、そこに長男か次男か三男かこんなこと知らんけど、男の子が生まれて、その男の子がまあいえばとてもおとなしい人だったんだけどね。何か用事で出たもんか、また出稼ぎに出て行ったもんか、八重山に渡ってね。で、八重山でいろんな生活をしておったらしいんだけど。生活が苦しかったかそれとも何か知らんけど、山奥に逃げて行って海岸べりの山奥に逃げてね、いろんな食物が無かったか、苦しい生活をしたためか、何か知らんけどまあ鬼になって人間を食うようになっておるという話が、この本島の方に聞こえたわけね。で、家族中全部もう親兄弟は心配してね。自分達のこの家族からこういう鬼が出たという事は世間に対しても迷惑だからね、これはどうしても本当か嘘か確かめてこないといかんということになって。で、まあ年頃になった妹が、八重山に渡って行って、でえ、山の中を探して確かめたらね。本当にもう最初は妹ということ分かってどうもしなかったけど、もうちょっといろんな世間話するうちにはまぁ鬼みたいになってこの自分の妹を食おうとしたわけね。もう怖がって、「こりゃあもう大変だ。本当の鬼になっておる。今度はもう確かめに来ておるわけだから、これどうにかして逃げて家に帰って、家族相談してまた出なおさないといかん。」と言うことになって。何か思いついて、「じゃ私、おしっこに行ってくるから、ちょっと待ってくれんか。」言うたら、「いや、お前逃げる考えだからそのままじゃいかん。じゃあ手に縄でくびってからおしっこにでも行け。」いうて手を縄でね、つながれたわけ。で、そのまま見えない所まで行って、その縄は別の木の枝とか木の根元にくびっておいたら、引っ張ったりしたら、「ああ、逃げてない。」ということ分かって、そのまましておるうちに、その娘は船から逃げて本島の自分の家に帰ったわけね。そしたらもう家に帰って、「本当だったか。」というて家族全部心配して、待っておるもんだから、みんなから聞かれたら、「本当だ。あれもう本当の人間を食って骨もだいぶあった。」とかいうて家族に話したら、「ああ、そうか、じゃあこれをどうしても自分らの家族のことだから、自分らでこれもう退治せねばいかん。」という事になって、それで、「どんなしたらいいかねえ。」と考えた末、「あれ、とても餅が好きだったから餅を食わそう。」言うて、今度は餅を沢山、でえ、その餅をムーチーカーサというけどね、あれに沢山包んで持って行って、それに食わしたらもう腹も切れる、おなかもパンクするぐらい食べてね。そうして餅を持って行って食わしてやるうちに、鬼が、「お前の口は上等だね。」て聞いたら「これ何する口か。」いうから、「これは餅を食べる口だ。」と聞いて。そうしてまあ母達、みんなと相談した結果だから、この家族でお母さん達から相談してきたもんだから自分のこのズロースなんかも全部取って、わざとこの兄弟だから見せたら、「これは何かな。」いうて聞いたもんだから、「これは鬼を食べる口だよ。」まあズロースも取って前にも来たもんだから、怖がってちょっとこの鬼はびっくりしたもんだら、これ確かにこれで効くかもしらんいうて。「これ何か。」いうてまたも聞いたら、「この口はまた餅を食べる口だ。下の方は鬼を食べる口だよ。」言うて、わざっともう兄弟に向かって、前に進んで行ったら、もう「食べられたらいかん。」いうて怖がってからに、海岸の恐ろしい絶壁の所に逃げて行ったもんだからね、追いついて行ったらもう後向きになって逃げるもんだから海に落ちてしまって、深い谷底の海だから、死んだという意味ね。そうしてこのムーチーで殺したということになって、ウニ金城(かなぐしく)ぬウナームーチーいうて、このムーチーが始まった。こんなこと聞いている。 |
| 全体の記録時間数 | 7:17 |
| 物語の時間数 | 7:17 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |