産神問答(シマグチ)

概要

あるところに主人の妻も妊娠し、下男の妻も妊娠している家庭があったようだ。主人は大変な金持ちで
、下男夫婦はそこで働いていたが、両方とも同じ日に子供が産まれた。主人は夜釣りに行ったが、少しだけ時間が早かった。そこで浜に寄りかかっている木があったので、しばらくの間はその木を枕にして寝ることにした。寝ている時にその木の精に竜宮の神が、「おい、木の精よ、人間の世界では今、主と下男に子供が産まれている所があるが、私はその子に命名しに行くんだが、貴方も一緒に行きませんか。」と言った。すると、「私は命名しに行こうと思っていても、人間に枕にされ押さえつけられているんだから、もう起きることも出来ないよ。貴方一人で命名してきなさい。」と言った。そうして龍宮の神は、自分一人で命名しに行った。その龍宮の神が帰る間は、主人は木を枕にして浜で寝ていた。そして龍宮の神と木の精が話をするのを聞いて、「これは大変なことになってしまった。部落で主人と下男の妻が妊娠しているといえば、私達家庭のことだ。」と言ってね。そして帰りにも話を聞くつもりで、そのまま木の精を押えておいた。帰りに聞いてみると、「おい木の精、命名して来たよ。」と言うと、「何という名を命名したか。」と問うた。「下男には女の子が生まれて、主人には男の子が産まれたんだがね、下男の女の子には蔵の主になりなさいと命名した。また主人の男の子には、バーキ作りになって生活しなさいと命名してきたよ。」と言った。そのような竜宮の神と木の精が話すのを主人は聞いて、「もうこの二人は大変なことを話しているな。私達の富を減らさないようにするには、この二人を夫婦にして家庭を盛りあげないといけない。」というふうに考えた。その二人が成長するうちに、許嫁にして結婚させた。その後、両方の両親とも亡くなってしまった。ある正月に、そのバーキ作りの運の男が、「年の晩のウブクは白いご飯を炊くのであって、赤豆のご飯を炊くということもあるか。」とね言って、そのことからひと言ふた言、言っているうちに、とうとう夫婦喧嘩が始まってしまった。夫は妻にむかって、「お前みたいなやつは何も分からないやつは、早くここから出て行け。」と言って、妻は家から出されるはめになってしまった。しかし、妻は下男の娘で、出て行けと言われてもどこにも行く所がなかった。もうどうしようかと悲嘆にくれ、自分の家から出て一晩は蔵で過ごした。そして朝早く、クラーぐゎーが私の前にきては、ちょこちょこちょこと三歩進んでは、またちょこちょこちょこと三歩進んだりしていた。「このクラーぐゎーは何ごとかな、私に何か物言いたそうだが。」と不思議に思っていた。「私はこの家から出て行っても、どこにも行くあてはないし、もしかしたらこのクラーぐゎーに助けられるかもしれないし、このクラーぐゎーを頼って行こう。」と考えた。もう朝から一日中、このクラーぐゎーの後を追って行き、山奥までついて行ったら、日が暮れてしまった。すると近くに炭窯があり、灯もついていたので、「そこに一晩は泊めて下さい。」とお願いし、一晩はそこで泊まることになった。翌朝は早く起きて、お茶も入れてさしあげた。その女が、「貴方はどうして、妻や子もいなんですか。」と聞いたら、「私はもう妻子もいない。一人者だよ。」と答えた。「そういうことでしたら、私は女中、飯炊きとして、そこにおいて下さいませんか。」と言うと、「あ、貴方がそう思うんでしたら、こんな汚ない家にでも住むことができるんでしたら、いいですよ。」ということになり、二人で住むことになった。ある日、その男は山へ炭焼きに出かけた。女は昼飯の準備をして、炭窯に持って行くと、炭窯の周辺にある石が、なんとその女には全部黄金に見えたのである。そして男に、「貴方は、この石は何に見えるんですか、これは黄金ですよ。黄金をそこにそのまま置くってことがありますか。」と言った。それでその時から、「これはもう黄金だったのか。」ということでね。そのようにして、その場で、男に黄金石を持たせた。すると男は女に、「貴方は行くあてもないんだったら、私と夫婦にならないか。」と言った。そし夫に黄金石を持たせて、「村から降りて行って町であれこれ買って、私達は結婚式を挙げようね。」と、村から降りて買い物に行かせた。すると途中でガートゥイグムイがあったので、持っている石を投げてなくしてしまった。夫は家に戻って、「石はガートゥイグムイに投げてしまったよ。」と話したら、「ああ、もう大変だ、あんなに大切な黄金たるもの捨てるということがありますか。」と妻は言ってね。それからガートゥイグムイに行き、妻は黄金も捜し出して、町に行きいろいろと買い物もして、二人は結婚式を挙げて夫婦となった。そういうふうにして、もうその黄金石で炭焼をしていた夫にも学問をさせた。山から降りて村に行き、学問もして、役所勤めをするようになった。その女の前夫は、ティールバーキを作って食べていきなさいと命名されていたので、その通りにティールバーキを作るようになった。そして、先妻の家とは知らずにその家に行き「ティールバーキはいりませんか。」と言ったようだ。先妻は先夫の家から出される前に、すでに子を身ごもっていたので、子も産まれてもう五、六歳になっていたようだ。そのバーキ売りが、「バーキはいりませんか。」とやってきたので、子供はバーキ売りを知らないのに、股の上に抱かれて座ってしまった。「この子はなんて良い子だ。私みたいな者に、このように抱かれるよ。」と言うと、「血のつながりのなすことですよ。」と女が言った。そうこうしてバーキ売りは、「いったいどういうことだ。血のなすことというのは、私のことか。」といろいろ考えてしまった。すると「ああ、あなたは私が捨てた女か。あなたは確かに私が捨てた女だね。」と、その場で舌を噛み切って死んでしまった。そして蔵の石の下に、「恨んではいけないよ。貴方は自分で仕損じたことだから。」と埋めた。門口の側にお茶を供えて祭ってあるのは、そのようなことから始まっている。だから門口にお茶が一杯おかれているのを飲むものではないというのは、そういうことだからだよ。夫は役所勤めをしていたので帰って来て、「ああ、私が暑いということで、帰りを待ってここにお茶も冷ましてあるんだなー。」と言ったら、そのお茶が一杯置かれているのは飲むものではないよと、外にむけて捨てて家に入ってからお茶を飲ませたということ。お茶が一杯門口に飾られているのを飲んではいけないというのは、その理由からだよ。門口にすでに注いで置かれているお茶一杯は、飲んではいけないということだよ。

再生時間:10:25

民話詳細DATA

レコード番号 47O373348
CD番号 47O37C145
決定題名 産神問答(シマグチ)
話者がつけた題名 産神問答
話者名 松田芳
話者名かな まつだよし
生年月日 19110210
性別
出身地 沖縄県読谷村楚辺
記録日 19770220
記録者の所属組織 読谷村民話調査団
元テープ番号 読谷村楚辺T01B01
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情 昔話は父親が夕食後に話したりしていた。
文字化資料 読谷村民話資料集11楚辺の民話 P73
キーワード 主人の妻,妊娠,下男の妻,金持ちで,下男夫婦,同じ日に子供,主人は夜釣り,木を枕にして寝る,木の精に竜宮の神,命名,下男の女の子には蔵の主,主人の男の子はバーキ作り,結婚,年の晩のウブク,白いご飯,赤豆のご飯,クラー,炭窯,炭焼き,夫に黄金石,ガートゥイグムイ,血のつながり,舌を噛み切って死んだ,蔵の石の下,門口の側にお茶,夫,役所勤め,お茶が一杯門口,お茶一杯
梗概(こうがい) あるところに主人の妻も妊娠し、下男の妻も妊娠している家庭があったようだ。主人は大変な金持ちで 、下男夫婦はそこで働いていたが、両方とも同じ日に子供が産まれた。主人は夜釣りに行ったが、少しだけ時間が早かった。そこで浜に寄りかかっている木があったので、しばらくの間はその木を枕にして寝ることにした。寝ている時にその木の精に竜宮の神が、「おい、木の精よ、人間の世界では今、主と下男に子供が産まれている所があるが、私はその子に命名しに行くんだが、貴方も一緒に行きませんか。」と言った。すると、「私は命名しに行こうと思っていても、人間に枕にされ押さえつけられているんだから、もう起きることも出来ないよ。貴方一人で命名してきなさい。」と言った。そうして龍宮の神は、自分一人で命名しに行った。その龍宮の神が帰る間は、主人は木を枕にして浜で寝ていた。そして龍宮の神と木の精が話をするのを聞いて、「これは大変なことになってしまった。部落で主人と下男の妻が妊娠しているといえば、私達家庭のことだ。」と言ってね。そして帰りにも話を聞くつもりで、そのまま木の精を押えておいた。帰りに聞いてみると、「おい木の精、命名して来たよ。」と言うと、「何という名を命名したか。」と問うた。「下男には女の子が生まれて、主人には男の子が産まれたんだがね、下男の女の子には蔵の主になりなさいと命名した。また主人の男の子には、バーキ作りになって生活しなさいと命名してきたよ。」と言った。そのような竜宮の神と木の精が話すのを主人は聞いて、「もうこの二人は大変なことを話しているな。私達の富を減らさないようにするには、この二人を夫婦にして家庭を盛りあげないといけない。」というふうに考えた。その二人が成長するうちに、許嫁にして結婚させた。その後、両方の両親とも亡くなってしまった。ある正月に、そのバーキ作りの運の男が、「年の晩のウブクは白いご飯を炊くのであって、赤豆のご飯を炊くということもあるか。」とね言って、そのことからひと言ふた言、言っているうちに、とうとう夫婦喧嘩が始まってしまった。夫は妻にむかって、「お前みたいなやつは何も分からないやつは、早くここから出て行け。」と言って、妻は家から出されるはめになってしまった。しかし、妻は下男の娘で、出て行けと言われてもどこにも行く所がなかった。もうどうしようかと悲嘆にくれ、自分の家から出て一晩は蔵で過ごした。そして朝早く、クラーぐゎーが私の前にきては、ちょこちょこちょこと三歩進んでは、またちょこちょこちょこと三歩進んだりしていた。「このクラーぐゎーは何ごとかな、私に何か物言いたそうだが。」と不思議に思っていた。「私はこの家から出て行っても、どこにも行くあてはないし、もしかしたらこのクラーぐゎーに助けられるかもしれないし、このクラーぐゎーを頼って行こう。」と考えた。もう朝から一日中、このクラーぐゎーの後を追って行き、山奥までついて行ったら、日が暮れてしまった。すると近くに炭窯があり、灯もついていたので、「そこに一晩は泊めて下さい。」とお願いし、一晩はそこで泊まることになった。翌朝は早く起きて、お茶も入れてさしあげた。その女が、「貴方はどうして、妻や子もいなんですか。」と聞いたら、「私はもう妻子もいない。一人者だよ。」と答えた。「そういうことでしたら、私は女中、飯炊きとして、そこにおいて下さいませんか。」と言うと、「あ、貴方がそう思うんでしたら、こんな汚ない家にでも住むことができるんでしたら、いいですよ。」ということになり、二人で住むことになった。ある日、その男は山へ炭焼きに出かけた。女は昼飯の準備をして、炭窯に持って行くと、炭窯の周辺にある石が、なんとその女には全部黄金に見えたのである。そして男に、「貴方は、この石は何に見えるんですか、これは黄金ですよ。黄金をそこにそのまま置くってことがありますか。」と言った。それでその時から、「これはもう黄金だったのか。」ということでね。そのようにして、その場で、男に黄金石を持たせた。すると男は女に、「貴方は行くあてもないんだったら、私と夫婦にならないか。」と言った。そし夫に黄金石を持たせて、「村から降りて行って町であれこれ買って、私達は結婚式を挙げようね。」と、村から降りて買い物に行かせた。すると途中でガートゥイグムイがあったので、持っている石を投げてなくしてしまった。夫は家に戻って、「石はガートゥイグムイに投げてしまったよ。」と話したら、「ああ、もう大変だ、あんなに大切な黄金たるもの捨てるということがありますか。」と妻は言ってね。それからガートゥイグムイに行き、妻は黄金も捜し出して、町に行きいろいろと買い物もして、二人は結婚式を挙げて夫婦となった。そういうふうにして、もうその黄金石で炭焼をしていた夫にも学問をさせた。山から降りて村に行き、学問もして、役所勤めをするようになった。その女の前夫は、ティールバーキを作って食べていきなさいと命名されていたので、その通りにティールバーキを作るようになった。そして、先妻の家とは知らずにその家に行き「ティールバーキはいりませんか。」と言ったようだ。先妻は先夫の家から出される前に、すでに子を身ごもっていたので、子も産まれてもう五、六歳になっていたようだ。そのバーキ売りが、「バーキはいりませんか。」とやってきたので、子供はバーキ売りを知らないのに、股の上に抱かれて座ってしまった。「この子はなんて良い子だ。私みたいな者に、このように抱かれるよ。」と言うと、「血のつながりのなすことですよ。」と女が言った。そうこうしてバーキ売りは、「いったいどういうことだ。血のなすことというのは、私のことか。」といろいろ考えてしまった。すると「ああ、あなたは私が捨てた女か。あなたは確かに私が捨てた女だね。」と、その場で舌を噛み切って死んでしまった。そして蔵の石の下に、「恨んではいけないよ。貴方は自分で仕損じたことだから。」と埋めた。門口の側にお茶を供えて祭ってあるのは、そのようなことから始まっている。だから門口にお茶が一杯おかれているのを飲むものではないというのは、そういうことだからだよ。夫は役所勤めをしていたので帰って来て、「ああ、私が暑いということで、帰りを待ってここにお茶も冷ましてあるんだなー。」と言ったら、そのお茶が一杯置かれているのは飲むものではないよと、外にむけて捨てて家に入ってからお茶を飲ませたということ。お茶が一杯門口に飾られているのを飲んではいけないというのは、その理由からだよ。門口にすでに注いで置かれているお茶一杯は、飲んではいけないということだよ。
全体の記録時間数 10:25
物語の時間数 10:25
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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