願い事は大きく(シマグチ)

概要

昔、首里の近くの田舎に、大変貧乏な青年が二人(住んでいた)。二人の青年は毎日山に行って薪を取り、首里那覇に行ってその薪を売って暮らしていたようである。ある日、薪を取って山から戻る途中で、もちろん山の中であったようだ。山の中で木の陰に座っての、二人の話であった。一人の者が「おい、お前はどのように考えているのか、自分達二人はもういつもこのようにして薪取りだけをして、ちっともうだつがあがらない。いつまでもこの暮らしはできないよ、私の考えとしては‥‥。」と、一人の者が(言った)。「私は必ず首里に上って行って、首里の松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすつもりだよ、私の望みというのはね。」と言ったようだ。(すると)一人の者が「あんたはもう、天にかなわぬ話をして。自分達みたいな百姓の位で、あんな大きな松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすという話は、少しおおげさではないか。こういうことを叶わぬ願いというんだよ。」「ああそうではないよ、人間は願いの精霊という言葉があるからね。願って願ってできないことはないと、私は考えている。」「ああそうか。」「私はそういうふうに考えているんだが、あんたはどのようにして考えているか。」と。また一人の者は「よく聞きなさいよ、あんたは松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすと言っているんだが。私はまだお前以上に、今那覇で一番評判の泊美人、その人を妻にして、もうあの泊美人を私の妻にすることができるんであれば、私は三年生きておればよい。」と、そう言ったようだ。そうするとその最初の青年が「お前のはイヤな願いだね。もうあれほど世間を騒がす沖縄一の美人、泊美人と言われている人を妻にしたところが、ただ三年生きていては何もならない。お前のはイヤな願いだよ。」と。「いや、それでも私はよい。あれほどの美人を妻にするんであれば、三年生きればよい。」「ああそうか。」と。そうしているうちにそこからひょいと白髪のおじいさんが出てきて、「おい二才達、お前達の話をここで全部聞いたんだが、お前達はほんとに願いが大きいなあ。私はお前達の話を聞いて、すぐにはここから通りすぎることはできない。お前達に何かをあげるから、私があげるのは大切に持ちなさいよ。」と。そうして何をあげたかというと、最初に松山御殿の入り婿になりたいと思っている青年には、棒をあげたようだ。見かけはただの棒であったらしいよ、棒というのは木片みたいのものだよ。そうして棒をあげて、「私が今あげる棒は、お前達にはただの棒に見えるはずだがそうではない。これはお前達の望みを叶えてあげるものだから、大切に持ちなさいよ。」と、言った。そうしてあと一人の泊美人を妻にしたいと思っている人には、扇をあげたようだ。扇をあげて、「これもお前の望みを叶えてあげる道具だから、大切に持ちなさいよ。」と。そうしているちょっとしたすきにこの白髪のじいさんは、どこにいらっしゃったか分からなくなった。そしてその二人は、「おや珍しいことだ、今までこっちにいらっしゃったんだがいつのまにいなくなってしまって、この人は神様だよ。この道具は、お互いに大切に持とうね。」と。それから、昔の沖縄の士族というのは、良家の人達は馬を持っていた。そして山に薪を取りに行くときは、その馬を持って行った。その時に、馬に薪を載せて、そこから通ったようである。その二人の前から通り、そこを少し通り過ぎたからね。この棒を持っていた青年が、「あ!ほんとにいい馬を持っているね。」と。この棒で馬の尻を指したようである。馬が通り越してからだからね。尻を指したから、もうこの馬の尻が、「サティ、サティ、サティー。」と、ずっと叫び続けたようだ。するとこの馬を持っている人も驚き、馬も驚き、それからその見ている青年達二人も驚いてしまった。「あ!私がこの棒で指したら、馬の尻がこんなに大きく『サティ、サティ、サティ』(と叫び続けてしまった)。」と。それから(この馬の尻の叫びは)全く止まらなかったようだ。そうしているうちに、すぐこの二人は青年は、「ははあ、この神様があたえた棒は、ただの物ではない。このようにして指したら、馬の尻がこんなに大きく『サティ、サティ』と叫んでしまった。ひょっとすると、振り返って反対に指すと、止まるかもしれない、まずは反対に指してみよう。」と、感づいたようだ。そうしてこの棒を反対に指すと、止まってしまった。「ああ、これは大事な宝物だなあ。」と隠した。そうしてもう一人の青年が「お前の棒は、こうして願いが叶えられる棒であるということは分かっているんだが、この私の扇は、こんな破れた扇、これが宝だということは珍しいことだ。しかし暑いんだから、少しは扇いでみよう。」と。自分の顔を扇いだようだ。破れた扇で顔を扇ぐと、鼻がなくなってしまった。その青年の鼻がなくなってしまった。そうしたら一人の青年が、「もう大変なことだ。お前の鼻がなくなっているよ。」と。「鼻がなくなるということがあるか。」と、さわってみると(鼻はなくなっているんだから)すべすべしていた。「これは珍しい事だ。お前の棒が技をしたように、私の物も技をした。もう今度は反対に扇いでみようね。」と、反対に扇いでみると、また鼻が出てきたようだ。もうこれは大事な宝物だと。そうしてから(この二人は)家に帰った。こういうふうにして、二人は大きな望みを持っているんだからね。またそのようにして二人は生まれていて、それにつり合うくらいに生まれているんだから、(この二人は)首里に行ったようだ。そうして、一人はもう願いも叶わって、松山御殿の下男として、そこに使われたようだ。松山御殿の入り婿になりたいと思っている青年は、やっぱり思いが叶わって、そこに下男奉公として入った。また一人の青年は、この泊美人というのは、すでに同じ泊のあの殿内の侍の長男の妻であったというからね。またその青年も、思い通りに事が運び、下男としてそこに働くようになった。二人の青年は、そういうふうにしてもう糸口は開けたようだね。もう各々の思う所に。そうこうしているうちに、この棒を持っている青年は、松山御殿で働いている青年ね。この青年はどうすれば自分の望みが叶わるだろうと、毎日夜々このことを考えているんだが、どうしても簡単に考えることはできなかった。相手は松山御殿の一人娘であるし、自分はもう使用人だし、だがこれももう一つの運命とでもいうのか、もう運命づけられているんだから、その下男はどうしてもあさってという日には、どうにか技をして、ぜひとも早く思いを遂げないといけないと(考えていた)。考え考えしているうちに、あさっては他から入り婿をとって結婚式という日となっていたようだ。ああ!もうこれは日はあさってとなっているし、私はこの道具は持っているのに、この棒は持っているというのに、少しもこの棒を必要とする機会に恵まれない。これはいったいどうすればいいんだろうと考えて、もう自分の真心がとがめはするんだが、これはただこのままにしてはいけない。知恵を出さないといけないと。そうこうして考えているうちに、その家では結婚式ということで大変な騒ぎであった。一人娘であったので、乳母が便所までもずっと追う程にかわいがっていた。それ程の身分のある人であった。もうどこまでも(乳母が)追って歩くので、この棒でさえも望みをとげることができなかったそうだ。もうこの青年は、みっともなくて心がとがめはするが、この娘が小便をする便所の下に隠れていて、どうにかしないといけないと考えた。そうして悪いとは思いながら、便所に隠れていた。夜中そこに隠れていて、その人が用を足しにきた時に、この棒で指したようだ。便所で指したら、その人の尻の穴がもう叫びまくってしまったので、御殿殿内は大変な大騒動となってしまった。もう人間の尻が、股ぐらが、「サティ、サティー。」と叫んでしまったんだから、大変なことであった。そうして、そこの御殿殿内はもう大騒動であった。「もう私の娘は、大変かわいがって育ててきた一人娘だが、私達のこんな大きな御先祖の前に恥をさらしてしまって、世間に申し訳がたたない。もう大切な子供ではあるんだが、これは切って捨てるよりほかならない。」と、父親は思っていたようだ。しかし乳母は、「このようにして幼少の頃から私が育てたウミングヮを、貴方の刀にかけるということは、もう私も生きている価値もない程に苦しいことです。このようなことはただ事ではない、確かに神事だと思います。股ぐらがこんなに叫び続けるということはただ事ではありませんので、まず待って下さい。」と、(父親を)なだめた。そうしているうちにも、この下男は(この話を)聞いていたんだからね。いつも隠れて様子をうかがっていたそうだ。それで「サリーサリー。」と出て行って、ここの主人に願い出たようだ。「本当のところ、貴方たちのこの殿内に、いつか大きい災難がふりかかるから、貴方の一人娘が大変大きな災難に出会うからね。この場合に、お前はこの殿内に行って、そこの一人娘を助けてあげなさいということで、私は神からの使いとして、私は貴方たちにこのようにして下男奉公としてあがっているわけですが。本当のところ見かけは百姓姿、百姓に見えるはずですが、ただの人ではない。生まれながらに天からの授け、貴方たちの一人娘を助けてきなさいと、私は神からの使いとしてもう私は貴方たちに、このようにして下男としてあがっているわけですから。」「お前みたいな者が(自分達の)この話にくちばしを入れるのか。お前も切り捨ててやろう。」としているところを、これも乳母がなだめて。「この人の言うことが、この下男の言うことが本当であるんであれば、本当であるんであればこの下男にまかせてもよい。まずは刀をかけるのは待って下さい。」と。願ったので、もう本音としては、自分の子供はかわいいので、「それではまず待ってみることにしよう。」と、主人は待った。そうしてこの三良が、「これはもう別事ではありません。人に見せてもいけないし、親にも見せてはいけないところなので、私達下男が見るということは、ただ事ではありません。ですから乳母は一緒に来てよいですので、クチャまで(娘の)お供をしましょう。」と、ついて行った。(そこへ行ったら)もうそこを開けないといけないんだから。そうして自分はブイを隠して持っているんだからね。そうしたら止まって、まあ止まるのはあたりまえだから、そうして止まってね。そういうふうにしてもうこれは、こんなに大きな騒動になったんだからね。相手の入り婿となっている人も、もうそこからは戻されているんだから。こんな迷惑なことはない。もう縁談は破談ということで、戻されているんだからね。そうして乳母が仲をもって、「この下男はただの人ではない。ここの後継ぎをするために生まれてきているはずだからね。このようにして生まれてきて、こんな難しい病気も治してあげたから。この下男を入り婿として、ここの家庭を守るようにしてくれ。」と、乳母からも願った。また役人達も「それでよい。」と、願いが叶わったそうだ。一生かわいがられて、そこの入り婿となって栄えたという話。願いの精霊という話である。またもう一つ残っている。もう一人の青年はどうなったかというとね。この青年も願いが叶って、泊美人が嫁いで行っている家に、下男として奉公していたようだ。この青年も心の中では、「私の願い、私の願い。」と大変あせっていたようである。しかしそう簡単にはチャンスは訪ずれなかった。そうこうしているうちに、この美人の夫は、公事から唐旅の命令が出た。その唐旅は今の留学と同じようなもので、三年三ヵ月の期間であった。そうこうしてこの人は唐に渡った。それで家に残っているのは、扇を持っている下男と、他に女中等がいた。もうそういうふうにして今日も暮らして、明日も暮らして、そうしているうちにこの泊美人という人はもうただ美しいだけであって、本当の中味はもう自分の貞操を守れるような女ではなかったようだ。そして、この下男の三良が、いつも色目づかいをしていたからね。この女も本当は男を欲しがっているんだが、侍の妻としてそう簡単には夜出歩くことはできなかった。そうしているうちに、二人で話をするチャンスがやってきた。この下男と美人がね。この美人の言い分は、「おい下男、お前はかわいそうな生まれだね。もう男ざかりだというのに、仲のよい女というのもいないし、妻も見つけることができない。お前は男に生まれながら男ではないよ。」と。このようにして遠くから感づかさせるように、この女が色気を出して話をしたようだ。だからこの下男もまた、自分の願いが叶えられそうな時期が巡ってきたなと。よし!私も意地を出してやろうと、「アヤーメー、実際には貴方がおっしゃるように、私はかわいそうな者ではないよ。私も男だよ。貴方がそうおっしゃるのなら、私が貴方たちの家庭にそういうふうに来ているのは、貴方の夫がいつか唐旅に出かけた時に、貴方を寂しがらせてはいけないから、お前はあの御殿に行って、あそこでアヤーメーを慰めなさいと、私は天からの使いですよ。私は実はただの人ではありません。貴方が私をただの人間だと思うんでしたら、私も貴方に証拠をおめにかけてもよろしいのですが。」と言ったからね。「どうしてお前はそういうふうに言うか。お前が言うのはどういう意味か。」と言ったからね。「本当はもう、私は女になろうと思えばなれるし、また男にもなろうと思えばなれますよ。」と。そうして「ああそうか、それじゃあそれを見せてくれないか。」と。もうその人は、アヤーメーは大変色気があるというんだからね。そうして、「それならどうぞ歩いて下さい。」と言って、裏座に行って、この扇で自分の股ぐらを扇いだらね。ここがなくなってよ、もう男の道具がなくなって。それで、「はいごらんになって下さい。このようなものですよ。私は実はただの人ではない。天からの使いですよ。」それでこのアヤーメーはびっくりして、「じゃあ、お前はもう男として親からの譲りの(男の道具)がないとなると、お前はしょうがないよ、お前が私の寂しさを治すといってもどうして治すか。」と言ったからね。「そうではないですよ、それじゃあもうまた元の姿になりましょうね。」と。反対に扇いだらそれが出て、そうこうしているうちに、この女ももうもちろん貞操を守りきれる女ではないんだからね。二人隠れて一緒になったようだ。そうこうして三年も暮らした。いわば三年三ヵ月の日になったからね。夫はもうめでたく唐から留学も終えて、家に帰ってきた。そうして自分の妻と下男と一緒だということが分かって、この下男は三年三ヵ月の日には切られたようだ。妻と一緒に。そうして切られたからね。この時から願うんであれば大きく願いなさいと。また何かの拍子にいやな言葉を使うとその通りになるということがあるから、世間のよい戒めとなったという話である。言った通りになって切られたそうだよ。

再生時間:22:57

民話詳細DATA

レコード番号 47O373196
CD番号 47O37C138
決定題名 願い事は大きく(シマグチ)
話者がつけた題名 願い事は大きく
話者名 照屋寛良
話者名かな てるやかんりょう
生年月日 19080510
性別
出身地 沖縄県読谷村座喜味
記録日 19770816
記録者の所属組織 読谷村民話調査団
元テープ番号 読谷村座喜味T08B02
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集10座喜味の民話 P119
キーワード 首里の近くの田舎,大変貧乏な青年が二人,山で薪取り,首里の松山御殿の一人娘の入り婿,叶わぬ願い,願いの精霊,那覇で一番評判の泊美人を妻に,三年生きておればよい,白髪のおじいさん,棒,木片,望みを叶える,扇,沖縄の士族,馬の尻,鼻がなくなった,運命,結婚式,娘が小便,三良,公事から唐旅,女が色気,三年三ヵ月
梗概(こうがい) 昔、首里の近くの田舎に、大変貧乏な青年が二人(住んでいた)。二人の青年は毎日山に行って薪を取り、首里那覇に行ってその薪を売って暮らしていたようである。ある日、薪を取って山から戻る途中で、もちろん山の中であったようだ。山の中で木の陰に座っての、二人の話であった。一人の者が「おい、お前はどのように考えているのか、自分達二人はもういつもこのようにして薪取りだけをして、ちっともうだつがあがらない。いつまでもこの暮らしはできないよ、私の考えとしては‥‥。」と、一人の者が(言った)。「私は必ず首里に上って行って、首里の松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすつもりだよ、私の望みというのはね。」と言ったようだ。(すると)一人の者が「あんたはもう、天にかなわぬ話をして。自分達みたいな百姓の位で、あんな大きな松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすという話は、少しおおげさではないか。こういうことを叶わぬ願いというんだよ。」「ああそうではないよ、人間は願いの精霊という言葉があるからね。願って願ってできないことはないと、私は考えている。」「ああそうか。」「私はそういうふうに考えているんだが、あんたはどのようにして考えているか。」と。また一人の者は「よく聞きなさいよ、あんたは松山御殿の一人娘の入り婿になって、一生ここの人にかわいがられて暮らすと言っているんだが。私はまだお前以上に、今那覇で一番評判の泊美人、その人を妻にして、もうあの泊美人を私の妻にすることができるんであれば、私は三年生きておればよい。」と、そう言ったようだ。そうするとその最初の青年が「お前のはイヤな願いだね。もうあれほど世間を騒がす沖縄一の美人、泊美人と言われている人を妻にしたところが、ただ三年生きていては何もならない。お前のはイヤな願いだよ。」と。「いや、それでも私はよい。あれほどの美人を妻にするんであれば、三年生きればよい。」「ああそうか。」と。そうしているうちにそこからひょいと白髪のおじいさんが出てきて、「おい二才達、お前達の話をここで全部聞いたんだが、お前達はほんとに願いが大きいなあ。私はお前達の話を聞いて、すぐにはここから通りすぎることはできない。お前達に何かをあげるから、私があげるのは大切に持ちなさいよ。」と。そうして何をあげたかというと、最初に松山御殿の入り婿になりたいと思っている青年には、棒をあげたようだ。見かけはただの棒であったらしいよ、棒というのは木片みたいのものだよ。そうして棒をあげて、「私が今あげる棒は、お前達にはただの棒に見えるはずだがそうではない。これはお前達の望みを叶えてあげるものだから、大切に持ちなさいよ。」と、言った。そうしてあと一人の泊美人を妻にしたいと思っている人には、扇をあげたようだ。扇をあげて、「これもお前の望みを叶えてあげる道具だから、大切に持ちなさいよ。」と。そうしているちょっとしたすきにこの白髪のじいさんは、どこにいらっしゃったか分からなくなった。そしてその二人は、「おや珍しいことだ、今までこっちにいらっしゃったんだがいつのまにいなくなってしまって、この人は神様だよ。この道具は、お互いに大切に持とうね。」と。それから、昔の沖縄の士族というのは、良家の人達は馬を持っていた。そして山に薪を取りに行くときは、その馬を持って行った。その時に、馬に薪を載せて、そこから通ったようである。その二人の前から通り、そこを少し通り過ぎたからね。この棒を持っていた青年が、「あ!ほんとにいい馬を持っているね。」と。この棒で馬の尻を指したようである。馬が通り越してからだからね。尻を指したから、もうこの馬の尻が、「サティ、サティ、サティー。」と、ずっと叫び続けたようだ。するとこの馬を持っている人も驚き、馬も驚き、それからその見ている青年達二人も驚いてしまった。「あ!私がこの棒で指したら、馬の尻がこんなに大きく『サティ、サティ、サティ』(と叫び続けてしまった)。」と。それから(この馬の尻の叫びは)全く止まらなかったようだ。そうしているうちに、すぐこの二人は青年は、「ははあ、この神様があたえた棒は、ただの物ではない。このようにして指したら、馬の尻がこんなに大きく『サティ、サティ』と叫んでしまった。ひょっとすると、振り返って反対に指すと、止まるかもしれない、まずは反対に指してみよう。」と、感づいたようだ。そうしてこの棒を反対に指すと、止まってしまった。「ああ、これは大事な宝物だなあ。」と隠した。そうしてもう一人の青年が「お前の棒は、こうして願いが叶えられる棒であるということは分かっているんだが、この私の扇は、こんな破れた扇、これが宝だということは珍しいことだ。しかし暑いんだから、少しは扇いでみよう。」と。自分の顔を扇いだようだ。破れた扇で顔を扇ぐと、鼻がなくなってしまった。その青年の鼻がなくなってしまった。そうしたら一人の青年が、「もう大変なことだ。お前の鼻がなくなっているよ。」と。「鼻がなくなるということがあるか。」と、さわってみると(鼻はなくなっているんだから)すべすべしていた。「これは珍しい事だ。お前の棒が技をしたように、私の物も技をした。もう今度は反対に扇いでみようね。」と、反対に扇いでみると、また鼻が出てきたようだ。もうこれは大事な宝物だと。そうしてから(この二人は)家に帰った。こういうふうにして、二人は大きな望みを持っているんだからね。またそのようにして二人は生まれていて、それにつり合うくらいに生まれているんだから、(この二人は)首里に行ったようだ。そうして、一人はもう願いも叶わって、松山御殿の下男として、そこに使われたようだ。松山御殿の入り婿になりたいと思っている青年は、やっぱり思いが叶わって、そこに下男奉公として入った。また一人の青年は、この泊美人というのは、すでに同じ泊のあの殿内の侍の長男の妻であったというからね。またその青年も、思い通りに事が運び、下男としてそこに働くようになった。二人の青年は、そういうふうにしてもう糸口は開けたようだね。もう各々の思う所に。そうこうしているうちに、この棒を持っている青年は、松山御殿で働いている青年ね。この青年はどうすれば自分の望みが叶わるだろうと、毎日夜々このことを考えているんだが、どうしても簡単に考えることはできなかった。相手は松山御殿の一人娘であるし、自分はもう使用人だし、だがこれももう一つの運命とでもいうのか、もう運命づけられているんだから、その下男はどうしてもあさってという日には、どうにか技をして、ぜひとも早く思いを遂げないといけないと(考えていた)。考え考えしているうちに、あさっては他から入り婿をとって結婚式という日となっていたようだ。ああ!もうこれは日はあさってとなっているし、私はこの道具は持っているのに、この棒は持っているというのに、少しもこの棒を必要とする機会に恵まれない。これはいったいどうすればいいんだろうと考えて、もう自分の真心がとがめはするんだが、これはただこのままにしてはいけない。知恵を出さないといけないと。そうこうして考えているうちに、その家では結婚式ということで大変な騒ぎであった。一人娘であったので、乳母が便所までもずっと追う程にかわいがっていた。それ程の身分のある人であった。もうどこまでも(乳母が)追って歩くので、この棒でさえも望みをとげることができなかったそうだ。もうこの青年は、みっともなくて心がとがめはするが、この娘が小便をする便所の下に隠れていて、どうにかしないといけないと考えた。そうして悪いとは思いながら、便所に隠れていた。夜中そこに隠れていて、その人が用を足しにきた時に、この棒で指したようだ。便所で指したら、その人の尻の穴がもう叫びまくってしまったので、御殿殿内は大変な大騒動となってしまった。もう人間の尻が、股ぐらが、「サティ、サティー。」と叫んでしまったんだから、大変なことであった。そうして、そこの御殿殿内はもう大騒動であった。「もう私の娘は、大変かわいがって育ててきた一人娘だが、私達のこんな大きな御先祖の前に恥をさらしてしまって、世間に申し訳がたたない。もう大切な子供ではあるんだが、これは切って捨てるよりほかならない。」と、父親は思っていたようだ。しかし乳母は、「このようにして幼少の頃から私が育てたウミングヮを、貴方の刀にかけるということは、もう私も生きている価値もない程に苦しいことです。このようなことはただ事ではない、確かに神事だと思います。股ぐらがこんなに叫び続けるということはただ事ではありませんので、まず待って下さい。」と、(父親を)なだめた。そうしているうちにも、この下男は(この話を)聞いていたんだからね。いつも隠れて様子をうかがっていたそうだ。それで「サリーサリー。」と出て行って、ここの主人に願い出たようだ。「本当のところ、貴方たちのこの殿内に、いつか大きい災難がふりかかるから、貴方の一人娘が大変大きな災難に出会うからね。この場合に、お前はこの殿内に行って、そこの一人娘を助けてあげなさいということで、私は神からの使いとして、私は貴方たちにこのようにして下男奉公としてあがっているわけですが。本当のところ見かけは百姓姿、百姓に見えるはずですが、ただの人ではない。生まれながらに天からの授け、貴方たちの一人娘を助けてきなさいと、私は神からの使いとしてもう私は貴方たちに、このようにして下男としてあがっているわけですから。」「お前みたいな者が(自分達の)この話にくちばしを入れるのか。お前も切り捨ててやろう。」としているところを、これも乳母がなだめて。「この人の言うことが、この下男の言うことが本当であるんであれば、本当であるんであればこの下男にまかせてもよい。まずは刀をかけるのは待って下さい。」と。願ったので、もう本音としては、自分の子供はかわいいので、「それではまず待ってみることにしよう。」と、主人は待った。そうしてこの三良が、「これはもう別事ではありません。人に見せてもいけないし、親にも見せてはいけないところなので、私達下男が見るということは、ただ事ではありません。ですから乳母は一緒に来てよいですので、クチャまで(娘の)お供をしましょう。」と、ついて行った。(そこへ行ったら)もうそこを開けないといけないんだから。そうして自分はブイを隠して持っているんだからね。そうしたら止まって、まあ止まるのはあたりまえだから、そうして止まってね。そういうふうにしてもうこれは、こんなに大きな騒動になったんだからね。相手の入り婿となっている人も、もうそこからは戻されているんだから。こんな迷惑なことはない。もう縁談は破談ということで、戻されているんだからね。そうして乳母が仲をもって、「この下男はただの人ではない。ここの後継ぎをするために生まれてきているはずだからね。このようにして生まれてきて、こんな難しい病気も治してあげたから。この下男を入り婿として、ここの家庭を守るようにしてくれ。」と、乳母からも願った。また役人達も「それでよい。」と、願いが叶わったそうだ。一生かわいがられて、そこの入り婿となって栄えたという話。願いの精霊という話である。またもう一つ残っている。もう一人の青年はどうなったかというとね。この青年も願いが叶って、泊美人が嫁いで行っている家に、下男として奉公していたようだ。この青年も心の中では、「私の願い、私の願い。」と大変あせっていたようである。しかしそう簡単にはチャンスは訪ずれなかった。そうこうしているうちに、この美人の夫は、公事から唐旅の命令が出た。その唐旅は今の留学と同じようなもので、三年三ヵ月の期間であった。そうこうしてこの人は唐に渡った。それで家に残っているのは、扇を持っている下男と、他に女中等がいた。もうそういうふうにして今日も暮らして、明日も暮らして、そうしているうちにこの泊美人という人はもうただ美しいだけであって、本当の中味はもう自分の貞操を守れるような女ではなかったようだ。そして、この下男の三良が、いつも色目づかいをしていたからね。この女も本当は男を欲しがっているんだが、侍の妻としてそう簡単には夜出歩くことはできなかった。そうしているうちに、二人で話をするチャンスがやってきた。この下男と美人がね。この美人の言い分は、「おい下男、お前はかわいそうな生まれだね。もう男ざかりだというのに、仲のよい女というのもいないし、妻も見つけることができない。お前は男に生まれながら男ではないよ。」と。このようにして遠くから感づかさせるように、この女が色気を出して話をしたようだ。だからこの下男もまた、自分の願いが叶えられそうな時期が巡ってきたなと。よし!私も意地を出してやろうと、「アヤーメー、実際には貴方がおっしゃるように、私はかわいそうな者ではないよ。私も男だよ。貴方がそうおっしゃるのなら、私が貴方たちの家庭にそういうふうに来ているのは、貴方の夫がいつか唐旅に出かけた時に、貴方を寂しがらせてはいけないから、お前はあの御殿に行って、あそこでアヤーメーを慰めなさいと、私は天からの使いですよ。私は実はただの人ではありません。貴方が私をただの人間だと思うんでしたら、私も貴方に証拠をおめにかけてもよろしいのですが。」と言ったからね。「どうしてお前はそういうふうに言うか。お前が言うのはどういう意味か。」と言ったからね。「本当はもう、私は女になろうと思えばなれるし、また男にもなろうと思えばなれますよ。」と。そうして「ああそうか、それじゃあそれを見せてくれないか。」と。もうその人は、アヤーメーは大変色気があるというんだからね。そうして、「それならどうぞ歩いて下さい。」と言って、裏座に行って、この扇で自分の股ぐらを扇いだらね。ここがなくなってよ、もう男の道具がなくなって。それで、「はいごらんになって下さい。このようなものですよ。私は実はただの人ではない。天からの使いですよ。」それでこのアヤーメーはびっくりして、「じゃあ、お前はもう男として親からの譲りの(男の道具)がないとなると、お前はしょうがないよ、お前が私の寂しさを治すといってもどうして治すか。」と言ったからね。「そうではないですよ、それじゃあもうまた元の姿になりましょうね。」と。反対に扇いだらそれが出て、そうこうしているうちに、この女ももうもちろん貞操を守りきれる女ではないんだからね。二人隠れて一緒になったようだ。そうこうして三年も暮らした。いわば三年三ヵ月の日になったからね。夫はもうめでたく唐から留学も終えて、家に帰ってきた。そうして自分の妻と下男と一緒だということが分かって、この下男は三年三ヵ月の日には切られたようだ。妻と一緒に。そうして切られたからね。この時から願うんであれば大きく願いなさいと。また何かの拍子にいやな言葉を使うとその通りになるということがあるから、世間のよい戒めとなったという話である。言った通りになって切られたそうだよ。
全体の記録時間数 22:57
物語の時間数 22:57
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

トップに戻る

TOP