首里山川に、七才になる子供、有名な松川童(まちがわわらび)という子供がいて、モーイ親方よりも頭が秀れていたという物語を聞いたことがないですか。あれはね、七才になる子供がね、首里山川に有名な子供がいたそうだ。有名な子供がいたそうだが、首里山川に夫婦とその子供といっしょに住んでいた。ところで、(その家は)勝連親方からいくらのお金を借りていたのか、それは分からないが、お金の請求に来るたびに、お父さんもいない、お母さんもいない、その子供一人いたようだ。「お父さんは何処にか。」と、「来るたびに、おまえのお父さんもお母さんもいない。お父さんは何処にか。」と聞いた。「お父さんは冬青草、夏枯れ取りに。」「お母さんは?」と聞くと、「ユンヌミー取りに。」と言ったそうだ。「そういうのは何か、冬青草に夏枯りとは何か。ユンヌミーとは何か。」と聞き返したそうだ。「えっ親方としてそのぐらいも分からないのですか。」「分からないね。」と言った。すると、「私達に貸してあるお金を見逃してくれるのなら教えましょう。」と子供が言うと、「そうか、私も勉強だから、金はいいから教えてくれ。」と言った。「冬青草に夏枯れということはね、稲刈りに、ユンヌミーというのは、トボシだよ。火を灯して夜の明かりにするものだよ。」「あゝそうですか。冬青草に夏枯れというのは稲、ユンヌミーというのはトンボなのか。」と、お金のことは見逃して取らなくてもいいということになった。しかし、勝連親方はこの子供にそうされてはたまらないと、鳥を持ってきて、「おまえから見て、この鳥は生きるか、死ぬか。」と見せたようだ。すると、(子供は)自分の片足は外に出し、片方は内に入れて、「貴方は、それでは私は内に入ると思うか、出ると思うか。」と聞いた。(鳥のことは)生きていると言えば殺して、死んでいるといえば生かすと、勝連親方の都合のいいように(するつもりであった。)その子供の頭には勝てず、外に出ると言えば、内に入り、内に入ると言えば外にというふうに、その子の知恵には及ばなかったそうだ。勝連親方は怒って帰る時、城に行く途中で、男の親が田を耕している所へ来て、「おい!おまえは鍬を何回、鍬を何回振ったか覚えておけよ。それに答えきれなければ打首の罪だぞ。」と言った。そこへ、子供が「昼飯だよ、お父さん、昼飯だよ。」と呼んだようだ。「ありゃー、おまえがそう言ったので忘れてしまった。」と男の親は、残念がったようだ。(子供は)「大丈夫、私が答えてあげるさ。」と言った。勝連親方はそこへ来て、「何回振ったか。」と聞くと、(子供が)「貴方の馬の足は何歩歩いたか。」と聞き返した。「何回振ったか。」と聞けば「何歩歩いたか。」と聞き返す頭、子供は頭が秀れていたのでしょう。その子供は生かしてはならない。百姓を生かしてはならないと、その子供ひとりをそこにサカグラ打ってアジャンナトゥアシビしたのは、その子供だそうだ。サカグラを打って後向きにしアジャンナトゥアシビというのはその子供一人だったそうだ。ふつうはいい年頃になっておれば島流しになるが、七才しかならないので殺されたという物語はそれである。
| レコード番号 | 47O372451 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C107 |
| 決定題名 | 松川童子(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | 松川童子 |
| 話者名 | 比嘉徳太郎 |
| 話者名かな | ひがとくたろう |
| 生年月日 | 18920102 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村高志保 |
| 記録日 | 19770814 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第11班 |
| 元テープ番号 | 読谷村高志保T05B04 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 伝説 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集8高志保の民話 P94 |
| キーワード | 首里山川,七才になる子供,有名な松川童,モーイ親方,お金の請求,お父さんは冬青草、夏枯れ取りに,ユンヌミー取りに,勝連親方 |
| 梗概(こうがい) | 首里山川に、七才になる子供、有名な松川童(まちがわわらび)という子供がいて、モーイ親方よりも頭が秀れていたという物語を聞いたことがないですか。あれはね、七才になる子供がね、首里山川に有名な子供がいたそうだ。有名な子供がいたそうだが、首里山川に夫婦とその子供といっしょに住んでいた。ところで、(その家は)勝連親方からいくらのお金を借りていたのか、それは分からないが、お金の請求に来るたびに、お父さんもいない、お母さんもいない、その子供一人いたようだ。「お父さんは何処にか。」と、「来るたびに、おまえのお父さんもお母さんもいない。お父さんは何処にか。」と聞いた。「お父さんは冬青草、夏枯れ取りに。」「お母さんは?」と聞くと、「ユンヌミー取りに。」と言ったそうだ。「そういうのは何か、冬青草に夏枯りとは何か。ユンヌミーとは何か。」と聞き返したそうだ。「えっ親方としてそのぐらいも分からないのですか。」「分からないね。」と言った。すると、「私達に貸してあるお金を見逃してくれるのなら教えましょう。」と子供が言うと、「そうか、私も勉強だから、金はいいから教えてくれ。」と言った。「冬青草に夏枯れということはね、稲刈りに、ユンヌミーというのは、トボシだよ。火を灯して夜の明かりにするものだよ。」「あゝそうですか。冬青草に夏枯れというのは稲、ユンヌミーというのはトンボなのか。」と、お金のことは見逃して取らなくてもいいということになった。しかし、勝連親方はこの子供にそうされてはたまらないと、鳥を持ってきて、「おまえから見て、この鳥は生きるか、死ぬか。」と見せたようだ。すると、(子供は)自分の片足は外に出し、片方は内に入れて、「貴方は、それでは私は内に入ると思うか、出ると思うか。」と聞いた。(鳥のことは)生きていると言えば殺して、死んでいるといえば生かすと、勝連親方の都合のいいように(するつもりであった。)その子供の頭には勝てず、外に出ると言えば、内に入り、内に入ると言えば外にというふうに、その子の知恵には及ばなかったそうだ。勝連親方は怒って帰る時、城に行く途中で、男の親が田を耕している所へ来て、「おい!おまえは鍬を何回、鍬を何回振ったか覚えておけよ。それに答えきれなければ打首の罪だぞ。」と言った。そこへ、子供が「昼飯だよ、お父さん、昼飯だよ。」と呼んだようだ。「ありゃー、おまえがそう言ったので忘れてしまった。」と男の親は、残念がったようだ。(子供は)「大丈夫、私が答えてあげるさ。」と言った。勝連親方はそこへ来て、「何回振ったか。」と聞くと、(子供が)「貴方の馬の足は何歩歩いたか。」と聞き返した。「何回振ったか。」と聞けば「何歩歩いたか。」と聞き返す頭、子供は頭が秀れていたのでしょう。その子供は生かしてはならない。百姓を生かしてはならないと、その子供ひとりをそこにサカグラ打ってアジャンナトゥアシビしたのは、その子供だそうだ。サカグラを打って後向きにしアジャンナトゥアシビというのはその子供一人だったそうだ。ふつうはいい年頃になっておれば島流しになるが、七才しかならないので殺されたという物語はそれである。 |
| 全体の記録時間数 | 4:29 |
| 物語の時間数 | 4:29 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |