あの方はですね、つまり頭は非常に利(き)れているんだけど、バカなまねしてですな、そしてあの人の名前は本当はモーシーですよ。モーシーという名前だけど、髪もボーボーしているから、うりからモーヤーといって伊野波(のは)のモーヤーという名前つけられたわけですよ。あの人は、つまり先生が教(うせー)るものですね、教(うせー)るものは、明日は何が教(うせー)られるということはもう頭に入っていたらしいですね。家では、鶏と非常になぐさんでですね。そしたらお父さんがですね、「鶏ばかりたくさん飼ってからに汚ない、汚ない。」と言うて、お父さんが怒ったら、あの人が言うには、「お父さんが毎朝食べている卵は、この汚ないのが生んでおりますよ。」って、こう言うたらしい。そうしたら、「それはアヤーが食べさせているから、私は食べているんだから。」って言うたらしいですね。
それから、毎日う母さんがウートートゥ、ウートートゥって、「人間になして下さい。」って神様にうがんでですよ。そういうところへわざわざう母さんの前に行ってからに、「アヤーさい、アヤーさい。」と呼んだらしいですよ。「やがましいなこの子は。」と言うたもんだから、「お母さんが私は子供だけど、子供がお母さん、お母さんと呼んだら、あんたはやがましいというのに、神様に毎日ウートートゥ、ウートートゥしてたら怒られますよ。」って返答したらしいですよ。頭は利(き)いておるもんだから、自分がつくっている頭を、ウートートゥしたって、それが治るかという意味ですな、つまりいえば。
煙草‥‥そしてお父さんがですね、「あんた煙草吸うのが多いから、煙草日に何回ていうて吸いなさい。」と言うたら、わざわざキセルですね、今は巻煙草だけど、昔はきざみですよ。きざみ煙草だけど、キセルをわざわざ大きく作ってきて、一日吹くぐらいの煙草を一ぺんに入れてから吸って、一回ずつ吸いなさいと言うたから。そしたらもう煙はぶーない、煙草の煙ったらすごいでしょう。伊野波(のは)殿内(どぅんち)は火事だといって集まった場合もあったらしい。したら、「火事じゃない、煙草の煙だよ。」言うてから帰ってきたと言うんですよ。
昔は、今いったらいわば政府に務めているのと同じでしょうな。お父さんなんかは務(ちとぅ)みに出る役あたっているから、それぞれの同(ゆ)ぬ務(ちとぅ)みやっている人どうしですね、碁やってからにですね。碁は賭けてからやるって、「私が負けた場合は何をあげる。」って。「あんたが負けた場合はあんたの娘を私にくれるか。」って言うふうに約束をしてやったでしょう。やったもんだから、負けたらしいですな向こうは。そうしたもんだから約束どおり、「あんたの娘は私(うち)の長男の嫁にさせてくれ。」と言うて、「仕方ないからいい。」と言うて返事したわけでしょう。それでお父さんが、「どこどこの娘は、あんたに縁ぐみしてあるんだけど、そんなにバカになったらダメよ。」という事言うたら、「そうですか。私まだ見たこともないのに。」言うて。今度は、鶏を持って行ってですね、向こうの屋敷にわざわざ入れて、そうして「鶏を逃がした。」言うて、「取られん。」言うて。〈昔の上の人は、門づくいで、誰も勝手に入っていかんだったですよ。〉そしたら、そこへ入ってからに、「鶏を逃がした。」と言って泣いたらしいんだな。そうしたら、その縁ぐみしてある女も出てきて見たんでしょう。そしたらもう、鶏も取ってから、「見た、見た。」と言って、家に帰ったらしいんですな。そしたもんだから、又向こうから、今度は文句を言われて、「あんたのところのモーイは、家(うち)の屋敷にも黙って入っておるから、もう縁ぐみはさせない。」言うて断ったらしいですな。そしたら今度は又、親に怒られたわげさ。「あんた、どうして向こうの屋敷に入ったか。」言うて。「私が入ったんじゃない。鶏が逃げたもんだから、鶏取りに入ったんであって私は勝手に入っておりません。」って言うて、親に返答したわけだろう。そしたら、今度は、「もう縁ぐみはさせない。」って言うたもんだから、あそこのお父さんが務(ちとぅ)み、仕事に行く時に、門の上に上がっておいて、髪を引っ掛けてですね、モーイが、そしたら、「掛けてあるカケジーははずしてくれ。」言うて、はずしたと言うわけですな。
昔は、鹿児島から沖縄に、「沖縄には、どんな偉い人がおるかなー。」と言うて、それを何(なに)するために、「何を持って来なさい、彼を持って来なさい。」言うて、向こうに、まあ今いえば出張ですな、向こうから御用(ぐゆー)されてからにそして、今度は、雄鶏の卵と、灰縄(あくじな)、灰縄(あくじな)というたら、かまの灰の縄という意味ですよ。そしたもんだから、務(ちとぅ)みに出ている人は集まって、どうしたらそれを注文されているのに、雄鶏が卵生むわけないでしょう。いつも集まってばかりいたもんだから、モーイという人が自分の親(うや)に聞いたわけさ。「お父さん、毎日心配顔で集まってばかりいるんだけど、どうしたか。」言うたら、「お前に言うたって何もなるか。」ってから、「あんたが私の子供だのに、親(うや)が心配事(しわぐとぅ)あったら、子供に言うのあたり前でしょう。」て言うたら、そしたらやっぱり正直(そーじき)に言うたわけでしょう。こうこうだって。「雄鶏の卵と灰縄(あくじな)を向こうから持ってきなさいと言われている。」って。今度は、「お父さん、だから、私をやって下さい。」って、「お父さんの代わりに私をやって下さい。」って。「私が行って返答しますから。」って言うんで、じゃあ、まあ仕方ないから言うて、バカではあるんだけど、やってみようと思ってやったわけですよ。そしたら、向こうに行って、「今度は、お父さんの代わりに私が来ました。」言うたら、「どうしてお父さんは?」言うたら、「お父さんは、船に乗る時に、う産もよおして、う産もよおししてから来られんで、お父さんの代わりに私が来ました。」言うたら、「男がも、う産もよおすってあるか。」言うて向こうから言ったらしいですな。そうしたら、モーシーという人は、「何で男にはう産もよおしってないのに、雄鶏の卵は注文しますか。」って。「そんならあく縄(じな)は持って来たか。」言うたら、「あく縄(じな)は、沖縄からここまで持って来るまでには、バラバラになるからと思って、ここであく縄(じな)は何(なに)するつもりで持って来てあります」言うて、縄を火につけてすぐそのまま焼いたら、ちょうど縄になった形であるんですよ。それをそえて、「これは灰縄(あくじな)であります。」と言うて、話したらしいです。何(なん)ですな、やっぱりモーイという人は、偉いんだけどバカなまねしていたわけ。それからもう御用(ぐゆー)も済ませて、沖縄(うちなー)に帰って来てから親(うや)と同じような、階級は同(おんな)じで、務(ちとぅ)みに出たっていうわけですよ。
| レコード番号 | 47O372193 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C095 |
| 決定題名 | モーイ親方(共通語) |
| 話者がつけた題名 | モーイ親方 |
| 話者名 | 福地祭考 |
| 話者名かな | ふくじさいこう |
| 生年月日 | 18960925 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村渡慶次 |
| 記録日 | 19840327 |
| 記録者の所属組織 | 読谷ゆうがおの会 |
| 元テープ番号 | 読谷村渡慶次T08A07 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 笑話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集7渡慶次の民話 P125 |
| キーワード | バカなまね,モーシー,髪もボーボー,伊野波のモーヤー,鶏,ウートートゥ,神様,煙草,火事,碁,縁ぐみ,カケジー,鹿児島,御用,雄鶏の卵,灰縄,御産催, |
| 梗概(こうがい) | あの方はですね、つまり頭は非常に利(き)れているんだけど、バカなまねしてですな、そしてあの人の名前は本当はモーシーですよ。モーシーという名前だけど、髪もボーボーしているから、うりからモーヤーといって伊野波(のは)のモーヤーという名前つけられたわけですよ。あの人は、つまり先生が教(うせー)るものですね、教(うせー)るものは、明日は何が教(うせー)られるということはもう頭に入っていたらしいですね。家では、鶏と非常になぐさんでですね。そしたらお父さんがですね、「鶏ばかりたくさん飼ってからに汚ない、汚ない。」と言うて、お父さんが怒ったら、あの人が言うには、「お父さんが毎朝食べている卵は、この汚ないのが生んでおりますよ。」って、こう言うたらしい。そうしたら、「それはアヤーが食べさせているから、私は食べているんだから。」って言うたらしいですね。 それから、毎日う母さんがウートートゥ、ウートートゥって、「人間になして下さい。」って神様にうがんでですよ。そういうところへわざわざう母さんの前に行ってからに、「アヤーさい、アヤーさい。」と呼んだらしいですよ。「やがましいなこの子は。」と言うたもんだから、「お母さんが私は子供だけど、子供がお母さん、お母さんと呼んだら、あんたはやがましいというのに、神様に毎日ウートートゥ、ウートートゥしてたら怒られますよ。」って返答したらしいですよ。頭は利(き)いておるもんだから、自分がつくっている頭を、ウートートゥしたって、それが治るかという意味ですな、つまりいえば。 煙草‥‥そしてお父さんがですね、「あんた煙草吸うのが多いから、煙草日に何回ていうて吸いなさい。」と言うたら、わざわざキセルですね、今は巻煙草だけど、昔はきざみですよ。きざみ煙草だけど、キセルをわざわざ大きく作ってきて、一日吹くぐらいの煙草を一ぺんに入れてから吸って、一回ずつ吸いなさいと言うたから。そしたらもう煙はぶーない、煙草の煙ったらすごいでしょう。伊野波(のは)殿内(どぅんち)は火事だといって集まった場合もあったらしい。したら、「火事じゃない、煙草の煙だよ。」言うてから帰ってきたと言うんですよ。 昔は、今いったらいわば政府に務めているのと同じでしょうな。お父さんなんかは務(ちとぅ)みに出る役あたっているから、それぞれの同(ゆ)ぬ務(ちとぅ)みやっている人どうしですね、碁やってからにですね。碁は賭けてからやるって、「私が負けた場合は何をあげる。」って。「あんたが負けた場合はあんたの娘を私にくれるか。」って言うふうに約束をしてやったでしょう。やったもんだから、負けたらしいですな向こうは。そうしたもんだから約束どおり、「あんたの娘は私(うち)の長男の嫁にさせてくれ。」と言うて、「仕方ないからいい。」と言うて返事したわけでしょう。それでお父さんが、「どこどこの娘は、あんたに縁ぐみしてあるんだけど、そんなにバカになったらダメよ。」という事言うたら、「そうですか。私まだ見たこともないのに。」言うて。今度は、鶏を持って行ってですね、向こうの屋敷にわざわざ入れて、そうして「鶏を逃がした。」言うて、「取られん。」言うて。〈昔の上の人は、門づくいで、誰も勝手に入っていかんだったですよ。〉そしたら、そこへ入ってからに、「鶏を逃がした。」と言って泣いたらしいんだな。そうしたら、その縁ぐみしてある女も出てきて見たんでしょう。そしたらもう、鶏も取ってから、「見た、見た。」と言って、家に帰ったらしいんですな。そしたもんだから、又向こうから、今度は文句を言われて、「あんたのところのモーイは、家(うち)の屋敷にも黙って入っておるから、もう縁ぐみはさせない。」言うて断ったらしいですな。そしたら今度は又、親に怒られたわげさ。「あんた、どうして向こうの屋敷に入ったか。」言うて。「私が入ったんじゃない。鶏が逃げたもんだから、鶏取りに入ったんであって私は勝手に入っておりません。」って言うて、親に返答したわけだろう。そしたら、今度は、「もう縁ぐみはさせない。」って言うたもんだから、あそこのお父さんが務(ちとぅ)み、仕事に行く時に、門の上に上がっておいて、髪を引っ掛けてですね、モーイが、そしたら、「掛けてあるカケジーははずしてくれ。」言うて、はずしたと言うわけですな。 昔は、鹿児島から沖縄に、「沖縄には、どんな偉い人がおるかなー。」と言うて、それを何(なに)するために、「何を持って来なさい、彼を持って来なさい。」言うて、向こうに、まあ今いえば出張ですな、向こうから御用(ぐゆー)されてからにそして、今度は、雄鶏の卵と、灰縄(あくじな)、灰縄(あくじな)というたら、かまの灰の縄という意味ですよ。そしたもんだから、務(ちとぅ)みに出ている人は集まって、どうしたらそれを注文されているのに、雄鶏が卵生むわけないでしょう。いつも集まってばかりいたもんだから、モーイという人が自分の親(うや)に聞いたわけさ。「お父さん、毎日心配顔で集まってばかりいるんだけど、どうしたか。」言うたら、「お前に言うたって何もなるか。」ってから、「あんたが私の子供だのに、親(うや)が心配事(しわぐとぅ)あったら、子供に言うのあたり前でしょう。」て言うたら、そしたらやっぱり正直(そーじき)に言うたわけでしょう。こうこうだって。「雄鶏の卵と灰縄(あくじな)を向こうから持ってきなさいと言われている。」って。今度は、「お父さん、だから、私をやって下さい。」って、「お父さんの代わりに私をやって下さい。」って。「私が行って返答しますから。」って言うんで、じゃあ、まあ仕方ないから言うて、バカではあるんだけど、やってみようと思ってやったわけですよ。そしたら、向こうに行って、「今度は、お父さんの代わりに私が来ました。」言うたら、「どうしてお父さんは?」言うたら、「お父さんは、船に乗る時に、う産もよおして、う産もよおししてから来られんで、お父さんの代わりに私が来ました。」言うたら、「男がも、う産もよおすってあるか。」言うて向こうから言ったらしいですな。そうしたら、モーシーという人は、「何で男にはう産もよおしってないのに、雄鶏の卵は注文しますか。」って。「そんならあく縄(じな)は持って来たか。」言うたら、「あく縄(じな)は、沖縄からここまで持って来るまでには、バラバラになるからと思って、ここであく縄(じな)は何(なに)するつもりで持って来てあります」言うて、縄を火につけてすぐそのまま焼いたら、ちょうど縄になった形であるんですよ。それをそえて、「これは灰縄(あくじな)であります。」と言うて、話したらしいです。何(なん)ですな、やっぱりモーイという人は、偉いんだけどバカなまねしていたわけ。それからもう御用(ぐゆー)も済ませて、沖縄(うちなー)に帰って来てから親(うや)と同じような、階級は同(おんな)じで、務(ちとぅ)みに出たっていうわけですよ。 |
| 全体の記録時間数 | 9:51 |
| 物語の時間数 | 9:51 |
| 言語識別 | 共通語 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |