後生人の借金問答(方言)

概要

これは、万歴年間(一五七三~一六一九)首里にあった話である。越来親方という、生花に趣味を持って居る方がいた。この人が、ある日、生花の材料は無いかと、あちこち良い花を求めて歩いていた。あの牧港橋と言ってあったね。牧港メガネ橋が、あったでしょう。そこの近くで突然にわか雨が降ったらしい。そして、太陽は沈んで、薄暗くなっているし、それが、急に雨が降ったので墓の眉の下でその雨をしのごうとした。〈風向きによっては、その墓にひっついていると雨に濡れないですむでしょう。〉その人は、雨が上がるのを待って、墓の肩の下に隠れているのだが、墓の門から、「サリーサリー」と言いながら入って来る人がいた。〈ごめん下さいという挨拶と同じことだがね。〉また墓の内では、「誰ですか。」と言って、返事するものがいた。「不思議なことだ。そこには人もいないが、ひとりは、『サリー』と言うし、一人は、『誰ですか』と、いうみたいだが、どうなっているのかなあ。」と、耳をすませていた。それから、話が始まって、「私だがね、生きている時、あなたに貸したお金、私は、今は金に困っているので、今日返してくれないか。」と言った。生きている時に、貸し借りをした二人とも、死んでいたのでね。「とても、心には思っているのですが、貴方の恩義のあるお金ですが、私も今は、お金が無くて、今日貴方に返すのも持っていません。どうか明日までは、待って下さい。」「貴方は、来るたびに、そう言ってどうするつもりか。」「明日は私の年忌になっているので、子供達が、ウチカビを準備して、供えに来るはずですから、そのお金で必ず、間違いなくお返しします。ですから明日までは待って下さい。」と、そのように話を交わしていた。この越来親方は、「珍しいことだなあ。」と、大変不思議に思って、そっと聞いていた。「それじゃあ、明日は間違いないね。」と念をおすと、「間違いないです。」と言って、それで、話はぷっつりきれてもう何の話もなかったそうだ。そんなことで、越来親方は、きみ悪くなって、「これは、珍しい事だ。早く家に帰らねば。」と、思っているが、「あまり不思議なことだから、そこら辺の家に行って、その墓の主を探してみよう。」と、思いついた。そして、牧港部落中歩いたが、その墓は、牧港部落の人のものではなく、仲間部落の人のものであった。たぶん仲間部落という屋取り部落があったのだろう。昔、仲間村の西原という屋号を持つ人の墓だったそうだ。そして、そこを探して行って、「近頃あなたの家族に亡くなった方がいますか。」と尋ねると、長男が、「はい、私のお父さんです。」「それで、どのくらい経っているか。」「明日は、一年忌に当たります。」と言ったので、これは本当のことだと(越来親方は)思った。そして、これまでの成り行きを話した。「私は雨がやむまでと、あなた達の墓の庭に入って、墓の眉に隠れるつもりであったが、そこでは、大変な問答があったよ」「それは本当です。間違いないです。私達のお父さんは、借金も返せなくて、心配しながら亡くなったんです。」「『大変恩義のあるお金だがなあ。』と、それを心残りにして亡くなりました。」「そしたら、そんな話があったなら、あなたはウチカビをたくさん打ち、余分に持って行って、立派に法事をしてあげないといけないね。また、『借金も返して下さい。お父さん』と言いなさい。」「もうたくさんの子どもを育てるために今は法事をするお金もありません。」と言った。すると、越来親方は、気の毒に思って、お金を下さって、「米を買い餅を作って、法事をしなさい。」と帰って行かれた。そして、お陰様でと言って、翌日、一年忌をやったようだ。そして、「越来親方が(墓で問答を)聞いたためにできたことです。その方がお金も下さったんですよ。」と、お父さんに手を合わせ、「借金も払って下さいね。」とお祈りした。その夜は、死んだお父さんが、夢に現われ、「借金も払い終ったので、お前は越来親方の所に行ってお礼をしなさい。お礼をしないと、失礼になるよ。」と言われた。そして、首里まで行って、お礼を述べたという話である。

再生時間:8:02

民話詳細DATA

レコード番号 47O371816
CD番号 47O37C079
決定題名 後生人の借金問答(方言)
話者がつけた題名 後生での借金問答
話者名 新城平永
話者名かな あらしろへいえい
生年月日 19210305
性別
出身地 沖縄県読谷村宇座
記録日 19830222
記録者の所属組織 読谷ゆうがおの会
元テープ番号 読谷村宇座T09A12
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集6宇座の民話 P86
キーワード 万歴年間,首里,越来親方,生花に趣味,牧港橋,牧港メガネ橋,突然にわか雨,墓の眉の下,貸し借り,ウチカビ,墓の主,仲間部落,仲間村の西原という屋号,一年忌,借金問答,法事
梗概(こうがい) これは、万歴年間(一五七三~一六一九)首里にあった話である。越来親方という、生花に趣味を持って居る方がいた。この人が、ある日、生花の材料は無いかと、あちこち良い花を求めて歩いていた。あの牧港橋と言ってあったね。牧港メガネ橋が、あったでしょう。そこの近くで突然にわか雨が降ったらしい。そして、太陽は沈んで、薄暗くなっているし、それが、急に雨が降ったので墓の眉の下でその雨をしのごうとした。〈風向きによっては、その墓にひっついていると雨に濡れないですむでしょう。〉その人は、雨が上がるのを待って、墓の肩の下に隠れているのだが、墓の門から、「サリーサリー」と言いながら入って来る人がいた。〈ごめん下さいという挨拶と同じことだがね。〉また墓の内では、「誰ですか。」と言って、返事するものがいた。「不思議なことだ。そこには人もいないが、ひとりは、『サリー』と言うし、一人は、『誰ですか』と、いうみたいだが、どうなっているのかなあ。」と、耳をすませていた。それから、話が始まって、「私だがね、生きている時、あなたに貸したお金、私は、今は金に困っているので、今日返してくれないか。」と言った。生きている時に、貸し借りをした二人とも、死んでいたのでね。「とても、心には思っているのですが、貴方の恩義のあるお金ですが、私も今は、お金が無くて、今日貴方に返すのも持っていません。どうか明日までは、待って下さい。」「貴方は、来るたびに、そう言ってどうするつもりか。」「明日は私の年忌になっているので、子供達が、ウチカビを準備して、供えに来るはずですから、そのお金で必ず、間違いなくお返しします。ですから明日までは待って下さい。」と、そのように話を交わしていた。この越来親方は、「珍しいことだなあ。」と、大変不思議に思って、そっと聞いていた。「それじゃあ、明日は間違いないね。」と念をおすと、「間違いないです。」と言って、それで、話はぷっつりきれてもう何の話もなかったそうだ。そんなことで、越来親方は、きみ悪くなって、「これは、珍しい事だ。早く家に帰らねば。」と、思っているが、「あまり不思議なことだから、そこら辺の家に行って、その墓の主を探してみよう。」と、思いついた。そして、牧港部落中歩いたが、その墓は、牧港部落の人のものではなく、仲間部落の人のものであった。たぶん仲間部落という屋取り部落があったのだろう。昔、仲間村の西原という屋号を持つ人の墓だったそうだ。そして、そこを探して行って、「近頃あなたの家族に亡くなった方がいますか。」と尋ねると、長男が、「はい、私のお父さんです。」「それで、どのくらい経っているか。」「明日は、一年忌に当たります。」と言ったので、これは本当のことだと(越来親方は)思った。そして、これまでの成り行きを話した。「私は雨がやむまでと、あなた達の墓の庭に入って、墓の眉に隠れるつもりであったが、そこでは、大変な問答があったよ」「それは本当です。間違いないです。私達のお父さんは、借金も返せなくて、心配しながら亡くなったんです。」「『大変恩義のあるお金だがなあ。』と、それを心残りにして亡くなりました。」「そしたら、そんな話があったなら、あなたはウチカビをたくさん打ち、余分に持って行って、立派に法事をしてあげないといけないね。また、『借金も返して下さい。お父さん』と言いなさい。」「もうたくさんの子どもを育てるために今は法事をするお金もありません。」と言った。すると、越来親方は、気の毒に思って、お金を下さって、「米を買い餅を作って、法事をしなさい。」と帰って行かれた。そして、お陰様でと言って、翌日、一年忌をやったようだ。そして、「越来親方が(墓で問答を)聞いたためにできたことです。その方がお金も下さったんですよ。」と、お父さんに手を合わせ、「借金も払って下さいね。」とお祈りした。その夜は、死んだお父さんが、夢に現われ、「借金も払い終ったので、お前は越来親方の所に行ってお礼をしなさい。お礼をしないと、失礼になるよ。」と言われた。そして、首里まで行って、お礼を述べたという話である。
全体の記録時間数 8:02
物語の時間数 8:02
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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