ある殿内に継子がいた。継親はその継子がいる限り自分の自由にできないと、いつも粗末にしていた。継親は、下男を使ってあることを企んだ。それは潮汲みに行かし、道中で、「その子の両手を断ち切ってくれ。」ということである。お金をあげ下男を賺(すか)し、その下男もお金をたくさん与えられたものだから、銭を貰った方がましだと考え実行することにした。そして夜中に継子の両手を断ち切った。継子はもう家へ帰れなくなり、足の向くまま歩いて行った。継子は、雨が降ったのである殿内の軒下に隠れていた。そこへ、その殿内のヤッチーメーが、務めから帰って来て、その女(継子)がそこの家の軒下に隠れているのを見た。そして家へ行き雨が降っているから、傘とクバ笠の二つを持たして「連れてくるように。」と使用人に言った。その家の使用人は自分は傘をさし、その女にはクバ笠をかぶせて連れて来た。それを見たヤッチーメーは怒って、「お前というやつは、あの人に傘をあげ、お前がクバ笠をかぶるんだよ。何故そんなことをするのか。」と言うと、「いやあの女は物乞いですよ。クバ笠で充分です。」と使用人は答えた。ヤッチーメーは、「一見すると侍の子のように思えるが、不思議なことだ。」と言い、何か考えこんだ。よくよく考えてみると、その女は、女の実親が生きておられたときに許嫁された人であった。そうして、ヤッチーメーは、その女を妻として迎えようと思っていた。しかし両親は、両手が切れているので反対した。それでもヤッチーメーが妻にすると言い張り、〈結婚した。〉そして女が妊娠してから、またその夫は務めに出たようだ。〈それから何だったのかな〉それから、その両親は、もう嫁の両手がなく不自由なのでいつも不愉快でしようがなかった。そうして、ここもまた、悪企みをした。それからその女は男の子を生んだ。男の子が生まれたと、ヤッチーメー、夫に知らせようと使いの者を行かすことにした。その使いの者は連絡しに行く道中で、一軒の家に泊まった。その泊まった家が継親の家、つまりその女の実家になっていたわけだ。そうとは知らずに泊まったようだ。そしてその使いの者、下男は、「私達の家は不思議なことだが、両手を切られた物乞い娘を我家のヤッチーメーが妻に迎え、男の子を生んでありますよ。」と話をした。それを聞いた継親は、継子のことだと察して、間違いないと思った。そして、「帰りもここに来なさい。」と言った。「ヤッチーメー、男の子が生まれましたよ。」と、その使いの者は連絡した。そして夫はたいそう喜び(手紙を持たした。)それから使いの者は、帰りもその継親の家に泊まった。継親は、(継子に)間違いないと、(夫が持たした手紙を書き替えた。)そして女は、家で夫からの連絡を待った。継親は、ヤッチーメーの手紙を、「お前がいると私は家に戻って来ない、このような手の切れた妻がいるのは、恥ずかしくて、もう私は家には戻らない。」と書き替えた。使いの者はその手紙を女に渡した。その手紙を読んだ妻は、もうその家にいることができず、子を抱いたまま家を出た。そして家を出るとき、哀しみ辛くて長い唄をして出て行った。そして恩納村瀬良垣の浜でその抱いていた子をどうにかして落としてしまった。「大変なことになった、どうしたらいいか誰か助けてくれる人はいないものか。」と嘆いているときに、すぐ太陽がカンカンと照り、〈これは昔の芝居だよ〉神様が助けるわけだ。その女に両手をさずけてくれた。そして、瀬良垣の浜を越えて行こうとしていた。その頃、夫のヤッチーメーは家へ帰って来ていた。戻ってきたので、「アヤグヮーメー(妻)は家から出てもうここにはいらっしゃらない。」と言ったら、ヤッチーメーの後を追った。その女は、マジルといってヤッチーメーも下男も後を追った。女が瀬良垣の浜を越えて行くとき、後追いして来た下男に会った。下男と、マジル(女)が出会い、「この両手は、私は瀬良垣の浜でこうして困っているとき、助ける人はいらっしゃらないかといったら、神様が手をさずけて下さり子どもも助かったよ。」と話しをした。そして下男は、「貴方の夫、マチカニーヌメーは、貴方がいらっしゃらないと貴方の行方を捜しに家を出ましたよ。」と言った。またそのマジルーは、夫のマチカニーヌメーが恩納岳に登り、恩納節を歌っているのを見ていた。私の夫だがなぁと思っていた。そしてマチカニーヌメーが恩納岳に登っていらっしゃると妻は見ていたが、いっしょにいた下男は分らなかった。そして、恩納岳に下男が登り、「アヤグヮーメーは、ここにいらっしゃるよう、手も二つありますよ。」と叫んだ。これで終わりだ。
| レコード番号 | 47O371804 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C078 |
| 決定題名 | 継子の出世(方言) |
| 話者がつけた題名 | 恩納松金 |
| 話者名 | 長浜ウト |
| 話者名かな | ながはまうと |
| 生年月日 | 19100525 |
| 性別 | 女 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村宇座 |
| 記録日 | 19830219 |
| 記録者の所属組織 | 読谷ゆうがおの会 |
| 元テープ番号 | 読谷村宇座T08B15 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 芝居 |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集6宇座の民話 P78 |
| キーワード | 殿内に継子,継親,下男,潮汲み,継子の両手を断ち切った,殿内のヤッチーメー,女は物乞い,許嫁,女が妊娠,男の子を生んだ,子を抱いたまま家を出た,恩納村瀬良垣の浜,神様が助けた,女に両手をさずけた,マジル,マチカニーヌメー |
| 梗概(こうがい) | ある殿内に継子がいた。継親はその継子がいる限り自分の自由にできないと、いつも粗末にしていた。継親は、下男を使ってあることを企んだ。それは潮汲みに行かし、道中で、「その子の両手を断ち切ってくれ。」ということである。お金をあげ下男を賺(すか)し、その下男もお金をたくさん与えられたものだから、銭を貰った方がましだと考え実行することにした。そして夜中に継子の両手を断ち切った。継子はもう家へ帰れなくなり、足の向くまま歩いて行った。継子は、雨が降ったのである殿内の軒下に隠れていた。そこへ、その殿内のヤッチーメーが、務めから帰って来て、その女(継子)がそこの家の軒下に隠れているのを見た。そして家へ行き雨が降っているから、傘とクバ笠の二つを持たして「連れてくるように。」と使用人に言った。その家の使用人は自分は傘をさし、その女にはクバ笠をかぶせて連れて来た。それを見たヤッチーメーは怒って、「お前というやつは、あの人に傘をあげ、お前がクバ笠をかぶるんだよ。何故そんなことをするのか。」と言うと、「いやあの女は物乞いですよ。クバ笠で充分です。」と使用人は答えた。ヤッチーメーは、「一見すると侍の子のように思えるが、不思議なことだ。」と言い、何か考えこんだ。よくよく考えてみると、その女は、女の実親が生きておられたときに許嫁された人であった。そうして、ヤッチーメーは、その女を妻として迎えようと思っていた。しかし両親は、両手が切れているので反対した。それでもヤッチーメーが妻にすると言い張り、〈結婚した。〉そして女が妊娠してから、またその夫は務めに出たようだ。〈それから何だったのかな〉それから、その両親は、もう嫁の両手がなく不自由なのでいつも不愉快でしようがなかった。そうして、ここもまた、悪企みをした。それからその女は男の子を生んだ。男の子が生まれたと、ヤッチーメー、夫に知らせようと使いの者を行かすことにした。その使いの者は連絡しに行く道中で、一軒の家に泊まった。その泊まった家が継親の家、つまりその女の実家になっていたわけだ。そうとは知らずに泊まったようだ。そしてその使いの者、下男は、「私達の家は不思議なことだが、両手を切られた物乞い娘を我家のヤッチーメーが妻に迎え、男の子を生んでありますよ。」と話をした。それを聞いた継親は、継子のことだと察して、間違いないと思った。そして、「帰りもここに来なさい。」と言った。「ヤッチーメー、男の子が生まれましたよ。」と、その使いの者は連絡した。そして夫はたいそう喜び(手紙を持たした。)それから使いの者は、帰りもその継親の家に泊まった。継親は、(継子に)間違いないと、(夫が持たした手紙を書き替えた。)そして女は、家で夫からの連絡を待った。継親は、ヤッチーメーの手紙を、「お前がいると私は家に戻って来ない、このような手の切れた妻がいるのは、恥ずかしくて、もう私は家には戻らない。」と書き替えた。使いの者はその手紙を女に渡した。その手紙を読んだ妻は、もうその家にいることができず、子を抱いたまま家を出た。そして家を出るとき、哀しみ辛くて長い唄をして出て行った。そして恩納村瀬良垣の浜でその抱いていた子をどうにかして落としてしまった。「大変なことになった、どうしたらいいか誰か助けてくれる人はいないものか。」と嘆いているときに、すぐ太陽がカンカンと照り、〈これは昔の芝居だよ〉神様が助けるわけだ。その女に両手をさずけてくれた。そして、瀬良垣の浜を越えて行こうとしていた。その頃、夫のヤッチーメーは家へ帰って来ていた。戻ってきたので、「アヤグヮーメー(妻)は家から出てもうここにはいらっしゃらない。」と言ったら、ヤッチーメーの後を追った。その女は、マジルといってヤッチーメーも下男も後を追った。女が瀬良垣の浜を越えて行くとき、後追いして来た下男に会った。下男と、マジル(女)が出会い、「この両手は、私は瀬良垣の浜でこうして困っているとき、助ける人はいらっしゃらないかといったら、神様が手をさずけて下さり子どもも助かったよ。」と話しをした。そして下男は、「貴方の夫、マチカニーヌメーは、貴方がいらっしゃらないと貴方の行方を捜しに家を出ましたよ。」と言った。またそのマジルーは、夫のマチカニーヌメーが恩納岳に登り、恩納節を歌っているのを見ていた。私の夫だがなぁと思っていた。そしてマチカニーヌメーが恩納岳に登っていらっしゃると妻は見ていたが、いっしょにいた下男は分らなかった。そして、恩納岳に下男が登り、「アヤグヮーメーは、ここにいらっしゃるよう、手も二つありますよ。」と叫んだ。これで終わりだ。 |
| 全体の記録時間数 | 8:16 |
| 物語の時間数 | 8:16 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | 〇 |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |