はぶにょうぼう
昔、ある若い男がいた。男は修業をつみに出かけて行った。ある寺に泊まっていると、そこへとても美人が、年頃の女がやってきて、その男の人の身のまわりの世話をしたり、食べ物を作ったりしてあげた。若い二人は、夫婦になり、女は妊娠した。月が満ちて、子供を出産する際に、女が夫に、「私が出産するときは、どうか見ないでくれ、お願いだから。」と言った。「わかった。」といい出産のときがきた。そして、障子をたて、〈昔は、障子のことをアカイといっていたよ。〉「絶対見ないでくれ。」と言った。「わかった。」と言ったが、「あれほどまでに見るな見るなということは、何だろうか。」と、その男は見たくなってしまった。見ないように言われると見たくなって、障子をちょっと破って穴をあけて見てみた。すると、女はハブになって、ハブの正体に変って、本当の姿になって出産していた。びっくりした男は、「あれー。」と叫んだ。すぐにそのハブは気がつき、「あんなに見るなと言ったのに、あれほど言ってもきかず見てしまったのね、私は正体を見られてしまったからには、夫婦としては暮らしていけない。男の子を生んだが、もうこの子はあなた一人で育ててくれ、私はもうここにいることはできないので。」と言った。「でも、この子を育てるには、これをしゃぶらせて育ててくれ。」とハブが片目をとって、子供にしゃぶらせた。その目をしゃぶって子供は成長していった。しかしその目はしゃぶっていくうちに小さくなってしまい、また落として失くしてしまった。もう子供は、わぁーわぁー泣いてしまった。片目になったハブはやって来て、「この子が大事だから、私は目がなくてもどうにかして食べ物を取って食べていけるから、この子にもう一方の目もまたとってあげるから、しゃぶらせてちょうだい。」と言い、目をとってあげた。そうして、ハブは、「でも、私は片目がある間は、どこへでも行けたが、もう盲(めくら)になってしまう。この子が大きく成長したら、あの寺の鐘をつかしてくれ何時だよという時報を教えてくれないか、そうすれば私はどこの山奥に行っていても、ああ我が子が成長して鐘をついているんだなあと、聞くから、これだけでとても楽しみだから、どうかそうしてくれ。」と言った。〈そこは寺だったんでしょうね〉「じゃあそうしよう。」とそれから寺の鐘はつくようになったそうだよ。
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レコード番号 | 47O371470 |
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CD番号 | 47O37C064 |
決定題名 | 蛇女房(方言) |
話者がつけた題名 | 鐘をつく始まり |
話者名 | 具志堅タケ |
話者名かな | ぐしけんたけ |
生年月日 | 19140710 |
性別 | 女 |
出身地 | 沖縄県読谷村儀間 |
記録日 | 19811124 |
記録者の所属組織 | 読谷ゆうがおの会 |
元テープ番号 | 読谷村儀間T10B14 |
元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
分類 | 本格昔話 |
発句(ほっく) | - |
伝承事情 | - |
文字化資料 | 読谷村民話資料集5儀間の民話 P57 |
キーワード | 若い男,寺に泊まった,美人,年頃の女,夫婦,女は妊娠した,子供を出産,出産するときは見ないでくれ,障子から覗いた,女はハブ,男の子を生んだ,ハブが片目,子供にしゃぶらせた,もう一方の目,盲,寺の鐘 |
梗概(こうがい) | 昔、ある若い男がいた。男は修業をつみに出かけて行った。ある寺に泊まっていると、そこへとても美人が、年頃の女がやってきて、その男の人の身のまわりの世話をしたり、食べ物を作ったりしてあげた。若い二人は、夫婦になり、女は妊娠した。月が満ちて、子供を出産する際に、女が夫に、「私が出産するときは、どうか見ないでくれ、お願いだから。」と言った。「わかった。」といい出産のときがきた。そして、障子をたて、〈昔は、障子のことをアカイといっていたよ。〉「絶対見ないでくれ。」と言った。「わかった。」と言ったが、「あれほどまでに見るな見るなということは、何だろうか。」と、その男は見たくなってしまった。見ないように言われると見たくなって、障子をちょっと破って穴をあけて見てみた。すると、女はハブになって、ハブの正体に変って、本当の姿になって出産していた。びっくりした男は、「あれー。」と叫んだ。すぐにそのハブは気がつき、「あんなに見るなと言ったのに、あれほど言ってもきかず見てしまったのね、私は正体を見られてしまったからには、夫婦としては暮らしていけない。男の子を生んだが、もうこの子はあなた一人で育ててくれ、私はもうここにいることはできないので。」と言った。「でも、この子を育てるには、これをしゃぶらせて育ててくれ。」とハブが片目をとって、子供にしゃぶらせた。その目をしゃぶって子供は成長していった。しかしその目はしゃぶっていくうちに小さくなってしまい、また落として失くしてしまった。もう子供は、わぁーわぁー泣いてしまった。片目になったハブはやって来て、「この子が大事だから、私は目がなくてもどうにかして食べ物を取って食べていけるから、この子にもう一方の目もまたとってあげるから、しゃぶらせてちょうだい。」と言い、目をとってあげた。そうして、ハブは、「でも、私は片目がある間は、どこへでも行けたが、もう盲(めくら)になってしまう。この子が大きく成長したら、あの寺の鐘をつかしてくれ何時だよという時報を教えてくれないか、そうすれば私はどこの山奥に行っていても、ああ我が子が成長して鐘をついているんだなあと、聞くから、これだけでとても楽しみだから、どうかそうしてくれ。」と言った。〈そこは寺だったんでしょうね〉「じゃあそうしよう。」とそれから寺の鐘はつくようになったそうだよ。 |
全体の記録時間数 | 2:59 |
物語の時間数 | 2:59 |
言語識別 | 方言 |
音源の質 | ◎ |
テープ番号 | - |
予備項目1 | - |