千年蛇(方言)

概要

木こりがこれもずっと昔の話なんだけどね、あるきこりが山へ行こうとすると、大きな蛇が、たいそう大きな蛇が天に上がろうとしているところに出くわした。すると、その人はこの蛇を見て、驚いて逃げようとしたら、「ちょっと待ちなさい、あなたは私が上がろうとしているのを見たな。」と蛇は呼び止めた。その蛇というものは、九十九年地上に住んでおれば百年目には天に上がることができたという話である。昔はね。しかし、九十九年間、地上で人の目にもふれずに暮らしてこそ、天に上がることができるのであった。それにもかかわらず、その蛇は人間に見られてしまった。もう天に上がることはできないと降りてきてその人に言った。「あなたは私が上がろうとしているのを見てしまったね。あなたがそのことを人に言わなければあなたに徳をつけて金持ちにしてやるから、どんなことがあっても一言も人には話してくれるな。」と頼むと「そうしよう。」と合点したので、何も言わずに蛇は天に上がっていった。それからその人は大変裕福になった。蛇は神様だったのでね。しばらくして、「もう今頃からは話ししてもどうもないだろう。」と、人に一言喋(しゃ)べろうとしたら、たちまち何もかも失って貧乏になったという話である。山から歩くときに、あるおじいさんが。こっちから大きい、白い蛇がね、大きな木の上から天に昇ろうとしていたって。だからそのおじいさんは、「変なものを見たねえ。」と思うてよ。その、また、蛇はこのおじいさんに見られたから降りてきたって。もう上がられんで。百年、地面に生きていたら天に昇られるって蛇は神様になって、そういう言い伝えがありますよ。だから、その蛇も昇ろうとしたから、そのおじいさんに見られたから降りてきたって。降りてきてね、「もうあなたひとりが見なかったら、わたしは天に行かれたのに、天に行って神様になりよったがね。もうあなたに見られたから、もう昇ることはできないからね、あなたが誰にでもひと言でもしゃべらなければ、わたしは昇って行くことができるから、それを誰にもしゃべらないでくれないか、その代わりに、あんたにうんと金持ちにして、あんたの欲しい物は何でもね上げるから。」と言うたって。だから、そのおじいさんは、「はい、そうしますよ。誰にも言いませんよ。」と言ったから、「そしたら、あんたになあ、上等の臼をやるから、臼ね、〈豆腐ひく臼があるでしょう。昔は、豆腐ひく。〉あれをやるからね、あれにあんたが欲しいものは何でも出るから、あんたが出なさいと言ったら、ひきながら出るから、それを上げるか。」と言うたがら、その蛇が。「そんならお願いします。」と言って、その臼をもらったわけさ。そしてからに、もうお金持ちになったから人に言うたわけさ。だからまた、こっちは貧乏ないとぅーししてもうずっと貧乏になるわけさ。もらった臼は、自分は今はもう塩が欲しいからね。「塩出して下さい。」と言ったからよ塩はどんどんどん出てからにね、もう止めることはできないでね、そのまま海の水は潮(うす)になったという話ですよ。塩になったという話ですよ。

再生時間:1:32

民話詳細DATA

レコード番号 47O371395
CD番号 47O37C061
決定題名 千年蛇(方言)
話者がつけた題名 千年蛇
話者名 新垣小松
話者名かな あらかきこまつ
生年月日 19120205
性別
出身地 沖縄県読谷村儀間
記録日 19811120
記録者の所属組織 読谷ゆうがおの会
元テープ番号 読谷村儀間T08B01
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 本格昔話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料 読谷村民話資料集5儀間の民話 P43
キーワード きこり,山,大きな蛇,天,九十九年地上に住む,百年目に天に上がる,蛇は人間に見られた,徳をつけて金持ち,貧乏
梗概(こうがい) 木こりがこれもずっと昔の話なんだけどね、あるきこりが山へ行こうとすると、大きな蛇が、たいそう大きな蛇が天に上がろうとしているところに出くわした。すると、その人はこの蛇を見て、驚いて逃げようとしたら、「ちょっと待ちなさい、あなたは私が上がろうとしているのを見たな。」と蛇は呼び止めた。その蛇というものは、九十九年地上に住んでおれば百年目には天に上がることができたという話である。昔はね。しかし、九十九年間、地上で人の目にもふれずに暮らしてこそ、天に上がることができるのであった。それにもかかわらず、その蛇は人間に見られてしまった。もう天に上がることはできないと降りてきてその人に言った。「あなたは私が上がろうとしているのを見てしまったね。あなたがそのことを人に言わなければあなたに徳をつけて金持ちにしてやるから、どんなことがあっても一言も人には話してくれるな。」と頼むと「そうしよう。」と合点したので、何も言わずに蛇は天に上がっていった。それからその人は大変裕福になった。蛇は神様だったのでね。しばらくして、「もう今頃からは話ししてもどうもないだろう。」と、人に一言喋(しゃ)べろうとしたら、たちまち何もかも失って貧乏になったという話である。山から歩くときに、あるおじいさんが。こっちから大きい、白い蛇がね、大きな木の上から天に昇ろうとしていたって。だからそのおじいさんは、「変なものを見たねえ。」と思うてよ。その、また、蛇はこのおじいさんに見られたから降りてきたって。もう上がられんで。百年、地面に生きていたら天に昇られるって蛇は神様になって、そういう言い伝えがありますよ。だから、その蛇も昇ろうとしたから、そのおじいさんに見られたから降りてきたって。降りてきてね、「もうあなたひとりが見なかったら、わたしは天に行かれたのに、天に行って神様になりよったがね。もうあなたに見られたから、もう昇ることはできないからね、あなたが誰にでもひと言でもしゃべらなければ、わたしは昇って行くことができるから、それを誰にもしゃべらないでくれないか、その代わりに、あんたにうんと金持ちにして、あんたの欲しい物は何でもね上げるから。」と言うたって。だから、そのおじいさんは、「はい、そうしますよ。誰にも言いませんよ。」と言ったから、「そしたら、あんたになあ、上等の臼をやるから、臼ね、〈豆腐ひく臼があるでしょう。昔は、豆腐ひく。〉あれをやるからね、あれにあんたが欲しいものは何でも出るから、あんたが出なさいと言ったら、ひきながら出るから、それを上げるか。」と言うたがら、その蛇が。「そんならお願いします。」と言って、その臼をもらったわけさ。そしてからに、もうお金持ちになったから人に言うたわけさ。だからまた、こっちは貧乏ないとぅーししてもうずっと貧乏になるわけさ。もらった臼は、自分は今はもう塩が欲しいからね。「塩出して下さい。」と言ったからよ塩はどんどんどん出てからにね、もう止めることはできないでね、そのまま海の水は潮(うす)になったという話ですよ。塩になったという話ですよ。
全体の記録時間数 1:32
物語の時間数 1:32
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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