昔、三人の友達がいたそうだ、青年だよ、男の友達。その中の二人は、金持ちの息子で、遊ぶにも金を使うにもことかかないで、とてもいい暮らしぶりであった。もう一人の者は、一番貧しい家に生まれ、とても貧乏であった。貧しい家に生まれた青年は、他の二人の友達のようには、着物にしたって、りっぱなものは着れなかった。何かとことかき、また、昔は、どこかに遊びに行っても金を使ったりしたが金も豊富にないから、友達のようには何もできなかったようだね。そうして、他の二人をとてもうらやましく思っていた。「私は、いつになったらあなた達のように、いっしょに歩けるかなあ。同じ遊び方、何もかも身なりもあなた達が着ているようにりっぱな着物を着けて友達として相手になれるかなあ。」と言った。一人が、「お前にはできないよ」といい、「なぜ」と聞くと、「お前は人に売られているから、もう儲けてお金を返さない間は、また返したところでもっと儲けないとならないから、ほど遠いよ、もうお前にはできないはずだよ。」と言った。また、もう一人は、考えたすえ、「いや、できないことはない。これは昔から物事を教える人、天一という方がいらっしゃるから、その人を捜して、その人から教わると、たぶんお前の望みもかなうはずだよ。」と言った。その人はおもしろ半分に言ったのだが貧しい家に生まれた青年はこの話を本当だと信じていた。そういうと、「ああそうか、そういう人が世の中にいらっしゃるのか、ならばその人をどこ捜してでも会い教わらなければならない。」と言った。「まずやってごらん。」ということになった。この貧しい家に生まれた青年は、本気になって今度は主人に言ったわけだ。「実はこうこうで、天一という方がいらっしゃるというので、その人から教わってぜひ儲けて、友達と同じ交際をしようと思うので、暇を出して下さいませんか。もう一ヵ月でも二ヵ月でも暇を下さい。」というと、「そういうことがあるなら、これは珍しい、そういうこともあるのか、私達の家庭は、今までこんなに恵まれ、なんの不足もないが、私は、そのようなことは聞いたことはないが、そういうことであれば暇を出すから行きなさい。ただし私達の家庭のこともお前が聞いてきてくれ。」といった。「なんでしょうか。主人の要求であれば聞いてきます。」と言った。「私達の家庭は何も不足はなく続いているが、この裕福はいつまで続くかと、お前で問うてきてくれ。」と言うと「はい、わかりました。」と出かけて行った。出ようとするとね、もう一人の友達が、「お前は、こんな嘘をついて、あいつに本当だと合点させて行かすともあろうか。これは嘘だからとお前でひきとめなさい。」と言った。「いやまず、嘘ではあるが、あいつは、毎日、使われてかわいそうなので、あいつを休ますために主人から暇をもらってあるのであれはいい機会だから行かしなさい。」と言った。もう知らないふりをしようと相談した。「行かすことにしよう。」ということで金持ちの二人の友達は話し合った。(貧しい青年は)ずっと歩き続けて、二十里も三十里も歩いていた。気がつくと日が暮れ泊まる所もない。ある一軒の家で青年達に出逢った。畑から戻って来る青年に、「あの、私は旅の者だが、ある珍しい人、天一という人を捜し出して逢わないといけないが、でも今日は日も暮れまた明日にしかできない。今日一晩だけあなた達に泊めてもらえないか。」と頼んだ。その青年達は、「お前が言うことよ、私達は人に雇われているんだよ、お前を泊める部屋なんて無いよ。」と断った。「いや、狭い室なら、私は足が外に出てもいいから、たったの一晩だけでいいから夜を明かさせてくれ。」と強く頼んだ。「そうだったら、同じ境遇だし、私達も使用人、お前も使用人だし。」ということでかわいそうに思い、「どうぞ。」といって泊めてあげることにした。「そうなら、お前がそれ程までに頼むなら、私の部屋で泊まるといいよ。」と泊めてあげた。翌日の朝、その家の主人は使用人よりはいつも先に起きるでしょう。そうして、座わってたばこを吸おうとすると、自分の家の門から知らない人が出て行った。その雇っている青年達と一緒に寝ていたわけだからね。「これはもしかしたら泥棒かも知れない。何か分らない怪しい者だ、珍しいことだ。今まで見たこともない人が出て行く。」といって不思議に思っていた。そこへ、雇っている青年達が起きて来た。「今しがた出て行くのはあれはどこの者か、何という者か。」と主人が問うと、青年達は、「あの人はとてもかわいそうな人、気の毒な人ですよ。人に使われているのだが、ある人から、天一という人を捜し出し、教えてもらいなさいと言われて、このように歩いて旅をしているんですよ。」と言った。「そうか、そんなこともあるのか。」と主人もまた珍しがった。「じゃあ、こんなに珍しいことだが、でもお前達は、朝食もあげないで行かすともあるのか、呼んで来なさい。」といいつけた。今度は、彼の所まで行って、呼び戻してきた。朝食をあげた。またそこの主人の心ざしから、旅行く人はお腹をすかしては歩かれないから、ということで弁当も作って持たしてあげた。二日目のことである。その日も一日かかっても捜せず、同じような旅路であった。また日が暮れてきた。人には歩く限度があり、せいぜい十里か十四、五里しか歩けないでしょう。一日中歩いても。またそこで日が暮れたので、やっかいになるなら、大きな家がいいなあと、思っていた。今度はそこで、「こうこうですから、泊めて下さい。」と言った。 そこでもまた主人は珍しがって、「珍しい世の中だね。そんな話もあるのか。」といい、そこでも初耳なので、珍しがり、「それならここに泊まりなさい。」といって泊めてあげた。そこでも同じ待遇で、食物を与え、また弁当も持たしてくれた。そして、主人は、「私達は庭に実のなる木があるんだが、この木は親の代まではよく実ったが、もう自分の代になると、全然実らなくなった。どういう理由だろうか。これは、肥料が少ないのだろうか。もうどうしたらいいか。聞いてきてくれないか。」と言った。「そうですか、引き受けました。」と言って出かけたわけだ。そして三日めの場合に最後の所なんだよ。三日めも歩き続け日が暮れたので、またある家に着いた。そこで、挨拶したが、人は出てきたものの、相手は耳が不自由で答えることができないものだから、出てきて見てはいるものの、挨拶は返ってこなかった。本人では対応できないので、その旅人には何にも言えないから、自分の親を呼びに行ったようだね、奥へひっこんでいった。この旅人の青年は、人を見ておきながら、こんなに美しい人なのだが、また、こう思ったのであった。「あれほどの美人だから、私みたいな貧しい者が来たから、ばかにして奥へひっこんだのだろうか。」と、しかし、実はこの美人は話ができないので親を呼びに行ったのであった。親が出て来て、「なんだね、青年。」といった。「こうこう旅の者だが、ここへ泊めて下さい。実は、私は貧乏者ではあるが、友達から、どこかに天一という物知りがいらっしゃることを聞き、その人から色々な事を聞いたり儲けること、出世するコツやら何やらあるのかと、それを習いに行くんですが。」といった。「ええ、そんなこともあるのか、もうそうしたら泊まりなさい。」といって泊めてくれた。ここも翌日は、ご飯も何もかも食べさせてくれ、また、昨日と同じように弁当も作って持たしてくれた。おまけに、また杖も持たした。「旅する人は、こう杖をつくと歩きやすいし、山道を登るにも何をするにも、杖があると登りやすいから、この杖を持って行くといい。」といって、弁当と杖をわたした。また、その杖には節が七つはいっていた。〈七つはいっているということは、とにかく私が考えると、根元ならば節は七つかたくはいっていて、それは頑丈なわけだ。頑丈だから、その木を持たしたんだなあと思うわけだよ。〉杖をついて行きなさいと、唐竹で杖を作って持たした。最後には、これ以上行けない所まで来ていた。果ての果てまで来たわけだ。もうこれ以上は、島、陸は続いてない。そこは、家も何もなかったが、ただりっぱな松が、家に変わるぐらいの、雨が降っても漏らないぐらいの、とてもいい松が一本あった。〈それは、丁度、久米島に五枝の松というのがあるでしょう、りっぱな松が、それに似ていた。丁度、あのようなものがね。〉その下には、このように眠たり起きたりできるほどの芝生が、りっぱな芝生がきれいに生えていた。「もうここは家もないが、いい眠りどころがみつかった。一晩はここに泊まろう」とその青年は休むことにした。その松の下に持っていた杖を取って来て、その芝生に眠ろうとした。すると、沖の方から白髪の人が、亀に乗ってそこへ上がってこられた。その人は、本当は神様だったようだね。その人こそ天一という人だった。最初のうちは、その神様は「ここは私が眠る御殿だ、きさまがここに眠るともあろうか。」と叱ったようだね。「そうではありません。実は、私は、是非天一という人に会い物習いをするために来たのです。」と青年は言った。天一という方はその人だったようだがね。そして、天一はことが分り「ああ、真面目な青年なんだね、何十里も旅をして私に会いに来るとは、きっと心がけがしっかりしているはずだ。」と思った。「そうか、そんな理由なら、君は正直な青年らしいので、私と一緒に来るとよい。」と言って、天一と一緒に亀に乗せられた。それから、ある島にも着くと、そこでは、すばやく白髪の人は七変化と同じように、鶴に変わっていた。そしてまた、黄金を二つ持っていた。「一つはお前に分けてやる。この黄金一つは、お前に分けてやるから持って行き、立身するとよい。」とおっしゃった。青年は、「ありがとうございます。」と言ってもらい、戻ってきた。戻って来る間に、今まで出会った人の願いを聞いたようだね。三ヵ所の主人の注文、どうしたらよいかと教えてもらっていた。青年が戻りがけに最初に行ったのは、一番美人のところだった。最後に出会ったので、戻るときは始めになるでしょう。そこへ着くと、「貴方達の娘が話をしないのは、これは一番最初に話す人と、縁組させてあげなさい。そうするといいですよ。縁組でもすると、話はできる。」と言った。しかし、その家の主人は、考え込んで「そんなこともあるのかなあ。」と言った。青年は「そう言っていましたよ」と言い残して帰ろうとすると、「あの、待って下さい。」と美人が呼んだようだね。「ちょっと待って下さい。」と。それから、美人は話ができるようになり、そこの主人は「ああ、お前に一番最初に話をしたので、お前の妻にしてくれ。」と言った。しかし、その青年は貧乏者だから、これほどの金持ちの婿になるにはもったいないと思い、一応辞退した。でも正直だから、心はみそめられているので、「妻に迎えてくれ。」と強く言われた。「そうでしたら、誠にありがとうございます。もう、私が家も造りお金も儲けてから、嫁として迎えにまいりますので、その間はあずかっていて下さい。儲けて家を造ってから迎えに行きますので。」といい、縁を結んだようだ。しっかりしている青年なのでそれを認めて帰って行った。帰る途中で二番目の家の願いを教えに行った。そこの家の人が、「ここの話は聞いてきたか。」と言ったので、青年は「この実のなる木というのは、三尺掘って、脇根を切り植えかえよということですよ。」と言った。「もうそうすると、また元のように実るでしょうね。」と喜んだ。そして、そこの下男達に掘らしてみた。すると、中から黄金が出てきたそうだ。黄金ということは、そこの家はますます裕福になるでしょう。「もったいない、これはお前のおかげで、どんどん栄えていくのでこれ全部は、私達は取らなくていいから、半分はお前に分けてあげよう。」といい、青年はそこの家から黄金を半分貰った。そうして、そのお金(黄金)を持って、一番最初のお金を借りている家の主人のところへ、負債を払いに行くことにした。そして担いで行くと、主人は珍しがって、「なんでどうしたんだ。お前、これは全部黄金ではないか。」と言った。「はい黄金です。今まで貴方から借りていたお金を、これから取って下さい。」と言うと、「なんて不思議なことだ。しかしお前は、この家のことを聞いてきたかね、なんて言っていたか。」と言った。「貴方たち家族は心がゆたかなので、いつの世までも万年もその富は減ることはないですと、言っていました。」と答えると、その主人は(青年に対して)さらに好意がわいてきた。〈そういうことでしたと言ったのでさらに思いがでてきたというわけだ。〉「もうお前からは、貸してあるお金はとらなくてもいいから、それより、前の畑をお前にやる。そこで独立していいから、〈家の前に畑があったそうだ。〉そこで家を造りなさい。」と言った。彼は正直な青年なので、「いやもったいない。そこは一等地だから、何を作っても農作物がよく実る土地なので、屋敷にするにはもったいないから、もし屋敷を下さるならこんなに上等でなくてもいいです。」と答えた。主人は、正直な青年の望みどおり、前にある原野に家を造っていいからということになった。そうして、すぐに工事を始めたそうだ。それから、その青年の家ができ上がる頃になったので、待ちかねていたあの美人が、親元から出て来た。そして妻として迎え家庭をもつことになった。それから、青年は出世して、友達とも背を並べてつき合うようになった。この真面目な青年は仲良く暮らすようになった。この話がいわゆる松竹梅の由来だよ。最初の家の竹の杖から松の植えている所に行った。また梅というのは美人を妻に迎えたことが梅につながる。また、鶴というのは、(天一が)亀に乗ってそれから鶴になったでしょう。それがつながって松竹梅の由来記ということになるそうだ。
| レコード番号 | 47O371284 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C056 |
| 決定題名 | 山神と童子(方言) |
| 話者がつけた題名 | 松竹梅の由来記 |
| 話者名 | 町田宗進 |
| 話者名かな | まちだそうしん |
| 生年月日 | 19160305 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村儀間 |
| 記録日 | 19770224 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第3班 |
| 元テープ番号 | 読谷村儀間T04A01 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | あのうむかしね |
| 伝承事情 | 話は雨降りの時、仕事に行けない時に聞いた。この話は儀間の新垣亀さんから聞いた。 |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集5儀間の民話 P130 |
| キーワード | 三人の男友達,金持ちの息子,貧しい家,天一,友達と同じ交際,ある一軒の家,家の主人,泥棒,大きな家,庭に実のなる木,耳が不自由,美人,唐竹で杖,松が一本,白髪の人,亀,神様,何十里も旅,ある島,白髪の人は七変化,鶴に変わった,黄金を二つ,三ヵ所の主人の注文,縁組,金持ちの婿,二番目の家の願い,三尺掘り脇根を切り植える,中から黄金,黄金を半分貰った,一番最初のお金,農作物がよく実る土地,原野に家,る松竹梅の由来 |
| 梗概(こうがい) | 昔、三人の友達がいたそうだ、青年だよ、男の友達。その中の二人は、金持ちの息子で、遊ぶにも金を使うにもことかかないで、とてもいい暮らしぶりであった。もう一人の者は、一番貧しい家に生まれ、とても貧乏であった。貧しい家に生まれた青年は、他の二人の友達のようには、着物にしたって、りっぱなものは着れなかった。何かとことかき、また、昔は、どこかに遊びに行っても金を使ったりしたが金も豊富にないから、友達のようには何もできなかったようだね。そうして、他の二人をとてもうらやましく思っていた。「私は、いつになったらあなた達のように、いっしょに歩けるかなあ。同じ遊び方、何もかも身なりもあなた達が着ているようにりっぱな着物を着けて友達として相手になれるかなあ。」と言った。一人が、「お前にはできないよ」といい、「なぜ」と聞くと、「お前は人に売られているから、もう儲けてお金を返さない間は、また返したところでもっと儲けないとならないから、ほど遠いよ、もうお前にはできないはずだよ。」と言った。また、もう一人は、考えたすえ、「いや、できないことはない。これは昔から物事を教える人、天一という方がいらっしゃるから、その人を捜して、その人から教わると、たぶんお前の望みもかなうはずだよ。」と言った。その人はおもしろ半分に言ったのだが貧しい家に生まれた青年はこの話を本当だと信じていた。そういうと、「ああそうか、そういう人が世の中にいらっしゃるのか、ならばその人をどこ捜してでも会い教わらなければならない。」と言った。「まずやってごらん。」ということになった。この貧しい家に生まれた青年は、本気になって今度は主人に言ったわけだ。「実はこうこうで、天一という方がいらっしゃるというので、その人から教わってぜひ儲けて、友達と同じ交際をしようと思うので、暇を出して下さいませんか。もう一ヵ月でも二ヵ月でも暇を下さい。」というと、「そういうことがあるなら、これは珍しい、そういうこともあるのか、私達の家庭は、今までこんなに恵まれ、なんの不足もないが、私は、そのようなことは聞いたことはないが、そういうことであれば暇を出すから行きなさい。ただし私達の家庭のこともお前が聞いてきてくれ。」といった。「なんでしょうか。主人の要求であれば聞いてきます。」と言った。「私達の家庭は何も不足はなく続いているが、この裕福はいつまで続くかと、お前で問うてきてくれ。」と言うと「はい、わかりました。」と出かけて行った。出ようとするとね、もう一人の友達が、「お前は、こんな嘘をついて、あいつに本当だと合点させて行かすともあろうか。これは嘘だからとお前でひきとめなさい。」と言った。「いやまず、嘘ではあるが、あいつは、毎日、使われてかわいそうなので、あいつを休ますために主人から暇をもらってあるのであれはいい機会だから行かしなさい。」と言った。もう知らないふりをしようと相談した。「行かすことにしよう。」ということで金持ちの二人の友達は話し合った。(貧しい青年は)ずっと歩き続けて、二十里も三十里も歩いていた。気がつくと日が暮れ泊まる所もない。ある一軒の家で青年達に出逢った。畑から戻って来る青年に、「あの、私は旅の者だが、ある珍しい人、天一という人を捜し出して逢わないといけないが、でも今日は日も暮れまた明日にしかできない。今日一晩だけあなた達に泊めてもらえないか。」と頼んだ。その青年達は、「お前が言うことよ、私達は人に雇われているんだよ、お前を泊める部屋なんて無いよ。」と断った。「いや、狭い室なら、私は足が外に出てもいいから、たったの一晩だけでいいから夜を明かさせてくれ。」と強く頼んだ。「そうだったら、同じ境遇だし、私達も使用人、お前も使用人だし。」ということでかわいそうに思い、「どうぞ。」といって泊めてあげることにした。「そうなら、お前がそれ程までに頼むなら、私の部屋で泊まるといいよ。」と泊めてあげた。翌日の朝、その家の主人は使用人よりはいつも先に起きるでしょう。そうして、座わってたばこを吸おうとすると、自分の家の門から知らない人が出て行った。その雇っている青年達と一緒に寝ていたわけだからね。「これはもしかしたら泥棒かも知れない。何か分らない怪しい者だ、珍しいことだ。今まで見たこともない人が出て行く。」といって不思議に思っていた。そこへ、雇っている青年達が起きて来た。「今しがた出て行くのはあれはどこの者か、何という者か。」と主人が問うと、青年達は、「あの人はとてもかわいそうな人、気の毒な人ですよ。人に使われているのだが、ある人から、天一という人を捜し出し、教えてもらいなさいと言われて、このように歩いて旅をしているんですよ。」と言った。「そうか、そんなこともあるのか。」と主人もまた珍しがった。「じゃあ、こんなに珍しいことだが、でもお前達は、朝食もあげないで行かすともあるのか、呼んで来なさい。」といいつけた。今度は、彼の所まで行って、呼び戻してきた。朝食をあげた。またそこの主人の心ざしから、旅行く人はお腹をすかしては歩かれないから、ということで弁当も作って持たしてあげた。二日目のことである。その日も一日かかっても捜せず、同じような旅路であった。また日が暮れてきた。人には歩く限度があり、せいぜい十里か十四、五里しか歩けないでしょう。一日中歩いても。またそこで日が暮れたので、やっかいになるなら、大きな家がいいなあと、思っていた。今度はそこで、「こうこうですから、泊めて下さい。」と言った。 そこでもまた主人は珍しがって、「珍しい世の中だね。そんな話もあるのか。」といい、そこでも初耳なので、珍しがり、「それならここに泊まりなさい。」といって泊めてあげた。そこでも同じ待遇で、食物を与え、また弁当も持たしてくれた。そして、主人は、「私達は庭に実のなる木があるんだが、この木は親の代まではよく実ったが、もう自分の代になると、全然実らなくなった。どういう理由だろうか。これは、肥料が少ないのだろうか。もうどうしたらいいか。聞いてきてくれないか。」と言った。「そうですか、引き受けました。」と言って出かけたわけだ。そして三日めの場合に最後の所なんだよ。三日めも歩き続け日が暮れたので、またある家に着いた。そこで、挨拶したが、人は出てきたものの、相手は耳が不自由で答えることができないものだから、出てきて見てはいるものの、挨拶は返ってこなかった。本人では対応できないので、その旅人には何にも言えないから、自分の親を呼びに行ったようだね、奥へひっこんでいった。この旅人の青年は、人を見ておきながら、こんなに美しい人なのだが、また、こう思ったのであった。「あれほどの美人だから、私みたいな貧しい者が来たから、ばかにして奥へひっこんだのだろうか。」と、しかし、実はこの美人は話ができないので親を呼びに行ったのであった。親が出て来て、「なんだね、青年。」といった。「こうこう旅の者だが、ここへ泊めて下さい。実は、私は貧乏者ではあるが、友達から、どこかに天一という物知りがいらっしゃることを聞き、その人から色々な事を聞いたり儲けること、出世するコツやら何やらあるのかと、それを習いに行くんですが。」といった。「ええ、そんなこともあるのか、もうそうしたら泊まりなさい。」といって泊めてくれた。ここも翌日は、ご飯も何もかも食べさせてくれ、また、昨日と同じように弁当も作って持たしてくれた。おまけに、また杖も持たした。「旅する人は、こう杖をつくと歩きやすいし、山道を登るにも何をするにも、杖があると登りやすいから、この杖を持って行くといい。」といって、弁当と杖をわたした。また、その杖には節が七つはいっていた。〈七つはいっているということは、とにかく私が考えると、根元ならば節は七つかたくはいっていて、それは頑丈なわけだ。頑丈だから、その木を持たしたんだなあと思うわけだよ。〉杖をついて行きなさいと、唐竹で杖を作って持たした。最後には、これ以上行けない所まで来ていた。果ての果てまで来たわけだ。もうこれ以上は、島、陸は続いてない。そこは、家も何もなかったが、ただりっぱな松が、家に変わるぐらいの、雨が降っても漏らないぐらいの、とてもいい松が一本あった。〈それは、丁度、久米島に五枝の松というのがあるでしょう、りっぱな松が、それに似ていた。丁度、あのようなものがね。〉その下には、このように眠たり起きたりできるほどの芝生が、りっぱな芝生がきれいに生えていた。「もうここは家もないが、いい眠りどころがみつかった。一晩はここに泊まろう」とその青年は休むことにした。その松の下に持っていた杖を取って来て、その芝生に眠ろうとした。すると、沖の方から白髪の人が、亀に乗ってそこへ上がってこられた。その人は、本当は神様だったようだね。その人こそ天一という人だった。最初のうちは、その神様は「ここは私が眠る御殿だ、きさまがここに眠るともあろうか。」と叱ったようだね。「そうではありません。実は、私は、是非天一という人に会い物習いをするために来たのです。」と青年は言った。天一という方はその人だったようだがね。そして、天一はことが分り「ああ、真面目な青年なんだね、何十里も旅をして私に会いに来るとは、きっと心がけがしっかりしているはずだ。」と思った。「そうか、そんな理由なら、君は正直な青年らしいので、私と一緒に来るとよい。」と言って、天一と一緒に亀に乗せられた。それから、ある島にも着くと、そこでは、すばやく白髪の人は七変化と同じように、鶴に変わっていた。そしてまた、黄金を二つ持っていた。「一つはお前に分けてやる。この黄金一つは、お前に分けてやるから持って行き、立身するとよい。」とおっしゃった。青年は、「ありがとうございます。」と言ってもらい、戻ってきた。戻って来る間に、今まで出会った人の願いを聞いたようだね。三ヵ所の主人の注文、どうしたらよいかと教えてもらっていた。青年が戻りがけに最初に行ったのは、一番美人のところだった。最後に出会ったので、戻るときは始めになるでしょう。そこへ着くと、「貴方達の娘が話をしないのは、これは一番最初に話す人と、縁組させてあげなさい。そうするといいですよ。縁組でもすると、話はできる。」と言った。しかし、その家の主人は、考え込んで「そんなこともあるのかなあ。」と言った。青年は「そう言っていましたよ」と言い残して帰ろうとすると、「あの、待って下さい。」と美人が呼んだようだね。「ちょっと待って下さい。」と。それから、美人は話ができるようになり、そこの主人は「ああ、お前に一番最初に話をしたので、お前の妻にしてくれ。」と言った。しかし、その青年は貧乏者だから、これほどの金持ちの婿になるにはもったいないと思い、一応辞退した。でも正直だから、心はみそめられているので、「妻に迎えてくれ。」と強く言われた。「そうでしたら、誠にありがとうございます。もう、私が家も造りお金も儲けてから、嫁として迎えにまいりますので、その間はあずかっていて下さい。儲けて家を造ってから迎えに行きますので。」といい、縁を結んだようだ。しっかりしている青年なのでそれを認めて帰って行った。帰る途中で二番目の家の願いを教えに行った。そこの家の人が、「ここの話は聞いてきたか。」と言ったので、青年は「この実のなる木というのは、三尺掘って、脇根を切り植えかえよということですよ。」と言った。「もうそうすると、また元のように実るでしょうね。」と喜んだ。そして、そこの下男達に掘らしてみた。すると、中から黄金が出てきたそうだ。黄金ということは、そこの家はますます裕福になるでしょう。「もったいない、これはお前のおかげで、どんどん栄えていくのでこれ全部は、私達は取らなくていいから、半分はお前に分けてあげよう。」といい、青年はそこの家から黄金を半分貰った。そうして、そのお金(黄金)を持って、一番最初のお金を借りている家の主人のところへ、負債を払いに行くことにした。そして担いで行くと、主人は珍しがって、「なんでどうしたんだ。お前、これは全部黄金ではないか。」と言った。「はい黄金です。今まで貴方から借りていたお金を、これから取って下さい。」と言うと、「なんて不思議なことだ。しかしお前は、この家のことを聞いてきたかね、なんて言っていたか。」と言った。「貴方たち家族は心がゆたかなので、いつの世までも万年もその富は減ることはないですと、言っていました。」と答えると、その主人は(青年に対して)さらに好意がわいてきた。〈そういうことでしたと言ったのでさらに思いがでてきたというわけだ。〉「もうお前からは、貸してあるお金はとらなくてもいいから、それより、前の畑をお前にやる。そこで独立していいから、〈家の前に畑があったそうだ。〉そこで家を造りなさい。」と言った。彼は正直な青年なので、「いやもったいない。そこは一等地だから、何を作っても農作物がよく実る土地なので、屋敷にするにはもったいないから、もし屋敷を下さるならこんなに上等でなくてもいいです。」と答えた。主人は、正直な青年の望みどおり、前にある原野に家を造っていいからということになった。そうして、すぐに工事を始めたそうだ。それから、その青年の家ができ上がる頃になったので、待ちかねていたあの美人が、親元から出て来た。そして妻として迎え家庭をもつことになった。それから、青年は出世して、友達とも背を並べてつき合うようになった。この真面目な青年は仲良く暮らすようになった。この話がいわゆる松竹梅の由来だよ。最初の家の竹の杖から松の植えている所に行った。また梅というのは美人を妻に迎えたことが梅につながる。また、鶴というのは、(天一が)亀に乗ってそれから鶴になったでしょう。それがつながって松竹梅の由来記ということになるそうだ。 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| 全体の記録時間数 | 14:46 |
| 物語の時間数 | 14:46 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | △ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |