今帰仁由来記(方言)

概要

今帰仁由来記というのは、いわゆる(今帰仁按司が)沖繩(王)の三男坊であるということだよ。言うなれば、長男は豊見城、今帰仁は三男(が治めていた)。そういう時に、本部大原という、今帰仁の城勤めをしている役人だったのでしょうね、その人が悪だくみをして、今帰仁城を滅したわけだ。そこで、今帰仁城由来記になる。(今帰人の)若按司は、味方に連れられて、ある百姓の家々に、つまり(隠まわれて)、所を変えて暮らさせていた。「若按司が成長したら仇を討とう。」と思い、武士達は山の中に隠れて、絶えず連絡をとりあっていた。そうしているうちに、ある日、この若按司は、北谷の砂辺殿内で使用人として使われることになったわけ。そしてそこに居ると、この砂辺殿内という所には娘が一人いて、そこは大そう偉い方の家だったようだ。そこの娘はできた者だった。ある時、この娘が琴を弾いていると、言うならば、若按司は身分の高い人でしょう、(その若按司が側で見ていたので、娘は)琴を順調に弾けなくなってしまい、「不思議な事です。今日は私には弾けません。」と言った。この娘が事を弾くたびに、若按司が側に方で聴いているので、(娘は)琴が弾けなくなってしまった。 それで(娘の親は心配して)ユタやハンジの家を訪ね歩いた。(そして)ある所で、「そうだね、貴方達の娘は病にかかっている、(二人は)本当に天から示された夫婦だから、夫婦にしなさい。」と言われたようだ。そう言われたが、親達は信じようとしない。なぜなら、(若按司は)自分の使用人なんだからね。すると(そのユタかハシジかが)「ではその証拠に、嘘だと思うのなら、その男の手に三日月があるんだよ。貴方達の娘の手にも三日月があるから二つ合わせると十五夜の月になるんだよ。」と言った。(そこで娘の親は)そう言われてきたので、「不思議なことだ。」と思いながら、そこに男を呼んで調べると、二人の手には本当に(三日月が)あったそうだ。「それでは妻にして下さい。」と親が言ったので(若按司は)受け入れて、そこで縁組をしたんだね。その後また、(隠れている部下達から若按司に)連絡が来た。昔、焼ける鏡があったそうだ、火鏡といってね。それは本当は今帰仁城の物だが本部大原が取って持っているので、(火鏡の)ある所はどこだと知っているから、そこにまた若按司を行かせたんだね。すると、そこにも娘が一人いてね、そしてその娘は、この男に大変惚れているわけ。けれども敵の家でしょう。それで、「その鏡を盗み出さなければならない。」ということで、「何日の何時までには、その鏡を是非取り出しておくように。」と、部下達ともすべて連絡がついていた。こうして、事を起こそうとしていると、そこに若按司と縁組している女が、別の人に悪だくみされて(ここにやってきた)。喜舎場里乃子という、言うならば野蛮武士がいたんだね、その野蛮武士が悪だくみしたので、砂辺殿内には居れなくなった。それで、親子二人で逃げる途中、船が難破して今帰仁の浜に打ちあげられているところを助けられて、その(火鏡をもっている)娘の居る家に、女中としてこの(砂辺殿内の)娘も使われることになった。するとその若按司も女も互いに目を丸くした。「これは今は、実はこうこうで。」と言って、その時初めて、男は「実は私は今帰仁の若按司なんだよ。ところが、ここにこれこれの事情があって、(火鏡を)取り返すために来ているから、それを取った暁には貴方を連れて逃げるから。」と。「そうですか。」と女も分かった。それから、若按司は、そこの娘に「貴方の家には妙な鏡があるというが。」と、誰も居ない時に聞いたわけだ。その娘は、この男に心から惚れているので、「あります。」と答えた。「ただ一目だけ見せてくれないか。」と、男が言うと、女はすぐにその火鏡を持って来て見せたそうだ。(若按司はすでに)この鏡の偽物を用意して来ているので、(本物の火鏡と)すり替えて、「これは、持っていってしまいなさい。」と言って娘に(偽物を)渡した。そうするうちには連絡がきた。(若按司は)持っていたので、さっそく鏡を渡した。そして(自分も)、砂辺殿内の娘を連れて逃げた。そこの部下達がこの事を知って、「あの者は敵の回し者だったんだな。早く追っていって搦めてこよう。」と。ところがもう、その鏡は若按司の部下達が受け取ってとっくに(城に)持っていって、戦いの準備をしていた‥‥。こうして、城を取り返し、今帰仁城はまた元通り取り戻したので、一般住民全員に、「お祝いに来なさい。」と招いた。また、(若按司が)北谷の砂辺殿内で(使われていた時に)一緒だった下男頭の上泊という人がいた。その人は、目は見えないが三味線を弾けるので、「今帰仁城が元の世を取り戻したお祝いだったら。」と言って、三味線を担いで城に行ったそうだ。ところが、門番達が門前払いをするので、「いや、私は是非行く。」と頑張った。するとこの若按司はその人を覚えていたんでしょうね。「その男は、昔、若按司が(下男として使われていた時に)一緒だった人だそうだ。若按司が許して居られるから入りなさい。」といって、(上泊を)城の中に入れたそうだ。そこでは、この上泊という人は目は見えないけれども、若按司の声を覚えていたんでしょうね。若按司の声を聞くと、「おや、今の声は岡春ではないか。〈若按司は下男に身をやつしていた時、改名していたんでしょう、岡春と〉お前という奴は、私達の苦労も知らず、このようにしておいて。主人も、この世を去ってしまって、私一人残っているんだ。」と言って、そこでわめいたようだ。するともう、若按司の部下達は、「若按司に向かってそんなにわめくのか。」とょんて(怒った)。けれども、若按司には分かっているので一緒に(下男奉公していた)昔の馴染みだと。そうしていると、ここへ嫁に来た娘が、つまり砂辺殿内の娘がきて、「上泊大主、私達もこうして助かってますよ。」と言った。そして、その娘の着物の裾で上泊大主の目を拭くと、大主の目が開いたそうだ。上泊大主は目が見えるようになり、それからは、そこで一緒に、今帰仁城の勤めをしたという話だ。

再生時間:10:24

民話詳細DATA

レコード番号 47O371113
CD番号 47O37C049
決定題名 今帰仁由来記(方言)
話者がつけた題名 今帰仁由来記
話者名 新垣新輝
話者名かな あらかきしんき
生年月日 19080815
性別
出身地 沖縄県読谷村伊良皆
記録日 19770508
記録者の所属組織 読谷村民話調査団第4班
元テープ番号 読谷村伊良皆T11B09
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 伝説
発句(ほっく)
伝承事情 南洋にいる時に本部の人から
文字化資料
キーワード 今帰仁由来記,長男は豊見城,今帰仁は三男,本部大原,悪だくみ,今帰仁城を滅した,若按司,仇討ち,北谷の砂辺殿内,娘が琴,ユタやハンジ,娘が病,夫婦,男の手に三日月,娘の手にも三日月,十五夜の月,鏡,喜舎場里乃子,野蛮武士,船が難破,今帰仁の浜,下男頭の上泊,盲目,三味線,岡春,娘の着物の裾,上泊大主の目,大主の目が開いた
梗概(こうがい) 今帰仁由来記というのは、いわゆる(今帰仁按司が)沖繩(王)の三男坊であるということだよ。言うなれば、長男は豊見城、今帰仁は三男(が治めていた)。そういう時に、本部大原という、今帰仁の城勤めをしている役人だったのでしょうね、その人が悪だくみをして、今帰仁城を滅したわけだ。そこで、今帰仁城由来記になる。(今帰人の)若按司は、味方に連れられて、ある百姓の家々に、つまり(隠まわれて)、所を変えて暮らさせていた。「若按司が成長したら仇を討とう。」と思い、武士達は山の中に隠れて、絶えず連絡をとりあっていた。そうしているうちに、ある日、この若按司は、北谷の砂辺殿内で使用人として使われることになったわけ。そしてそこに居ると、この砂辺殿内という所には娘が一人いて、そこは大そう偉い方の家だったようだ。そこの娘はできた者だった。ある時、この娘が琴を弾いていると、言うならば、若按司は身分の高い人でしょう、(その若按司が側で見ていたので、娘は)琴を順調に弾けなくなってしまい、「不思議な事です。今日は私には弾けません。」と言った。この娘が事を弾くたびに、若按司が側に方で聴いているので、(娘は)琴が弾けなくなってしまった。 それで(娘の親は心配して)ユタやハンジの家を訪ね歩いた。(そして)ある所で、「そうだね、貴方達の娘は病にかかっている、(二人は)本当に天から示された夫婦だから、夫婦にしなさい。」と言われたようだ。そう言われたが、親達は信じようとしない。なぜなら、(若按司は)自分の使用人なんだからね。すると(そのユタかハシジかが)「ではその証拠に、嘘だと思うのなら、その男の手に三日月があるんだよ。貴方達の娘の手にも三日月があるから二つ合わせると十五夜の月になるんだよ。」と言った。(そこで娘の親は)そう言われてきたので、「不思議なことだ。」と思いながら、そこに男を呼んで調べると、二人の手には本当に(三日月が)あったそうだ。「それでは妻にして下さい。」と親が言ったので(若按司は)受け入れて、そこで縁組をしたんだね。その後また、(隠れている部下達から若按司に)連絡が来た。昔、焼ける鏡があったそうだ、火鏡といってね。それは本当は今帰仁城の物だが本部大原が取って持っているので、(火鏡の)ある所はどこだと知っているから、そこにまた若按司を行かせたんだね。すると、そこにも娘が一人いてね、そしてその娘は、この男に大変惚れているわけ。けれども敵の家でしょう。それで、「その鏡を盗み出さなければならない。」ということで、「何日の何時までには、その鏡を是非取り出しておくように。」と、部下達ともすべて連絡がついていた。こうして、事を起こそうとしていると、そこに若按司と縁組している女が、別の人に悪だくみされて(ここにやってきた)。喜舎場里乃子という、言うならば野蛮武士がいたんだね、その野蛮武士が悪だくみしたので、砂辺殿内には居れなくなった。それで、親子二人で逃げる途中、船が難破して今帰仁の浜に打ちあげられているところを助けられて、その(火鏡をもっている)娘の居る家に、女中としてこの(砂辺殿内の)娘も使われることになった。するとその若按司も女も互いに目を丸くした。「これは今は、実はこうこうで。」と言って、その時初めて、男は「実は私は今帰仁の若按司なんだよ。ところが、ここにこれこれの事情があって、(火鏡を)取り返すために来ているから、それを取った暁には貴方を連れて逃げるから。」と。「そうですか。」と女も分かった。それから、若按司は、そこの娘に「貴方の家には妙な鏡があるというが。」と、誰も居ない時に聞いたわけだ。その娘は、この男に心から惚れているので、「あります。」と答えた。「ただ一目だけ見せてくれないか。」と、男が言うと、女はすぐにその火鏡を持って来て見せたそうだ。(若按司はすでに)この鏡の偽物を用意して来ているので、(本物の火鏡と)すり替えて、「これは、持っていってしまいなさい。」と言って娘に(偽物を)渡した。そうするうちには連絡がきた。(若按司は)持っていたので、さっそく鏡を渡した。そして(自分も)、砂辺殿内の娘を連れて逃げた。そこの部下達がこの事を知って、「あの者は敵の回し者だったんだな。早く追っていって搦めてこよう。」と。ところがもう、その鏡は若按司の部下達が受け取ってとっくに(城に)持っていって、戦いの準備をしていた‥‥。こうして、城を取り返し、今帰仁城はまた元通り取り戻したので、一般住民全員に、「お祝いに来なさい。」と招いた。また、(若按司が)北谷の砂辺殿内で(使われていた時に)一緒だった下男頭の上泊という人がいた。その人は、目は見えないが三味線を弾けるので、「今帰仁城が元の世を取り戻したお祝いだったら。」と言って、三味線を担いで城に行ったそうだ。ところが、門番達が門前払いをするので、「いや、私は是非行く。」と頑張った。するとこの若按司はその人を覚えていたんでしょうね。「その男は、昔、若按司が(下男として使われていた時に)一緒だった人だそうだ。若按司が許して居られるから入りなさい。」といって、(上泊を)城の中に入れたそうだ。そこでは、この上泊という人は目は見えないけれども、若按司の声を覚えていたんでしょうね。若按司の声を聞くと、「おや、今の声は岡春ではないか。〈若按司は下男に身をやつしていた時、改名していたんでしょう、岡春と〉お前という奴は、私達の苦労も知らず、このようにしておいて。主人も、この世を去ってしまって、私一人残っているんだ。」と言って、そこでわめいたようだ。するともう、若按司の部下達は、「若按司に向かってそんなにわめくのか。」とょんて(怒った)。けれども、若按司には分かっているので一緒に(下男奉公していた)昔の馴染みだと。そうしていると、ここへ嫁に来た娘が、つまり砂辺殿内の娘がきて、「上泊大主、私達もこうして助かってますよ。」と言った。そして、その娘の着物の裾で上泊大主の目を拭くと、大主の目が開いたそうだ。上泊大主は目が見えるようになり、それからは、そこで一緒に、今帰仁城の勤めをしたという話だ。
全体の記録時間数 10:24
物語の時間数 10:24
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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