昔のことだよ。ウスメーとンーメー〈おじいさんとおばあさん〉がいて、とても誠実な人たちがいた。しかしとても貧乏者だったそうだ。お正月をむかえるのだが、大晦日の晩になっても、年越しをするお米を買うお金もなく、御飯を炊いて食べるお金もなかった。そして二人で年の晩に、「私達は地炉に火を焚いて、火をぬくんで正月を済ませようね。」と話していた。そんなふうに二人起きて火を焚いて年越しをしていた。神様のひき合わせであったのだろうか、そこへ棺をかついだ人が〈棺には死人が入れてあった〉やって来て、「ごめん下さい、私は、ここよりもっと遠くまで行くつもりだが、今日には、向こうに到着することができないので、貴方のところに泊めて下さらないか。」と言った。「ところで君が持っているのは何だね。」「これは棺箱です。」「しかしそれは亡くなった人を入れるものだよ。」「はい、これには死人がはいっています。そんなわけで、泊まる所がないので、泊めて下さい。」と言った。「棺の中に人が入っているのなら、それに泊まる所がないと困るでしょう。特に今日は大晦日だし、お願いされたわけだから、どうぞここに泊まりなさい。」と言い、泊めてあげた。その人も、棺箱も家の内に入れて、一緒に泊まった。夜が明け、元日になったが、その人はいなかった。棺をかついで来た人はいなく、「これには人がはいっています。」といっていた箱だけが残っていた。「これは大変なことになった。」と、その誠実なお年寄り達は困った。「これは大変なことだ。この棺箱には人が入っていると言っていたから、これを開けて見て、その中の人がどんな人か確めてから、〈昔は筑佐事と呼んでいた警官に知らせなくてはならないので〉巡査に知らせよう。」と思い、「ねえおばあさん、この箱を開けてみようじゃないか。」と言って夫婦で、元日の朝に開けてみると、人が入っているとかついで来た棺箱の中には、人ではなく、ぜんぶ小判、黄金が入っていた。そういう出来事には、昔は天から降りて来て、人事に尽くす精霊だと呼んだ。この精霊の使いが、この人達はこんなに誠実だが、貧乏で正月もできないので、これは、きっと先祖の神様から授かったものだと信じている。それから、この人達は棺箱いっぱいの黄金で、ゆったりと暮らしたそうだ。どうして昔は、棺箱に宝箱といったかというと、こういう例えからその名はつけられたそうだ。
| レコード番号 | 47O370669 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C031 |
| 決定題名 | 火正月 宝箱(方言) |
| 話者がつけた題名 | 宝箱の話 |
| 話者名 | 屋良朝助 |
| 話者名かな | やらちょうすけ |
| 生年月日 | 19070608 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村瀬名波 |
| 記録日 | 19770815 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第7班 |
| 元テープ番号 | 読谷村瀬名波T07A10 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | んかしよー |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集4瀬名波の民話 P85 |
| キーワード | ウスメー,ンーメー,貧乏者,正月,大晦日の晩,年越し,お米を買うお金がない,火正月,神様,棺,死人,元日,小判,黄金,精霊 |
| 梗概(こうがい) | 昔のことだよ。ウスメーとンーメー〈おじいさんとおばあさん〉がいて、とても誠実な人たちがいた。しかしとても貧乏者だったそうだ。お正月をむかえるのだが、大晦日の晩になっても、年越しをするお米を買うお金もなく、御飯を炊いて食べるお金もなかった。そして二人で年の晩に、「私達は地炉に火を焚いて、火をぬくんで正月を済ませようね。」と話していた。そんなふうに二人起きて火を焚いて年越しをしていた。神様のひき合わせであったのだろうか、そこへ棺をかついだ人が〈棺には死人が入れてあった〉やって来て、「ごめん下さい、私は、ここよりもっと遠くまで行くつもりだが、今日には、向こうに到着することができないので、貴方のところに泊めて下さらないか。」と言った。「ところで君が持っているのは何だね。」「これは棺箱です。」「しかしそれは亡くなった人を入れるものだよ。」「はい、これには死人がはいっています。そんなわけで、泊まる所がないので、泊めて下さい。」と言った。「棺の中に人が入っているのなら、それに泊まる所がないと困るでしょう。特に今日は大晦日だし、お願いされたわけだから、どうぞここに泊まりなさい。」と言い、泊めてあげた。その人も、棺箱も家の内に入れて、一緒に泊まった。夜が明け、元日になったが、その人はいなかった。棺をかついで来た人はいなく、「これには人がはいっています。」といっていた箱だけが残っていた。「これは大変なことになった。」と、その誠実なお年寄り達は困った。「これは大変なことだ。この棺箱には人が入っていると言っていたから、これを開けて見て、その中の人がどんな人か確めてから、〈昔は筑佐事と呼んでいた警官に知らせなくてはならないので〉巡査に知らせよう。」と思い、「ねえおばあさん、この箱を開けてみようじゃないか。」と言って夫婦で、元日の朝に開けてみると、人が入っているとかついで来た棺箱の中には、人ではなく、ぜんぶ小判、黄金が入っていた。そういう出来事には、昔は天から降りて来て、人事に尽くす精霊だと呼んだ。この精霊の使いが、この人達はこんなに誠実だが、貧乏で正月もできないので、これは、きっと先祖の神様から授かったものだと信じている。それから、この人達は棺箱いっぱいの黄金で、ゆったりと暮らしたそうだ。どうして昔は、棺箱に宝箱といったかというと、こういう例えからその名はつけられたそうだ。 |
| 全体の記録時間数 | 4:18 |
| 物語の時間数 | 4:18 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |