モーイ親方 難題(方言)

概要

伊野波姓のモーイは、首里の生まれだったそうだね。首里の生まれでいらっしゃるが、モー小さい時にね、あの空から落ちてきた竜の糞を取って喰ったようだ。それで、その時から偉い人になって、いや、偉い人ではなく、それから馬鹿者になった。竜の糞を喰ったから、ほんとうは大変偉い人だったが、気が狂ったふりをしていた。
そして首里の三町や那覇四町、泊、前島のおばあさんたちが機織りをする時に使うメーグサを、それを取って捨てて、また、こうして腰からくびって使う布織りのクシジャーと言うんだが、機織りする時に、この腰からかけるでしょう。これも、機織りして置いておくとね、これも取ってどけて捨ててしまって。
モーイはひたすら鶏と遊んだり、雄鶏を闘わせたりなどしてそんな知恵しかなかった。あの家、この家に迷惑をかけているのも知らず、野菜畑も踏んづけて荒らしていた。「もう、この伊野波のモーイは、伊野波姓のモーイは馬鹿者なんだ。野菜畑も荒らすし、また、女達が布織る時に使うメーグサやクシジャーも全部捨ててなくしてしまって。もう、こいつほど馬鹿な奴はいない。」と怒っていたようだ。
そういう訳だったが、もう、親は、あれほどの伊野波殿内の主人でしょう。モーイは首里の伊野波殿内の子供だから、これは良い子だがね、こんな馬鹿になってね。頭髪も切らない伊野波のカンターモーヤーと言っていた。そして、頭髪を切ることも知らない馬鹿者になってしまってと、残念に思っていた。今でこそ、ここは沖縄でしょう。沖縄も日本の中のひとつでしょう。おそくから大和世になってここも共通語を使うようになった。この御用はね、灰縄御用といって、灰縄と雄鶏の卵、また、あの宮古の何とか山というのを、三つ持って来いとの御用が内地からこうしてきたので、もう親は残念に思い、灰縄なんて持って行ける筈がない。灰でしょう、灰縄なんて持って行ける筈がないさ。また、鶏の雄鶏が卵を産むかと、親はがっかりした。また、山も、この山だもの、どうして持って行けるかとがっかりしていた。それで、お父さんは、黙りこんでいらっしゃるのをみてモーイが、「どうして、お父さんは、そんなに黙りこくっていらっしゃるのですか。」と聞くと、「こうこうで、あそこ内地から、この御用が来ているが、これはどういう訳か。」と言ったのでモーイは「これは、私が早速行ってやってくるよ。」と言うと(父さんは)「お前は、人からさえも馬鹿者だと言われているのに、どうしてこれができるか。」と言った。モーイは「大丈夫だから、私に行かせて下さい。」と言った。もう親は承知して行かせたそうだ。 すると、あそこの方では、上の人達が全員集まって沖縄から御用をいいつかった者が来るといって集まった。そうして、「沖縄から誰が来たか。」と聞かれたので、「私が来ました。」と言うと、「どうして、お父さんは来ないで君が来たのか。」と問われた。「私のお父さんは、産気づいて来ることができません。それで私が来ました。」と言ったところ、「何だと!男が子供を産むか。お前のお父さんが産気づいているとはどういうことか。」と聞いた。すかさずモーイは「それでは、この雄鶏の卵は、どこから出ますか。」と言い返したようだ。すると、「ああ、そうだね、なるほど雄鶏は卵を産まないね。」と納得したようだ。また今度は「それでは灰縄は持ってきたか。」と問われてね、「はい、持ってきました。」と、これはまた、大きな縄を綯ってそれをきつく締めて、ゆっくりゆっくり焼き、これを焼くのに何日かかったかは分らないけれども、焼いてみると本当に灰縄になって、これが縄のようにできていたんだって。それで、そのまま持って行ってさし上げたところ、「その灰縄というのはこれです。」とさし出すと、「ああ、なるほど!。」と、またその時にも納得したようだ。では「あの山は持ってきたか。」とたずねられてモーイは「その山は準備はできていますけれども、これを積む船がないので、船を造って下さい。」と答えた。「ああ、そうか。」と負けたことを残念に思っていたという話。それもこう言っていた。このモーイという人は、馬鹿には見えるが、これは竜の糞を喰ってこうして偉い人になったんだって。

再生時間:4:39

民話詳細DATA

レコード番号 47O370496
CD番号 47O37C023
決定題名 モーイ親方 難題(方言)
話者がつけた題名 モーイ親方
話者名 当山カナ
話者名かな とうやまかな
生年月日 19031015
性別
出身地 沖縄県読谷村瀬名波
記録日 19761114
記録者の所属組織 読谷村民話調査団第2班
元テープ番号 読谷村瀬名波T01B05
元テープ管理者 読谷村立歴史民俗資料館
分類 笑話
発句(ほっく)
伝承事情
文字化資料
キーワード 伊野波姓のモーイ,首里の生まれ,竜の糞を取って喰った,偉い人,機織,メーグサ,布織りのクシジャー,野菜畑,モーイは馬鹿者,頭髪も切らない,伊野波のカンターモーヤー,灰縄御用,雄鶏の卵、,宮古の山,三つ持って来い,父は産気づいて来れない,縄を綯ってゆっくり焼いた,山を積む船,
梗概(こうがい) 伊野波姓のモーイは、首里の生まれだったそうだね。首里の生まれでいらっしゃるが、モー小さい時にね、あの空から落ちてきた竜の糞を取って喰ったようだ。それで、その時から偉い人になって、いや、偉い人ではなく、それから馬鹿者になった。竜の糞を喰ったから、ほんとうは大変偉い人だったが、気が狂ったふりをしていた。 そして首里の三町や那覇四町、泊、前島のおばあさんたちが機織りをする時に使うメーグサを、それを取って捨てて、また、こうして腰からくびって使う布織りのクシジャーと言うんだが、機織りする時に、この腰からかけるでしょう。これも、機織りして置いておくとね、これも取ってどけて捨ててしまって。 モーイはひたすら鶏と遊んだり、雄鶏を闘わせたりなどしてそんな知恵しかなかった。あの家、この家に迷惑をかけているのも知らず、野菜畑も踏んづけて荒らしていた。「もう、この伊野波のモーイは、伊野波姓のモーイは馬鹿者なんだ。野菜畑も荒らすし、また、女達が布織る時に使うメーグサやクシジャーも全部捨ててなくしてしまって。もう、こいつほど馬鹿な奴はいない。」と怒っていたようだ。 そういう訳だったが、もう、親は、あれほどの伊野波殿内の主人でしょう。モーイは首里の伊野波殿内の子供だから、これは良い子だがね、こんな馬鹿になってね。頭髪も切らない伊野波のカンターモーヤーと言っていた。そして、頭髪を切ることも知らない馬鹿者になってしまってと、残念に思っていた。今でこそ、ここは沖縄でしょう。沖縄も日本の中のひとつでしょう。おそくから大和世になってここも共通語を使うようになった。この御用はね、灰縄御用といって、灰縄と雄鶏の卵、また、あの宮古の何とか山というのを、三つ持って来いとの御用が内地からこうしてきたので、もう親は残念に思い、灰縄なんて持って行ける筈がない。灰でしょう、灰縄なんて持って行ける筈がないさ。また、鶏の雄鶏が卵を産むかと、親はがっかりした。また、山も、この山だもの、どうして持って行けるかとがっかりしていた。それで、お父さんは、黙りこんでいらっしゃるのをみてモーイが、「どうして、お父さんは、そんなに黙りこくっていらっしゃるのですか。」と聞くと、「こうこうで、あそこ内地から、この御用が来ているが、これはどういう訳か。」と言ったのでモーイは「これは、私が早速行ってやってくるよ。」と言うと(父さんは)「お前は、人からさえも馬鹿者だと言われているのに、どうしてこれができるか。」と言った。モーイは「大丈夫だから、私に行かせて下さい。」と言った。もう親は承知して行かせたそうだ。 すると、あそこの方では、上の人達が全員集まって沖縄から御用をいいつかった者が来るといって集まった。そうして、「沖縄から誰が来たか。」と聞かれたので、「私が来ました。」と言うと、「どうして、お父さんは来ないで君が来たのか。」と問われた。「私のお父さんは、産気づいて来ることができません。それで私が来ました。」と言ったところ、「何だと!男が子供を産むか。お前のお父さんが産気づいているとはどういうことか。」と聞いた。すかさずモーイは「それでは、この雄鶏の卵は、どこから出ますか。」と言い返したようだ。すると、「ああ、そうだね、なるほど雄鶏は卵を産まないね。」と納得したようだ。また今度は「それでは灰縄は持ってきたか。」と問われてね、「はい、持ってきました。」と、これはまた、大きな縄を綯ってそれをきつく締めて、ゆっくりゆっくり焼き、これを焼くのに何日かかったかは分らないけれども、焼いてみると本当に灰縄になって、これが縄のようにできていたんだって。それで、そのまま持って行ってさし上げたところ、「その灰縄というのはこれです。」とさし出すと、「ああ、なるほど!。」と、またその時にも納得したようだ。では「あの山は持ってきたか。」とたずねられてモーイは「その山は準備はできていますけれども、これを積む船がないので、船を造って下さい。」と答えた。「ああ、そうか。」と負けたことを残念に思っていたという話。それもこう言っていた。このモーイという人は、馬鹿には見えるが、これは竜の糞を喰ってこうして偉い人になったんだって。
全体の記録時間数 4:39
物語の時間数 4:39
言語識別 方言
音源の質
テープ番号
予備項目1

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