娘が、ある若者と交際を始めたが、娘は相手の家に結婚して行くことを許されず、二人は離れてしまった。それで、その女は思いを秘めたまま短命で、この世を去ってしまった。そして、死後も、女はいつも人間に化けてやろうと思っていた。このように、心の中で決心していたので、いつの間にかそれが幽霊になってしまった。ある時、男が遊びに行って帰り道、女を埋めてある墓に寄ってみた。そして道端を通って家に来た。すると女の幽霊がついて来て手をつかまえた。男は「何だお前は!どういう訳だ。」と。すると女は「もう、生きている時にも一緒になれなかったので、死んでからでも一緒になってみせる!」と言った。「ほんとうに、私が悪かった。君は短命だったんだから仕方がない。極楽して、私との縁も断ち切ってくれ。」と言うと、「いや、断ち切ることはできない。あなたたちに子供が生まれたら、私が奪い取って、根切れさせてやる!」と言った。男は「しまった、変な女に出会ったもんだ。」と後悔した。男は家に帰って妻に話した。妻は「どうしたことか。」と聞いた。「その女は、私の妻になる前に死んだので、あの世に行っても私のことを恨み、私たちの子供はあの女が奪い取って、子孫は継がせないと言った。」と。「死んだ女が何も言えるはずがない。相手にするな、どうってことないさ。心配しないで。」と言った。男の子が生まれたが、幽霊は予告どうりそこへやってきて、寝ている男の子の蚊帳をひったくり、つかまえて、天に昇ろうとした。男が「ねえ、今のような状態なんだ。」と言った。妻が「なぜあなたは、ここに来たのか。」と聞くと、「それは、お前の夫とは、生きている時に交際していたので、死んでも一緒になりたいと思い、私が引き取りに来たんだ。」と。「いや、大切な夫をあなたに引き取らせることはできない。」と。「そうか、では、すぐにでもこの子を私が奪い取って、根切れさせてやるから。」と言った。「ああそうか」と妻も言った。夫が「ねぇ、こんな状態だから、君も心配しないでくれ。私はもう、男の子も生まれたことだし、あの女の側に行っても良いから、君も思い切って忘れよ。」と妻に言うと、「いや、思い切れない。あなたの行く所が、どんな所なのか、私も一緒に行ってみたい。」と言った。幽霊になった女の後を追って、墓へ行って見ると、幽霊はまた出て来た。そして妻を見て「どうして、お前までついて来たのか。」と。「私の大切な夫を、あなたに引き取らせる以上は、どんな所に引き取られるのだろうと、後をつけて来たのだ。」と言った。「ああそういう訳か。それでは、ここに宝物があるから、お前はこれを持って行って暮らしなさい。」と言った。妻は「何だこれは?」と聞いた。幽霊が「少し待ってなさい、取って来るから。」と言い、桝を持って来た。「何だ、これは、桝じゃないか。」と妻が言うと、「そうだよ、勿論さ。」「それでは、この角は?」「こちらの角を振れば、銭金が出て、お前が豊かに暮らせる角だよ。」と言った。それから「この角はまた、雑穀が出る角でもある。この角はまた、楽しめる角である。」と。その幽霊が握っている角は……。幽霊に「あなたが握っている角は、何かな。」と聞いた。「この角で、あなたが恨んでいる人を吹っ飛ばせば、その人はたちまちにして死んでしまう。」と答えた。「なるほどそういうことか、それではありがとう。」と受け取った。妻は「お前ほど、憎い人はいない。」と言って、すぐ持っていた角で、この幽霊を打ってみると、幽霊は死んだ。再び墓の内に戻り、摺鉢をかぶったような魔物、いわゆる幽霊になって出て来て戦い始めたそうだ。そんなことがあってから、「そうだね、こんなことで人間が死んでしまってはいけないから、桝の角で人を打つものではないね。」ということになった。それから、桝の角では人を打つものではない、といわれるようになった。
| レコード番号 | 47O370322 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C015 |
| 決定題名 | 枡の角(方言) |
| 話者がつけた題名 | 枡の角 |
| 話者名 | 金城太郎 |
| 話者名かな | きんじょうたろう |
| 生年月日 | 18860920 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県読谷村長浜 |
| 記録日 | 19761031 |
| 記録者の所属組織 | 読谷村民話調査団第5班 |
| 元テープ番号 | 読谷村長浜T06A02 |
| 元テープ管理者 | 読谷村立歴史民俗資料館 |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | 若い頃(24、5歳)に那覇で芝居を見た |
| 文字化資料 | 読谷村民話資料集3長浜の民話 P18 |
| キーワード | 娘,若者,女は世を去る,幽霊,極楽,子供を奪う,宝物,桝の角で人を打つものではない |
| 梗概(こうがい) | 娘が、ある若者と交際を始めたが、娘は相手の家に結婚して行くことを許されず、二人は離れてしまった。それで、その女は思いを秘めたまま短命で、この世を去ってしまった。そして、死後も、女はいつも人間に化けてやろうと思っていた。このように、心の中で決心していたので、いつの間にかそれが幽霊になってしまった。ある時、男が遊びに行って帰り道、女を埋めてある墓に寄ってみた。そして道端を通って家に来た。すると女の幽霊がついて来て手をつかまえた。男は「何だお前は!どういう訳だ。」と。すると女は「もう、生きている時にも一緒になれなかったので、死んでからでも一緒になってみせる!」と言った。「ほんとうに、私が悪かった。君は短命だったんだから仕方がない。極楽して、私との縁も断ち切ってくれ。」と言うと、「いや、断ち切ることはできない。あなたたちに子供が生まれたら、私が奪い取って、根切れさせてやる!」と言った。男は「しまった、変な女に出会ったもんだ。」と後悔した。男は家に帰って妻に話した。妻は「どうしたことか。」と聞いた。「その女は、私の妻になる前に死んだので、あの世に行っても私のことを恨み、私たちの子供はあの女が奪い取って、子孫は継がせないと言った。」と。「死んだ女が何も言えるはずがない。相手にするな、どうってことないさ。心配しないで。」と言った。男の子が生まれたが、幽霊は予告どうりそこへやってきて、寝ている男の子の蚊帳をひったくり、つかまえて、天に昇ろうとした。男が「ねえ、今のような状態なんだ。」と言った。妻が「なぜあなたは、ここに来たのか。」と聞くと、「それは、お前の夫とは、生きている時に交際していたので、死んでも一緒になりたいと思い、私が引き取りに来たんだ。」と。「いや、大切な夫をあなたに引き取らせることはできない。」と。「そうか、では、すぐにでもこの子を私が奪い取って、根切れさせてやるから。」と言った。「ああそうか」と妻も言った。夫が「ねぇ、こんな状態だから、君も心配しないでくれ。私はもう、男の子も生まれたことだし、あの女の側に行っても良いから、君も思い切って忘れよ。」と妻に言うと、「いや、思い切れない。あなたの行く所が、どんな所なのか、私も一緒に行ってみたい。」と言った。幽霊になった女の後を追って、墓へ行って見ると、幽霊はまた出て来た。そして妻を見て「どうして、お前までついて来たのか。」と。「私の大切な夫を、あなたに引き取らせる以上は、どんな所に引き取られるのだろうと、後をつけて来たのだ。」と言った。「ああそういう訳か。それでは、ここに宝物があるから、お前はこれを持って行って暮らしなさい。」と言った。妻は「何だこれは?」と聞いた。幽霊が「少し待ってなさい、取って来るから。」と言い、桝を持って来た。「何だ、これは、桝じゃないか。」と妻が言うと、「そうだよ、勿論さ。」「それでは、この角は?」「こちらの角を振れば、銭金が出て、お前が豊かに暮らせる角だよ。」と言った。それから「この角はまた、雑穀が出る角でもある。この角はまた、楽しめる角である。」と。その幽霊が握っている角は……。幽霊に「あなたが握っている角は、何かな。」と聞いた。「この角で、あなたが恨んでいる人を吹っ飛ばせば、その人はたちまちにして死んでしまう。」と答えた。「なるほどそういうことか、それではありがとう。」と受け取った。妻は「お前ほど、憎い人はいない。」と言って、すぐ持っていた角で、この幽霊を打ってみると、幽霊は死んだ。再び墓の内に戻り、摺鉢をかぶったような魔物、いわゆる幽霊になって出て来て戦い始めたそうだ。そんなことがあってから、「そうだね、こんなことで人間が死んでしまってはいけないから、桝の角で人を打つものではないね。」ということになった。それから、桝の角では人を打つものではない、といわれるようになった。 |
| 全体の記録時間数 | 5:16 |
| 物語の時間数 | 5:16 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |