これは唐旅する人の話だよ。この唐旅をする人は、一人は新城(あらぐしく)と言い、一人は宮城(なーぐしく)という人なんだが、新城は唐にはとっくに行ってきているわけだ。そしたら今度は、宮城の行く番になったわけだ。それで、この宮城が、「ああ、半年もの長い間、唐にいるわけだから、びた一文の商いもしないで、ずっと遊ぶというわけにはいかないだろう。お前は、唐に行ってきたんだったら、あそこで何が売れるのか知っているだろう。」と新城に尋ねると、「ああ、あるよ。」と言うので、「何だ。」とさらに聞いた。「蒲葵(くば)の葉っぱだ。」と答えた。「蒲葵の葉っぱは売れるよ。持って行け。」と新城は教えた。それからは、夫婦とも唐に行くまでに、ずうっと蒲葵の葉っぱを取り集めて、それを縛って、夫は、「明日はもう船に乗るから。」と言って準備した。そして、妻に、「私は首里の王様の御供をしないといけないから、お前はこの蒲葵の葉っぱを持って港に来なさい。」と言いつけた。妻が唐船グムイの港まで蒲葵の葉を持って行くと、夫はそれを船に積みこんだ。蒲葵の葉を積んでも一人として、「何するんだこれは。」「どうするんだ。」と言う人はいなかった。それで、この宮城は、「この蒲葵の葉は、じゃま物だからといって叱られるかと思ったが、何ともないんだな。」と安心した。やがて船が唐に着いたので、宮城は蒲葵の葉っぱをかついで町に出ると、そこらあたりで蒲葵を売ろうと、かついで歩いたが、「あれまあ、歩いたって、一人も見ようとしない。『買おう』という人もいない。不思議なことだなあ。」と言って首をかしげた。しかたないので、「ああ、今は遅くなってしまった。まだ早いからもうここで、ここは見晴らしもいいところだから、ここですこし眠ってから船に戻ろう。」と思って眠っていると、何か聞こえたらしい。「ああ、ここは良い所だなあ。」と声がして、また一言、「おい。」と大声で呼ぶらしいんだ。「はい。」と言って、起きてみると、人一人もいないんだ。「はあ、不思議だ。誰かの魂かなあ。なにかな。」と不思議に思ったわけだ。それでも翌日、また蒲葵の葉をかつぐと、「ああ、ここは近いから、売れなかったんだ。もう少し遠くに持っていってみようか。」と言って遠くの町までかついで行ったが、見ることは見るが、「それを買おう。」と言うのは一人もいないらしいんだ。「これはやっかいなことになったな、『買おう』と言う人がいたら、私だって安くしてでも売るのに。一人だって『買おう』というのはいない。」と言って、また元の所までかついで来ると、前の日眠っていた所に持ってきて蒲葵の葉を置いた。そして、「はあもうどうなるんだろう。ああ、いい考えがある。」宮城が眠っていた上のところに石仏が多く座っているらしいんだ。石仏が。「この石仏は、照りつけると照らされているし、降ると濡れている。もうこういうことだから、蒲葵の葉は全部石仏に分けてかぶせよう。」と言ってかぶせたらしい。すると、一つも余らないで、きっちりあたっていたらしい。持っていった蒲葵の葉は。そして、「もう石仏にかぶせたからいいよ。持ち帰って家に戻るよりはいいよ。まだ船に戻るには早いから、また少し眠るとしよう。」と言って眠っていると、この石仏が呼んだのか、「おい。」と大声で呼んだらしい。それで、「はい。」と起きると、「おい、お前の寝ているところの左から何番目のところに宝があるから、それを取ってもらえ。」と言ったらしい。すると、「これは夢なのか何なのか、よく意味がわからんなあ。」と疑ったが、「まずは、ああいうふうに言うんだから、調べてみよう。あんなふうに言うから調べることにしよう。そうだ、左から何番目の石仏と言っていたから。」と言って、そこをよく見ると調べてみると、そこの石の一つだけ変わっていたらしい。それでその石を抜いてみると、甕が入っていたんだ。「はあ、宝が入っているから、お前が取ってもらえと言うのは本当だったんだな。これは間違いない。」と思って立派に取って、自分の手拭いに包んで懐に入れると、また、その甕をもとのところに埋めた。それから、宮城は船に戻ると、もう船が出るまで、もうどこにも行かないで、まったくどこにも行かなかった。この宝をずっと番をして守っているらしいんだ。だから、こんなにして宝を手に入れたのは宮城に徳があったわけだ。やがて、「もう順風だ。さあ、お前たちも身仕度して準備しろ。」と船頭が言ったので、身仕度をすませ準備した。それから船は港を)出た。ところが船はもう少しで沖縄に着くんだよ。もう少しで着くところだが、この船があんなに走っていた船が、止まってせんぜん進まなくなったらしい。船頭は、「これは確かに何かある。こんなに走っていた船が止まるのは何かあるんだ。何か変わったことがある。」と言って、船調べを始めたらしい。船調べをすると、この宮城がいつも寝ている所に手拭の包みがあったらしいんだ。船頭は、「こいつめ、こんなものを積むから、これを持っているから、この船は走らないんだ。」と言って、そして、この手拭いを取りあげて、海に投げすてたんだね。すると、それからはもうこの宮城は、沖縄に来る間、ずっとうつぶせになって、「ああ、宝ものを取られた。」と言って、沖縄に着く間、ずっとうつぶせになって不機嫌になった。そうこうして船が沖縄に着いたので、家に帰ると宮城は、「実はこういうことだったよ。」と話した。母親は、「お前は唐から戻って来たんだから、隣近所のお婆さん方や、お爺さん方をお呼びして、お茶だけでもごちそうしないといけないよ。そういうことがあったからといって知らんふりはできないよ。」と言った。「そうは言ってもどうしましょうか。私はお金は一銭もないんですよ。」と答えた。お金は無いと言うと、「私ができるから。」と言って、「ほらほら、私の頭から二つ添髪を切りなさい。ほら、あんたのからも一つは切りなさい。」と嫁に言いつけた。母親は、「この添髪というのは、別の品物とはちがって、どこでも必ず売れるからね、これを持って行って売って、そして町まで行って、今日、お客さんに差し上げる、お茶のおかずを買ってきなさい。」と嫁に言いつけた。ところが嫁は、添髪を売って金にかえたが、肉市場行っても閉まっていて肉はないし、魚市場に行っても閉まってないので、そのまま家に帰ったらしいんだ。すると夫が、「お前、本当に何もなかったのか。」と聞くので、妻は、「十四五斥ばかりの蝿がたかっているミーバヤーが一つありました。たったそれ一つだけありました。」と答えた。夫は、「あるものを買ってくるんだよ。無いからと言ってそれですまされるか。買ってくるんだ。」と叱った。それで嫁は、このミーバヤーを買ってきたんだね。買ってきたら母親がそれをご覧になって、「これは女じゃ料理できない。お前、魚を料理しなさい。骨がつかないように、ちゃんと料理して、御茶といっしょに出して、みんなに差し上げなさい。」と息子に言いつけた。「はい、はいわかりました。」と言って、魚の腹を裂いてみると、このミーバヤーが宝を食っていた。「はあ、私のものだ。」と言って宝を懐にしまった。それを見て母親が、「これはなま臭物だよ。それを懐に入れて。」と言うと、「いやいや、この魚の話は、四五日後に、私があらましを話しますから。今は何も話しません。」と答えた。それから、みんなをお呼びして、お客さんたちにお茶を差しあげ、おかずも差しあげたりしてから、宮城は、「この魚は私を助けてくれたものだから、骨になっても、私たちの前の畑は、海が見えるから、頭を海の方に向けて、でーふあーを被せて、そこに葬ることにしよう。」と家族に話した。そのまま出しておくと、動物が食べるからと言って、でーふあーを被せ、海に頭を向けて葬った。するとこの畑はね、何も植えてないらしいんだが、千坪の畑に、自然に野菜が生えだしたんだ。毎日売ってもきりがないほど。この魚の力、頭の力らしいんだ、これは。だから、徳のある人は、何から何まで、徳がつくんだよ。それから、十日たったので、「こっちに来なさい。お母さんもいらっしゃい。これですよ。私の宝物というのは、これですよ。」と言ってを見せた。すると母親が、「マサンドゥ、これは何なの。」と聞いたので、「これは、国一番の上等の宝物。黄金というもんですよ。」と教えると、「でかした。」と言って。「船頭に取られて、海に投げ捨てられても、自然にまた、神がここまで、動物に助けさせて、持ってきてくれましたよ。」と言って神に感謝した。こういった話だ。
| レコード番号 | 47O376446 |
|---|---|
| CD番号 | 47O37C260 |
| 決定題名 | クバ傘地蔵(シマグチ) |
| 話者がつけた題名 | - |
| 話者名 | 荻堂盛仁 |
| 話者名かな | おぎどうせいじん |
| 生年月日 | 18930702 |
| 性別 | 男 |
| 出身地 | 沖縄県恩納村太田 |
| 記録日 | 19760530 |
| 記録者の所属組織 | 沖縄口承文芸学術調査団 |
| 元テープ番号 | 恩納村T43B02 |
| 元テープ管理者 | 沖縄伝承話資料センター |
| 分類 | 本格昔話 |
| 発句(ほっく) | - |
| 伝承事情 | - |
| 文字化資料 | - |
| キーワード | 唐旅,新城,宮城,蒲葵,石仏,甕,宝もの,黄金 |
| 梗概(こうがい) | これは唐旅する人の話だよ。この唐旅をする人は、一人は新城(あらぐしく)と言い、一人は宮城(なーぐしく)という人なんだが、新城は唐にはとっくに行ってきているわけだ。そしたら今度は、宮城の行く番になったわけだ。それで、この宮城が、「ああ、半年もの長い間、唐にいるわけだから、びた一文の商いもしないで、ずっと遊ぶというわけにはいかないだろう。お前は、唐に行ってきたんだったら、あそこで何が売れるのか知っているだろう。」と新城に尋ねると、「ああ、あるよ。」と言うので、「何だ。」とさらに聞いた。「蒲葵(くば)の葉っぱだ。」と答えた。「蒲葵の葉っぱは売れるよ。持って行け。」と新城は教えた。それからは、夫婦とも唐に行くまでに、ずうっと蒲葵の葉っぱを取り集めて、それを縛って、夫は、「明日はもう船に乗るから。」と言って準備した。そして、妻に、「私は首里の王様の御供をしないといけないから、お前はこの蒲葵の葉っぱを持って港に来なさい。」と言いつけた。妻が唐船グムイの港まで蒲葵の葉を持って行くと、夫はそれを船に積みこんだ。蒲葵の葉を積んでも一人として、「何するんだこれは。」「どうするんだ。」と言う人はいなかった。それで、この宮城は、「この蒲葵の葉は、じゃま物だからといって叱られるかと思ったが、何ともないんだな。」と安心した。やがて船が唐に着いたので、宮城は蒲葵の葉っぱをかついで町に出ると、そこらあたりで蒲葵を売ろうと、かついで歩いたが、「あれまあ、歩いたって、一人も見ようとしない。『買おう』という人もいない。不思議なことだなあ。」と言って首をかしげた。しかたないので、「ああ、今は遅くなってしまった。まだ早いからもうここで、ここは見晴らしもいいところだから、ここですこし眠ってから船に戻ろう。」と思って眠っていると、何か聞こえたらしい。「ああ、ここは良い所だなあ。」と声がして、また一言、「おい。」と大声で呼ぶらしいんだ。「はい。」と言って、起きてみると、人一人もいないんだ。「はあ、不思議だ。誰かの魂かなあ。なにかな。」と不思議に思ったわけだ。それでも翌日、また蒲葵の葉をかつぐと、「ああ、ここは近いから、売れなかったんだ。もう少し遠くに持っていってみようか。」と言って遠くの町までかついで行ったが、見ることは見るが、「それを買おう。」と言うのは一人もいないらしいんだ。「これはやっかいなことになったな、『買おう』と言う人がいたら、私だって安くしてでも売るのに。一人だって『買おう』というのはいない。」と言って、また元の所までかついで来ると、前の日眠っていた所に持ってきて蒲葵の葉を置いた。そして、「はあもうどうなるんだろう。ああ、いい考えがある。」宮城が眠っていた上のところに石仏が多く座っているらしいんだ。石仏が。「この石仏は、照りつけると照らされているし、降ると濡れている。もうこういうことだから、蒲葵の葉は全部石仏に分けてかぶせよう。」と言ってかぶせたらしい。すると、一つも余らないで、きっちりあたっていたらしい。持っていった蒲葵の葉は。そして、「もう石仏にかぶせたからいいよ。持ち帰って家に戻るよりはいいよ。まだ船に戻るには早いから、また少し眠るとしよう。」と言って眠っていると、この石仏が呼んだのか、「おい。」と大声で呼んだらしい。それで、「はい。」と起きると、「おい、お前の寝ているところの左から何番目のところに宝があるから、それを取ってもらえ。」と言ったらしい。すると、「これは夢なのか何なのか、よく意味がわからんなあ。」と疑ったが、「まずは、ああいうふうに言うんだから、調べてみよう。あんなふうに言うから調べることにしよう。そうだ、左から何番目の石仏と言っていたから。」と言って、そこをよく見ると調べてみると、そこの石の一つだけ変わっていたらしい。それでその石を抜いてみると、甕が入っていたんだ。「はあ、宝が入っているから、お前が取ってもらえと言うのは本当だったんだな。これは間違いない。」と思って立派に取って、自分の手拭いに包んで懐に入れると、また、その甕をもとのところに埋めた。それから、宮城は船に戻ると、もう船が出るまで、もうどこにも行かないで、まったくどこにも行かなかった。この宝をずっと番をして守っているらしいんだ。だから、こんなにして宝を手に入れたのは宮城に徳があったわけだ。やがて、「もう順風だ。さあ、お前たちも身仕度して準備しろ。」と船頭が言ったので、身仕度をすませ準備した。それから船は港を)出た。ところが船はもう少しで沖縄に着くんだよ。もう少しで着くところだが、この船があんなに走っていた船が、止まってせんぜん進まなくなったらしい。船頭は、「これは確かに何かある。こんなに走っていた船が止まるのは何かあるんだ。何か変わったことがある。」と言って、船調べを始めたらしい。船調べをすると、この宮城がいつも寝ている所に手拭の包みがあったらしいんだ。船頭は、「こいつめ、こんなものを積むから、これを持っているから、この船は走らないんだ。」と言って、そして、この手拭いを取りあげて、海に投げすてたんだね。すると、それからはもうこの宮城は、沖縄に来る間、ずっとうつぶせになって、「ああ、宝ものを取られた。」と言って、沖縄に着く間、ずっとうつぶせになって不機嫌になった。そうこうして船が沖縄に着いたので、家に帰ると宮城は、「実はこういうことだったよ。」と話した。母親は、「お前は唐から戻って来たんだから、隣近所のお婆さん方や、お爺さん方をお呼びして、お茶だけでもごちそうしないといけないよ。そういうことがあったからといって知らんふりはできないよ。」と言った。「そうは言ってもどうしましょうか。私はお金は一銭もないんですよ。」と答えた。お金は無いと言うと、「私ができるから。」と言って、「ほらほら、私の頭から二つ添髪を切りなさい。ほら、あんたのからも一つは切りなさい。」と嫁に言いつけた。母親は、「この添髪というのは、別の品物とはちがって、どこでも必ず売れるからね、これを持って行って売って、そして町まで行って、今日、お客さんに差し上げる、お茶のおかずを買ってきなさい。」と嫁に言いつけた。ところが嫁は、添髪を売って金にかえたが、肉市場行っても閉まっていて肉はないし、魚市場に行っても閉まってないので、そのまま家に帰ったらしいんだ。すると夫が、「お前、本当に何もなかったのか。」と聞くので、妻は、「十四五斥ばかりの蝿がたかっているミーバヤーが一つありました。たったそれ一つだけありました。」と答えた。夫は、「あるものを買ってくるんだよ。無いからと言ってそれですまされるか。買ってくるんだ。」と叱った。それで嫁は、このミーバヤーを買ってきたんだね。買ってきたら母親がそれをご覧になって、「これは女じゃ料理できない。お前、魚を料理しなさい。骨がつかないように、ちゃんと料理して、御茶といっしょに出して、みんなに差し上げなさい。」と息子に言いつけた。「はい、はいわかりました。」と言って、魚の腹を裂いてみると、このミーバヤーが宝を食っていた。「はあ、私のものだ。」と言って宝を懐にしまった。それを見て母親が、「これはなま臭物だよ。それを懐に入れて。」と言うと、「いやいや、この魚の話は、四五日後に、私があらましを話しますから。今は何も話しません。」と答えた。それから、みんなをお呼びして、お客さんたちにお茶を差しあげ、おかずも差しあげたりしてから、宮城は、「この魚は私を助けてくれたものだから、骨になっても、私たちの前の畑は、海が見えるから、頭を海の方に向けて、でーふあーを被せて、そこに葬ることにしよう。」と家族に話した。そのまま出しておくと、動物が食べるからと言って、でーふあーを被せ、海に頭を向けて葬った。するとこの畑はね、何も植えてないらしいんだが、千坪の畑に、自然に野菜が生えだしたんだ。毎日売ってもきりがないほど。この魚の力、頭の力らしいんだ、これは。だから、徳のある人は、何から何まで、徳がつくんだよ。それから、十日たったので、「こっちに来なさい。お母さんもいらっしゃい。これですよ。私の宝物というのは、これですよ。」と言ってを見せた。すると母親が、「マサンドゥ、これは何なの。」と聞いたので、「これは、国一番の上等の宝物。黄金というもんですよ。」と教えると、「でかした。」と言って。「船頭に取られて、海に投げ捨てられても、自然にまた、神がここまで、動物に助けさせて、持ってきてくれましたよ。」と言って神に感謝した。こういった話だ。 |
| 全体の記録時間数 | 15:02 |
| 物語の時間数 | 15:02 |
| 言語識別 | 方言 |
| 音源の質 | ◎ |
| テープ番号 | - |
| 予備項目1 | - |